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5 雑談配信中に、リスナーとお悩み相談会が始まりました。

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 はやてとの付き合いは順調だ。毎日一緒にご飯食べたりゲームしたり出掛けたり。ハグは……まぁ前からしてたし……変わったことと言えば寝る前と起きた時のおでこへのキスが習慣化くらいだろうか。
 
 
 というか
 
 
「今までとあんまり変わらない気がする。」
 
 
 
 
 
 何故俺は視聴者にこんなことを話しているのか。
 
 今日は久しぶりにゲームではなく雑談配信をしていた。今後発売予定の遊んでみたいゲームの話、大学の苦手な科目の話、最近ハマってる食べ物の話なんかを、コメントを拾いながら話していった。
 
 今日颯は実家の集まりがあるとかで帰省している。暇だし週末だし配信するか! と告知してから3時間で配信をスタートしたのだ。
 
 
 楽しく雑談してる中、流れたコメントに目が止まる。
『彼氏のハヤテさんとは最近どうなのー?』
 
 どう? どうなんだろう。恋人になってから今まで楽しく過ごしてきたけど、よく考えたらキスも口には殆どしないし、それ以上はもちろんしてない。なんかかつてない程尽くされまくってお世話されてる感が凄い。
 仲は良いけど……。
 
 
「分かんない……。」
 
 
 少し沈んだ俺の声で、どのコメントに反応したのか、察しの良い視聴者には分かったらしい。
 
 
『彼氏と喧嘩中なんですか?』
『話、聞くよ?』
 
 
 なんて理解のある視聴者だ……、いや半分面白がってるでしょ。
 
 
 
「リスナーの中に俺より恋愛経験豊富ニキやネキがいるのか?」
 
せんよりはある』
『小三と同等かそれ以下のせんには言われたくない』
 
「皆、俺の何を知ってるんだ。……あ、めて!! もう死にたいです!!」
 
 
 
 精神攻撃が強い視聴者たちにフルボッコにされ、俺はポツポツと話し始めた。
 
 おかしい……一応俺の視聴者のはずだよな……? 一応ファンのはずだよな……?
 
 
 
 颯から告白されて、しばらく考えて付き合うことになったこと。
 元々俺の身の回りの世話をスマートにこなしていたこと。
 付き合うようになって、更に尽くされている感じがすること。
 ただ、それ以外のことはあんまり変わらないこと。
 
 
『あー、手に入れたら冷めるタイプってやつ?』
『付き合うという目標を達成した満足感で……ってやつ?』
『うーん尽くしてるなら愛情はあるんじゃない? 家族愛とか?』
 
 
 た……確かに、告白の返事を待ってくれている間はめちゃめちゃアプローチしてきた……。キスは唇以外なら隙あらばしてきたし、学校でも手を繋いできた。家でもしょっちゅう抱き締めてきた。今は尽くされるけど、挨拶みたいなキスとハグしかしてない……? いや、でも毎日「好きだよ。」って言ってくれる……。
 
 
 
『ほらー千ちゃん無言になっちゃったじゃんイジメすぎー。』
『でもまぁ今までハヤテさんからぐいぐい来てたなら、停滞気味の状態を解消する為にも、千から仕掛けたら良いんじゃ?』
 
 
 
「自分から……とか恥ずかしいな……。」
 
 
『え、てか千はちゃんとハヤテさんのこと好きなんだよね? あんだけリスナーに圧掛けてくる人なら、ちょっと千が「好き好き」言ったら即効じゃない?』
 
 

 
 そのコメントで気付いた。俺、『キスは好きだけど颯は好きかも?? 分かんない』的なことしかまだ言ってない。ちゃんと好きって言ってなくないか。




 俺が曖昧に返答したから、そういう恋人同士がやるようなこと、しないようにしてるのかな……。
 
 それか、本当に俺にもう飽きた……とか!? と一瞬思ったけど、普段颯が俺を見る表情は溶けるように笑っていて、普段クールな雰囲気とはまるで違う。俺を想ってくれる熱量は前より多い気もする。
 
 颯が俺に優しく笑うのが好きだ。
 髪をそっと撫でてくるのも、一緒にテレビを見てるとぎゅっと手を握ってくるのも、ご飯を作ると「ありがとうって」頬にキスされるのも好きだ。
 俺は颯が、颯が好きだ。
 
 元々人として好きだったんだから、言葉や表情であんなに好き好きって伝えられたら好きになっちゃうだろ……。
 
 
 
 チャット欄を見ると今なおどうしたらより仲が深まるかディスカッションしていた。配信主不在で。
 
 
「俺、やっぱり自分の言葉が足りなかった気がする。」
 
 
『あ、千戻ってきた』
『子どものように無邪気だった千が、自己を振り返り大人への と……(感涙)』
 
 
「とりあえず、俺は自分の気持ちを話して、アイツのやりたいこととか、どうしたいとか、聞いてみる!」
 
 
『頑張ってください💪🏻』
『あんまり考え過ぎず、素直な千さんは気持ちのままに伝えたら上手くいくよ! がんばれ』
『今日のあなたのラッキーアイテムは、えっちな下着です』
 
 
 
 視聴者のみんなに励まされ、何だか上手くいくような気がしてきた。えっちな下着は持ってません。
 
 俺はどうやって颯に想いを伝えるか、どうしたらもうちょっとスキンシップが増えるかを考えるのに集中していて、気付いていなかった。
 
 
 この配信は、現在ここにいない颯も見られるということに。
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