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37 この心は
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「じゃあガルロさん、お疲れ様でした」
「おう、ありがとな。また明日来れるのか?」
「はい! 明日も同じ時間に来ますね」
「分かった。気をつけてな」
ランチタイムが過ぎ、俺もガルロさん特製親子丼を食べて満腹になってからレオと共にマルタ食堂を出た。レオの家に行くのは二回目で、重要な話をしにいくにも関わらずちょっと楽しみだ。
レオの自宅に到着し、前にも座ったソファーに腰掛ける。レオがテーブルに二人分のお茶の入ったカップを置いて、俺の隣に座った。
「レオは最近どうしてたの?」
「日中はギルドで依頼受けて仕事して、夕方一応マルタ食堂に顔だして、ティアが居なかったら酒場に移動して情報収集してた。その内二回はガルロさんに睨まれてそのまま夕食を食べたけど」
「そっか……。話すことが三つあって。一つはアルテナから帰る馬車で出会った商人が言ってた依頼した貴族なんだけど、俺の友達の家だった。」
「仲直りしたとかいう友達か?」
「ううん、新しく友達になった人。公爵家のフリードリヒ・メンブルクから直接お礼を言われて知ったんだ」
「メンブルク家といえば王家の血脈だな。それも結構近しい」
「そう、だから俺のことも少し知ってて、元々悪感情も無かったみたい。それでも近付く予定は無かったんだけど、ヴィダ草のお礼を言うためにわざわざ課題のグループを一緒にしてた」
「王家の意志より自分たちの誠意を優先させたってわけか。商人の話からも、そこは垣間見えたな」
「そう。それで話の二つ目なんだけど、フリードが情報をくれたんだ。レナセール国で内紛が起こっているらしい。ガルダニア派と市民派で元々対立はしていたけど、最近になって市民派の貴族が理由なく罰されているとか。いつ内戦が起きてもおかしくないって……。シドやラキくんも関係しているのかもしれない。でも俺は事実確認出来ないし、父に聞こうにもここ数日会えてないんだ。このことと、関係があるのかもしれない」
「いや、酒場でもレナセール国からの便りが来ないだとか、国境近くで争いに巻き込まれたという話はあった。ガルダニア派が武力で押さえ付けているとしたら、国民からの反発はこれから強まっていくだろう……」
「ガルダニア帝国はリティーダ共和国を滅ぼした過去があるから、リティーダ人の血を濃く受け継いだ俺は存在を気付かれないようにした方が良いって」
「そうだな、そうした方が良い。自宅と学校内は馬車で護衛も付けて、街にいる時は常にオレがいるようにする」
「え!? レオが?」
俺のことでレオの時間をたくさん割いてしまうことになるのは忍びない。
「変装するし、大丈夫じゃないかな?」
「いや、クロスフェード家に黒髪黒目の人がいると分かれば、一人になったところを確実に狙われる」
「そもそも俺がリティーダ人の血が流れているのを知っているのは王族とメンブルク家くらいだと思うから、遠いレナセール国には知られないんじゃないかと楽観視してるんだけど」
「昔も今も、黒っぽい髪色の人はいても、黒そのものを生まれつき持っている人はいないんだ。レナセール国の人は元リティーダ人も多いから暗めの茶髪の人も多いけど、完全な黒はいない。瞳も同様に。黒髪黒目ということが知られるだけで危ないんだ。正直、オレはアキスト王国の王室と貴族を信用していない。何かあった時にティアを守ってくれるとは思わない」
「……レオ……」
「ティア、君が心配なんだ。何かあって欲しくない。オレが守りたいんだ。傍にいることを許してくれるね?」
真摯に俺を心配してくれているのが分かる。今まで、俺から離れていく人は多かったけど、傍にいたいと言ってくれる人はいなかった。レオの気持ちが嬉しくて目が潤んできた。
「俺、レオといる時だけ幼くなるみたい……」
「オレに気を許してる証拠だよ。ティア、可愛いね」
そう言ってレオは俺のおでこ、目元、頬に口付ける。あまりに自然な動きに驚きは無く、離れていくレオの唇をじっと見つめる。心臓がバクバク鳴っているのを感じる。思わず溜まっていないのに唾を飲み込んだ。
レオは目を細めて俺を見て笑い、俺が見つめているレオの唇を耳に近付けた。
「ティア、オレは本当にティアのことが好きなんだ。守りたい。ずっと傍にいたい。この意味分かる?」
「……っ!?」
耳元でレオの声が響く。体がビクッと反応してしまう。レオは体を起こし俺と向かい合う。先程までレオの唇が近くにあった耳をレオの左手が撫でる。
「……っは……あ…あのっ……レオ……」
「ここに……」
うまく頭が回らなくて、何か意味のある言葉が俺の口から出る前にレオが遮る。レオの右手が俺の頬を撫で、親指が俺の唇に触れた。
「俺はティアのここに口付けたい。許してくれる?」
レオと視線が絡み合う。レオの顔が近い。俺はレオの唇を見つめて、またレオと目が合った。俺がどんな顔をしているのか分からない。ただ、欲しいな、と思った。俺も、レオと……。口を薄く開いたその瞬間に、俺の唇はレオの唇で塞がれていた。
「おう、ありがとな。また明日来れるのか?」
「はい! 明日も同じ時間に来ますね」
「分かった。気をつけてな」
ランチタイムが過ぎ、俺もガルロさん特製親子丼を食べて満腹になってからレオと共にマルタ食堂を出た。レオの家に行くのは二回目で、重要な話をしにいくにも関わらずちょっと楽しみだ。
レオの自宅に到着し、前にも座ったソファーに腰掛ける。レオがテーブルに二人分のお茶の入ったカップを置いて、俺の隣に座った。
「レオは最近どうしてたの?」
「日中はギルドで依頼受けて仕事して、夕方一応マルタ食堂に顔だして、ティアが居なかったら酒場に移動して情報収集してた。その内二回はガルロさんに睨まれてそのまま夕食を食べたけど」
「そっか……。話すことが三つあって。一つはアルテナから帰る馬車で出会った商人が言ってた依頼した貴族なんだけど、俺の友達の家だった。」
「仲直りしたとかいう友達か?」
「ううん、新しく友達になった人。公爵家のフリードリヒ・メンブルクから直接お礼を言われて知ったんだ」
「メンブルク家といえば王家の血脈だな。それも結構近しい」
「そう、だから俺のことも少し知ってて、元々悪感情も無かったみたい。それでも近付く予定は無かったんだけど、ヴィダ草のお礼を言うためにわざわざ課題のグループを一緒にしてた」
「王家の意志より自分たちの誠意を優先させたってわけか。商人の話からも、そこは垣間見えたな」
「そう。それで話の二つ目なんだけど、フリードが情報をくれたんだ。レナセール国で内紛が起こっているらしい。ガルダニア派と市民派で元々対立はしていたけど、最近になって市民派の貴族が理由なく罰されているとか。いつ内戦が起きてもおかしくないって……。シドやラキくんも関係しているのかもしれない。でも俺は事実確認出来ないし、父に聞こうにもここ数日会えてないんだ。このことと、関係があるのかもしれない」
「いや、酒場でもレナセール国からの便りが来ないだとか、国境近くで争いに巻き込まれたという話はあった。ガルダニア派が武力で押さえ付けているとしたら、国民からの反発はこれから強まっていくだろう……」
「ガルダニア帝国はリティーダ共和国を滅ぼした過去があるから、リティーダ人の血を濃く受け継いだ俺は存在を気付かれないようにした方が良いって」
「そうだな、そうした方が良い。自宅と学校内は馬車で護衛も付けて、街にいる時は常にオレがいるようにする」
「え!? レオが?」
俺のことでレオの時間をたくさん割いてしまうことになるのは忍びない。
「変装するし、大丈夫じゃないかな?」
「いや、クロスフェード家に黒髪黒目の人がいると分かれば、一人になったところを確実に狙われる」
「そもそも俺がリティーダ人の血が流れているのを知っているのは王族とメンブルク家くらいだと思うから、遠いレナセール国には知られないんじゃないかと楽観視してるんだけど」
「昔も今も、黒っぽい髪色の人はいても、黒そのものを生まれつき持っている人はいないんだ。レナセール国の人は元リティーダ人も多いから暗めの茶髪の人も多いけど、完全な黒はいない。瞳も同様に。黒髪黒目ということが知られるだけで危ないんだ。正直、オレはアキスト王国の王室と貴族を信用していない。何かあった時にティアを守ってくれるとは思わない」
「……レオ……」
「ティア、君が心配なんだ。何かあって欲しくない。オレが守りたいんだ。傍にいることを許してくれるね?」
真摯に俺を心配してくれているのが分かる。今まで、俺から離れていく人は多かったけど、傍にいたいと言ってくれる人はいなかった。レオの気持ちが嬉しくて目が潤んできた。
「俺、レオといる時だけ幼くなるみたい……」
「オレに気を許してる証拠だよ。ティア、可愛いね」
そう言ってレオは俺のおでこ、目元、頬に口付ける。あまりに自然な動きに驚きは無く、離れていくレオの唇をじっと見つめる。心臓がバクバク鳴っているのを感じる。思わず溜まっていないのに唾を飲み込んだ。
レオは目を細めて俺を見て笑い、俺が見つめているレオの唇を耳に近付けた。
「ティア、オレは本当にティアのことが好きなんだ。守りたい。ずっと傍にいたい。この意味分かる?」
「……っ!?」
耳元でレオの声が響く。体がビクッと反応してしまう。レオは体を起こし俺と向かい合う。先程までレオの唇が近くにあった耳をレオの左手が撫でる。
「……っは……あ…あのっ……レオ……」
「ここに……」
うまく頭が回らなくて、何か意味のある言葉が俺の口から出る前にレオが遮る。レオの右手が俺の頬を撫で、親指が俺の唇に触れた。
「俺はティアのここに口付けたい。許してくれる?」
レオと視線が絡み合う。レオの顔が近い。俺はレオの唇を見つめて、またレオと目が合った。俺がどんな顔をしているのか分からない。ただ、欲しいな、と思った。俺も、レオと……。口を薄く開いたその瞬間に、俺の唇はレオの唇で塞がれていた。
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