【本編完結】義弟を愛でていたらみんなの様子がおかしい

ちゃちゃ

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番外編・その後

しっかり者の弟に色々委ねてたら身も委ねることになった皇太子殿下①

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 弟が産まれたと耳に入ったのは、まだ私が5歳の頃で、当時唯一の皇位後継者として勉強していた。
 
 初めての兄弟。かつてない存在に想像を膨らませるばかりで、早く会いたいなぁと思って毎日を過ごしていた。
 
 陛下である父や王妃である母には殆ど会えず、普段共にいるのは乳母うば側仕そばづかえ、護衛、そして教師だけだった。それが日常で、当たり前のことで、毎日与えられる日々を送っていた。
 
 
 
 弟が産まれたと侍女たちの会話で知ってからしばらくが経ち、会うのが『待ち遠しい』から『我慢出来ない』に変わってきた。赤ちゃんに会いたいな。
 
「ねぇサリア。」
「何ですかクラウス殿下。」
「僕に弟が出来たと聞いたから会いたいのだけど、まだ無理なのかな?」
「!! それは……私の一存では決め兼ねます。陛下がいらした時に相談すると良いかと。」
「そうか、分かった。」
 
 
 乳母であるサリアは王妃である母上の親族であった為、母上の意向をとても理解していた。僕が弟に会いたいと言ったことを父上にはもちろん、母上にも報告しなかった。そして父上とお会い出来たのは、それから何ヶ月も経った僕の誕生日の日だった。
 
 
 
「大きくなったなクラウスよ。励んでおるか?」
「はい陛下。先生方にご教授頂き、勉学にいそしんでおります。」
「そなたには、別で祝いの品は届けておるが、他に欲しいものや、して欲しいことはあるか?」
 
 父上は多忙な為、あまりお会い出来ない。当時皇太子に最も近かった父上も私も、両親とあまり会えない中、幼少期から国の為に勉強することは当然の義務であったので、情が薄いという風には思っていなかった。だが普段会えない父上からのその言葉に僕は心が沸き立った。
 欲しいもの、したいこと、一つだけある!
 
 
「陛下、一つお願いがございます。」
「申してみよ。」
「弟が産まれたと聞きました。弟に会ってみたいのです。」
 
 
 瞬間、室内の空気が変わったことに幼い私でも気付いた。理由は分からなかった。
 私は知らなかったのだ。弟が母上ではなく側室の子であり、母上とは犬猿の仲であることも、たった5歳違いの為、優秀なほうを皇太子とするであろうと噂されていたことも。
 
「クラウス、弟に会いたいか?」
「はい。叶うなら会いたいです。」
「良いだろう、今から会いに行くか?」
「はい!」
 
「陛下!!」
 
 母上が声を上げる。
 
「王妃よ、クラウスの願いだ。今日は構わないだろう?」
「……はい……。陛下の意に従います。」
 
 
 母上は頭を下げていた為、僕はその表情を見ることはなく、やっと弟に会えることに喜んでいた。
 
 
 
 父上に連れて来られたのは私がいる宮殿から少し離れた宮殿の一室だった。侍従がノックをし、陛下と私が来たことを告げ、扉を開ける。中には赤ちゃん用の小さなベッドとその傍には乳母、そして幾人かの侍女が頭を下げて立っていた。
 
「みな楽にせよ。本日はクラウスが誕生の祝いの贈り物としてニコラスとの面会を希望した。しばらく下がって構わん。」
 
 
 ニコラス……ニコラス……。
 ここに来て、弟の名前を知らなかったことに驚いた。ニコラス、ニコラス……! 心の中で唱えるだけで、今まで感じたことの無かった気持ちになる。
 
 
 恐る恐るベビーベッドへと近づく。そこには、私と同じ真っ赤な髪が生えた、可愛らしい赤ちゃんがいた。起きていたようで、目もパチクリと開いている。ベッドの中にあるおもちゃを握って遊んでいたようだ。
 可愛い……ふくふくしてる……ほっぺがもちもちだ……手もふわふわだ……小さい……。
 
「陛下、ニコラスは今産まれてからどのくらい経ったのですか?」
「半年を過ぎた頃だよ。首は座ったけど、クラウスもまだ体が小さいから抱っこするのは止めておこう。ミルクを上げてみるかい?」
「はい!」
 
 
 
 そうして、私はニコラスにミルクを上げ、ベッドに座ったまま抱いてゲップをさせ、眠ったのを見届けて部屋から離れた。父上に感謝をお伝えし、自分の宮殿へと戻った。
 
 
 
 部屋に入って聞かされたのは、もうニコラスと会ってはならないということだった。側室と王妃の関係。皇位を継承するまでは争いの種となる為、また、クラウス・ニコラス共に危険なことになる可能性がある為、会うことを禁じられた。
 クラウス自身に争う気がなくとも、側室やその周りが気にするだろう、と。
 
 
 
 
 あんなに楽しかった時間と幸せだった気持ちが一瞬にして暗く染まったような気がした。
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