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4 配信中に告白されて、付き合うことになりました。②
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帰宅すると、颯が出迎えてくれた。今日はハンバーグかな? お肉の良い匂いがする。
「お帰りー! バイトお疲れ様。」
「ただいまー。ご飯美味しそうだね。ありがとう。遅くなるから先に食べてて良かったのに。」
「オレも今日本屋とかスーパーとか、買い物してから帰宅して遅くなったから、あんまり待ってないよ。ほら、ハンバーグもアツアツだよ。」
「ほんとだ。ありがとう、直ぐに食べよう!」
颯は器用でマメで何でもこなす。俺は颯のハンバーグとかピーマンの肉詰めとか、野菜炒めなどが特に好きだ。俺はカレーとかシチューとか肉じゃがとか……煮込み料理が出来る(美味しいとは言ってない)
食事を終え、食器を洗いながらどう話を切り出すか考える。返事を待たせてる状態だから、普通にその話題を出そうか……。返事をする前に1回キスしない? ってちょっと酷くないか。確かめようにもその前に断られるかも……。
洗い物が終わり、リビングのソファーに座り本を読んでいる颯の隣に座る。スー……ハー……緊張してきた。
「どうした? 千紘。」
「その……! この間の返事を、と思ってたんだけど……。」
颯は動きを止めると、本をテーブルに置き、テレビを消して体を俺の方に向けた。
「前にも言ったけど、俺は颯のことが好きだし、正直、他の人よりも特別に思ってる。……ただ、恋愛感情かどうかは分からなくて……。その……あまり経験が無いから、他の人にも相談したら、アドバイスを貰って。もし颯が良いならそれを試したい。」
「オレのことを特別に思ってくれてると分かっただけで嬉しいし、もし断られても諦めるつもりはないけど、試したいことがあるなら協力するよ。」
「ありがとう! なら……その……。キスして良い?」
「は?」
こんな颯の顔は初めて見るな。
告白された時もそうだけど、知らなかった颯のことが最近よく分かって嬉しいな。
「あ……もし嫌なら別の方法を考えるので……。」
「いや、キスしよう。キスは必要だ。俺たちに足りないのはキスだったんだ。俺も今気付いたよ、千紘は天才だな。よし、その提案、謹んでお受けする。」
「俺からのお願いなのに、何故かプレッシャーを感じる。でも本当に良かったの? 試されるみたいで嫌じゃない?」
「嫌じゃない嬉しいよ! それはもう棚から大量のぼたもちが降ってきたような……。」
「颯の気持ちにちゃんと向き合いたくて……。」
「鴨が葱を背負ってやって来たような。」
「ちょっと流れが変わってきたな。」
「現代風に言うと超ラッキーです。」
「急にバカ。」
俺がネギを背負ってるかはさておき、じゃあやるかと姿勢を整える。ソファーに座ったままだとしづらいと思ったので、ソファーの上で向かい合って正座している。
「オレからする?」
「いや……! 俺が言い出しっぺだから俺からする。」
気合いを入れて顔を近付ける。そして気付く。あ、これファーストキスだ。口がくっ付く瞬間にそのことが過ぎったが気合いそのままに、割とスピードがあったため止められない。
ぶちゅ。
キスしたというよりぶつかったという表現が正しく、しかもスピードが殺せず颯を後ろに倒してしまった。
「わぁー! 颯ごめーん!」
「大丈夫だよ、千紘からのキス嬉しかったな。」
「初めてだったからちゃんと出来なかったね……本当はもっと上手くしたかったんだけど。」
「……! 初めて……!! ねぇ、千紘、今のだけじゃ、まだよく分からないよね。」
「え……まぁそうだな……。キスする瞬間に、『あ、これファーストキスだ』って考えちゃって、そのままぶつかったからあんまり覚えてない。」
颯の上に乗ったままであることに気づき、どこうとするが、いつのまにか颯の手が背中と頭に固定され、動けない。
「颯?」
「じゃあもう一回しようか。」
「ん?」
そのまま背中を押されて颯の上に完全に乗っかり、体が重なる。文句を言おうと颯の顔をみたら、すぐ目の前にあった。目が合う。
「ん……! んふ……。」
颯の唇が優しく俺の唇に触れる。頭を動かしてふにふにと唇の感覚を楽しんだり、角度を変えたりして確かめようにキスをする。
あ……気持ち良いかも……。
あれ、嫌じゃなくて、気持ち良かったら、恋愛感情で好きなんだっけ……。
初めてのちゃんとしたキスにぽーっとしながら、颯からのキスを享受する。もっとしたいな……。んくんくと自分からも唇を合わせてたら、急にペロリと唇を舐められた!
「ひゃー!」
「くっ……ふふ……。千紘は本当に可愛いね。」
「か……かわ……。」
「で、分かった? オレのこと好き?」
「え……。」
「どういう好きか確かめる為にキスしたんでしょ。最後の方はキスに夢中だったから忘れちゃった?」
「そんな……いや……そうだけど……。」
キスが嫌じゃない男友達はもうただの友達は超えてる……よな?
ずっと颯に乗っかったままだったので、体を起こしてソファーに座る。
「その、俺、颯のことが、恋愛的に好き……かも? な感じで……。まだ100%断言出来なくて、曖昧になっちゃって申し訳ないけど、それでも良かったら、こんな俺でも良かったら付き合ってください。」
「千紘……!!!」
颯が声を上げて俺を抱き締める。ぎゅうっと俺を仕舞い込むようにするその力に安心する。なんかこう、帰る場所って感じがする。
「その、キスは気持ちよくて好きだから嬉しい。でも慣れないから出来れば少しずつ関係を進めて欲しい。」
「ありがとう、大好きだよ千紘。改めてこれからよろしくね。」
そう言ってまた触れるだけのキスをした。
さて、告白から3週間経ち、今から意識的に避けていたゲーム配信をする。あくまでいつも通りに始めて、いつも通り挨拶をする。しかし視聴者は流されない、そうは問屋が卸さない。チャット欄はあの後どうなったのかの質問で埋め尽くされた。
「えーとね、しばらくお休みしてごめんね。まぁご存知の通り色々あって自己を見つめ直していました。それで、お付き合いすることにしました。」
『祝☆結婚』
『千ちゃんが嫁に行ってしまった……』
『おめでとー!』
とほとんどの視聴者がお祝いしてくれた。
「颯から一言話したいそうです。」
元々話す予定で横に立っていた颯がマイクに近付く。
「もうオレだけの千だから、下心あるやつはさっさと去るように。あ、祝ってくれた方はありがとう。これからもよろしく。」
それだけ言うと俺に手を振って部屋を出て行った。あんな言葉が言えて様になってるのイケメンの特権か……? 顔が赤くなりつつ、モニターに目線を移す。
『千ちゃんのピッピ独占欲強くない? w』
『ガチ恋リアコ勢にトドメを刺していくスタイル』
『お付き合い報告ありがとう。次は事後の報告を事後報告頼む。事前報告でも可』
今日も俺の視聴者は楽しそうにチャットしつつ、「さぁゲームをやるぞー!」と俺が言うと、意識をみんなでゲームを楽しんだ。
「お帰りー! バイトお疲れ様。」
「ただいまー。ご飯美味しそうだね。ありがとう。遅くなるから先に食べてて良かったのに。」
「オレも今日本屋とかスーパーとか、買い物してから帰宅して遅くなったから、あんまり待ってないよ。ほら、ハンバーグもアツアツだよ。」
「ほんとだ。ありがとう、直ぐに食べよう!」
颯は器用でマメで何でもこなす。俺は颯のハンバーグとかピーマンの肉詰めとか、野菜炒めなどが特に好きだ。俺はカレーとかシチューとか肉じゃがとか……煮込み料理が出来る(美味しいとは言ってない)
食事を終え、食器を洗いながらどう話を切り出すか考える。返事を待たせてる状態だから、普通にその話題を出そうか……。返事をする前に1回キスしない? ってちょっと酷くないか。確かめようにもその前に断られるかも……。
洗い物が終わり、リビングのソファーに座り本を読んでいる颯の隣に座る。スー……ハー……緊張してきた。
「どうした? 千紘。」
「その……! この間の返事を、と思ってたんだけど……。」
颯は動きを止めると、本をテーブルに置き、テレビを消して体を俺の方に向けた。
「前にも言ったけど、俺は颯のことが好きだし、正直、他の人よりも特別に思ってる。……ただ、恋愛感情かどうかは分からなくて……。その……あまり経験が無いから、他の人にも相談したら、アドバイスを貰って。もし颯が良いならそれを試したい。」
「オレのことを特別に思ってくれてると分かっただけで嬉しいし、もし断られても諦めるつもりはないけど、試したいことがあるなら協力するよ。」
「ありがとう! なら……その……。キスして良い?」
「は?」
こんな颯の顔は初めて見るな。
告白された時もそうだけど、知らなかった颯のことが最近よく分かって嬉しいな。
「あ……もし嫌なら別の方法を考えるので……。」
「いや、キスしよう。キスは必要だ。俺たちに足りないのはキスだったんだ。俺も今気付いたよ、千紘は天才だな。よし、その提案、謹んでお受けする。」
「俺からのお願いなのに、何故かプレッシャーを感じる。でも本当に良かったの? 試されるみたいで嫌じゃない?」
「嫌じゃない嬉しいよ! それはもう棚から大量のぼたもちが降ってきたような……。」
「颯の気持ちにちゃんと向き合いたくて……。」
「鴨が葱を背負ってやって来たような。」
「ちょっと流れが変わってきたな。」
「現代風に言うと超ラッキーです。」
「急にバカ。」
俺がネギを背負ってるかはさておき、じゃあやるかと姿勢を整える。ソファーに座ったままだとしづらいと思ったので、ソファーの上で向かい合って正座している。
「オレからする?」
「いや……! 俺が言い出しっぺだから俺からする。」
気合いを入れて顔を近付ける。そして気付く。あ、これファーストキスだ。口がくっ付く瞬間にそのことが過ぎったが気合いそのままに、割とスピードがあったため止められない。
ぶちゅ。
キスしたというよりぶつかったという表現が正しく、しかもスピードが殺せず颯を後ろに倒してしまった。
「わぁー! 颯ごめーん!」
「大丈夫だよ、千紘からのキス嬉しかったな。」
「初めてだったからちゃんと出来なかったね……本当はもっと上手くしたかったんだけど。」
「……! 初めて……!! ねぇ、千紘、今のだけじゃ、まだよく分からないよね。」
「え……まぁそうだな……。キスする瞬間に、『あ、これファーストキスだ』って考えちゃって、そのままぶつかったからあんまり覚えてない。」
颯の上に乗ったままであることに気づき、どこうとするが、いつのまにか颯の手が背中と頭に固定され、動けない。
「颯?」
「じゃあもう一回しようか。」
「ん?」
そのまま背中を押されて颯の上に完全に乗っかり、体が重なる。文句を言おうと颯の顔をみたら、すぐ目の前にあった。目が合う。
「ん……! んふ……。」
颯の唇が優しく俺の唇に触れる。頭を動かしてふにふにと唇の感覚を楽しんだり、角度を変えたりして確かめようにキスをする。
あ……気持ち良いかも……。
あれ、嫌じゃなくて、気持ち良かったら、恋愛感情で好きなんだっけ……。
初めてのちゃんとしたキスにぽーっとしながら、颯からのキスを享受する。もっとしたいな……。んくんくと自分からも唇を合わせてたら、急にペロリと唇を舐められた!
「ひゃー!」
「くっ……ふふ……。千紘は本当に可愛いね。」
「か……かわ……。」
「で、分かった? オレのこと好き?」
「え……。」
「どういう好きか確かめる為にキスしたんでしょ。最後の方はキスに夢中だったから忘れちゃった?」
「そんな……いや……そうだけど……。」
キスが嫌じゃない男友達はもうただの友達は超えてる……よな?
ずっと颯に乗っかったままだったので、体を起こしてソファーに座る。
「その、俺、颯のことが、恋愛的に好き……かも? な感じで……。まだ100%断言出来なくて、曖昧になっちゃって申し訳ないけど、それでも良かったら、こんな俺でも良かったら付き合ってください。」
「千紘……!!!」
颯が声を上げて俺を抱き締める。ぎゅうっと俺を仕舞い込むようにするその力に安心する。なんかこう、帰る場所って感じがする。
「その、キスは気持ちよくて好きだから嬉しい。でも慣れないから出来れば少しずつ関係を進めて欲しい。」
「ありがとう、大好きだよ千紘。改めてこれからよろしくね。」
そう言ってまた触れるだけのキスをした。
さて、告白から3週間経ち、今から意識的に避けていたゲーム配信をする。あくまでいつも通りに始めて、いつも通り挨拶をする。しかし視聴者は流されない、そうは問屋が卸さない。チャット欄はあの後どうなったのかの質問で埋め尽くされた。
「えーとね、しばらくお休みしてごめんね。まぁご存知の通り色々あって自己を見つめ直していました。それで、お付き合いすることにしました。」
『祝☆結婚』
『千ちゃんが嫁に行ってしまった……』
『おめでとー!』
とほとんどの視聴者がお祝いしてくれた。
「颯から一言話したいそうです。」
元々話す予定で横に立っていた颯がマイクに近付く。
「もうオレだけの千だから、下心あるやつはさっさと去るように。あ、祝ってくれた方はありがとう。これからもよろしく。」
それだけ言うと俺に手を振って部屋を出て行った。あんな言葉が言えて様になってるのイケメンの特権か……? 顔が赤くなりつつ、モニターに目線を移す。
『千ちゃんのピッピ独占欲強くない? w』
『ガチ恋リアコ勢にトドメを刺していくスタイル』
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