極悪令息と呼ばれていることとメシマズは直接関係ありません

ちゃちゃ

文字の大きさ
上 下
16 / 79

15 初めての飲酒

しおりを挟む
 入浴を終え、宿に帰る前に皆で食事をとる。首都アキュレ以外はクロスフェード伯爵家の領地にしか行ったことが無かったので、ここハンナナ街ではどんな料理があるのか楽しみだ。
 
 メニュー名で何となく予想して注文する。4人が頼んだものはシェアしながら食べることが出来、色んな料理を楽しめた。ガルロさんの家庭料理も美味しいけど、ちょっと小洒落たこの店の料理も美味しいな。このソースの素材はなんだろ……甘くて美味しい……このスープ、魚の臭みを取るためにあえてクセのあるカナリーフをいれてるのか、なるほどなるほど……。
 
「おい……エレンが百面相しながら黙々とご飯食べてるけど話しかけて大丈夫なやつ?」
「エレンくん、料理が大好きなんだよ。初めて食べるご飯だから食材とか味付けとか考えてるんじゃないか?」
「僕何か飲みたいな」
「オレ葡萄酒飲む」
「お、じゃあオレはビール飲もうかな」
 
 気になる単語が聞こえて顔を上げる。
 
「お酒……?」
「そ、確かお前も成人してるんだろ? 飲んだことあるか?」
「ない……」
「大人向けの料理も作るなら、料理に合うお酒を知ってても良いと思うぞ」
「……俺も一杯だけ飲もうかな」
「大丈夫かエレンくん。お酒初めてだろう? キツいな、と思ったらすぐに飲むのを止めるように」
「分かりました」
 
 俺はシドと同じ葡萄酒を頼み、ラキくんはリンゴジュースを頼んだ。箸が大分進んだ頃、4人分の飲み物が届いた。それぞれがグラスを手に持ち、レオンさんが口を開く。
 
「この旅の出会いと、素晴らしい夜に、乾杯」
「「「かんぱーい」」」
 
 
 
 
 
 
「………ん……」
 
 ふと目が覚める。ん……肌寒い……。左側に暖気だんきを感じ、体ごと反転する。あったかい……。再び深い眠りに落ちる寸前、頭を撫でられた気がした。
 
 
 
 レオンside
 
「エレンくん、お水飲もう。はい、そのグラスこっちにちょうだい」
「やだぁ~コレ俺のなの~! まだ飲むの~!」
「葡萄酒半分でコレなら一杯飲んだら倒れるんじゃ……」
「エレンさん可愛い」
「エレンくん、そしたらオレのお酒(水)と交換しない? 飲み比べしよう」
「う~……いいよ!」
 
 チョロくて可愛い。
 
「既に顔赤いけど肌弱いのと関係あるのか?」
「お酒を飲んで肌に赤みがさすのは、アルコールを分解する機能が弱いせいだから、また別問題だね」
「……相変わらず生き字引みたいな奴だな……」
「エレンくん、眠い? もう眠いね?」
「ん~ベッド~」
「ご飯は一通り食べたし、宿に帰って寝るか」
「エレンさん明日大丈夫かなぁ。赤くなりやすい人は体調不良になりやすいんだ。宿の主人に薬を貰って寝る前に飲ませてあげよう」
 
 本当に気が利く子だな……。
 
「本当にラキくんは10歳か?」
「僕が16歳で成人した時にエレンさんは22歳、悪くないどころか最高だと思わない?」
「なんの話だ」
「ラキも酔ってんのか?」
「リンゴジュースで酔えるなら安く済んで良いね」
 
 
 その後エレンを横抱きにして宿に戻り、宿の主人に薬をもらい飲ませた。シドとラキくんはエレンくんを心配していたが、あとはもう寝るだけなので部屋に帰ってもらった。
 寝る前に用を足しに離れた少しの間で、エレンくんの服が水でびしょびしょになっていた。……何故……。どうやら水を飲もうとして力が入らず顔から被ったらしい。とりあえず脱がせ、タオルで水を拭き取り、そのまま寝かせた。いくら旅を共にする友人でも、荷物を勝手に漁るのは気が引けたので、上半身裸だがそのまま寝よう。夏もそろそろ終わる時期だが、まだまだ暑さが残り夜も寒くないし、風邪は引かないだろう。
 エレンくんをベッドに横たわせ、シーツを掛ける。自分も隣に滑り入るとエレンくんが寄ってきた。細やかな白い肌に浮いていた赤みは少し薄れつつある。本当にこの子は……オレじゃなきゃ襲ってたぞ……。水に濡れたというのに温かい肌をするりと触れる。

「んっ……」

 エレンくんの口から零れた吐息に、バッと手を離す。オレは眠っているいたいけな子になんてことを…。隣の部屋にいる二人と同室じゃなくて良かったと思いつつ、大人二人にはやや狭いベッドからエレンくんが落ちないように肩に手をやり、温かさに眠気が膨らみ、逆らうことなく意識は落ちていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

処理中です...