上 下
10 / 106
1章〜異世界の地に立つ者達〜

10話「信ずる者に希望を、裏切る者に絶望を2」

しおりを挟む
 ー立花 香ー

 立花 香が目覚めたのは木が生い茂る森の中だった。

 周囲を見渡せば木と草のみが目に入る。

 だが、立花 香という少女の目には自然豊かなこの景色は映っていなかった。

 少女の手には1冊の本、植物の種をかたどった水晶体があるが、少女はそのどちらにも興味を示さない。

 ただ、ただ虚空を眺めその目に光は灯っていない。

 どうしてこうなったのか?
 どうしてもう会えないのか?
 どうして友達は私を殺したのか?
 どうして私がこんな目に合わなければいけないのか?

 疑問が疑問を呼び彼女の頭の中を駆け巡る。
 疑問ばかりが現れ、解が見つからない。

 そんな彼女に声をかける者がいた。

「こんちわー、マスター!」

 声をかけて着たのは小学生くらいの身長をした可愛らしい少女だった。
 だが、見た目は人間ではなかった。

 緑色と黄緑の肌。
 ほとんど裸同然の格好だが、大事な箇所は葉っぱや蔓で隠させている。
 髪はとても長く地面を引きずっている。

「⋯⋯あな、たは?」

 先程まで何にも興味を示さなかった少女は突然出てきた植物の様な少女の声に耳を傾けた。

「わたしー?わたしは植物人アルラウネの『ラウ』だよっ!」

 香の質問にラウは笑顔で返す。
 その笑顔はまるで一輪の花の様だった。

「ラウ、ちゃん⋯⋯ね⋯⋯」

 ラウの名前を聞いた香はその笑顔を眩しそうに見つめた。

「どーしたのマスター!なんか元気ないよ!?」
「ラウちゃん⋯⋯心配、してくれるの?」
「あーったりまえじゃん!マスターはわたしのマスターだよ!」

 香の小さく、聞き逃してしまいそうなつぶやきにもラウはキチンと反応した。

「ねぇ、ラウちゃんどうしてかな?」
「何が?」
「どうして、私は⋯⋯裏切られちゃったのかな?」
「裏切られた!?誰に!?」

 こうして香はここまでの経緯をラウに話した。

「うーん。わたし、あんまり頭良くないからわかんないけどさー、マスター裏切った奴をみんな殺しちゃえばいいんじゃない?」
「ころ⋯⋯す?」
「そうそう。だってマスターはみんなに殺された様なものなんでしょ?だったらマスターがみんなを殺してもいいんじゃない?」
「ころ、す⋯⋯。私が、皆を⋯⋯.殺、す⋯⋯?」

 香の頭の中で渦巻いていた疑問。

 どうして皆んなは私を見捨てたのか?
 どうして皆んなは私を犠牲にしたのか?
 どうして皆んなは私の話を聞かないのか?

 その解を得られたと香は思ってしまった。そして、結論が出てしまった。

「そう⋯⋯だね。殺そう。皆を殺そう!私を裏切った奴全員を!殺そう!!」

 どうしてこうなちゃのか?
 どうして友達は裏切ったのか?

 そんなことはどうでもいい。

 こうなってしまったのなら殺してもいい。
 裏切ったなら殺されても文句は言えない。
 殺されたのなら殺しても文句は言えない。

 こうして、香は1つの決意を固めた。
 彼奴らを、裏切った奴らをコロスと。

 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️

 ー地球ー

 レイジを含めた4人がダンジョンマスターに選ばれた翌日、世界各国のトップの元に一通の手紙が届けられた。

 届けられた方法は直接、各々の自室の机の上にだった。

 送られた時刻は同時。
 それは時差を加味した上での同時であった。

 手紙の内容は以下の通りだった。

 ーーーーー
 地球に住む諸君へ

 これより1年後、地球上に存在する大陸は元に戻ることが確定した。

 そして大陸の各地に10のダンジョンが現れる。

 そのダンジョンはそれぞれダンジョンマスターが支配する。

 そして、1年後世界はダンジョンとダンジョンと人間の戦争の幕を開ける。

 ダンジョンをどう扱うか、この1年をどう扱うかは諸君ら自由だ。

 健闘を祈ろう。
 ーーーーー

 この送り主不明、未知の内容、監視カメラや目撃情報のない未知の方法により送られてきた手紙に各国の対応は2つに分かれた。

 全く信じない、可能性として捉え検討を試みる、の2つだ。

 結果として、送った方法が解明不可能という結論に至り可能性として捉えることになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】王子は聖女と結婚するらしい。私が聖女であることは一生知らないままで

雪野原よる
恋愛
「聖女と結婚するんだ」──私の婚約者だった王子は、そう言って私を追い払った。でも、その「聖女」、私のことなのだけど。  ※王国は滅びます。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

王妃の手習い

桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。 真の婚約者は既に内定している。 近い将来、オフィーリアは候補から外される。 ❇妄想の産物につき史実と100%異なります。 ❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。 ❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...