12 / 79
11 新たな出会い
しおりを挟む
「まるでお姫様みたいな登場だな」
その声に顔を上げる。俺とさほど歳が変わらなそうな男がこちらを見ていた。オレンジ色の髪に赤い瞳は俺の周りにはいない色合いだなと思ってじっと眺める。腰に短剣を二本差し、軽装だが胸当てを付けていることから、レオンと同じ冒険者であることが分かる。
「おい、何とか言えよ」
「え? あぁ。あなたは冒険者なんですか?どこまで行くんですか?」
「……冒険者だ。アルテナに用がある。というか、この馬車はアルテナ行きだ」
「え? そうなんですか?」
俺がレオンさんを見るとにっこり笑って頷いた。
「お前、馬車乗るの初めてなの…? そんな顔して、本当にお姫様か?」
「馬車には乗ったことあるけど、こういう乗合馬車には初めて乗るんだ。お姫様ってさっきのやつ見られてた?忘れろ」
そう言うとオレンジ髪の冒険者は複雑そうな顔をした後、レオンさんの方を見る。
「オレが悪かった。お忍びかしらんが気をつけろ。安全な道のりとは言えたまに盗賊や魔物が出たりするから。オレの名前はシド。隣のコイツはラキ、弟だ」
シドの隣にいた男の子を見る。おずおずとこちらを見て軽く頭を下げた。
「こんにちは。俺はエレンです。シド、ラキくん、アルテナまでの数日間よろしく。言っとくけどお忍びじゃないぞ」
「レオンだ。エレンと同行している」
「あ…こ、こんにちは」
ラキくんが顔を上げて挨拶する。シドと同じオレンジ髪に赤い瞳だ。とても可愛い。今まで年下の子と関わることが無かったが、弟か妹がいたら可愛がったのになぁ…とラキくんを見ながら微笑んだ。ラキくんは恥ずかしがって顔が赤くなっている。可愛い。
「ラキくんはいくつなの?」
「10歳です」
「そっか、俺と6つ違いだね」
「シドと一緒だ!」
「本当? 良かったら、アルテナに着くまで一緒におしゃべりしない?」
「うん!」
「ラキが家族以外の奴と積極的に話すのは珍しいな」
「エレンは意外と人懐っこいからな。大人っぽくて礼儀正しいのにどこか抜けていて、働いている職場では、たくさんのお兄さん方やおじ様方から大人気だ」
「その中に、アンタも入ってるの?」
「もちろん」
「はぁ…。嫌味も通じないってどんな箱入りだよ」
「うーん世間知らずでは無いんだけど、知識が偏ってそうなんだ」
「それを箱入りと言うんじゃないのか」
「まぁオレがちゃんと見てるから、君の手は煩わせないよ」
「ふん」
レオンとシドが小声で何かを話している間、俺はずっとラキくんとおしゃべりしていた。途中途中で休憩を挟みつつ、夜になり一時停車する。今日は馬車の中で眠ることになる。明日はアルテナとの間にある街に寄る。希望すれば宿泊も可能とのことだ。その後は数時間でアルテナに到着する。夏とはいえ夜は少し冷える。防寒具でも持ってくれば良かったかと思ったが、寝る時以外は不要だし荷物になるからなどの道置いてきただろう。周りも寝る準備をし始めたので、目薬を忘れずにさし、持ってきたリュックを枕にして寝ようとした。
ぐいっ!
え…?
横になった瞬間レオンさんに抱き締められた。皮の防具は外したらしく、ゴワゴワしてなくて、肌触りの良いレオンさんのシャツが頬に当たる。
「え!? あの…」
「夜は肌寒いからね。それに何かあった時に近ければ守りやすいから」
「あ…そうなんですね。その、腕疲れませんか?」
「大丈夫だよ。さ、今日は初めての長旅で疲れただろうから寝てしまおう」
こんな風に抱き締められたことも、隣合って寝たことも無かったので、緊張して眠れないかと思ったが、人肌が存外気持ち良く、いつの間にか意識が無くなっていた。
その声に顔を上げる。俺とさほど歳が変わらなそうな男がこちらを見ていた。オレンジ色の髪に赤い瞳は俺の周りにはいない色合いだなと思ってじっと眺める。腰に短剣を二本差し、軽装だが胸当てを付けていることから、レオンと同じ冒険者であることが分かる。
「おい、何とか言えよ」
「え? あぁ。あなたは冒険者なんですか?どこまで行くんですか?」
「……冒険者だ。アルテナに用がある。というか、この馬車はアルテナ行きだ」
「え? そうなんですか?」
俺がレオンさんを見るとにっこり笑って頷いた。
「お前、馬車乗るの初めてなの…? そんな顔して、本当にお姫様か?」
「馬車には乗ったことあるけど、こういう乗合馬車には初めて乗るんだ。お姫様ってさっきのやつ見られてた?忘れろ」
そう言うとオレンジ髪の冒険者は複雑そうな顔をした後、レオンさんの方を見る。
「オレが悪かった。お忍びかしらんが気をつけろ。安全な道のりとは言えたまに盗賊や魔物が出たりするから。オレの名前はシド。隣のコイツはラキ、弟だ」
シドの隣にいた男の子を見る。おずおずとこちらを見て軽く頭を下げた。
「こんにちは。俺はエレンです。シド、ラキくん、アルテナまでの数日間よろしく。言っとくけどお忍びじゃないぞ」
「レオンだ。エレンと同行している」
「あ…こ、こんにちは」
ラキくんが顔を上げて挨拶する。シドと同じオレンジ髪に赤い瞳だ。とても可愛い。今まで年下の子と関わることが無かったが、弟か妹がいたら可愛がったのになぁ…とラキくんを見ながら微笑んだ。ラキくんは恥ずかしがって顔が赤くなっている。可愛い。
「ラキくんはいくつなの?」
「10歳です」
「そっか、俺と6つ違いだね」
「シドと一緒だ!」
「本当? 良かったら、アルテナに着くまで一緒におしゃべりしない?」
「うん!」
「ラキが家族以外の奴と積極的に話すのは珍しいな」
「エレンは意外と人懐っこいからな。大人っぽくて礼儀正しいのにどこか抜けていて、働いている職場では、たくさんのお兄さん方やおじ様方から大人気だ」
「その中に、アンタも入ってるの?」
「もちろん」
「はぁ…。嫌味も通じないってどんな箱入りだよ」
「うーん世間知らずでは無いんだけど、知識が偏ってそうなんだ」
「それを箱入りと言うんじゃないのか」
「まぁオレがちゃんと見てるから、君の手は煩わせないよ」
「ふん」
レオンとシドが小声で何かを話している間、俺はずっとラキくんとおしゃべりしていた。途中途中で休憩を挟みつつ、夜になり一時停車する。今日は馬車の中で眠ることになる。明日はアルテナとの間にある街に寄る。希望すれば宿泊も可能とのことだ。その後は数時間でアルテナに到着する。夏とはいえ夜は少し冷える。防寒具でも持ってくれば良かったかと思ったが、寝る時以外は不要だし荷物になるからなどの道置いてきただろう。周りも寝る準備をし始めたので、目薬を忘れずにさし、持ってきたリュックを枕にして寝ようとした。
ぐいっ!
え…?
横になった瞬間レオンさんに抱き締められた。皮の防具は外したらしく、ゴワゴワしてなくて、肌触りの良いレオンさんのシャツが頬に当たる。
「え!? あの…」
「夜は肌寒いからね。それに何かあった時に近ければ守りやすいから」
「あ…そうなんですね。その、腕疲れませんか?」
「大丈夫だよ。さ、今日は初めての長旅で疲れただろうから寝てしまおう」
こんな風に抱き締められたことも、隣合って寝たことも無かったので、緊張して眠れないかと思ったが、人肌が存外気持ち良く、いつの間にか意識が無くなっていた。
2
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!
婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する
135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。
現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。
最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

僕がそばにいる理由
腐男子ミルク
BL
佐藤裕貴はΩとして生まれた21歳の男性。αの夫と結婚し、表向きは穏やかな夫婦生活を送っているが、その実態は不完全なものだった。夫は裕貴を愛していると口にしながらも、家事や家庭の負担はすべて裕貴に押し付け、自分は何もしない。それでいて、裕貴が他の誰かと関わることには異常なほど敏感で束縛が激しい。性的な関係もないまま、裕貴は愛情とは何か、本当に満たされるとはどういうことかを見失いつつあった。
そんな中、裕貴の職場に新人看護師・宮野歩夢が配属される。歩夢は裕貴がΩであることを本能的に察しながらも、その事実を意に介さず、ただ一人の人間として接してくれるαだった。歩夢の純粋な優しさと、裕貴をありのまま受け入れる態度に触れた裕貴は、心の奥底にしまい込んでいた孤独と向き合わざるを得なくなる。歩夢と過ごす時間を重ねるうちに、彼の存在が裕貴にとって特別なものとなっていくのを感じていた。
しかし、裕貴は既婚者であり、夫との関係や社会的な立場に縛られている。愛情、義務、そしてΩとしての本能――複雑に絡み合う感情の中で、裕貴は自分にとって「真実の幸せ」とは何なのか、そしてその幸せを追い求める覚悟があるのかを問い始める。
束縛の中で見失っていた自分を取り戻し、裕貴が選び取る未来とは――。
愛と本能、自由と束縛が交錯するオメガバースの物語。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる