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2章〜光は明日を照らし、鬼は大地を踏みしめ、影は過去を喰らう〜

47話「這い寄る影、蠢く破滅、その先に2」

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 ダンジョンに響き渡る揺れは暫くした後に止んだ。

「さて、出来上がったみたいだな」
「そのようですね」
「どんなところなんでしょうねぇ」

 魔物達はそれぞれの感想を口々に溢した。

 そんな中、レイジは半透明の画面に見入っていた。

「どうお兄ちゃん? 何かいそう?」
「⋯⋯いや、今回は何もいない可能性が高い。階層主も居ないみたいだ」
「そっかー、なら中の探索をして終わりだね」
「そう簡単に済めばいいんだが⋯⋯」

 レイジは何処かぬぐいきれない何かを感じながらも魔物達を連れ階段を上がっていった。

 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾

 階段を上った先は閑散としていた。

 大地は乾き全て砂と化し、生える植物は緑をつけることなく痩せ細ってる。
 空を見上げると赤黒く染まり、頭上には赤い太陽がこれでもかと強く照っていた。

「こ、これは⋯⋯」
「⋯⋯凄まじい環境ですわぁ」
「なんすかこのヤバイ場所は!?」

 それぞれの反応を示させる程の階層だった。
 実際には何も言えない者達の方が多い。

「⋯⋯そういうことか」

 レイジは半透明な画面を出し納得の声を上げた。

「どう言うことですの貴方様?」
「さっき、この階層に地形を確認しただろ? その時、気になったことがあったんだ」
「何があったのですかぁ?」
「それはだな⋯⋯」
「勿体ぶらないで早く言ってくださいっす」
「⋯⋯壁がないんだよ」
「「「?」」」
「だから、この階層全てがこの砂漠一面で出来上がってるんだよ」

 レイジは頭を抱えながらそう言った。

 レイジ達にとっては最悪にも最善にもなり、侵入者には最悪にしかならないだろうこの階層を考えながら。

 そして、それをいち早く気付いた者がいた。

「ッ!」

 流石というべきか、最初に気づいたのはパンドラだった。
 パンドラは手で直射日光を遮りながらぐるりと一周見渡す。

「私の目では入り口は視認できません」
「?」
「どう言うことっすか?」
「お前達も周りを見て入り口とか端とか見えるか?」

 パンドラ以外の魔物達はそれぞれ周囲を見渡した。

 ある者は飛び跳ねて見たり、ある者は移動し見える範囲を広げたり、ある者は能力を使い探して見たり。

 だがーー

「なかったですわぁ」
「み、見つかんなかったっす」
「⋯⋯な、い」

 ーー誰一人入ってきた入り口に対をなす出口を見つけることができなかった。

「これはどうするか⋯⋯」
「でもお兄様ぁ、入り口が見つからなかっただけで困る事があるのですかぁ?」
「そうっすよ。別に見つからなくても問題ないじゃないっすか?」

 レイジの苦悩にエイナとハクレイ抗議した。
 外見が子供なら中身も子供なのか、もう話し合いに飽きた様子で砂いじりをしている。

「いいかお前達、入り口がわからないと侵入者がどこから来るかもわかんないんだぞ?」
「お兄さんはマップ機能を持ってるんじゃないっすか?」
「いや、残念だがこの階層の入り口は載ってない」
「な!? どう言うことっすか!?」
「恐らく、そういう仕様なんだろ」
「ですが貴方様、見える範囲で入り口がないとすると⋯⋯」
「ああ、近くには入り口はできないんだろうな。そしてーー」

 そう言ってレイジはハクレイに視線を向けた。
 結構手先が器用なのか砂上の城が思った以上に完成度が高い。

「ん? なんすか?」
「お前の能力も使えないんだよな」
「どう言うことっすか?」
「お前のダンジョン内の移動には決定的な弱点があった」
「弱点っすか?」
「そうだ。お前は正確な位置を把握できない。一応、マップ機能があるから目印か何かがあれば問題ないが⋯⋯」

 そう言ってレイジ周囲を見渡した。
 隣で城を作っていたエイナはあんまり上手くできないようだ⋯⋯そして意味深な笑顔を浮かべながらハクレイが作った城を見ている。

「見ての通りここにはそんなものはない」
「そっすね⋯⋯あっ!」

 今までの説明でようやく理解できたハクレイ。
 ハクレイの能力は戦闘においては問題ではないが奇襲などを仕掛ける際にはなにかしらの目印などがなければ移動ができないのだ。
 そのため、目印が存在していないこの階層では移動の能力そのものが使えなくなっていた。

「そ、そんな⋯⋯自分のアイデンティーが⋯⋯」

 どこかで見た光景だが気のせいだろう。
 ハクレイはまるで築き上げてきた城が砂のように崩れていくかのように落ち込んでいた。

「ああ、ここではお前の能力は発揮できないと考えるべきだ。更に言えば、俺が単身で突撃するのも悪手だな」
「でしたらお兄様ぁ、この階層はどうするのですかぁ?」
「ここでの奇襲は避けるってところかな」

 会話に参加してきたエイナはやけにご機嫌だったがレイジは気に留めなかった。今後、この階層をどう扱うかで一杯一杯だから仕方ないと言い聞かせて。
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