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新たな出会いを求め

出会い系アプリ2

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出会いはアプリだった。まだ世界が騒がしくなる前に出会った男性。彼とは音楽の趣味がよく合い、一緒にライブに行く約束をしてチケットも既にとっていた。(来年に延期になったのだが。)

彼はアプリで見ていた写真以上にかっこ良く、話もよく合った。私の元彼と別れた経緯をネタとして話せるくらいだった。店じまいの時間になり、彼よりもう一軒行くか?帰るか?それともウチに来て飲み直すのもアリだ。と提案してきた。

中々にいい時間で、もう一軒行くと確実に終電を逃すと私は伝えた。選択肢は2つになった。彼は私に選択権を与えた。与えられたのは初めてで、戸惑い、悩んだ。

結局私は彼宅で飲み直す方を選んだ。それが彼宅にそのまま泊まる=身体関係に繋がる、という意味を含めて。

彼宅で飲み直し、別々にシャワーを浴びて寝巻きを借り、シングルベッドに2人で潜り込んだ。優しいキスをどちらともなく始めて。

彼はとても優しかったが、それ故に私には少し物足りないセックスだった。翌日、私は仕事が休みだが、彼は仕事で。初対面である私に部屋の鍵を置いていった。ゆっくり寝ていて良い、鍵はポストに入れておいてくれたら良いから、と言葉を残して出勤していった。

私は唖然とした。不思議にも思ったし良いのか?と思いつつ彼の言葉に甘えて、もう少し寝かせてもらい、私は家主のいない部屋でゆっくり支度を始めた。借りた鍵でドアを閉め、言われたようにポストに入れた。

正直、ライブに行くのは良し、チケット代は私が2人分払っており、そのお金を回収したら彼はとの関係は“いいかな”と思っていた。きっとセックスの印象があまり残らなかったのかも。

転職したが猛威の影響で自宅待機で暇だと言う、私が高校生の時にバイト先が一緒だったななちゃんと、よくテレビ電話をしながらお酒を飲むことがあった。

すると2人で会話するネタに尽きたので、「他の、バイト時代の人ともテレビ電話してみようよ。」となり、招待してみたが忙しいのか誰も入ってこなかった。

お酒に酔っていた私は唐突に、「暇そうでテレビ電話に入ってくれそうな人がいる。」と言い彼を招待してみた。すると彼は入ってきたのだ。しばらく3人で話していた。とても楽しかった。

勿論、ななちゃんには事前に「彼はアプリで知り合った人」である事を説明していた。それから「彼女が直ぐに欲しいっていう訳じゃなくて、出身が地方だから友達があまりいなくて、それでアプリを利用しているんだって。」とつけ加えて説明しておいた。

その時まだ私は彼に対して特別な感情を抱いていなかった。ただ、何となく思い浮かび、招待したら彼が入ってきてくれたのだ。

その後ある日、今度は彼より「この間突然招待してきた仕返しで、こっちで今リモート飲みしてるんだけど、入らない?」と招待された。入る側は相手方の友達を知らない訳で、それってとてもドキドキして勇気がいるものだな、と思いながらも私はその場に加わった。

結果とても楽しい時間だった。色々な話が新鮮で面白かった。その彼の友達をこむちゃんと呼ぶ。こむちゃんは地方に住んでおり、彼とは高校生の時の同級生だということが分かった。また、2人ともこの状況で在宅で仕事をしているということも分かった。
彼は私をここに招待した理由をこむちゃんに話すと、それじゃあ今度はななちゃんも含めて4人でリモート飲みをしようという話になった。

その頃、丁度あつまれどうぶつの森が流行っていて4人でよく通信しながらテレビ電話で会話しつつお酒を飲んだ。それは頻繁に行われ、3人でやる日もあれば4人でやる日もある、といった具合だった。

私の誕生日前日には、いつものように通信しながらテレビ電話をしていて。日付が変わった瞬間に3人が祝ってくれた。とても嬉しかった。ななちゃんが「お祝いに、こむちゃんは地方だから無理だけど、今度宅で3人で飲もうよ。」と提案してきた。6月の上旬にそれは決行された。

私が先に到着し、ななちゃんが駅に着くまで待っていた。その間に“何かあるだろうか?”と淡い期待もしたが、彼は残業しており何もなかった。ななちゃんを駅まで2人で迎えに行き、3人で乾杯した。

酔いも適度に回り、家主を筆頭に順番にシャワーを浴びた。”寝るときはどうするんだろう?“と思っていたがあろうことか3人でベッドにダイブしていた。私は真ん中にいてななちゃんを抱き枕のようにしていたら彼が私の背中に覆いかぶさる、なんて馬鹿げたことをしていた。

その時に、彼が私の指をなぞるようにして触ってきたのだ。(後に聞くと当人は全く覚えていなかったのだが。)私はとても変な気分になった。

私も酔いも回り、いつの間にか眠っていた。  何か嫌な夢を見たのか明け方にハッと目覚めた。汗をかいていた。そしてベッドに誰もいないことに気付いた。まだアルコールが抜けきっていない、重たい頭をぐるりと回して辺りを見回すと、床のラグの上でななちゃんと彼が向き合って抱き合うような形になっているのに気付いた。私は何故か彼を盗られたような感覚を覚えた。自分のものでもないくせに。

それを横目に見ながら私は起き上がり、トイレへと向かった。戻ると彼はベッドへ移動して横になっていた。そこで私は思った。“あぁ、起きてたんだ。”と。何だか更に胸がザワついた。

私は彼のいるベッドに潜り込めずに、かといって床に寝転ぶこともなく、ベッドに頭だけ預けてしばらくボーッとしていた。

ななちゃんの髪をふと撫でた。それに気付いたななちゃんとしばらく他愛のない話をした。そしてななちゃんは眠りについた。
ななちゃんのことは人として好きだ。何となく撫でたくなって撫でた。

そのまましばらくボーッとしていると、彼に話しかけられた。ここでも他愛のない会話をしていると彼より「こっちおいでよ。」と言われベッドに横になった。私はそう言われるまでそのままでいたのだろう、言われるのを待っていたのだろう。

横になった私は彼のお腹辺りを見ながら考えた。この胸のザワつきは何だろう、何故ザワつくのだろう、とぐるぐる考えながら眠りについたが、眠ったような気がしなかった。

起きるともう昼になっていた。彼は既に在宅で仕事を始めていた。私は真っ先に身支度を始めていた。今日は午後の4時にリハビリの予約をいれていた。余裕で間に合う時間だったが、早く身支度を終えたかった。ななちゃんは「もう帰るの?」とギリギリまでゴロゴロしていたい様だった。そこで私は気付いた、私はこのザワつきから早く抜け出したいのだと。

帰った後も1人でモヤモヤする時間が続いた。何故私はあの時ザワついたのか?ななちゃんが彼のことを好きにならないか?それを恐れているのか?

意を決して私はななちゃんに全てのことを話した。ザワついた事からモヤモヤしていることまで。ななちゃんは特に彼に対してそういった感情はなく、今まで画面越しで顔を合わせていた人が現実にいた、という感覚であった様だ。それを聞いて私は安心したのだ。

そう、安心したのだ。この時点で私は彼のことが“気になる男性”ではなく、“好き”に限りなく近づいていて、付き合えることを望んでいた。だが、当時の私はそれに気付かない振りをしていた。ななちゃんには「ちゃんと私が彼のことを好きになったら言うね。」といった。

その後も何事もなかったかの様に4人でのリモート飲みは開催された。一夜を共にした3人で開催されることが多かった。彼がトイレで席を外している時に、私がななちゃんに向かって「この間は急にゴメンね。」と改めて謝った。戻ってきた彼がその事を疑問に思っていたが、はぐらかした。


6月下旬のある日、ひょんな事から私と彼は下北沢のヴィレバンで待ち合わせし、いわゆるデートをした。アプリで出会った人と昼から会うのは初めてで、デートしたいと思ったのも初めてだった。

下北沢の街をブラブラと歩き回り、夕食はカレーを食べた。その後お酒を持ち込んでカラオケに行った。とても楽しい時間が過ぎていった。

カラオケ店を出ると22時前、また微妙な時間。「もうお酒は要らないけど、まだ帰りたくない。」と私は珍しく甘えたようなことを言った。
彼より「ウチに来る?」と言われたが、私はそんなつもりでいなかったので、コンタクトや眠る前に飲む薬すら持ってきていなかった。

私はこう提案した。「じゃあ、逆にウチに来る?ウチにWi-Fi通ってるから、繋げられるよ。」と。彼は驚いた表情をしていたが、なるほど。と頷いた。そして「一度機材と取りに家に帰らなければならない、連れ回すことになるけど良い?」と彼は聞いてきた。私は快諾した。

そして、私たちは下北沢から彼宅へ行き、私の家に行くという大移動をした。その時は他にもいいなと思っている人からの連絡が途絶えていて、気になる状態であったので、その話も道中彼に話していた。彼は「連絡がくるといいね。」としか言わず、私は少し突き放されたような違和感を感じた。

私の自宅に招き入れ、先にシャワーを浴びると、とっくのとうにアルコールが抜けていたので、道中のコンビニで買ったチューハイを片手に2人で2回目の乾杯をした。

酔った彼は私の肩に甘えるようにもたれかかってきた。そして流れでセックスをした。その後にピロートークがとにかく楽しくて明け方まで喋っていた。

そして、その場でななちゃんと3人でリモート飲みした際に彼が疑問に思っていたこと(私とななちゃんが何を話していたのか、何故謝っていたのか)を聞かれた。

これでその事を聞かれるのは3回目だった。ずっとはぐらかしてきたのは私だ。“何回も聞く意図は何か”それが知りたくて、私は意を決して全ての出来事を話した。胸がザワついた事から、指をなぞられて変な気分になったこと、彼の事が好きなのかもしれない、というところまで。全て。

彼は納得したようだがそれについては何も喋らなかった。「何で聞いたの?」と私は聞いたが、今度は私がはぐらかされた。

翌日、私は仕事に向かった。仕事終わり急いで帰ってくると「おかえり」と彼に言われ、くすぐったい気持ちになった。彼はまだ仕事をしており、私はその様子を見たりベッドに横になって少し眠った。

仕事を終えた彼はまだ18時なのにも関わらず、「もう一泊しても良い?」と私に尋ねてきた。まだ帰れる時間なのに何故だろう、と薄ら思いつつも快諾した。

夜ご飯は近くのチェーン店に食べにいった。雨が降っていたので1本の傘に2人で入って行った。

そして、深夜。彼はまた優しいキスから始め  セックスをした。私は幸福に浸っていた。また昨日と同じようにピロートークをしていた。

ーーその時、彼も意を決したのだろうか。私にこう伝えてきた。

彼女を今すぐ欲しいとは思っていない理由は、実は地方で仕事をしていた時から付き合っている彼女がいたから。今までアプリを通じて会ってきた人に、大体は先にその事を伝えていた。今回私に言っていなかったことも“言わなきゃ”と思っていたが、リモート飲みの場が楽しくて、壊したくなくて中々言い出せなくて今日になってしまった。彼女以外の女性に対して身体の関係を絶対に求めている訳ではなくて、食事だけ共にして身体関係がなく解散することも多かった、と。

私はまず頭が真っ白になった。プチパニック状態になった。覚えていないが彼のことをかなり罵倒した、夜中だったことで時間的に家から追い出す訳にもいかない。

私の好意に確実に気付いてからその“理由”を言ってきたこと・言うのが遅過ぎたことはずるい、と怒った。彼は「ごめん。」としか言わなかった。私は何とも言えないやるせなさを抱えたまま、寝付けないまま朝を迎えた。次の日は宿直の日だと言うのに。

翌朝、彼は帰っていった。私は眠れなかった事と受けた衝撃から、結局仕事に行けず、夜間子どもが寝静まってから宿直に入った。昼過ぎに彼よりLINEがはいっていた。「こんな人だけどまた会ってくれる?」と。

私にはそれがまるで彼が縋っているように見えた。寂しがっているようにも見えた。私は混乱した。どういう意図で言っているのか?彼女がいる事を告白して、その後も会うのはどういう意図があるのか?どういうつもりで言っているのか?分からなかった。

分からないから、私は尋ねた。「“私でいい”なのか“私がいい”なのか、どっちなんだ。」合わせて自分の気持ちも伝えた。「彼女を作らないスタンスの裏側に“彼女がいる”のは予想外で頭が真っ白になった。嫉妬もしたぐらいだから間違いなく彼に対して好意を持っていた。彼がそれに勘付いてから告白してくるのはズルい。告白してもないのに振られた気分だ。」と。

彼より謝罪の言葉があり、意図としては「友達としてまた会いたい。」とあった。私は再度問いかけた。私でいいのか、私がいいのかを。彼は後者であると言い、「話とか趣味とか全部ひっくるめてえりちゃんといることが楽しいから。」と理由を述べた。そしてこうつけ加えてきた。「今まで何人かと遊んだけど、純粋にまた会いたいって思ったのは初めてで、自分でも困惑している。」と。

私はその文面を見てますます混乱した。なんだそれは?とても理解できないし、彼が何をしたいのか分からなかった。ただ彼は周りに頼れる人がおらず心の拠り所を探しているように見えた。私は彼のことを理解したい、と好きだからこそ思った。

混乱した私はこむちゃんに全てを話し、悩みを打ち明けた。こむちゃんは彼が“割り切った関係”を相手方に伝えて承知の上で、アプリを使って出会い身体関係をもっている、ということを知っていた。ただ、今回に限っては私は彼女がいることを知らされてなかった。

こむちゃんはかなり頭が切れる人だった。リモート飲みする中で私と彼の関係性の違和感には気付いていたという。「こんな結末になるなんて…。」と誰に対してか分からないが悔いているようだった。

私は彼のいう“友達として会う”事を受け入れた。この時、私は彼のいうこの関係は身体関係が含まれていたことに、まだ気付けていなかったが。それでも、そうなったとしても、好意を抱いている私は拒む理由がなかった。私は、彼の彼女に対して罪悪感は全くなかったと言えば嘘になるが、ほぼ無かった。

今回の件に関しては彼が全面的に悪いのだから。と、私は開き直ってたのかもしれない。ただ自分を律せなかった。弱かったのだ、私は。

こむちゃんから「えりちゃんが前の彼にやられていたこと(Tinder)の、前の彼が会っていた女の子側に、今度はえりちゃんがなることになるんだよ。それだけは忘れないでね。」と言われた。少し心がチクりとした。

私は“友達として”彼と会った。公園に行ってバドミントンをしたいという私の提案を彼は受け入れ、まるでカップルのようなことをした。

私は彼に対して好意がどんどん膨らんでいっているのに気付かない振りをして、また自宅に招き入れては一緒に朝を迎えた。そんな事がしばしばあった。
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