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53 迫り来る不安
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帰宅してレオに出迎えられ、すぐに抱き着いた。レオもジェイムズも心配していたが、俺は「何でもない」と言ってレオの胸に顔を埋めた。お父様は多忙で今日も帰れないことをジェイムズに聞くと、レオと共に自室へと向かった。レオにだけは先に話さないと……と思うけど、口に出したら恐怖や不安が現実になりそうで嫌だった。部屋に入ってからもソファーに座ったままレオにくっ付いていると、レオが心配そうな顔で頭や頬に触れてきた。
「どうした? ティア。学校で嫌なことあったのか?」
「……ううん……」
「辛いこと思い出した?」
「ううん……なんか……怖くて……」
「うん」
「不安で……心細くて……。レオがいたら大丈夫だと思えるから……」
「それでずっとくっ付いているのか。恋人としては頼られて嬉しいけど、暗い表情のティアを見るのは辛いな。オレに話せる?」
俺は迷いつつも、黙っていたらレオが心配するだけだし、万が一の時の対応も一緒に考えないといけない。俺は今日フリードから聞いた話と、『盗賊のリーダーは俺を殺すつもりがなかった、または生け捕りにしようとしていたのではないか』という俺が懸念していることを伝えた。
レオは深刻な顔で俺の話を聞いていた。
「まさかあの盗賊がガルダニア帝国と繋がっていたとは……俺も対峙していたのに目が合わなかったからうっかりしていた……。そうか……なら既にティアを狙っている可能性がある」
「レオ……どうしよう……」
「とりあえず外出は極力控えた方が良いな……送り迎えもオレが付き添う」
「レオ、大丈夫?」
「その為に護衛として伯爵様に雇って頂いたんだ。必ず守るよ」
「マルタ食堂はどうしよう……」
「しばらくお休みしようか……レナセール国含め周辺国の状況を確認したい。冒険者が多いマルタ食堂ならガルロさんも何か知っているかもしれない」
「俺……しばらく行けないならガルロさんに挨拶したい」
「……そうだな。明日は元々デートの予定だったし、ゆっくりは出来ないが、ガルロさんに挨拶した帰りに買い物しようか」
「買い物……」
「そう、お揃いのピアスとか」
「お揃い……!」
「心配なこともあるけど、明日ティアは楽しむことだけ考えてて。オレがずっと離れずにいるから」
「うん……ありがとう……」
俺は冷えきった体に、やっと体温が戻ってきたように感じた。レオは安心させるようにちゅっちゅと触れるキスをして、そのまま息も絶え絶えになるほど濃厚なものに変わった。もはや日課となっているレオの魔力の摂取だが、馴染んでるのかどうかは分からないが、すぐにふわふわと気持ち良く酩酊した状態になることはなくなった。と同時に意識がある状態でのキスは恥ずかしくて気持ちよくて腰が砕けそうになる。レオはその事に気付いているのか、嬉しそうに「ティア可愛い。ティア気持ち良い? もうこんなに反応しているね。キス好きなんだね。他の所もキスしようか」と明らかに俺の意識がある前提で言葉でも責められながら、いつの間にかベッドへと移動していたのだった。
「レオ、ずっとこのままで行くの?」
「もちろん、何かあればすぐに対処するには手を繋いでおかないと」
「みんな見てない?」
「抱き上げても良いんだぞ」
「このままが良いです」
俺とレオは家を出てからずっと手を繋いでいた。俺の右手とレオの左手はガッチリと、いわゆる恋人繋ぎで歩いている。アキスト王国は同性結婚も可能なので珍しくはないが、そもそもこんなに堂々とイチャつくカップル自体少ないし、高身長で男前なレオと、身長がそこそこある俺が手を繋いで歩いている姿には誰でも思わず二度見することだろう。まぁでもレオが楽しそうだし良いか……。と自身の照れ臭さよりもレオとの幸せな時間を優先させた。
「ガルロさん! おはようございます」
「あれ!? 今日は来れないとか話して……なかったか……」
俺とレオが食堂に入り、開店の準備をしていたガルロさんが振り向いた瞬間固まった。ガルロさんは、じと……とレオを見ている。
「おい、レオン。エレンの護衛だとしてもそんなガッツリ手を繋いでここに来る必要あるか?」
「護衛としてだけではなく、恋人として、婚約者として手を繋ぎたいからそうしているだけです」
「いや……お前……ん!? 今なんて言った!? 婚約者!?」
レオがにこやかに微笑みながら俺の左手とレオの左手をガルロさんに見せた。恐らくは薬指にある指輪を。
「だから! お前は展開が早すぎるんだよ!」
「どこにでもエレンを狙う狼共がウロウロしてるからな。オレのエレンだと釘を刺しておかないと」
「狼はお前だバカ。エレン、オレが口酸っぱく言って聞き飽きたかもしれないが、レオンと結婚して良いのか? お前はまだ学生だし若いだろ?」
「はい、もちろんです。レオンのことが大好きですし、一生一緒にいたいと思っているので、婚約出来て嬉しいです」
「とても可愛い、結婚したい。あ、するんだった」
「レオンてめぇ黙ってろ。エレンが良いならそれで構わないが……これ先週も言ったな……」
「そうそう、ガルロさん。明日からエレンもオレもしばらくここに来ることが出来なくなりそうだ」
「なんだ? ……デート……って訳じゃなさそうだな」
ガルロさんが俺たちに座るように勧め、同じテーブルに座った。
「ガルロさんを信じて少し話す。エレンの詳しい事情は話せないが、逆にガルロさんが知っていることがあれば教えて欲しい」
雰囲気が変わり固くなったレオの声色に、ガルロさんは引き締まった表情で頷いた。
「どうした? ティア。学校で嫌なことあったのか?」
「……ううん……」
「辛いこと思い出した?」
「ううん……なんか……怖くて……」
「うん」
「不安で……心細くて……。レオがいたら大丈夫だと思えるから……」
「それでずっとくっ付いているのか。恋人としては頼られて嬉しいけど、暗い表情のティアを見るのは辛いな。オレに話せる?」
俺は迷いつつも、黙っていたらレオが心配するだけだし、万が一の時の対応も一緒に考えないといけない。俺は今日フリードから聞いた話と、『盗賊のリーダーは俺を殺すつもりがなかった、または生け捕りにしようとしていたのではないか』という俺が懸念していることを伝えた。
レオは深刻な顔で俺の話を聞いていた。
「まさかあの盗賊がガルダニア帝国と繋がっていたとは……俺も対峙していたのに目が合わなかったからうっかりしていた……。そうか……なら既にティアを狙っている可能性がある」
「レオ……どうしよう……」
「とりあえず外出は極力控えた方が良いな……送り迎えもオレが付き添う」
「レオ、大丈夫?」
「その為に護衛として伯爵様に雇って頂いたんだ。必ず守るよ」
「マルタ食堂はどうしよう……」
「しばらくお休みしようか……レナセール国含め周辺国の状況を確認したい。冒険者が多いマルタ食堂ならガルロさんも何か知っているかもしれない」
「俺……しばらく行けないならガルロさんに挨拶したい」
「……そうだな。明日は元々デートの予定だったし、ゆっくりは出来ないが、ガルロさんに挨拶した帰りに買い物しようか」
「買い物……」
「そう、お揃いのピアスとか」
「お揃い……!」
「心配なこともあるけど、明日ティアは楽しむことだけ考えてて。オレがずっと離れずにいるから」
「うん……ありがとう……」
俺は冷えきった体に、やっと体温が戻ってきたように感じた。レオは安心させるようにちゅっちゅと触れるキスをして、そのまま息も絶え絶えになるほど濃厚なものに変わった。もはや日課となっているレオの魔力の摂取だが、馴染んでるのかどうかは分からないが、すぐにふわふわと気持ち良く酩酊した状態になることはなくなった。と同時に意識がある状態でのキスは恥ずかしくて気持ちよくて腰が砕けそうになる。レオはその事に気付いているのか、嬉しそうに「ティア可愛い。ティア気持ち良い? もうこんなに反応しているね。キス好きなんだね。他の所もキスしようか」と明らかに俺の意識がある前提で言葉でも責められながら、いつの間にかベッドへと移動していたのだった。
「レオ、ずっとこのままで行くの?」
「もちろん、何かあればすぐに対処するには手を繋いでおかないと」
「みんな見てない?」
「抱き上げても良いんだぞ」
「このままが良いです」
俺とレオは家を出てからずっと手を繋いでいた。俺の右手とレオの左手はガッチリと、いわゆる恋人繋ぎで歩いている。アキスト王国は同性結婚も可能なので珍しくはないが、そもそもこんなに堂々とイチャつくカップル自体少ないし、高身長で男前なレオと、身長がそこそこある俺が手を繋いで歩いている姿には誰でも思わず二度見することだろう。まぁでもレオが楽しそうだし良いか……。と自身の照れ臭さよりもレオとの幸せな時間を優先させた。
「ガルロさん! おはようございます」
「あれ!? 今日は来れないとか話して……なかったか……」
俺とレオが食堂に入り、開店の準備をしていたガルロさんが振り向いた瞬間固まった。ガルロさんは、じと……とレオを見ている。
「おい、レオン。エレンの護衛だとしてもそんなガッツリ手を繋いでここに来る必要あるか?」
「護衛としてだけではなく、恋人として、婚約者として手を繋ぎたいからそうしているだけです」
「いや……お前……ん!? 今なんて言った!? 婚約者!?」
レオがにこやかに微笑みながら俺の左手とレオの左手をガルロさんに見せた。恐らくは薬指にある指輪を。
「だから! お前は展開が早すぎるんだよ!」
「どこにでもエレンを狙う狼共がウロウロしてるからな。オレのエレンだと釘を刺しておかないと」
「狼はお前だバカ。エレン、オレが口酸っぱく言って聞き飽きたかもしれないが、レオンと結婚して良いのか? お前はまだ学生だし若いだろ?」
「はい、もちろんです。レオンのことが大好きですし、一生一緒にいたいと思っているので、婚約出来て嬉しいです」
「とても可愛い、結婚したい。あ、するんだった」
「レオンてめぇ黙ってろ。エレンが良いならそれで構わないが……これ先週も言ったな……」
「そうそう、ガルロさん。明日からエレンもオレもしばらくここに来ることが出来なくなりそうだ」
「なんだ? ……デート……って訳じゃなさそうだな」
ガルロさんが俺たちに座るように勧め、同じテーブルに座った。
「ガルロさんを信じて少し話す。エレンの詳しい事情は話せないが、逆にガルロさんが知っていることがあれば教えて欲しい」
雰囲気が変わり固くなったレオの声色に、ガルロさんは引き締まった表情で頷いた。
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