配信中に友達から告白されたんだけど

ちゃちゃ

文字の大きさ
上 下
4 / 14

4 配信中に告白されて、付き合うことになりました。②

しおりを挟む
 帰宅すると、颯が出迎えてくれた。今日はハンバーグかな? お肉の良い匂いがする。
 
「お帰りー! バイトお疲れ様。」
「ただいまー。ご飯美味しそうだね。ありがとう。遅くなるから先に食べてて良かったのに。」
「オレも今日本屋とかスーパーとか、買い物してから帰宅して遅くなったから、あんまり待ってないよ。ほら、ハンバーグもアツアツだよ。」
「ほんとだ。ありがとう、直ぐに食べよう!」
 
 
 颯は器用でマメで何でもこなす。俺は颯のハンバーグとかピーマンの肉詰めとか、野菜炒めなどが特に好きだ。俺はカレーとかシチューとか肉じゃがとか……煮込み料理が出来る(美味しいとは言ってない)
 
 
 
 食事を終え、食器を洗いながらどう話を切り出すか考える。返事を待たせてる状態だから、普通にその話題を出そうか……。返事をする前に1回キスしない? ってちょっと酷くないか。確かめようにもその前に断られるかも……。
 
 
 洗い物が終わり、リビングのソファーに座り本を読んでいる颯の隣に座る。スー……ハー……緊張してきた。
 
「どうした? 千紘。」
「その……! この間の返事を、と思ってたんだけど……。」
 
 颯は動きを止めると、本をテーブルに置き、テレビを消して体を俺の方に向けた。
 
「前にも言ったけど、俺は颯のことが好きだし、正直、他の人よりも特別に思ってる。……ただ、恋愛感情かどうかは分からなくて……。その……あまり経験が無いから、他の人にも相談したら、アドバイスを貰って。もし颯が良いならそれを試したい。」
「オレのことを特別に思ってくれてると分かっただけで嬉しいし、もし断られても諦めるつもりはないけど、試したいことがあるなら協力するよ。」
「ありがとう! なら……その……。キスして良い?」
 
 
 
「は?」
 
 
 
 こんな颯の‪顔は初めて見るな。
 告白された時もそうだけど、知らなかった颯のことが最近よく分かって嬉しいな。
 
 
「あ……もし嫌なら別の方法を考えるので……。」
「いや、キスしよう。キスは必要だ。俺たちに足りないのはキスだったんだ。俺も今気付いたよ、千紘は天才だな。よし、その提案、謹んでお受けする。」
「俺からのお願いなのに、何故かプレッシャーを感じる。でも本当に良かったの? 試されるみたいで嫌じゃない?」
「嫌じゃない嬉しいよ! それはもう棚から大量のぼたもちが降ってきたような……。」
「颯の気持ちにちゃんと向き合いたくて……。」
「鴨が葱を背負しょってやって来たような。」
「ちょっと流れが変わってきたな。」
「現代風に言うと超ラッキーです。」
「急にバカ。」
 
 
 俺がネギを背負しょってるかはさておき、じゃあやるかと姿勢を整える。ソファーに座ったままだとしづらいと思ったので、ソファーの上で向かい合って正座している。
 
 
「オレからする?」
「いや……! 俺が言い出しっぺだから俺からする。」
 
 気合いを入れて顔を近付ける。そして気付く。あ、これファーストキスだ。口がくっ付く瞬間にそのことがぎったが気合いそのままに、割とスピードがあったため止められない。
 
 ぶちゅ。
 
 
 キスしたというよりぶつかったという表現が正しく、しかもスピードが殺せず颯を後ろに倒してしまった。
 
 
「わぁー! 颯ごめーん!」
「大丈夫だよ、千紘からのキス嬉しかったな。」
「初めてだったからちゃんと出来なかったね……本当はもっと上手くしたかったんだけど。」
「……! 初めて……!! ねぇ、千紘、今のだけじゃ、まだよく分からないよね。」
「え……まぁそうだな……。キスする瞬間に、『あ、これファーストキスだ』って考えちゃって、そのままぶつかったからあんまり覚えてない。」
 
 
 颯の上に乗ったままであることに気づき、どこうとするが、いつのまにか颯の手が背中と頭に固定され、動けない。
 
 
「颯?」
「じゃあもう一回しようか。」
「ん?」
 
 
 
 そのまま背中を押されて颯の上に完全に乗っかり、体が重なる。文句を言おうと颯の顔をみたら、すぐ目の前にあった。目が合う。
 
「ん……! んふ……。」
 
 颯の唇が優しく俺の唇に触れる。頭を動かしてふにふにと唇の感覚を楽しんだり、角度を変えたりして確かめようにキスをする。
 
 あ……気持ち良いかも……。
 あれ、嫌じゃなくて、気持ち良かったら、恋愛感情で好きなんだっけ……。
 
 初めてのちゃんとしたキスにぽーっとしながら、颯からのキスを享受する。もっとしたいな……。んくんくと自分からも唇を合わせてたら、急にペロリと唇を舐められた!
 
「ひゃー!」
「くっ……ふふ……。千紘は本当に可愛いね。」
「か……かわ……。」
「で、分かった? オレのこと好き?」
「え……。」
「どういう好きか確かめる為にキスしたんでしょ。最後の方はキスに夢中だったから忘れちゃった?」
「そんな……いや……そうだけど……。」
 
 
 キスが嫌じゃない男友達はもうただの友達は超えてる……よな?
 ずっと颯に乗っかったままだったので、体を起こしてソファーに座る。
 
 
「その、俺、颯のことが、恋愛的に好き……かも? な感じで……。まだ100%断言出来なくて、曖昧になっちゃって申し訳ないけど、それでも良かったら、こんな俺でも良かったら付き合ってください。」
「千紘……!!!」
 
 
 
 颯が声を上げて俺を抱き締める。ぎゅうっと俺を仕舞い込むようにするその力に安心する。なんかこう、帰る場所って感じがする。
 
 
「その、キスは気持ちよくて好きだから嬉しい。でも慣れないから出来れば少しずつ関係を進めて欲しい。」
「ありがとう、大好きだよ千紘。改めてこれからよろしくね。」
 
 
 そう言ってまた触れるだけのキスをした。
 
 
 
 さて、告白から3週間経ち、今から意識的に避けていたゲーム配信をする。あくまでいつも通りに始めて、いつも通り挨拶をする。しかし視聴者は流されない、そうは問屋が卸さない。チャット欄はあの後どうなったのかの質問で埋め尽くされた。
 
 
「えーとね、しばらくお休みしてごめんね。まぁご存知の通り色々あって自己を見つめ直していました。それで、お付き合いすることにしました。」
 
 
 
『祝☆結婚』
せんちゃんが嫁に行ってしまった……』
『おめでとー!』
 
 とほとんどの視聴者がお祝いしてくれた。
 
 
「颯から一言話したいそうです。」
 
 元々話す予定で横に立っていた颯がマイクに近付く。
 
 
「もうオレだけの千だから、下心あるやつはさっさと去るように。あ、祝ってくれた方はありがとう。これからもよろしく。」
 
 それだけ言うと俺に手を振って部屋を出て行った。あんな言葉が言えてさまになってるのイケメンの特権か……? 顔が赤くなりつつ、モニターに目線を移す。
 
 
 
 
『千ちゃんのピッピ独占欲強くない? w』
『ガチ恋リアコ勢にトドメを刺していくスタイル』
『お付き合い報告ありがとう。次は事後の報告を事後報告頼む。事前報告でも可』
 
 
 
 今日も俺の視聴者は楽しそうにチャットしつつ、「さぁゲームをやるぞー!」と俺が言うと、意識をみんなでゲームを楽しんだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

離したくない、離して欲しくない

mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。 久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。 そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。 テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。 翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。 そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。

夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト

春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。 クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。 夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。 2024.02.23〜02.27 イラスト:かもねさま

絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!

toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」 「すいません……」 ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪ 一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。 作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

罰ゲームって楽しいね♪

あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」 おれ七海 直也(ななみ なおや)は 告白された。 クールでかっこいいと言われている 鈴木 海(すずき かい)に、告白、 さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。 なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの 告白の答えを待つ…。 おれは、わかっていた────これは 罰ゲームだ。 きっと罰ゲームで『男に告白しろ』 とでも言われたのだろう…。 いいよ、なら──楽しんでやろう!! てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ! ひょんなことで海とつき合ったおれ…。 だが、それが…とんでもないことになる。 ────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪ この作品はpixivにも記載されています。

処理中です...