23 / 40
迷宮からの脱出
お目当て
しおりを挟む※※※※※
目が覚めたとき、どういう状況になっているのかよくわからなかった。
えっと……ふたりに挟まれて寝ていたはずだけど。
私はむくりと身体を起こす。足元のほうにふたりの気配を感じた。
「…………」
気持ちよさそうに、アメシストとシトリンがくっついて寝ていた。青年の姿をしているのに、仔犬が身を寄せ合って寝ているみたいな様子でなんとも微笑ましい。
昨日も思ったけどさ、仲良いよね……
もともとひとつの石だったのだ。接触しているほうが安定するのかもしれない。
「別々に喚び出すのがあの石にとって正解だったのかもしれないけれど、こういうのを見せられるとアメトリンとして喚ぶべきだったんじゃないかって考えちゃうよねえ……」
ふたりの頭を撫でてやると、くすぐったそうに身じろぎをして目を開けた。
「んー、おはよう、マスター」
「おはよう。眠れなかったのか?」
それぞれが小さくあくびをして身体を起こした。
「おはようございます、アメシストさん、シトリンさん。私はちゃんと眠れたので元気です。おふたりはいかがですか?」
「僕は元気だよ。マスターの隣で寝ると回復も早いみたいだねえ」
「俺も元気だ。ここは寝心地がいい」
「そりゃあまあ、狭いベッドでぎゅうぎゅうに寝ていたのと比べたら、心地がいいんじゃないですかね?」
病院では一人用のベッドにふたりで寝ていたのだ。このベッドは充分すぎるくらい広いのだから、それだけでも快適だろう。
「今夜も一緒に寝られるとありがたいんだが」
「私に手を出さない約束ができるなら、前向きに検討しましょう」
「僕も一緒がいいなあ。次は毛布も持ってくるから、ね?」
「……考えさせてください」
ふと思い出したが、ルビは夜中にこの部屋を訪ねたのだろうか。ぐっすり寝過ぎて私は起きもしなかったのだが。
※※※※※
アメシストとシトリンのふたりを連れ立って食堂を訪ねると、朝食の準備が進んでいた。焼いたパンの匂いとお茶の香りが満ちている。
「おはよう、マスター。昨夜はお楽しみだったのか?」
「おはようございます、ルビさん、別に何も楽しいことはありませんが」
なんのことだろうと首を傾げると、アメシストとシトリンが居心地悪そうにした。厨房から顔を出したオパールが笑っている。
「あまりからかってやるなよ、ルビくん。マスターの部屋に忍び込めなかったからって、そういうのは感心しないなあ」
「鉱物人形がマスターに触れ合いを求めるのは自然だろう? あんただって、教官殿とよろしくしていたんじゃないのか?」
不満げにルビが返すと、オパールは朝食の準備をしながら余裕の笑みを浮かべる。
「そりゃあオレと彼女は夫婦だからな。することはするぞ」
「……ご夫婦なんですか?」
思わぬ発言に、私は適当な椅子に腰を下ろして尋ねた。オパールはこちらを見る。
「説明されなかったのか。協会職員は別段の事情がない限りは既婚者なんだよ。人間の伴侶がいなければ、オレらみたいに人間と鉱物人形で結婚しているんだぜ。回復させることを考えたら、そういうことにしておいたほうが都合がいいだろ?」
なるほど、粘膜接触……
私はわかったようなわからないような気持ちで頷いておく。
そういえば、セレナの姿が見えないのだが、体力的なものでまだ寝ているということだろうか。
むむむ……いつかはそういうことをしないといけなくなるんでしょうか……
私はしれっと両隣に挟んで座るアメシストとシトリンを見やる。
大きな怪我をさせなければいい話、よね?
目が覚めたとき、どういう状況になっているのかよくわからなかった。
えっと……ふたりに挟まれて寝ていたはずだけど。
私はむくりと身体を起こす。足元のほうにふたりの気配を感じた。
「…………」
気持ちよさそうに、アメシストとシトリンがくっついて寝ていた。青年の姿をしているのに、仔犬が身を寄せ合って寝ているみたいな様子でなんとも微笑ましい。
昨日も思ったけどさ、仲良いよね……
もともとひとつの石だったのだ。接触しているほうが安定するのかもしれない。
「別々に喚び出すのがあの石にとって正解だったのかもしれないけれど、こういうのを見せられるとアメトリンとして喚ぶべきだったんじゃないかって考えちゃうよねえ……」
ふたりの頭を撫でてやると、くすぐったそうに身じろぎをして目を開けた。
「んー、おはよう、マスター」
「おはよう。眠れなかったのか?」
それぞれが小さくあくびをして身体を起こした。
「おはようございます、アメシストさん、シトリンさん。私はちゃんと眠れたので元気です。おふたりはいかがですか?」
「僕は元気だよ。マスターの隣で寝ると回復も早いみたいだねえ」
「俺も元気だ。ここは寝心地がいい」
「そりゃあまあ、狭いベッドでぎゅうぎゅうに寝ていたのと比べたら、心地がいいんじゃないですかね?」
病院では一人用のベッドにふたりで寝ていたのだ。このベッドは充分すぎるくらい広いのだから、それだけでも快適だろう。
「今夜も一緒に寝られるとありがたいんだが」
「私に手を出さない約束ができるなら、前向きに検討しましょう」
「僕も一緒がいいなあ。次は毛布も持ってくるから、ね?」
「……考えさせてください」
ふと思い出したが、ルビは夜中にこの部屋を訪ねたのだろうか。ぐっすり寝過ぎて私は起きもしなかったのだが。
※※※※※
アメシストとシトリンのふたりを連れ立って食堂を訪ねると、朝食の準備が進んでいた。焼いたパンの匂いとお茶の香りが満ちている。
「おはよう、マスター。昨夜はお楽しみだったのか?」
「おはようございます、ルビさん、別に何も楽しいことはありませんが」
なんのことだろうと首を傾げると、アメシストとシトリンが居心地悪そうにした。厨房から顔を出したオパールが笑っている。
「あまりからかってやるなよ、ルビくん。マスターの部屋に忍び込めなかったからって、そういうのは感心しないなあ」
「鉱物人形がマスターに触れ合いを求めるのは自然だろう? あんただって、教官殿とよろしくしていたんじゃないのか?」
不満げにルビが返すと、オパールは朝食の準備をしながら余裕の笑みを浮かべる。
「そりゃあオレと彼女は夫婦だからな。することはするぞ」
「……ご夫婦なんですか?」
思わぬ発言に、私は適当な椅子に腰を下ろして尋ねた。オパールはこちらを見る。
「説明されなかったのか。協会職員は別段の事情がない限りは既婚者なんだよ。人間の伴侶がいなければ、オレらみたいに人間と鉱物人形で結婚しているんだぜ。回復させることを考えたら、そういうことにしておいたほうが都合がいいだろ?」
なるほど、粘膜接触……
私はわかったようなわからないような気持ちで頷いておく。
そういえば、セレナの姿が見えないのだが、体力的なものでまだ寝ているということだろうか。
むむむ……いつかはそういうことをしないといけなくなるんでしょうか……
私はしれっと両隣に挟んで座るアメシストとシトリンを見やる。
大きな怪我をさせなければいい話、よね?
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます


転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる