二人の太極図

水妖イヨタ

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二章

そして再び、その先へ

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僕はベッドに横になり、誰かに手を握られていた。
今の僕は手を握られるだけでも嬉しい。
こんな極悪犯罪者扱いされている人間でも居場所があると思えた。

「ん?ぇ?...すい、げつ?」

「おはよう。ごめんな、心配かけて」

「水月...水月ー!」

「うっ!」

いきなり抱きしめられた。
だが、何も言わずにそっと優しく抱きしめた。

「バカ!バカ!心配かけて!どれだけ心配したと思ってんの!」

「心配かけてごめんな。僕が弱かったばっかりに」

百里は泣きながら僕を叱ってくれた。
顔は見えないがどれだけ僕を心配してくれていたかは声だけで伝わってくる。
その時間は凄く、いや、とても凄く長い時間に思えた。

百里が泣き終わるのを待ち、僕は質問をした。

「今、世間はどうなってる?」

「警察とSPHが少しずつ動き出してるよ。全てThe new rulerが引き起こしたってでっち上げて、捜査って形で動き回ってるよ」

「そうか、わかった。ありがとな」

「あの、妹さんの事は聞かないの?」

「恋月の安否は僕が一番知ってる。だからこそ僕が助けないといけないんだ」

「え?ちょっと待ってよ!また戦いを挑む気?!」

「あぁ、そうだ。それにいつまでもここにいるわけにはいかない。僕の目を覚めたと知ったら警察が僕を逮捕しに来るからな」

「じゃ、じゃあ、私の家に泊まればいいよ!少しは作戦を立てないと、この前のことを生かして相手も計画を立てているよ!絶対!」

「でも、僕は...」

その言葉を発しようとした時、百里は下を向いて言った。

「また、無茶する気?」

「いや、そんなことは...」

「また、一人で戦って二週間、ううん、もう意識が戻らなくなるかもしれない。それでも、行くの?」

「...」

うつ向いていて顔が見えないが、心配している事だけは分かる。
そんな顔をされたら、僕はその先を言うことは出来ない。

「分かった、少し考えるよ」

「...」

僕は一週間の間病院にいるとこにした。
その間、貝塚と百里と一緒に作戦を立てた。
作戦決行は九月二十二日、午前零位、SPH本部に殴り込みに行く。
警察の本部とSPHは今、合併しているらしい。
今回、僕の狙いはトップの愛野字だ。
他は今まで通り治安維持のために倒さずにする。

「じゃあ、行ってくるよ」

「うん、行ってらっしゃい」

「おう、行ってこい!」

貝塚と百里に見送られ、作戦決行の時間まで近くで待機している。

「僕の能力、誰が持ってると思う?」

僕は余った時間で能力の行方を水月君と話していた。

「分からないけど、厳重に保管されているか、誰かが持ってるか、どっちかだな」

「持っているとしたらやっぱり愛野字かイヤ、どちらかだな」

「あぁ、」

話しているうちに一分前になった。
作戦としては、建物の頂上に位置する最高指令室から入り愛野字を探す。
そうこうしているうちに、

「三...二...一...零」

作戦開始とともに僕は空を飛ぶ。
そのまま最高指令室の窓を突き破り、中に入る。

「うぁぁあぁぁ!」

「叫ぶな、お前には用は無い」

そう言い捨て僕はその部屋を足早に出た。
気絶はさせない、これ以上罪を増やしたくないのだ。
僕は長い通路を走っていた。
何処にいるかは分からないが、出来るだけ建物は残しておかなければ警察は機能しなくなる。
壊すことが出来るのは精々窓、ドアくらいだ。

「おい、こっちだ!」

そんな声が通路に響き渡った。
どうやら気づかれてしまったらしい。
誰を脅して情報をを聞き出してもいいが、僕の目的がバレてしまう。
そう考えているうちに目の前に五人の警官が現れる。

「おい!いたぞ!」

僕は能力を発動し、自分の影を後方に飛ばす。
そして、その五人を影で覆い移動させる。
僕は戦う気は全くない。
今回、僕の目的はあくまで自分の能力の奪取。

僕は全く同じ方法で向かってくる人間をあしらっていく。
どこだ!どこにいるんだ?!
探しても探しても見つからない。
最上階から探し始めて今、最下階の通路を走っている。
もう探すところが無い。

「はぁ、はぁ、はぁ、どこ、だよ」

何処を探してもいなかった。

「いたぞ!こっちだー!」

「もう、戦うのを避けるのはやめだ」

僕は能力を使って一人を残して次々に気絶させていく。
そして、その一人の警察官に問う。

「SPHの連中はどこにいるんだ?」

「え?何を言ってるんだ?SPHはここにはいないぞ?」

「は?」

どういうことだ?

「嘘つくんじゃねぇ!警察とSPHは合併したんじゃねぇのかよ!」

「合併はしたさ。でも本部は別々だよ」

僕は言葉が出なかった。
どういうことだ?貝塚と百里は警察の本部にSPH本部があると言っていた。
ということは二人がだましたのか?

「お、おい、お前、SPHの本部の場所を知ってるか?」

「知っているが口外禁止だからな」

「言え、」

「無理だな」

「言えっつってんだろ!ここで僕があの組織を、あの組織を!」

「おい、落ち着け!」

そいつは僕の肩を掴み気持ちを落ち着かせようとしてくる。
だが、

「じゃあ、教えろ!!妹を救わなきゃいけねぇんだよ!!」

「妹がどうかしたのか?」

「SPHの実験で昏睡状態だ!だから僕はあの組織を!」

「分かった、教える」

「え?!」

「だが、一つ条件がある。俺もそこに連れていけ」

「あ、あぁ、了解した。だが、足手まといになるなよ」

その男は新野 ヒサナ(にいの ヒサナ)と名乗った。
僕は新野さんと一緒にSPHの本部に向かう。
場所はアンダーグラウンドの立ち入り禁止階層、第四十五階より先にあるらしい。
僕たちはその場所に着いたのち、約束をする。

「さっきも言ったが足手まといにはなるなよ?」

「あぁ、大丈夫だ。これでも一応鍛えてはいるからな」

「鍛えた程度で能力者には勝てねぇよ」

「あと、暴力は必要最低限だ。それ以上は使うな」

「分かったよ、だけど、どうかな。そんな甘いことは言ってられねぇかもしれないぞ」

その言葉を最後に僕は再びその階段を降りていく。
今回は頼もしい味方を連れて。
前回と違うのは今回は趣旨は能力の奪取。
そう思いながら僕たちは後戻りが出来ないデスマッチを開始する。
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