24 / 79
23 帰路につく
しおりを挟む
入浴を終え、ベッドに横になる。怒涛の一日だった。シドとラキくんとの別れが寂しくて泣いて、サーリャさんから衝撃の事実を聞いて、レオンと一緒にカフェで食事して、これから自分がどうするのか、どうしたいのか意思が固まった。疲れたけど、スッキリした気持ちだ。
レオンに俺がアキュレの貴族間で有名な黒い悪魔ですと伝えても、態度が変わらないどころか笑い飛ばしそうだけど、また今度にしよう。平民街でエルティナのことは知られていないのに、急に「俺の二つ名は『黒い悪魔』なんだ」とか言っても「なにそれ?」再びになりそうだ。
俺の本当の名前がエルティナであることは早く言いたいな……レオンのことも、もっと知れると良いな……。そんなことを考えながらうつらうつらとし、いつの間にか眠ってしまっていた。
意識が浮上すると、身動きが出来なかった。あれ、最近毎朝コレじゃない? 体は動かさず、そっと頭だけ動かすと、眠っているレオンの顔が見える。冒険者らしく、話す言葉は荒っぽい時があっても、基本的には丁寧で優しく、眠っている姿などは容姿も相まって高貴な雰囲気さえある。
今日のベッドはダブルサイズで広いにも関わらず、背中に手を回され抱きとめられている。俺寝相悪くないけどな……。身長も平均くらいはあるのに、一回り大きいレオンに抱き締められると、包まれているような感覚に陥る。安心するってこんな感じなのかな。A級冒険者なので、もちろん武力的にも強いし安心だけど、心が落ち着くというか……。お互い隠し事があるのに、目で見て感じた部分だけで、もう信頼してるというか……。四歳違いでこんなに違うものかな? 俺は成人したばかりだけど、まだまだ独り立ちは先だし、学生だし、レオンは一人でなんでも出来るし経験豊富だもんな……。目が覚めたものの、まだ若干ふわふわした頭で考えていると、頭を撫でられた。
「おはよう、エレン」
「レオンおはよう」
「朝から何難しそうな顔して考えてたんだ?」
「……? レオンのことを考えてた」
「………天然は怖い」
あー……とか、うー……とか言いながらグリグリと頭に顎を乗せてくる。普通に痛い。
「レオン、俺の頭がヘコむから止めて」
「ごめんね」
そう言って頭を撫でてくる。レオンは結構人と触れ合うことが好きなのかもな。レオン情報を更新させた俺はのそのそと起き上がり準備を始めた。目薬も欠かさない。今日でもうアキュレに帰るのか……濃厚な日々だったからか、たった数日だと言うのに思い出が多く、旅が終わる名残惜しさを感じる。
「レオン、ここでみんなにお土産買いたい」
「おお、良いな。一緒に選ぼう」
ベッドを軽く整え、荷物をまとめて客室を出る。二階から良い香りがした。アンソニーさんが階段の上から顔を出した。
「起きたか! 朝ごはん出来てるから一緒に食べよう」
「ありがとう、お腹が空いてたんだ。エレン行こう」
4人で朝食を食べ、乗合馬車の時刻を確認する。雑貨屋でお土産を買っていると時間が来てしまった。そろそろ出なくては。
「サーリャさん、アンソニーさん。本当にありがとうございました。急に来たのに泊まる部屋もお食事まで……」
「こちらこそ、会えて嬉しかったわ。またいつでも来てね」
「レオンもエレンも体に気を付けてな」
「あぁ、また顔見せに来るよ」
二人に手を振って乗合馬車の乗り場に向かう。
「レオン、本当にありがとう。レオンがいないと、自分自身のことが何も分からず、何も無い自分に嫌気がさして、いつか自暴自棄になっていたかもしれない。レオンが背中を押して、手を引いて一緒にいてくれなきゃ、今の自分はいなかったと断言出来る。もし、今後レオンが困った時や助けが必要な時は、絶対に俺が駆けつけるよ。いつだって、どこへだって行くよ」
「エレンはカッコ良いな。自分がエレンに何かしてあげたいと思ったから今回連れてきたけど、エレンが元気になって嬉しいよ。オレはいつでも力になるし、何かあればエレンに頼ることにする。これからもよろしくな」
二人でへへへと笑いながら、馬車へと乗り込んだ。
レオンに俺がアキュレの貴族間で有名な黒い悪魔ですと伝えても、態度が変わらないどころか笑い飛ばしそうだけど、また今度にしよう。平民街でエルティナのことは知られていないのに、急に「俺の二つ名は『黒い悪魔』なんだ」とか言っても「なにそれ?」再びになりそうだ。
俺の本当の名前がエルティナであることは早く言いたいな……レオンのことも、もっと知れると良いな……。そんなことを考えながらうつらうつらとし、いつの間にか眠ってしまっていた。
意識が浮上すると、身動きが出来なかった。あれ、最近毎朝コレじゃない? 体は動かさず、そっと頭だけ動かすと、眠っているレオンの顔が見える。冒険者らしく、話す言葉は荒っぽい時があっても、基本的には丁寧で優しく、眠っている姿などは容姿も相まって高貴な雰囲気さえある。
今日のベッドはダブルサイズで広いにも関わらず、背中に手を回され抱きとめられている。俺寝相悪くないけどな……。身長も平均くらいはあるのに、一回り大きいレオンに抱き締められると、包まれているような感覚に陥る。安心するってこんな感じなのかな。A級冒険者なので、もちろん武力的にも強いし安心だけど、心が落ち着くというか……。お互い隠し事があるのに、目で見て感じた部分だけで、もう信頼してるというか……。四歳違いでこんなに違うものかな? 俺は成人したばかりだけど、まだまだ独り立ちは先だし、学生だし、レオンは一人でなんでも出来るし経験豊富だもんな……。目が覚めたものの、まだ若干ふわふわした頭で考えていると、頭を撫でられた。
「おはよう、エレン」
「レオンおはよう」
「朝から何難しそうな顔して考えてたんだ?」
「……? レオンのことを考えてた」
「………天然は怖い」
あー……とか、うー……とか言いながらグリグリと頭に顎を乗せてくる。普通に痛い。
「レオン、俺の頭がヘコむから止めて」
「ごめんね」
そう言って頭を撫でてくる。レオンは結構人と触れ合うことが好きなのかもな。レオン情報を更新させた俺はのそのそと起き上がり準備を始めた。目薬も欠かさない。今日でもうアキュレに帰るのか……濃厚な日々だったからか、たった数日だと言うのに思い出が多く、旅が終わる名残惜しさを感じる。
「レオン、ここでみんなにお土産買いたい」
「おお、良いな。一緒に選ぼう」
ベッドを軽く整え、荷物をまとめて客室を出る。二階から良い香りがした。アンソニーさんが階段の上から顔を出した。
「起きたか! 朝ごはん出来てるから一緒に食べよう」
「ありがとう、お腹が空いてたんだ。エレン行こう」
4人で朝食を食べ、乗合馬車の時刻を確認する。雑貨屋でお土産を買っていると時間が来てしまった。そろそろ出なくては。
「サーリャさん、アンソニーさん。本当にありがとうございました。急に来たのに泊まる部屋もお食事まで……」
「こちらこそ、会えて嬉しかったわ。またいつでも来てね」
「レオンもエレンも体に気を付けてな」
「あぁ、また顔見せに来るよ」
二人に手を振って乗合馬車の乗り場に向かう。
「レオン、本当にありがとう。レオンがいないと、自分自身のことが何も分からず、何も無い自分に嫌気がさして、いつか自暴自棄になっていたかもしれない。レオンが背中を押して、手を引いて一緒にいてくれなきゃ、今の自分はいなかったと断言出来る。もし、今後レオンが困った時や助けが必要な時は、絶対に俺が駆けつけるよ。いつだって、どこへだって行くよ」
「エレンはカッコ良いな。自分がエレンに何かしてあげたいと思ったから今回連れてきたけど、エレンが元気になって嬉しいよ。オレはいつでも力になるし、何かあればエレンに頼ることにする。これからもよろしくな」
二人でへへへと笑いながら、馬車へと乗り込んだ。
2
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説

今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する
135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。
現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。
最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる