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はじまりで、おわりの村
見在する世界より1
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コトコトと煮込む音に混じり、香辛料の匂いが鼻を刺激する。
「ふんふふんふ~ん」
台所に立つティアばあちゃんは鼻歌を歌いながら鍋を煮詰めていた。
「ばあちゃんできた?」
「もうちょっとよ」
テーブルの上に食器を準備しているキヨシが急かすように聞く。
どうやら、匂いに空腹が刺激されているようだ。
「にしてもキヨシは本当にカレーが好きよね」
「うん!僕、この村にカレーがあってよかったよ。他の村や町にはあんまりないんだよね」
「そうね。この村の郷土料理のようなモノだからね」
ティアばあちゃんがに詰めている鍋に入っているのは茶色のどろりとした液体——カレーだ。
「このカレーってのを考えた人は天才だよ!誰が考えたのかな?」
「この村を立ち上げた人が作ったのよ」
「へー、ばあちゃんは会ったことあるの?」
「⋯⋯そうねえ。会ったかもしれないけど、覚えてないわねぇ」
カレー談義の合間で見せるティアばあちゃんは郷愁に耽っていた。
何か思い入れがあるのかもしれない、とキヨシは思うが——、
「さぁ!出来上がったわよ!」
「おー!やっとかよ、ばあちゃん!」
空腹の前ではそんな疑問は些細なモノだったようだ。
ようやく食にありつけると思うとキヨシの興奮は最高潮だった。
「じゃあ、食べましょうか」
「うん!いっただきまーす!」
白米の上にカレーが乗せられキヨシの食べるスピードはひと口ごとに速くなっていた。
そして、気づいた頃にはキヨシの皿の上は綺麗になくなり、キヨシもお腹を撫で満足気な表情を浮かべている。
「あ、そうだばあちゃん」
「うん?どうしたんだいキヨシ」
「町で聞いた物語って正しいの?」
キヨシの素朴な疑問にティアばあちゃの匙の動きが止まった。
「⋯⋯どうしてそんなことを聞くんだい?」
「だって、ばあちゃんの物語でも『覇王』ってやつは出てくるけど全然違うじゃないか」
「そうねぇ。キヨシはどっちが好きかい?ティアばあちゃんの物語とあの詩人さんの物語で」
「そ、そりゃあばあちゃんの物語の方が好きだよ!だって⋯⋯なんか、ワクワクするんだもん」
「ほっほっほ、それは良かったよ。キヨシが取られたらティアばあちゃん悲しいからねぇ」
ティアばあちゃんは揶揄うように笑った。
「ねえ、ばあちゃん」
「うん?今度はどうしたんだい?」
「ばあちゃんの話⋯⋯聞かせてくれない?」
「⋯⋯仕方ないねぇ。終わったら風呂入って寝るんだよ?」
「うん!」
「そうさねぇ。あれは——」
そう言ってティアばあちゃんは一つの物語を語り始めた。
「ふんふふんふ~ん」
台所に立つティアばあちゃんは鼻歌を歌いながら鍋を煮詰めていた。
「ばあちゃんできた?」
「もうちょっとよ」
テーブルの上に食器を準備しているキヨシが急かすように聞く。
どうやら、匂いに空腹が刺激されているようだ。
「にしてもキヨシは本当にカレーが好きよね」
「うん!僕、この村にカレーがあってよかったよ。他の村や町にはあんまりないんだよね」
「そうね。この村の郷土料理のようなモノだからね」
ティアばあちゃんがに詰めている鍋に入っているのは茶色のどろりとした液体——カレーだ。
「このカレーってのを考えた人は天才だよ!誰が考えたのかな?」
「この村を立ち上げた人が作ったのよ」
「へー、ばあちゃんは会ったことあるの?」
「⋯⋯そうねえ。会ったかもしれないけど、覚えてないわねぇ」
カレー談義の合間で見せるティアばあちゃんは郷愁に耽っていた。
何か思い入れがあるのかもしれない、とキヨシは思うが——、
「さぁ!出来上がったわよ!」
「おー!やっとかよ、ばあちゃん!」
空腹の前ではそんな疑問は些細なモノだったようだ。
ようやく食にありつけると思うとキヨシの興奮は最高潮だった。
「じゃあ、食べましょうか」
「うん!いっただきまーす!」
白米の上にカレーが乗せられキヨシの食べるスピードはひと口ごとに速くなっていた。
そして、気づいた頃にはキヨシの皿の上は綺麗になくなり、キヨシもお腹を撫で満足気な表情を浮かべている。
「あ、そうだばあちゃん」
「うん?どうしたんだいキヨシ」
「町で聞いた物語って正しいの?」
キヨシの素朴な疑問にティアばあちゃの匙の動きが止まった。
「⋯⋯どうしてそんなことを聞くんだい?」
「だって、ばあちゃんの物語でも『覇王』ってやつは出てくるけど全然違うじゃないか」
「そうねぇ。キヨシはどっちが好きかい?ティアばあちゃんの物語とあの詩人さんの物語で」
「そ、そりゃあばあちゃんの物語の方が好きだよ!だって⋯⋯なんか、ワクワクするんだもん」
「ほっほっほ、それは良かったよ。キヨシが取られたらティアばあちゃん悲しいからねぇ」
ティアばあちゃんは揶揄うように笑った。
「ねえ、ばあちゃん」
「うん?今度はどうしたんだい?」
「ばあちゃんの話⋯⋯聞かせてくれない?」
「⋯⋯仕方ないねぇ。終わったら風呂入って寝るんだよ?」
「うん!」
「そうさねぇ。あれは——」
そう言ってティアばあちゃんは一つの物語を語り始めた。
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