上 下
20 / 40
迷宮からの脱出

便利グッズ

しおりを挟む
ぬっ、と現れたボスの顔面にウォーターボールを叩きつける。っていうか真ん中のヤツだけ異様に攻撃くらってない? 気のせい? お前だけ顔、(というか首?)めちゃボコボコだけど。これが接近戦に不利な後衛職の辛さか……? でもごめんよ。容赦なくやらせてもらうわ。

マリ•ウン•ヘムフ!
マリ•ウン•ヘムフ!
マリ•ウン•ヘムフ─!

ウチの強みは無限魔力だからね。ひたすらにボスにウォーターボールを放ち続ける。顔、首、腕、胴体にできるだけ均等に。弱点とかあるかもだからね。とりあえず探っといて損はないっしょ。

─ギャァァア!!!

ボスが悲鳴をあげて腕と斧で己をガードするような体勢をとり、後ずさった。やっぱり水が弱点みたい。炎の壁─ファイアウォールも消える。なんてナイスタイミング。確かにあんだけ魔法使ってたし、トドメにデカめの継続系魔法使ったしなぁ。体力と違って魔力は自然回復しか回復手段ないし、魔力切れになって当然っちゃ当然なのかも。そうして再びウチの視界に光が戻る。っていうかダンジョンの天井、どうなってんの? 室内じゃん、ここ。何故に明るいんだ蛍光灯でもついてるんか? 見たところそれらしいのは無さそうだけど。

『光る岩 が使われているようです』

へぇ。便利グッズみたい。でも異世界あるあるだよね。是非1つもらっていきたいわ何に使うか分かんないけど。  ボスに向かって歩く。皆の方を見ると、だいぶ回復してきたみたい。意識も戻ってきてるし、応援してくれているのか、必死になにかを叫んでる。もうそんな元気になったのか、良かったぁ。けど、声は空気の震えだから、風の防壁に阻まれてなんて言ってんのか全然わかんないわ。ごめんよ。でもなんか初めて会った時のこと思い出すね。あのときも─

「うぎゃっ!」

痛った~い。むっ。仕返しでエアーカッターを飛ばす。…また真ん中のヤツに当たった。……(そっと手を合わせる。うん、ごめんて)。でも、もう! ここは回想シーンに入るとこでしょーが。何ファイアボールぶっ放してんの! 魔力温存で物理攻撃しろよ。斧使うかと思って油断したじゃん、もう。あっ、じゃさっき必死に叫んでたのってコレ? この攻撃のため? ……そういえばよく見るわな、こういうシーン。味方が必死に叫ぶが、戦ってる人は後ろからの攻撃に気づかず大ピンチ! ってね。んで、そういうところでコンティニュートゥーネクストって次回予告に入るんだよ。ついでにいうとそういう時は主人公は大体生き残ってて、お仲間もギリギリで生き残ってて、敵とかモブは4ぬんだよなぁ。

更にエアーカッターを放つ。もう時間稼ぎもいらないし、そろそろ本気でいこうかな。先に目くらまし代わりに、弱点の水属性魔法のウォーターウォールでボスを囲む。目には目を、歯には歯を、壁には壁を!

マリ•ウン•ルリナウォーターウォール!

ボスの姿が水の壁の向こうに消えた。念の為背後にまわりこむ。ウォーターウォールは円形にボスを囲んでるから、どこからでもボスの姿は見えない─けど。

「円の中にいるならどこからでも同じ、だよ、ねっ!」

ダガーを放つ。なんかダーツしてるみたいだわ。前世ではやったことないけど。ボスは図体がデカい。つまり的はデカい。当然、放ったダガーは命中した。その証拠に、悲鳴が聞こえる。いやぁ、デカいヤツもこういう時は助かるねぇ。ちなみにダガーにはこれでもかとスキルを付与しておいた。普通の状態ならまだしも、あの状態で貫けないものはほぼないと思う。

ちなみに強化ダガーは量産がめんどいので手元の二本しか持ってない。ま、多分大丈夫でしょ。とりあえずさっき咄嗟に庇ってた場所に核ありそうだから、ボスが普通に立ってると仮定してそこ狙った。なくなったら取りに行けばいいし。最終手段としてド○えもんのと○よせバッグみたいな感じで取ればいい。いくら回復スキルが強くても核を壊されたらおしまいだもんね。

だけどおっと、どうやらボスも馬鹿ではないみたいだぞ。斧をブンブン振り回し始めた。ハリケーンみたいだ。ウォーターウォールはボスが入ってちょっと隙間あるかなぐらいだから、斧が水の壁を斬って飛沫をとばす。武器は本体じゃないから当たっても問題ないのか。しかもグルグルしてるから、ものすごく狙いにくい。ボス、お前考えたな。それにしても水飛沫が邪魔だな、ウォーターウォール消すか。

パチン!

指を鳴らしてから魔法を解除する。うはは、一回やってみたかったんだよね、コレ。まさか叶うとは。と、ボスがハリケーン状態のまんま迫ってきた! あぁそっか! 水という障壁がなくなったから動けるようになったんだ。うへぇ、どしよっかな。いや、でも逆に好都合か? もしダガーがボスを貫く威力を保てるんなら、グルグルしてない時よりもこの時の方が大きく肉体が削れるハズ…! ま、とにかくやってみよ~。どうせ最初から思いつき次第試してくつもりだったし。

シュッ
シュッ

どうせならと思ったんで、思い切って二本とも飛ばしました! 人間、思い切りが大事だよね! と、冗談はこれぐらいにして。いや、あながち冗談でもないんだけどさ。ともかく、ダガーはボスに向かって飛んでいった。突き抜けろ突き抜けろ突き抜けろ突き抜けろ─! と、祈ってて気付く。─コレ、ウチが魔法で援護すれば良くね? ボスが苦手な水魔法で。ニヤッと笑う。悪い笑顔というやつだ。ウチはボスに向かって右手 手のひらをつきだした。

マリ•ウン•シリアウォーターレーザー!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

旦那様、愛人を作ってもいいですか?

ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。 「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」 これ、旦那様から、初夜での言葉です。 んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと? ’18/10/21…おまけ小話追加

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。 失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。 7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。 ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。 ※よくある話で設定はゆるいです。 誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

処理中です...