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第1章 イマドキの高校生
5話~草冠~
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「あ、蓮斗。おかえりー」
他のクラスの箱へ手を入れ、戻ると箱を壊したバカが手を振っていた。
その横には笑顔を浮かべた榊。
俺は軽く2人と目を合わせ席に座る。
「どうしました?浮かない顔ですが…」
「……いや。」
鋭い。
アホの雹太には気付かれずとも、賢そうな榊にはバレるらしい。
「なんでなんでー?あ、もしかして。」
「…属性。右火で左風。」
ぼそぼそとそう答えると暫しの間。
そしてすぐに雹太がくすくすと笑い出す。
ああ、腹が立つ…!
自分の席に座り軽く髪を掻きあげて両手を見る。
今は火花も風もない、ただのマメの多い手。
「…あの、付いて行けないのですが…」
そろりと片手を挙げた榊を見やると俺より先に雹太が口を開いた。
「あのね、蓮斗、茜さんっていうお姉さんがいるんだよ。この学校の、三年生なんだけど。茜さんも火>風なんだよね。」
「あんな恐ろしいのと一緒とか…」
俺の姉、茜はこの学校の生徒会副会長であり俺と同じ火>風の混合属性の持ち主。
赤い髪を高い位置で二つに…云わばツインテールで結んだ姉貴は怪力馬鹿。
その上俺を昔から下僕のように扱っている鬼のような奴。
そんな姉貴と同じ属性というだけで、俺としては堪らなく萎える。
「お姉様、ですか。ふふっ…私は一人っ子なので羨ましいですが」
「いやいや、欲しければくれてやりたいくらいだぜ」
榊の言葉につい溜息が漏れる。
俺としては、姉貴の存在はきちんと有害だ。
「見たいテレビ番組譲ったり、風呂の順番譲ったりは当たり前だし。1時間並ぶ店のケーキ買ってこいとか、誰々のアドレス聞いてこいとか、料理という名のダークマターを食わされたり…言うこと聞かねえとすぐ暴力だし、あの女。」
「おかげで蓮斗、女性ってだけでトラウマ発揮するしね」
くすくすと笑う榊と雹太。
笑い事じゃねえっつの。
「…おし、全員前向けー。これでクラス全員の属性を調べ終わった。」
怠そうな声が教室に響く。
担任の風間、とか言ったか。
何かが跳ねた跡のようなシミが胸元にあるYシャツ姿で、歳も若そうだ。
教員、って感じがあんまりしない。
「あとお前らがしないといけないのは委員会選択だが…まあ1年目の前期だ。何が何だか分からねえだろうから俺が適当に決めた。異論は認めねえ。」
そう言って配られた紙にざわつく教室内。
そりゃそうだ。
決め方があまりに横暴すぎる。
だが。
「意見を言うのは勝手だが、異論は認めねえ、と言ったはずだ。」
死んだ目をしたこの男が、委員会を決め直すとは思えない。
「俺風紀委員かー」
「俺は図書だ」
隣から聞こえたのは批判でも賛同でもないただの言葉。
雹太みたいなバカ正直には風紀、合うかもしれない。
だが俺が図書委員は…
「ぷっ、蓮斗が図書とかウケる」
……言われると腹立つ。
あとでしばく。
他のクラスの箱へ手を入れ、戻ると箱を壊したバカが手を振っていた。
その横には笑顔を浮かべた榊。
俺は軽く2人と目を合わせ席に座る。
「どうしました?浮かない顔ですが…」
「……いや。」
鋭い。
アホの雹太には気付かれずとも、賢そうな榊にはバレるらしい。
「なんでなんでー?あ、もしかして。」
「…属性。右火で左風。」
ぼそぼそとそう答えると暫しの間。
そしてすぐに雹太がくすくすと笑い出す。
ああ、腹が立つ…!
自分の席に座り軽く髪を掻きあげて両手を見る。
今は火花も風もない、ただのマメの多い手。
「…あの、付いて行けないのですが…」
そろりと片手を挙げた榊を見やると俺より先に雹太が口を開いた。
「あのね、蓮斗、茜さんっていうお姉さんがいるんだよ。この学校の、三年生なんだけど。茜さんも火>風なんだよね。」
「あんな恐ろしいのと一緒とか…」
俺の姉、茜はこの学校の生徒会副会長であり俺と同じ火>風の混合属性の持ち主。
赤い髪を高い位置で二つに…云わばツインテールで結んだ姉貴は怪力馬鹿。
その上俺を昔から下僕のように扱っている鬼のような奴。
そんな姉貴と同じ属性というだけで、俺としては堪らなく萎える。
「お姉様、ですか。ふふっ…私は一人っ子なので羨ましいですが」
「いやいや、欲しければくれてやりたいくらいだぜ」
榊の言葉につい溜息が漏れる。
俺としては、姉貴の存在はきちんと有害だ。
「見たいテレビ番組譲ったり、風呂の順番譲ったりは当たり前だし。1時間並ぶ店のケーキ買ってこいとか、誰々のアドレス聞いてこいとか、料理という名のダークマターを食わされたり…言うこと聞かねえとすぐ暴力だし、あの女。」
「おかげで蓮斗、女性ってだけでトラウマ発揮するしね」
くすくすと笑う榊と雹太。
笑い事じゃねえっつの。
「…おし、全員前向けー。これでクラス全員の属性を調べ終わった。」
怠そうな声が教室に響く。
担任の風間、とか言ったか。
何かが跳ねた跡のようなシミが胸元にあるYシャツ姿で、歳も若そうだ。
教員、って感じがあんまりしない。
「あとお前らがしないといけないのは委員会選択だが…まあ1年目の前期だ。何が何だか分からねえだろうから俺が適当に決めた。異論は認めねえ。」
そう言って配られた紙にざわつく教室内。
そりゃそうだ。
決め方があまりに横暴すぎる。
だが。
「意見を言うのは勝手だが、異論は認めねえ、と言ったはずだ。」
死んだ目をしたこの男が、委員会を決め直すとは思えない。
「俺風紀委員かー」
「俺は図書だ」
隣から聞こえたのは批判でも賛同でもないただの言葉。
雹太みたいなバカ正直には風紀、合うかもしれない。
だが俺が図書委員は…
「ぷっ、蓮斗が図書とかウケる」
……言われると腹立つ。
あとでしばく。
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