極悪令息と呼ばれていることとメシマズは直接関係ありません

ちゃちゃ

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13 そこは毛染めしてません

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 部屋は小さめだが、ベッドはセミダブルくらいあり、二人で寝ても大丈夫そうだ。やっぱり備え付けのシャワーは無いのか……。
 コンコンコン。
 
「はぁーい」
 
 扉の覗き穴から、レオンさんが見えた。鍵を開ける。
 
「開けてくれてありがとう。だけどエレンくん、覗き穴で確認する前に返事しただろう?オレ以外は危ない人だと思って用心すること」
「分かりました。レオンさん、部屋にシャワー無くて、近くに公衆浴場があるみたいなんです。俺行ったことなくて分からないんで、一緒に行ってくれませんか?」
「もちろん良いよ」
「あと、公衆浴場のことを聞いた時にラキくんもいて、一緒に入ろうって約束したんです。シドも誘って4人でも大丈夫ですか?」
「あぁ、構わない。じゃあタオルと着替えだけ持って、彼らがいる隣の部屋に行こうか」
 
 二人を誘い、すぐそばの公衆浴場に着いた。使用人に洗われることはあっても、複数人と入浴したことはないからとても楽しみだ。中に入り、先に料金を支払うと奥に脱衣所、その扉の奥が浴場のようだ。入り方が分からないので、じっとレオンさんやシドを見つめる。レオンさんは理由が分かっているのでにやにやと笑っていた。しかし何故見られているのか分からないシドは……。
 
「な! なんだよ! そんなに人の裸が気になるのか? こっち見んな!」
「あ、ごめん気になって」
「気になんの!!?」
「うん、初めて公衆浴場に入るから、手順とか分からないから見てたんだ」
「……なんだ……」
 
「ラキくんと先に入ってるから、エレンくんはシドに教えてもらいながら入っておいで」
「分かりました」
「お、おい!!」
 
 シドがレオンさんを止めるも、ラキくんと共に扉の向こうに行ってしまう。とりあえず脱げば良いのかな?俺とシド以外に脱衣所にいる人はいない。俺はぽんぽんと服を脱ぎ、置かれている木製の棚に荷物を置いた。
 
「お、おい! 脱ぐなら脱ぐと先に言え!」
「え、もしかして公衆浴場のルールとか?」
「……いや、なんでもない。とりあえず全部脱いだらタオルを腰に巻いて入れば良い。石けんとかは中に備え付けてあるから」
「なるほど」
 
 そう聞いて身につけていた肌着の上下も脱いで全裸になった。
 
 
「…………黒……」
「え……?」
「いや、エレン、お前肌も白いし、全体的に色薄いのに、ココだけ他より黒いのはなんで……?」
「ココ?」
「……ち………け……」
「ん?」
「だから! なんでチンコの毛だけ! 黒いんだよ!」
 
 
 …………
 
 
 忘れてたー!そうだ、髪の毛や瞳を変えるのは慣れたもんだったけど、こっちの毛・・・・・は色を変えたことが無かった……というか今まで必要が無かったから考えたことすら無かった……!…どうする、どうする……?
 シドを見ると、何故か真っ赤だった。どうしよう……シドも黒は不吉だとか思ってるんだろうか……。それで黙っていた俺に怒ってる……?俺は不安と悲しみでシドの顔が見られない。いや、怖さだろうか。また、キールたちのように嫌悪と憎悪の表情で俺を否定されるのだろうか。黒い色を持つというだけで……。
 
「おい? どうした? 大丈夫か?」
「……ぃ………で」
「ん?」
「……お願い……誰にも言わないで……」
「……何を?」
「……ここの毛が黒いこと……」
「……言わねぇよ」
「本当?」
「あぁ、てか別に黒でも良いじゃねぇか、お前に似合ってるし」

黒い陰毛が似合うと言われても嬉しくはないが、恐らくシドなりのフォローなのだろう。

「え……、そ、そうかな?」
「あぁ……なんで黙ってて欲しいのか分からねぇけど、そうして欲しいなら俺は誰にも…、ラキにも話さねぇよ。そんな‪顔すんな」
「ありがとう……」
「裸のままじゃ風邪引くから、さっさとタオル巻いて中入ろうぜ」
「……うん!」
 
 
 
 俺は知らなかった。シドの故郷では黒に近い深い茶色の髪や瞳の人は多くいたため、エレンの陰毛の色は特段ソレと大きく違っているようには見えなかったこと。シドは髪の毛よりも陰毛の色が濃いことを思わず指摘してしまっただけであり、そもそも黒色も畏怖や嫌忌けんきの対象ではないこと。
 シドが真っ赤になってたのは、肌の白さと黒々とした、だが少ない陰毛のコントラストに色気を感じ、血が沸騰したようにたかぶってしまったからだということを。
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