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14 学校にいる俺の古参リスナーが名探偵すぎる
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「あれ? 榎本先輩もしかして知ってます? 千って人ここ2年半くらいゲーム配信してて、口が悪い時もあるけど、人を悪く言ったりキャラディスしたりしなくて、色んなジャンルのゲームするんで好きなんですよー。彼氏さんの話もたまに出るんで、初見の人だとチャットに入りづらくてチャットと千さんの会話見聞きしながら様子見してるっぽいです。」
そ……そうだったのか!! それは申し訳ないことをした。というか自分のことを褒められるのって恥ずかしいな……。2つの意味で『千は俺だよ!』って言いづらい感じに。
「千紘もゲーム配信してるって前言ってたから知ってるんじゃね?」
康太お前……余計なことを……。
「えー! 知ってたら嬉しいです。推しなんですよ。」
「ん?」
推しとは? 好きな芸能人とか二次元のキャラクターに使うやつ?
「正確には、二人の推しなんです。」
「ふ、二人?」
「その配信者の千さんと、彼氏さんの『ハヤテ』さん。こう、可愛い感じの千さんと、クールなハヤテさんの組み合わせってバッチリハマってて! 二人でゲーム配信する時は毎回神プレイなんです! 阿吽の呼吸だし。千さんのゲーム実況が好き前提ですが、二人は特別って言うか。しかも何となく二人の空気感が甘くて、恋人同士って知らない人でも、もしかして……って思っちゃう雰囲気で、そこがまた良い。それが良い。ずっとやれ。」
推しのいるオタク特有の早口長文にクラクラしてきた……。客観的に見られた時の俺たちこんななの? いや、神プレイは颯がゲーム上手いからそうかもしれないけど、空気が甘いか……? そうだっけ……? いつも通りだけど……。
「そういや、今日は浪川来ないの?」
「あ……あぁ……! 今日はバイトで……。」
今颯の話題出されるのはマズイ。康太マジで余計なことしかしねぇ。
「学部違うのに仲良いんですね。何がきっかけなんですか?」
「えぇと、高校の時にオンラインゲームで知り合って、仲良くなってLINE交換して、一緒に遊ぶようになって。」
ルームシェアして告白されて付き合ってます。
「そうなんですねー。あ、榎本先輩。」
「ん?」
「もしかして千さんですか?」
「なぁー!?」
「え? そうなの?」
「ち、ち、ちがうし?」
「嘘下手くそか。」
「榎本先輩、さっき僕が千の名前出してから変でしたし、今聞いた浪川さんとのエピソードまんま千さんとハヤテさんの話です。」
「マジか……。」
とっさに違う話思いつかなかったんだよ……。あと、そんなに俺のヘビーリスナーとは思わなかったんだよ……。ゲーム配信後の雑談はアーカイブになった後、サイト上でカットしてるから、後でリアタイ以外は見られないはずだ。
「確かに浪川の名前、ハヤテだったな。言われれば思い当たること結構ある。」
「……何? 思い当たることって。」
「オレが千紘と話してたら笑顔で睨まれる。」
「笑うことと睨むことは同時に出来ないんじゃ。」
「プレッシャーを感じるんだよ。」
「斎藤くんの気の所為じゃないかな?」
バッ!!
いつの間にかサークル部屋のドアが開いてて、颯が立っていた。俺はバイトどうなった? と思い、康太は嫌そうな顔をし、藤堂くんは顔をキラキラさせた。
「あの! 千さんの彼氏さんのハヤテさんですか!?」
「そうだよ。」
「あの! お二人を二年間ずっと応援していました! これからも一視聴者として遠くから見守っています!」
「ありがとう。」
「いや、同じキャンパスで同じサークルにいるのに遠くなくないか?」
今この中で冷静にツッコめるのは康太しかいなかった。
「バイトどうしたの?」
「なんか、急に業者のメンテナンスが入ったから、もう今日は閉めるって電話来た。」
「それでこっちに来てくれたのかー。」
「因みに、オレは生配信中だったら良いなって思いながら告白したから。」
「え!? え! なんで?」
「千紘の罪悪感につけ込めるかなって。」
「え! えーー!?」
「配信に違わぬ執着っぷり! 何故配信じゃないんだ!」
「いや、普通は生で見られる方が嬉しいんじゃね?」
「康太先輩、分かってないですね。生の推しは刺激が強すぎるんです。それに同じ仲間同士と共有したい、一緒にチャットで盛り上がりたい……。なのに生で! 中の人が! 目の前で! リアルにイチャイチャしてるのを! 他の視聴者に話せないなんて辛すぎるでしょうがーー!」
「なんかすまん。オレが悪かった。」
「僕はこの事をずっと心に抱えて生きていくのか……。」
「オレはそんな重いもの抱えて生きたことないから、良いアドバイスあげらんねぇわ、ごめんな。」
友人は余計なことしかしないけど良い奴で、後輩は良い子だけどヘビーなヘビーリスナーで、恋人はやっぱり愛が重たかった。
良いんだ、俺は軽くて落ちてしまいそうな羽毛布団よりも、重くて厚い布団の方が包み込まれてるみたいで気持ちよくて、安心出来るから。
そんな風に思っていることを、颯にはちゃんと伝えていきたい。
そう思いながら、今日も二人で帰路に着いた。
そ……そうだったのか!! それは申し訳ないことをした。というか自分のことを褒められるのって恥ずかしいな……。2つの意味で『千は俺だよ!』って言いづらい感じに。
「千紘もゲーム配信してるって前言ってたから知ってるんじゃね?」
康太お前……余計なことを……。
「えー! 知ってたら嬉しいです。推しなんですよ。」
「ん?」
推しとは? 好きな芸能人とか二次元のキャラクターに使うやつ?
「正確には、二人の推しなんです。」
「ふ、二人?」
「その配信者の千さんと、彼氏さんの『ハヤテ』さん。こう、可愛い感じの千さんと、クールなハヤテさんの組み合わせってバッチリハマってて! 二人でゲーム配信する時は毎回神プレイなんです! 阿吽の呼吸だし。千さんのゲーム実況が好き前提ですが、二人は特別って言うか。しかも何となく二人の空気感が甘くて、恋人同士って知らない人でも、もしかして……って思っちゃう雰囲気で、そこがまた良い。それが良い。ずっとやれ。」
推しのいるオタク特有の早口長文にクラクラしてきた……。客観的に見られた時の俺たちこんななの? いや、神プレイは颯がゲーム上手いからそうかもしれないけど、空気が甘いか……? そうだっけ……? いつも通りだけど……。
「そういや、今日は浪川来ないの?」
「あ……あぁ……! 今日はバイトで……。」
今颯の話題出されるのはマズイ。康太マジで余計なことしかしねぇ。
「学部違うのに仲良いんですね。何がきっかけなんですか?」
「えぇと、高校の時にオンラインゲームで知り合って、仲良くなってLINE交換して、一緒に遊ぶようになって。」
ルームシェアして告白されて付き合ってます。
「そうなんですねー。あ、榎本先輩。」
「ん?」
「もしかして千さんですか?」
「なぁー!?」
「え? そうなの?」
「ち、ち、ちがうし?」
「嘘下手くそか。」
「榎本先輩、さっき僕が千の名前出してから変でしたし、今聞いた浪川さんとのエピソードまんま千さんとハヤテさんの話です。」
「マジか……。」
とっさに違う話思いつかなかったんだよ……。あと、そんなに俺のヘビーリスナーとは思わなかったんだよ……。ゲーム配信後の雑談はアーカイブになった後、サイト上でカットしてるから、後でリアタイ以外は見られないはずだ。
「確かに浪川の名前、ハヤテだったな。言われれば思い当たること結構ある。」
「……何? 思い当たることって。」
「オレが千紘と話してたら笑顔で睨まれる。」
「笑うことと睨むことは同時に出来ないんじゃ。」
「プレッシャーを感じるんだよ。」
「斎藤くんの気の所為じゃないかな?」
バッ!!
いつの間にかサークル部屋のドアが開いてて、颯が立っていた。俺はバイトどうなった? と思い、康太は嫌そうな顔をし、藤堂くんは顔をキラキラさせた。
「あの! 千さんの彼氏さんのハヤテさんですか!?」
「そうだよ。」
「あの! お二人を二年間ずっと応援していました! これからも一視聴者として遠くから見守っています!」
「ありがとう。」
「いや、同じキャンパスで同じサークルにいるのに遠くなくないか?」
今この中で冷静にツッコめるのは康太しかいなかった。
「バイトどうしたの?」
「なんか、急に業者のメンテナンスが入ったから、もう今日は閉めるって電話来た。」
「それでこっちに来てくれたのかー。」
「因みに、オレは生配信中だったら良いなって思いながら告白したから。」
「え!? え! なんで?」
「千紘の罪悪感につけ込めるかなって。」
「え! えーー!?」
「配信に違わぬ執着っぷり! 何故配信じゃないんだ!」
「いや、普通は生で見られる方が嬉しいんじゃね?」
「康太先輩、分かってないですね。生の推しは刺激が強すぎるんです。それに同じ仲間同士と共有したい、一緒にチャットで盛り上がりたい……。なのに生で! 中の人が! 目の前で! リアルにイチャイチャしてるのを! 他の視聴者に話せないなんて辛すぎるでしょうがーー!」
「なんかすまん。オレが悪かった。」
「僕はこの事をずっと心に抱えて生きていくのか……。」
「オレはそんな重いもの抱えて生きたことないから、良いアドバイスあげらんねぇわ、ごめんな。」
友人は余計なことしかしないけど良い奴で、後輩は良い子だけどヘビーなヘビーリスナーで、恋人はやっぱり愛が重たかった。
良いんだ、俺は軽くて落ちてしまいそうな羽毛布団よりも、重くて厚い布団の方が包み込まれてるみたいで気持ちよくて、安心出来るから。
そんな風に思っていることを、颯にはちゃんと伝えていきたい。
そう思いながら、今日も二人で帰路に着いた。
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