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迷宮からの脱出

番外編②

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うーん、どうしよ。ってかそもそも見えるとは…? エアーカッターは空気、いや風だから─景色がゆらいで見える、ってことだよね。…あ分かった! こうすればいいんだ。さっきのイメージで~?

ルビ•イフ•ナリルファイアウォール!

どうよ、この炎の壁! 火って風で揺らぐじゃん? 風前の灯とかいう言葉もあるし。ってわけでこの炎に向かってエアーカッターをぶち込めば、ゆらいで見えるんじゃない? っていうのがウチの作戦! では、手を炎の壁の方に向けて~? 

エメ•シル•リミアエアーカッター!
ブオン!

何かが体をすり抜ける感覚がして、一部の炎が大きくゆらいだ。あれがエアーカッター…! え、待っておもろ~。ちょっと魔力多めにしてもっかいやってみよ。でもどうやってやるんだ? あ、スキルで増強とか出来ないかな。魔力の調節とかあんまり分かんないし。…。よし、困ったときはあの人に聞いてみよう! みんなでせーのっ、カインさ~ん!

『スキル 魔力上限一時増強 魔法攻撃力増強 なドガあリマす』

さっすがぁ! 有能! グー○ルに勝るとも劣らない! よっ、日本一! あ、いや世界─異世界一いせかいいち! でもそれにしてもスキル名長いな。漢字にしたら…8文字と7文字もあるじゃん。っていうかここ異世界なのに異世界語とか無いの? ご都合主義よろしく日本語? それともカインさんだけ?

『こ─』

待って待って、やっぱいいや! やっぱそれ迷宮出たあとの楽しみにすることにしよう! だからまだ言わないでー! 

『…』

ふぅ。セェーッフ! 危うく楽しみをなくすとこだったぜ。んじゃ、魔力…なんとか増強と魔法なんとか増強のどっちかで短い方─

『魔法攻撃力増強』

あ、じゃあそっちやろ。
スキル•魔法攻撃力増強!
そして再び手を炎の壁の方に向けて~?

エメ•シル•リミアエアーカッター!
ブオン!

今度はさっきより2回りぐらい広めの範囲の炎がゆらいだ。うわ、すごいすごい! でもなんか普通のときより多めに魔力(らしきもの)がすり抜けてった気がする。スキルで増強してんのに魔力持っていくんかい! スキルの意味なくね!? 

『つウ常ヨり 負担コストは すクナいでス』

あら、そーなの。早とちりしてすまん。やっぱ比べる対象がないと分かりにくいもんだね。じゃ、そろそろエアーカッターも切り上げて…次の魔法の練習に移るか。ファイアウォールを解除して、っと。火水風ときたから、お次は土か! ゴーレムか! いやぁ、実はこれも夢の1つなんだよね~、ゴーレムと触れ合うの。でもまさか自分が生みの親になるとは思わなかったなー。っていうか、生涯でゴーレムに会え、る、の…は……そっか、ウチは地球あっちで死んでこの世界こっちに来たんだったな…。異世界にテンション上がってすっかり忘れてた。

そもそも死んだ─ってことは、もう戻れない…のかな。自分の最期の瞬間どころか、死因すら分かってないけど…。 お母さんとお父さんは…どうしてるんだろう。多分、悲しんでるよね。ゆうくんやみっちゃんや他の人はどうしてるんだろう。悲しんでくれてたら嬉しいな。

上を見上げる。こういうときは、真っ白な視界じゃなくて青空が良かったな。ウチは膝を付いて、そして手を祈るときのように組み合わて目を閉じた。

届くか分からないけど…

お父さん、お母さんへ。まず、親不孝な娘でごめんなさい。でも今、私は元気でやっています。どうか私のことは悲しまないで、この先も私の分まで長生きして下さい。

…そっと目を開けると白い床と、そして自分のものではない体が視界に入ってくる。嫌でも実感するって、こういうことなのね。

悲しまないで、というのは娘を失くした人には酷な言葉だったかもしれない。けど、お父さんとお母さんには残りの人生を楽しんで生きてほしい。私をダンジョン送りにした、神様らしきお姉さん。…見てますか? ウチの─私の願いを、届けてくれたら嬉しいです。


…。


よし、しんみりタイム終わりっ! 最後に、上に向かって手をブンブン振ってから立ち上がる。じゃあゴーレムを作るぞ! ウチのゴーレムのイメージは、
・茶色くて、
・ゴツくて、
・まさに岩!
って感じだけど…それでいいのか、ウチ? そんななやつでいいのか!? とウチの中の悪魔が囁いていらっしゃる。確かにゴーレムと言っても漫画によって違うし、メタルゴーレムとかいう亜種がいる作品もあるから、一概にゴーレムは こう! って言えないよね。でも、ウチは王道を行こうと思う。え~と、ゴーレムの呪文は何だっけ?

〈土魔法─ゴーレム〉
ゴーレムをつくる。魔力量・技術量により、大きさや数、耐久度、指示に対する動きの細かさ等を増幅させることができる。また、土に手をつけて発動すると、消費魔力を土の量だけ抑えられる。
呪文→ドウ•ノー•レムゴ

そうそう、土に手ぇつけて発動するといいんだっけ。ここに土は無いから出来ないけど。んじゃ、早速さっきのイメージで~?

ドウ•ノー•レムゴ!

ウチの目の前で、何もないところからどんどんと土らしき茶色い物体が現れる。そして先に足先、かかと、そして脛(すね)、膝と下からどんどんと思い描いていた人形(ゴーレム)を型づくっていった。ふぉ~! スッゲェ…! パネェ…!! ウチは別にガン○ムとかのロボットアニメは見ない人なんだけど、これは普通に感動する。だって、生みの親ウチだし! ウチだしィ!! そんじゃ早速、動かしてみよっかな。右手動け! グッパグッパしろー! 

シー•••ン

…えっ、とぉ…動かない、んだけど…えっ、どうやったら動くのこれ。

『スキル ノヨうに直前ニ ゴーレム と言イまス』

スキル•〇〇みたいにゴーレム•〇〇って言うのか。どうりで動かないわけだ。ん? なんかスキルの時も似たようなことしてた気が…。ま、いっか。えーと? こんな感じかな。

ゴーレム・右手をあげろ!

一応頭の中でイメージしながら念じる。すると、ゴーレムは念じたとおりに動いた。良かったぁ。なんか頭では常に何かしら考えてるのに、わざわざ念じるっていうのも変な話だけどまぁ、動いたならいいや。細かいことは知~らないっ。

ゴーレム・歩け!

こちらに向かって歩いてくるイメージをもって念じた。けど、ゴーレムは動かない。あれ?ちゃんと最初にゴーレムってつけたよ?

『細かク 指ジスる必要 ガあリまス』

マジか。細かくって…歩数とか? そこまでする必要ある?

『アりまス』

うへぇ。なんか学校でやったプログラミングみたい。あれって結構めんどくさいからあんまり好きじゃなかったんだよね。よく分からないコマンドとか欲しいコマンドが無かったりとかでさ。あ、でもスク○ッチで描くのはちょっと楽しかったかも。ま、それは置いといて。指示を細かくする必要があるんだよね? よし、

ゴーレム・10歩前進!

…ハァ? 動かねぇんだけど。え、歩数指定したよ?

『歩ハばも でス』

─いや、細かすぎるわ! ス○ラッチでもそんな指定したことないよ! いや、でもアレ開発した人がすでに決めてたからかもしれないけど。あー、兎に角いいや、ウチは動かしたいんだしそんくらいやってやるよチクショー!

ゴーレム・歩幅1mで10歩前進!

ドシン…ドシン…

やっっっと動いてくれたぁ~! えっ超感動なんだけど。子供が初めて歩いたときの親の気持ちってこんな感じ? それとも立ったク○ラに対するハイ○の気持ち的な気持ちなのかこれは? ともかくすごいすごい! じゃ、この調子で色々動かしてみよ。あ、そうだ忘れてた。

ゴーレム・右手を下げて良し!

ゴーレムがずっと上げっぱなしにしてた右手を下げる。いやぁ、ごめんごめん忘れてた。…あれ? 手を上げる動作って細かく指示して無い…んだけど。さっきの感じでいくと速度とか角度とかありそうなのに。でもゴーレムは動いてる…って、 どういうこと?

『さッキは 確コたルイメージ ガ無かッタのデ コとバで 補佐シタ のでス』

そういうことか。確かにあんまりはっきりと、ここまで来てほしい、とか思ったなかったかも。ほわっとしたイメージで歩け~と思っただけで。あ、待って? じゃあゴーレム軍団とか無理な感じ? あれ1体1体に指示出すとか無理すぎだもん。頑張って練習すればいけるかもだけど、一体いつになることやら。やっぱりどんだけ能力高くても経験がなきゃダメなのね。

じゃ、暫くゴーレムで遊んだら次に移るか。

~~~~

土魔法を解除する。楽しかったけど試しに3体に増やしてからは、半分脳トレみたいな感じだったな。ゴーレムのあとに1とか2とかつけて念じなきゃいけなかったし。どれがなんだか、たまに分かんなくなって大変だったわ。それじゃあ次に移ろっと。これで四大元素コンプしたから次は─光魔法! だ! 異世界学園モノでヒロインがよく適性あるヤツ! ウチは乙女ゲームなんてやったことないけど、ラノベとか悪役令嬢系の知識はある。だから楽しみだなぁっ!

〈光魔法─ヒール〉
術の対象者の傷を治癒する。魔力量・技術量により、その速度がはやまる。
呪文→サフ•ウィ•ピルロ

例え治るかもしれなくても、自分で自分を傷つけるのヤだなー。って言っても今はアイテムだし痛覚無さそうだけど。うーん…。よし、ウチは臆病者ということを自覚しておるので、此度の犠牲は髪の毛にしよう! 火でちょっと炙ることにする。幸い髪の毛長いし? 先っぽの方を少し焦がすだけだから。髪の毛燃えそうなら水で消せばいいし(※良い子は絶対にマネしないで下さい※)。

よし、そうと決まったら早速─髪の毛を数本、人差し指と中指で掴んで(いや、つまんで?)持ち上げる。もう片方の手の人差し指で、髪の毛を指して─

ルビ•イフ•フムヘファイアボール!
ボッ
ヒュゥ~

アッチチチチッ! 

マリ•ウン•ヘムフウォーターボール!

念じた途端、指先から火の玉が出現して髪の毛を通過して白の彼方へ飛んでいった。けど、問題はそこじゃない。ねぇ、髪の毛さぁ! 火がついてめちゃ燃えたんですけど! そんなに燃え上がることある? 水ぶつけてなかったら焼け切れてヒールどころじゃなかったわ! あっっぶな。やっぱ、火は大人と一緒に扱いましょう、だな。もし一歩間違ってたら第2の人生(本生?)も数日で幕閉じだったよ! ハァ、もういいや。過ぎたことだし、これから気をつければいっか。…とかなんとか言って忘れるタイプだからなぁ、ウチは。ま、その時はその時ってことで! よし、光魔法ヒール使お。

サフ•ウィ•ピルロ!

…およ? 何も起こらぬ。髪の毛に聖なる光的なものが降り注いで、たちどころに元に戻っていく─ってのを想像してたんだけど。何回髪の毛見てみてもさっきと変わらず焼けた後のまんま。髪の毛にヒールは使えないってこと? えぇ、じゃあやっぱり体を傷つけなきゃ駄目? 血とかマジで嫌なんだけど。いや、でもアイテムだから血がそもそも無いのかも。だからって傷つけるたくはないけどさ。 

『杖ヲ除ク 神話キゅうアイテム ニ 四大ゲん素 以ガいハ 扱え マせン』

おぉっと、ここでカインさんからの嬉しいような嬉しくないようなお知らせだぁー! もっと早く言ってよ! 燃やした髪の毛元に戻らんじゃん! えぇ、どうしよ。燃えた所ここだけ切り取る? でもウチって、長さ揃えようとして最終的にめちゃくちゃ短くしちゃうタイプなんだよなぁ。最悪坊主もあり得る…。やだやだ、絶対ヤダ! こうなったらもういっそ人化解除して作り直すか? 

『はイ 良イと思イ まス』

よし、じゃあカインさんからのお墨付きも得たことだし、

スキル•人化解除!

人化した時と同じように光に包まれる。そして、ウチは(数時間しか経ってないけど)懐かしき本の姿へと戻った。
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