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44 スピード力と決断力がある人達
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「君とティアは……既にお付き合いしている、と?」
「はい。私はエルティアさんを愛しています。一生大事にします。危険な目に合わせないように全力を尽くすとお約束します」
まさか今日この日に婚約? 結婚の申し込みがあるとは思わず目を見開いて隣のレオを見つめる。結婚? 俺とレオが?
「権力を笠に着てティアを我がものとせず、ナルカデア王国へ無情に連れていくこともせず、全てを話し我々に先にお伺いを立てたことは、思いやりがあり筋が通っている。そこは認めるところだ。A級冒険者でもある君がティアを物理的にも、精神的にも守ってくれるということも、正直ありがたいことだと思う。だが心情的にはすぐに認めることは出来ない。ティアの気持ちを最優先とする」
「え? 俺……?」
突然、俺の意思確認の場となり気が動転する。俺が良いと言えばレオと結婚するってこと?
俺はレオ以上に誰かを好きになることも、レオ以外の人と生涯過ごすことも無いと言える。レオ以外から好かれたことも無いし、初めての恋に盛り上がって自分が盲目になっている可能性もある。不安もあるし、レオが俺をずっと好きでいてくれる自信もない。だけど、そうだとしても今の俺の気持ちは……。
「俺は、レオのことが大好きです。出来ればずっと一緒にいたいです」
「!! ティア!!」
さっきまでエルティアさん呼びだったのに、思わずといったように愛称に変わり、抱き締めるレオが愛しく、俺からも抱き締める。
体を離し、視線を両親に向けると、眉間に皺を寄せて口角は下がりきっていた。え? 何故そんな変な顔を? お父様はそこそこ男前な顔だと言うのに、原型を留めて居ないほどの変な……見たことがない表情をしていた。
「良いだろう……ティアが望むならば、二人の婚約を認めよう。だが結婚はティアが学校を卒業してからだ。良いな?」
「はい! クロスフェード卿ありがとうございます」
「お父様! ありがとうございます」
お父様は変な顔を残したまま、口を開いた。
「して閣下、いやレオナルド様と読んだ方が?」
「アキスト王国に滞在中は、私のことをレオンと及びください。ただと冒険者に敬語は不要です」
「ではレオン、その保護の方法はどういったことを?」
他国とはいえ元王族・現公爵であるレオに臆することなく話すお父様と、それを一切気にしないレオの会話を、俺は婚約の件で定まらない心と戦いながら聞いていた。
「ティアの身辺警護として冒険者のレオンに依頼してください。ギルドに指名依頼し、私が受諾します。学校の授業中以外は傍でお守り致します」
「学校にいる間はどうするつもりだ」
「ナルカデア国の王族に渡される、プロテチオーネの指輪をティアの指に嵌めることをお許しください。私の指輪と対になっており、ティアが危険を察知すると私が分かるようになっています。物理的な危険は、ティアに掛けられた保護魔法によって弾かれると思いますが、この指輪の力で一度だけ身を守ってくれます」
「それは……国宝ではないのか?」
「王族が結婚する相手に渡すものです。どちらにしろティアに贈るものなので、問題ありません」
国宝を普段使いするのは逆に危なすぎる気がする……。
「はぁ……まぁ良いだろう。その案以外だとティアを屋敷に閉じ込める他無いし、そんなことをしたら逆に怪しまれるかもしれない。ナルカデアにもレナセールにもガルダニアにも」
それを聞いて、俺は三カ国に狙われていることに気付く。なるほど、確か思っていたより大変なことになっているようだ。アキスト王国の王族は信用出来ないし。
「許可を頂きありがとうございます。では後ほどティアには指輪をお贈り致します」
「そうしてくれ」
「あと、直接お屋敷に侵入、または危害を加える可能性があるため、私をこの屋敷に置いて頂けませんか?」
「それは……うちで暮らすと言うことか?」
「はい、そうです」
え!? レオがひとつ屋根の下に……!? 一応話題の中心である俺抜きで話はどんどん進んでいく。
「旦那様、良いじゃありませんか」
「カレン……」
今まで沈黙を守っていたお母様が口を開いた。
「ティアもレオン様も愛し合っていて、国宝を使うことも惜しまない。ナルカデア王陛下よりもティアや私たちを優先させ、心を尽くしてくださってるわ。婚約のことをまだ表に出さないとしても、レオン様は大事な婚約者。離れた住まいで暮らすより共に居た方がお互いのことも分かって、ティアも安心出来て良いではありませんか」
「う……それはそうなのだが」
「問題ありませんわね?」
「…………分かった」
何故か乗り気で歓迎する気持ちを隠そうともしないお母様の援護射撃でレオとの同居が決定した。
「本当は嫌だけど……ティアの安全のためだし、ティアも閣下を慕っているようだし……。でも不思議なことに、安心出来るかと言われたらそうでは無いし、なんなら身の危険は増えた気がする」
「不思議ですわねぇ」
お父様がブツブツ言っているがよく聞き取れない。とにかく二人とも俺とレオの付き合いを認めてくれたようで嬉しい。
「ではジェイムズ、至急閣下の部屋を用意してくれ」
「既に整っております」
「……優秀すぎる執事を持って幸せ者だが、いつ分かった?」
「昨日レオン様が屋敷にいらした時にエルティア様との雰囲気が……おっとごほんごほん」
わざとらしい咳をしたジェイムズは、「ではレオン様、こちらへどうぞ」と言ってレオを連れて部屋から出ていった。お父様は「好きじゃなくなったらすぐに言うんだぞ!? 無体なことをされそうになったらすぐに窓から突き落とせ」と物騒なことを言っている。お母様はレオを歓迎しているのか「良かったわね」と抱きしめてくれた。成人した16歳の男が母親に抱き締められるのはやや恥ずかしいが、ずっと気にかけ俺のことを想っていたことを知っているので、「ありがとう」と言ってぎゅっと抱き締め返した。
「はい。私はエルティアさんを愛しています。一生大事にします。危険な目に合わせないように全力を尽くすとお約束します」
まさか今日この日に婚約? 結婚の申し込みがあるとは思わず目を見開いて隣のレオを見つめる。結婚? 俺とレオが?
「権力を笠に着てティアを我がものとせず、ナルカデア王国へ無情に連れていくこともせず、全てを話し我々に先にお伺いを立てたことは、思いやりがあり筋が通っている。そこは認めるところだ。A級冒険者でもある君がティアを物理的にも、精神的にも守ってくれるということも、正直ありがたいことだと思う。だが心情的にはすぐに認めることは出来ない。ティアの気持ちを最優先とする」
「え? 俺……?」
突然、俺の意思確認の場となり気が動転する。俺が良いと言えばレオと結婚するってこと?
俺はレオ以上に誰かを好きになることも、レオ以外の人と生涯過ごすことも無いと言える。レオ以外から好かれたことも無いし、初めての恋に盛り上がって自分が盲目になっている可能性もある。不安もあるし、レオが俺をずっと好きでいてくれる自信もない。だけど、そうだとしても今の俺の気持ちは……。
「俺は、レオのことが大好きです。出来ればずっと一緒にいたいです」
「!! ティア!!」
さっきまでエルティアさん呼びだったのに、思わずといったように愛称に変わり、抱き締めるレオが愛しく、俺からも抱き締める。
体を離し、視線を両親に向けると、眉間に皺を寄せて口角は下がりきっていた。え? 何故そんな変な顔を? お父様はそこそこ男前な顔だと言うのに、原型を留めて居ないほどの変な……見たことがない表情をしていた。
「良いだろう……ティアが望むならば、二人の婚約を認めよう。だが結婚はティアが学校を卒業してからだ。良いな?」
「はい! クロスフェード卿ありがとうございます」
「お父様! ありがとうございます」
お父様は変な顔を残したまま、口を開いた。
「して閣下、いやレオナルド様と読んだ方が?」
「アキスト王国に滞在中は、私のことをレオンと及びください。ただと冒険者に敬語は不要です」
「ではレオン、その保護の方法はどういったことを?」
他国とはいえ元王族・現公爵であるレオに臆することなく話すお父様と、それを一切気にしないレオの会話を、俺は婚約の件で定まらない心と戦いながら聞いていた。
「ティアの身辺警護として冒険者のレオンに依頼してください。ギルドに指名依頼し、私が受諾します。学校の授業中以外は傍でお守り致します」
「学校にいる間はどうするつもりだ」
「ナルカデア国の王族に渡される、プロテチオーネの指輪をティアの指に嵌めることをお許しください。私の指輪と対になっており、ティアが危険を察知すると私が分かるようになっています。物理的な危険は、ティアに掛けられた保護魔法によって弾かれると思いますが、この指輪の力で一度だけ身を守ってくれます」
「それは……国宝ではないのか?」
「王族が結婚する相手に渡すものです。どちらにしろティアに贈るものなので、問題ありません」
国宝を普段使いするのは逆に危なすぎる気がする……。
「はぁ……まぁ良いだろう。その案以外だとティアを屋敷に閉じ込める他無いし、そんなことをしたら逆に怪しまれるかもしれない。ナルカデアにもレナセールにもガルダニアにも」
それを聞いて、俺は三カ国に狙われていることに気付く。なるほど、確か思っていたより大変なことになっているようだ。アキスト王国の王族は信用出来ないし。
「許可を頂きありがとうございます。では後ほどティアには指輪をお贈り致します」
「そうしてくれ」
「あと、直接お屋敷に侵入、または危害を加える可能性があるため、私をこの屋敷に置いて頂けませんか?」
「それは……うちで暮らすと言うことか?」
「はい、そうです」
え!? レオがひとつ屋根の下に……!? 一応話題の中心である俺抜きで話はどんどん進んでいく。
「旦那様、良いじゃありませんか」
「カレン……」
今まで沈黙を守っていたお母様が口を開いた。
「ティアもレオン様も愛し合っていて、国宝を使うことも惜しまない。ナルカデア王陛下よりもティアや私たちを優先させ、心を尽くしてくださってるわ。婚約のことをまだ表に出さないとしても、レオン様は大事な婚約者。離れた住まいで暮らすより共に居た方がお互いのことも分かって、ティアも安心出来て良いではありませんか」
「う……それはそうなのだが」
「問題ありませんわね?」
「…………分かった」
何故か乗り気で歓迎する気持ちを隠そうともしないお母様の援護射撃でレオとの同居が決定した。
「本当は嫌だけど……ティアの安全のためだし、ティアも閣下を慕っているようだし……。でも不思議なことに、安心出来るかと言われたらそうでは無いし、なんなら身の危険は増えた気がする」
「不思議ですわねぇ」
お父様がブツブツ言っているがよく聞き取れない。とにかく二人とも俺とレオの付き合いを認めてくれたようで嬉しい。
「ではジェイムズ、至急閣下の部屋を用意してくれ」
「既に整っております」
「……優秀すぎる執事を持って幸せ者だが、いつ分かった?」
「昨日レオン様が屋敷にいらした時にエルティア様との雰囲気が……おっとごほんごほん」
わざとらしい咳をしたジェイムズは、「ではレオン様、こちらへどうぞ」と言ってレオを連れて部屋から出ていった。お父様は「好きじゃなくなったらすぐに言うんだぞ!? 無体なことをされそうになったらすぐに窓から突き落とせ」と物騒なことを言っている。お母様はレオを歓迎しているのか「良かったわね」と抱きしめてくれた。成人した16歳の男が母親に抱き締められるのはやや恥ずかしいが、ずっと気にかけ俺のことを想っていたことを知っているので、「ありがとう」と言ってぎゅっと抱き締め返した。
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