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迷宮からの脱出

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でも、感覚はあるんだよね。壁に埋まってる感じじゃないけど。なんかこれ、擬似空間の入り口に似てるな。しかもよく見ると、腕と壁との境界線に小さく波紋が広がっている。試しに腕を引き戻してみると、さっきとなんの変哲もない腕が戻ってきた。グッパグッパしてみるけど、やっぱ変わったとこはないね。……あ、分かったかも。ねぇ、カインさん? もしかしてこの壁……異空間の入り口か幻覚だったりする? 

『正解 正確には一定値以上の魔力を
持つ者のみを通す結界と 幻覚の組み合わせです』

やっぱり! 実態はないから、腕がすり抜けたんだ。この先にコアがあるのね…! とりま先に顔だけすり抜けさせてみる。多分、あっちの部屋に人がいたら、壁に顔が浮き出てるように見えるだろうな。ヒロ○カの、とある透けるパイセンみたいな感じで。んで、やっぱりこっちも部屋でした。ウチがもと居た部屋と反転して全くおんなじ、鏡合わせのような部屋。ただ、ウチが洋服の材料にしちゃった台と、その上にご丁寧にクッションの上に置かれたコアらしき赤丸い球体がある、っていうのが違うところだけど。それ以外、例えば天井のキューピット像? も、鏡合わせの同じ位置にある。

っていうか正直、この体勢ちょっとキツイから全部入っちゃお。台に近づいてコアを手に取る。天井に透かしてみるけど、半分透けてる? ぐらいの透明度だね、コレ。……これを壊したら、脱出完了か。見た目的には脆そうだけど、そんなカタいん? このまんまグググっと握れば割─

パリィイン!!

…あらま、割れちゃった。いや、結構本気でやったから、かも。イケそうだったもの、で!? 

「おおおお、すすんごおいゆ ううれててるるるうう!!」

急にダンジョン自体が大きく揺れ始めた。立っていられなくて、地面にへたれ込む。なんか天井崩れてない? キューピットの頬が欠けて、パラパラと小さい破片が落ちてきた。ウチは、回収しようとコアの欠片に手を伸ばし─自分の手先を見てギョッとする。

半・透・明 !!

体のあちこちを見ると、どこも半透明になってて、向こう側が見える。しかもなんでか知らないけど、服も一緒に半透明になってた。あ、これは普通にありがたい。でも1箇所だけ、他と違う変化をしているところがあった。─反対側の手。いつの間にか手の甲に、何か知らんけど紋章マーク?みたいなのがついてて、よく見ると文字も書いてある。「มิโอริ」。うん、読めん。この世界の言葉かな? そのマークと文字が、控えめに(鈍く)光を放っていた。

っていうかコアを見て気づいたけど…やっちゃったわー。さっきスメラギ君に、「武器・武具集めが趣味だよキラン」 みたいなこと豪語してたのに、ドライアドのドロプ(ドロップアイテムの略称ね) 集め忘れた。草冠しか持ってない~。ぴえぴえまる。と、何故か割れてたコアが光を放ち始めた! だんだん強くなっていって、目も開けていられなくなる。もしかしてこれが、皆の言う「もれなく地上に帰される」って現象なのかも。そして、ふわっと体が浮いたような気が、一瞬した。無重力ってこんな感じなのかな? 後、地面に投げ出されたのか、背中に地面の感触を感じる。ついでに草の独特な香りも。恐る恐る目を開けると、目の前に

青空が広がっていた。

こっちに来転生してから、初めて見る
太陽ッ! 雲ッ!! 青ッ空ッ…!!
うぉおおお!! 色々あったけど、ウチはやっとダンジョンを脱出したんだ…! 当初の目的、これにて達☆成! 太陽に手をかざしてみる。ふぉお、お空が眩しいぜ。ところで、どうやらウチは地面に大の字で寝っ転がっている体勢らしい。横を向いてみると草が鼻先をかすった─のとついでに、芋虫と目があったような気もした。

「ぎゃあああ!!」

慌てて起き上がる。ウチは虫のたぐいがマジで苦手なんよ勘弁して! 服をパンパンって手で払うけど…うぅ、虫とかついてないよね? いや、草があれば虫もいるのは当然だけども! ところで、どうやらここは森の中の開けた場所らしい。ウチを中心として草が円形に広がってるけど、その外側には木とか茂みがいっぱいある。…ダンジョンっていう亜空間が存在することと、魔法があること以外は普通に地球とそんな変わらないかも。植物も虫も普通だし。太陽も2つあったりしないし。ちゃんと青空だし。

…そういえば他の人はドコなんだろ? 赤の他人の冒険者はともかく、勇者パーティーの皆すら見当たらないのは、どーゆーことよ? あ!っていうか、まだエドガワ君に太田手君見せてもらってない!! これは即刻合流しなくては。

スキル•詳細索敵
ガサガサ ガサガサ

うぁあ、ビックリした!! 茂みが揺れてるぅ。スキル使用と同時に揺らすのは良くないよビックリするでしょーが! スキル上では青点だから敵意はなさそうだけど…。ど、動物? それなら植物&虫同様、普通の動物でありますように!

「!!」

…動物じゃなかった。少なくとも、四本脚で歩いてない。身につけてるローブの色がミオリちゃんのローブの暗い紫に似てたから、一瞬ミオリちゃんか思ったけど体格的に違う。ガッチリしてるし、どっからどう見ても男ですね、ハイ。けど、顔がローブのフードに隠れてるから見えないんだよね。もうちょっとこっちに来てくれるとありがたいんだけど。

「そこで何してる?」

しゃ、喋りかけられたー!!
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