前世の記憶がよみがえっても、それでもずっとあなたが好き

ちゃちゃ

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3 アリスの告白

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 ビックリした僕はアリスに近付いて顔を見ると、眠れていないのか綺麗な目の下に薄らと隈が出来ている。体調が悪いのかと思いソファーに座らせ、僕も隣に座るとメイドが用意してくれているお茶を飲ませた。
 
「アリス、急にどうしたの?」
「シェリー……アリスって呼んでくれるんだな……」
「え……まぁ二人きりの時は……。外だともう愛称で呼ぶのは良くないかなって……」
「なんで……どこでも私のことはアリスって呼んで欲しい」
 
 アリスに恋人が出来た時に幼なじみの僕が愛称で呼んでいたら気分を害さないだろうか……。それでもアリスと呼べるのは嬉しい。
 
「じゃあ……ダメって言われるまではアリスって呼ぶね」
「ダメって言うわけないよ。シェリーにはずっとアリスって呼んで欲しい」
「うん……」
 
 アリスが良くても相手が嫌がったら止めよう。
 
「今日はどうしたの? 顔色が悪いけど、体調が良くないんじゃ……。帰って休んだ方が良いと思うけど……」
「いや、もう耐えられない。今日話さなきゃ取り返しのつかないことになるって思って……」
 
 アリスは僕の手を握り、聞いてきた。
 
「その……今日一緒に、で、で、出掛けた侯爵家の男とはどうなったんだ?」
「ん? ナリュームのことならさっき家の前で別れたよ」
「そうじゃなく……付き合うのか……?」
「……ナリュームの気持ちは嬉しかったけど、誰とも付き合うつもりはないって断ったよ」
「……誰とも……?」
「うん。好きな人もいないし、最近はそうでもないけど人付き合いは苦手だから、お付き合いとかは難しいかな……」
 
 アリスは何故かショックを受けた顔をした。なんでだ。僕がナリュームと付き合った方が嬉しかったのか? 僕の気持ちを知って、その気持ちが他所よそへいくように行動していたんだろうか……。一瞬湧いた疑念に確なことでもないのに辛くなり目を伏せる。
 
 そんな僕の両肩をアリスが強く掴んだ。
 
「シェリーは……私のことが好きなんじゃないの……?」
 
 僕は目を見開いてアリスを見た。何故アリスが辛そうな顔をするんだ。辛いのは僕だ。やはりアリスは僕の気持ちを知っていたんだ。知っていて、わざと距離を置いたんだ。幼なじみ以上の関係になるつもりはなかったから……。
 ならば、アリスを安心させないと。これ以上好きにならないようにすると。だから安心してアリスの好きな人と結ばれて欲しいと。
 
「好き……好きだよ。好きだった。アリスのことが、誰よりも好きだった。でも今は……アリスが誰かを好きになって僕の傍を離れる可能性があることに気付いてからは……この気持ちがしぼむのを待ってるんだ。でも、こうして一緒にいたり話したりすると、また好きになってしまいそうだから……。これからはこうやって家に来るのも遠慮して欲しい。学校でも無理に話しかけなくても……」
「いやだ!!!」
 
 僕が言いたいことを全て言い終わる前にアリスの声で中断される。僕の肩に置かれた手は震えていて、唇も乱れた呼吸音が漏れている。どうして……アリスの願いだと思って安心させようと言ったのに、怒っているように見える。
 
「アリス、どうしたの? 怒ってる……?」
「……怒ってない……。いや……いや、怒っている。愚かで傲慢な自分自身に」
 
 アリスは呼吸を整え、真っ直ぐに僕を見た。
 
「シェリーが離れるなんて嫌だ。離れている間に、目を逸らした瞬間に、手を繋がないうちに、口を開くのを躊躇って言葉が出ないその度に、私への想いが無くなってしまうのか……?」
 
 アリスが何かを堪えるようにゆっくりと声を出した。僕はアリスの言葉を理解しようとするが、追いつかない。そんな僕を置いてアリスは言葉を紡いでいく。
 
「お願いだ。無くさないで欲しい。枯らさないで欲しい。以前のように私をあのキラキラした愛に溢れた眼差しで見て欲しい。他の人に笑顔を向けないで欲しい。私じゃない誰かと手を取り合って、パートナーになんてならないで。私以外の誰かを想う気持ちがあるなんて耐えられない」
 
 
 そしてアリスの綺麗な緑色の瞳から涙が零れた。
 
 
「シェリー、君のことが本当に好きなんだ。私はシェリーのことを愛しているんだ。お願いだから、私が他の人と幸せになってなんて言わないで欲しい。私が、私が全部悪かったから、お願いだから傍にいて欲しい」
 
 そう言って涙をポロポロと流しながら僕を抱き締めた。アリスが涙を流す姿は初めてで、ただ愛おしく、アリスの言葉を全て理解する前に彼の体をギュッと抱き締めた。泣き止むように。アリスが笑顔になれるように。抱き締め、頭を撫で、肩口に自分の額を押し当てた。
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