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4章〜崩れて壊れても私はあなたの事を——〜
74話「崩壊の足音3」
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ダンジョンの外は自然が広がっていた。周囲を見渡せば木、木、木。
唯一の人工物は舗装された道だった。それでも人が二、三人通る幅を舗装されているだけだ。
「これが、異世界か⋯⋯?」
「んー、ここはダンジョン前だからね。もう少し進めば進歩した技術が見られると思うよ」
馴染み深いアスファルトの歩道を踏みしめながら、レイジは思う。
異世界感ねぇ、と。アニメや漫画の世界のような草だけ刈り取ったような道は足が痛くなるから嫌ではある。が、それとこれはまた違うのだ。
そして、少しの間道なりに歩いていると向かい側から何者かが歩いてきた。
「ん? お前さん達こんなところで何やってるんだ?」
声をかけてきたのは髭を長く生やした男性。
頭部以外を鎧で覆い、手には一本の槍、腰にはいくつかのポーチが付いている。
「え、あ、俺達は⋯⋯」
「田舎から都会に向かってるんだよ、おじさん!」
異世界事情に詳しくない レイジ が吃るとすかさず ゼーレ が答えた。
さすがにダンジョンから来ました、とは言えないのでレイジは内心安堵した。
「都会? ってことは都市を目指してるのか?」
「うん! でも、道わかんなくなっちゃって迷ってるんだ。おじさん道知ってる?」
「はっはっは! 勿論さ! そうだね、この道を進めば冒険者ギルドの仮施設がある。そこで詳しく聞くといいぞ」
「わかった! ありがとうね、おじさん!」
「いいってことよ!」
「ありがとうございます」
「おう! にいちゃん達も気をつけてな!」
そう言って道を教えてくれた男性はそのままダンジョンの方へ向かっていった。今まで出会った人間は敵同士であったあために、レイジは新鮮さを感じていた。
「ダンジョンで出会わないだけで、こんなに違うものなんだな」
「むふー」
レイジ が男性の背中から視線を戻すとなぜか ゼーレ が自慢気な顔つきて レイジ を見ていた。
「お兄ちゃん、いま、ゼーレ、超! 活躍しなかった?」
「⋯⋯なにが言いたい?」
「ご褒美とかあってもいいんじゃないかなぁーって。ね?」
「⋯⋯はぁ。これでいいか?」
何かを期待するような眼差しで見つめる ゼーレ に レイジ は溜息をつきながらもその白い髪を優しく撫でた。
「はいはい、ご苦労さんでした」
「にゃああぁ」
ゼーレ は口元を緩ませ、ニマニマとしながらゴロゴロと喉を鳴らした。まるで飼い猫のように甘えてくる。
そして、 レイジ が手を退けようとするとすかさず自身の両手で レイジ の手を掴み離さないようする。
「⋯⋯」
「にまぁ」
したり顔にイラッとしながらも、レイジ は諦め ゼーレ の頭に片手を乗っけた状態で歩き、冒険者ギルドの仮施設を目指した。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
「——っ?」
兄妹と思しき白髪の二人とすれ違いになった男性は足を止めた。振り返ればすでに その兄妹の姿は見えなくなっていた。
「あいつら⋯⋯何者だ?」
視線を戻せば目的のダンジョンが目前に迫り、いつも腰掛けている微妙な座り心地の岩が見えた。そして、男性はその岩に腰をかけ、周辺の地形を思い返した。
(ここ一帯の村は一つを除いてとっくに消滅しているはずだ。それに残ってた村も数ヶ月前に『突発的魔物発生現象』で事実上消えた)
男性は岩から立ち上がりダンジョンの入り口を迂回し更に奥へ進んだ。そこには——
(また⋯⋯海が近づいてきている)
目視できる限界の場所。
男性の記憶では以前は木々が生えていた場所には青々とした広大な海が見えていた。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
レイジ達は男性が言っていた冒険者ギルドの仮施設に辿り着いた。
仮施設、と言うだけあって見た目は簡素なもので二階建ての民泊の様なものだった。唯一の装飾品は看板であり、剣と盾と杖が交差したその看板だけが冒険者ギルドである事を証明している様だ。
そして、周辺には仮施設以外の建築物は無く、ただポツンと施設だけが建っている。
「ここがあの人が言ってた場所か?」
「そうみたいだね。看板もあるし」
「とりあえず入ってみるか」
「うん、そだね」
レイジ が建物の扉を開けるとそこは簡素ながらも綺麗に掃除された場所だった。
木製の床に、気持ち程度で置かれている机が一つといくつかの椅子。そして、受付であろうカウンターも木製だ。
「あれ? ダンちゃん? 何かあっ——」
受付嬢だろうか金髪をうしろで玉状にまとめたお団子ヘヤーに、正装で身を包んだ妙齢の女性が レイジ達に振り返った。
「あ、ごめんなさい! 」
女性は人違いをすぐに認識し素早く頭を下げた。
「あ、いえ大丈夫です」
「本当にごめんなさいね、こんな場所にはもう人が来ないと思っていたものですから」
そう言いながら女性は申し訳なさそうに頭を上げた。そして、先程の失敗を吹き飛ばすような笑顔で レイジ達への応対を始める。
「それで、どうしてこんな所に?」
「あ、俺たち都市を目指しているのですが道に迷ってしまいまして。ここに来れば教えてもらえると聞いたんです」
「都市? それならもうちょっと道を下ると駅があるよ」
「駅?」
「そうよ、電車の駅よ」
「電車⋯⋯? この世界に電車があるんですか!?」
「ちょっ! お兄ちゃん!」
久しく聞いた言葉に レイジ が大きな声をあげた。
レイジの驚きにすばやく反応した ゼーレ は レイジ の手を取り受付嬢から離れる。
「いいお兄ちゃん? この世界にも電車はあるの」
「初耳だぞ」
「⋯⋯ごめん、言うの忘れてた。テヘッ」
「テヘッ、じゃねえ! ⋯⋯それで、電車があるなら車も飛行機もあるのか?」
「あるけど、どっちも廃れてるよ」
「ん?どうしてだ?」
「車を使うくらいなら走るか電車の方が便がいいからで、飛行機は単純には発着する場所がないから」
「なるほど。ならこの世界の主な交通手段は電車か徒歩?」
「そうなるね」
改めて異世界事情を知った レイジ は受付嬢へ振り返った。受付嬢は気にした様子はなく、むしろレイジの新鮮な反応を嬉しそうにしていた。
「あー、すいません、大きな声を出してしまって」
「いいのよ。都市で生活していない人からすれば電車はあまり耳にしないのかもね」
「そうですね。初めて聞きました」
「それで電車に乗ればすぐに行けるけど君達はお金を持ってるの?」
「持ってるよ!」
そう言って ゼーレ はパンパンになったポーチを軽く叩いた。
ポーチの中には金、銀、銅の三種類とそれぞれ大小二種類、計六種類の硬貨が入っている。その全ては侵入者から回収したものだ。
「そう。なら電車に乗ったら『ディラーミング』って言う名前の行き先があるからそこが都市よ。値段は大銅貨一枚のはずよ」
「わかりました。ありがとうございます」
「ありがとうございまあす!」
「はい、気をつけてくださいね」
こうして レイジ と ゼーレ は仮施設を後にした。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
太陽が沈み夜の帳が仮施設を包んだ。
「ただいま」
「あ、ダンちゃんお帰り」
受付嬢は書類整理を切り上げカウンターからその姿を現した。
ダンちゃん、と呼ばれる鎧を着た男性も身につけている鎧を丁寧に外し椅子に腰を下ろした。
「⋯⋯」
「どうしたの? 浮かない顔して」
「ああ。実は——」
そう切り出し、ダンちゃんは今日会った不思議な兄妹について話はじめた。
外見や服装、持ち物からダンちゃん自身が感じた違和感。そして、最近の出来事を交えて思うがままに言葉にした。
受付嬢もあっちこっちへいく話を静かに頷きながら聞いていた。
「——というわけなんが⋯⋯すまない。こんなに長く話してしまって」
「いいのよ別に。私もその子たちに会ったけど、純粋そうで可愛かったわよ。電車の降車駅なんかを教えたら驚いてたわよ」
「驚いた?」
「電車があるのか!?って」
受付嬢の話を聞くと本当に世間知らずの子供が来たように聞こえる。
もしや、ダンジョンから出てきた魔物かとも思ったが、魔物が人間を襲わないのも、電車に驚くのもおかしい。ダンちゃんは依然として白髪の兄妹から感じる違和感の正体が気になっている。
「そうか。んー、それだと本当に田舎から来た子達みたいだな」
「そうじゃないの?」
「それがどうにも不思議なんだよ。ここら辺にはもう田舎と呼べる様な場所は存在していないだろ」
白髪の兄妹が来た先は海に飲み込まれてしまっている。
以前、その地域に住んでいた人たちはすでに避難されており、沈んでしまったことには今も悲しんでいる。
「違う方角からやって来たとか?」
「だとしたらもっと変だ。わざわざ舗装されていない森の中を突っ切るのはいくら魔物が減ったからと言っても愚行だ」
数ヶ月前に起きた『突発的魔物発生現象』によりこの地域には今も暴走した魔物が跋扈している。
現在は冒険者ギルドのおかげで見る数は減ってきたが、それでも万が一を考えると危険であるのは間違いなかった。
「そうねぇ⋯⋯あっ、泳いで来たとか!」
「それこそないだろう。だって、二年前に大陸は一つになったのだから」
「それじゃあどうして?」
「それが分からないから考えているんだろうに」
まるで雲を捕まえるようで、その答えが出ないまま二人の夜は更けていった。
唯一の人工物は舗装された道だった。それでも人が二、三人通る幅を舗装されているだけだ。
「これが、異世界か⋯⋯?」
「んー、ここはダンジョン前だからね。もう少し進めば進歩した技術が見られると思うよ」
馴染み深いアスファルトの歩道を踏みしめながら、レイジは思う。
異世界感ねぇ、と。アニメや漫画の世界のような草だけ刈り取ったような道は足が痛くなるから嫌ではある。が、それとこれはまた違うのだ。
そして、少しの間道なりに歩いていると向かい側から何者かが歩いてきた。
「ん? お前さん達こんなところで何やってるんだ?」
声をかけてきたのは髭を長く生やした男性。
頭部以外を鎧で覆い、手には一本の槍、腰にはいくつかのポーチが付いている。
「え、あ、俺達は⋯⋯」
「田舎から都会に向かってるんだよ、おじさん!」
異世界事情に詳しくない レイジ が吃るとすかさず ゼーレ が答えた。
さすがにダンジョンから来ました、とは言えないのでレイジは内心安堵した。
「都会? ってことは都市を目指してるのか?」
「うん! でも、道わかんなくなっちゃって迷ってるんだ。おじさん道知ってる?」
「はっはっは! 勿論さ! そうだね、この道を進めば冒険者ギルドの仮施設がある。そこで詳しく聞くといいぞ」
「わかった! ありがとうね、おじさん!」
「いいってことよ!」
「ありがとうございます」
「おう! にいちゃん達も気をつけてな!」
そう言って道を教えてくれた男性はそのままダンジョンの方へ向かっていった。今まで出会った人間は敵同士であったあために、レイジは新鮮さを感じていた。
「ダンジョンで出会わないだけで、こんなに違うものなんだな」
「むふー」
レイジ が男性の背中から視線を戻すとなぜか ゼーレ が自慢気な顔つきて レイジ を見ていた。
「お兄ちゃん、いま、ゼーレ、超! 活躍しなかった?」
「⋯⋯なにが言いたい?」
「ご褒美とかあってもいいんじゃないかなぁーって。ね?」
「⋯⋯はぁ。これでいいか?」
何かを期待するような眼差しで見つめる ゼーレ に レイジ は溜息をつきながらもその白い髪を優しく撫でた。
「はいはい、ご苦労さんでした」
「にゃああぁ」
ゼーレ は口元を緩ませ、ニマニマとしながらゴロゴロと喉を鳴らした。まるで飼い猫のように甘えてくる。
そして、 レイジ が手を退けようとするとすかさず自身の両手で レイジ の手を掴み離さないようする。
「⋯⋯」
「にまぁ」
したり顔にイラッとしながらも、レイジ は諦め ゼーレ の頭に片手を乗っけた状態で歩き、冒険者ギルドの仮施設を目指した。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
「——っ?」
兄妹と思しき白髪の二人とすれ違いになった男性は足を止めた。振り返ればすでに その兄妹の姿は見えなくなっていた。
「あいつら⋯⋯何者だ?」
視線を戻せば目的のダンジョンが目前に迫り、いつも腰掛けている微妙な座り心地の岩が見えた。そして、男性はその岩に腰をかけ、周辺の地形を思い返した。
(ここ一帯の村は一つを除いてとっくに消滅しているはずだ。それに残ってた村も数ヶ月前に『突発的魔物発生現象』で事実上消えた)
男性は岩から立ち上がりダンジョンの入り口を迂回し更に奥へ進んだ。そこには——
(また⋯⋯海が近づいてきている)
目視できる限界の場所。
男性の記憶では以前は木々が生えていた場所には青々とした広大な海が見えていた。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
レイジ達は男性が言っていた冒険者ギルドの仮施設に辿り着いた。
仮施設、と言うだけあって見た目は簡素なもので二階建ての民泊の様なものだった。唯一の装飾品は看板であり、剣と盾と杖が交差したその看板だけが冒険者ギルドである事を証明している様だ。
そして、周辺には仮施設以外の建築物は無く、ただポツンと施設だけが建っている。
「ここがあの人が言ってた場所か?」
「そうみたいだね。看板もあるし」
「とりあえず入ってみるか」
「うん、そだね」
レイジ が建物の扉を開けるとそこは簡素ながらも綺麗に掃除された場所だった。
木製の床に、気持ち程度で置かれている机が一つといくつかの椅子。そして、受付であろうカウンターも木製だ。
「あれ? ダンちゃん? 何かあっ——」
受付嬢だろうか金髪をうしろで玉状にまとめたお団子ヘヤーに、正装で身を包んだ妙齢の女性が レイジ達に振り返った。
「あ、ごめんなさい! 」
女性は人違いをすぐに認識し素早く頭を下げた。
「あ、いえ大丈夫です」
「本当にごめんなさいね、こんな場所にはもう人が来ないと思っていたものですから」
そう言いながら女性は申し訳なさそうに頭を上げた。そして、先程の失敗を吹き飛ばすような笑顔で レイジ達への応対を始める。
「それで、どうしてこんな所に?」
「あ、俺たち都市を目指しているのですが道に迷ってしまいまして。ここに来れば教えてもらえると聞いたんです」
「都市? それならもうちょっと道を下ると駅があるよ」
「駅?」
「そうよ、電車の駅よ」
「電車⋯⋯? この世界に電車があるんですか!?」
「ちょっ! お兄ちゃん!」
久しく聞いた言葉に レイジ が大きな声をあげた。
レイジの驚きにすばやく反応した ゼーレ は レイジ の手を取り受付嬢から離れる。
「いいお兄ちゃん? この世界にも電車はあるの」
「初耳だぞ」
「⋯⋯ごめん、言うの忘れてた。テヘッ」
「テヘッ、じゃねえ! ⋯⋯それで、電車があるなら車も飛行機もあるのか?」
「あるけど、どっちも廃れてるよ」
「ん?どうしてだ?」
「車を使うくらいなら走るか電車の方が便がいいからで、飛行機は単純には発着する場所がないから」
「なるほど。ならこの世界の主な交通手段は電車か徒歩?」
「そうなるね」
改めて異世界事情を知った レイジ は受付嬢へ振り返った。受付嬢は気にした様子はなく、むしろレイジの新鮮な反応を嬉しそうにしていた。
「あー、すいません、大きな声を出してしまって」
「いいのよ。都市で生活していない人からすれば電車はあまり耳にしないのかもね」
「そうですね。初めて聞きました」
「それで電車に乗ればすぐに行けるけど君達はお金を持ってるの?」
「持ってるよ!」
そう言って ゼーレ はパンパンになったポーチを軽く叩いた。
ポーチの中には金、銀、銅の三種類とそれぞれ大小二種類、計六種類の硬貨が入っている。その全ては侵入者から回収したものだ。
「そう。なら電車に乗ったら『ディラーミング』って言う名前の行き先があるからそこが都市よ。値段は大銅貨一枚のはずよ」
「わかりました。ありがとうございます」
「ありがとうございまあす!」
「はい、気をつけてくださいね」
こうして レイジ と ゼーレ は仮施設を後にした。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
太陽が沈み夜の帳が仮施設を包んだ。
「ただいま」
「あ、ダンちゃんお帰り」
受付嬢は書類整理を切り上げカウンターからその姿を現した。
ダンちゃん、と呼ばれる鎧を着た男性も身につけている鎧を丁寧に外し椅子に腰を下ろした。
「⋯⋯」
「どうしたの? 浮かない顔して」
「ああ。実は——」
そう切り出し、ダンちゃんは今日会った不思議な兄妹について話はじめた。
外見や服装、持ち物からダンちゃん自身が感じた違和感。そして、最近の出来事を交えて思うがままに言葉にした。
受付嬢もあっちこっちへいく話を静かに頷きながら聞いていた。
「——というわけなんが⋯⋯すまない。こんなに長く話してしまって」
「いいのよ別に。私もその子たちに会ったけど、純粋そうで可愛かったわよ。電車の降車駅なんかを教えたら驚いてたわよ」
「驚いた?」
「電車があるのか!?って」
受付嬢の話を聞くと本当に世間知らずの子供が来たように聞こえる。
もしや、ダンジョンから出てきた魔物かとも思ったが、魔物が人間を襲わないのも、電車に驚くのもおかしい。ダンちゃんは依然として白髪の兄妹から感じる違和感の正体が気になっている。
「そうか。んー、それだと本当に田舎から来た子達みたいだな」
「そうじゃないの?」
「それがどうにも不思議なんだよ。ここら辺にはもう田舎と呼べる様な場所は存在していないだろ」
白髪の兄妹が来た先は海に飲み込まれてしまっている。
以前、その地域に住んでいた人たちはすでに避難されており、沈んでしまったことには今も悲しんでいる。
「違う方角からやって来たとか?」
「だとしたらもっと変だ。わざわざ舗装されていない森の中を突っ切るのはいくら魔物が減ったからと言っても愚行だ」
数ヶ月前に起きた『突発的魔物発生現象』によりこの地域には今も暴走した魔物が跋扈している。
現在は冒険者ギルドのおかげで見る数は減ってきたが、それでも万が一を考えると危険であるのは間違いなかった。
「そうねぇ⋯⋯あっ、泳いで来たとか!」
「それこそないだろう。だって、二年前に大陸は一つになったのだから」
「それじゃあどうして?」
「それが分からないから考えているんだろうに」
まるで雲を捕まえるようで、その答えが出ないまま二人の夜は更けていった。
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