上 下
23 / 106
1章〜異世界の地に立つ者達〜

23話「残された者達へ祝福を1」

しおりを挟む
 暫くするとゼーレは落ち着き、普段の飄々とした感じを取り戻してきた。

「⋯⋯ひっぐっ⋯⋯ありがとう、お兄ちゃん」
「おう、気にするな」

 レイジの言葉にゼーレは一人呟いた。

「そんなんだから、皆んなお兄ちゃんを守りたくなるんだよ。そして⋯⋯ね」
「ん?なんか言ったか?」
「なーんにも!」

 ゼーレの、ゼーレだけの呟きは誰の耳にも届かなかった。

「そうだ!戦ってお腹空いたんじゃない?ご飯にしようよ!」
「あー、そう言えば何も食べてなかったな」

 パンドラ、マルコシアスと連戦をした。
 どちらも⋯⋯特にマルコシアスには余裕が持てなかったために空腹を忘れていた様だ。

「折角だから全員で食べようぜ」
「賛成ー!」

 いわば祝勝会。両手をあげて喝采できるわけではないが、少しでも盛大にしたい。
 レイジは一種の手向けだと思って気分を高めていたがーー

「⋯⋯ごめ、ん⋯⋯なさ、い。わ、たし⋯⋯たべ、られ⋯⋯ない」
「(コクリ)」
「「⋯⋯」」

 ーー食事不要勢を前に些か出鼻を挫かれることになった。

 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾

「で、お兄ちゃん何食べるの?やっぱ勝利を祝ってカツ?」
「いや、カツって戦いの前だろ。勝利を祝うなら寿司だろ」
「お寿司!?」

 ゼーレが寿司の単語を聞いて目を輝かせ始めた。
 しかし、そこにソーっと手を挙げる者がいた。

「申し訳ありません、『おすし』とは何ですか?」
「寿司っていうのはな、簡単に言うと酢飯に生魚を乗っけた物だな」
「『すめし』?『なまざかな』?」

 簡単に説明してもパンドラには疑問しか浮かばないのだった。

「酢飯も生魚も知らないのか?」
「ダンジョンには加工したものはないからね」
「そうなのか?」
「ダンジョンに住む魔物の食事は他の魔物くらいだからね。あ、あと人間かな」
「それって、生肉しか食ってないじゃないか。それでよく⋯⋯」

 そう言って、レイジはパンドラのスタイルを見てしまった。

 出るところは出て、引くところは引いているその女性的な体つきを。
 当然、服の再生なんてご都合主義はないため先の戦いで破れている。お陰で至る所から白く柔らかい素肌が眩しくて仕方がない。

「お、お兄ちゃん!どこ見てるの!」
「あ、わ、悪い!つい⋯⋯」
「ああ、ああぁ!貴方様が私を欲情の目で見てくださって!いつでも見てくださっていいですよ!」
「⋯⋯ます、たー」
「(ジー)」

 本音を言えばもっと見たいが、パンドラの狂気的な愛も他の面々のゴミを見る様な目にも耐えられない。
 レイジは半ば死ぬ気になってすり替える話題を捻り出す。

「そ、そうだ!飯もそうだが先にファントムの傷を直そう!そのままだと大変だろうからな!」

 そう言ってレイジはDMPの確認を急いだ。
 そこにはーー

「ーーは?」

 ーーーーー
 名前:神ノ蔵 レイジ
 種族:霊人族
 性別:男
 Lv:1 → 34
 HP:G → D
 MP:E → C
 技能:ダンジョンマスター<1→3>、霊体化<1>、憑依<1>
 称号:霊物のダンジョンマスター
 DMP:2,000 → 257,952,000
 ーーーーー

 ーーーーー
 ダンジョンマスター<1 → 3>
 等級:S

 ダンジョン管理<->
 魔物生成<->
 ダンジョン内移動<->
 能力模倣<1 → 3>
 ーーーーー

「え?何これ?」
「どうしたのお兄ちゃん?」

 ステータス画面が見えないゼーレは聞くしかできなかった。

「⋯⋯DMPがインフレした」
「⋯⋯え?」

 その後直ぐさま全員のステータスが確認された。

 ーーーーー
 名前:ーーー
 種族:ファントム
 性別:女
 Lv:1 → 38
 HP:G→ E
 MP:E → D
 技能:影魔法<3 → 6>
 称号:影の住人 → 影の主
 ーーーーー

 ーーーーー
 名前:ーーー
 種族:レイス
 性別:女
 Lv:1 → 45
 HP:E → C
 MP:F → D
 技能:神速<1 → 3>
 称号:変異種、闇の住人 → 闇の主
 ーーーーー

 ーーーーー
 名前:パンドラ
 種族:概念種
 性別:女
 Lv:43
 HP:D
 MP:C
 技能:闇魔法<5>、厄災<->、美貌<->
 称号:闇の主、厄災の概念、美貌の概念
 ーーーーー

 全員のステータスが確認された。
 そして、全員が口を開いたままとなった。

「⋯⋯レベル上がりすぎだろ」

 ここへきて、あの翁の置き土産に更に感謝することになったレイジ一行であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

処理中です...