解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流

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第1章 守護龍の謎

第26話 ドラゴンってこいつのことか?

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 俺は手頃な大きさの石を見つけると、それを枕にして寝転ぶ。すると、隣で横になっていたフラウがこちらを向いてきた。

「あの、もっとこっち来てもらっていいですか?」
「……い、いいけどさ」

 俺は言われるがままに体を動かす。……フラウの顔がすぐ目の前にあった。
 フラウも自分の顔が近いことに気づいたようで、慌てて反対側を向いた。

「ご、ごめんなさい。……その、ロイの心臓の音を聞いてると、すごく落ち着くんです」
「そっか」

 俺もつられて反対方向を見る。……沈黙が流れた。
 フラウは何か言いたげだったが、言葉を飲み込むように黙ったままだ。

「……どうかしたのか?」

 俺は気になって聞いてみることにする。

「どうでもいいことを考えていただけです」
「……そう言われると余計気になるな」
「私がいなくなったら、ロイはどうなってしまうのかなって……」

 それはフラウらしくない弱々しい口調だった。

「……心配しなくても大丈夫だよ。俺はフラウがいなくなっても生きていくことができる。だから、安心してくれ」
「そういう意味じゃないですよ」

 フラウは拗ねたような声で言った。

「私がいなくなったら、ロイは他の誰かのものになってしまうのかなって気になっただけです」

 ドラゴンは人間に比べて独占欲が強いと聞いたことがある。フラウは契約相手である俺を自分の所有物として認識していて、誰にも取られたくないと思っているのかもしれない。

「ロイは優しいですから、きっと私以外の女性ともうまくやっていけると思います。だけど……」

 そこで、再び沈黙が流れる。

「私は嫌です。他の女と一緒にいるあなたなんて見たくない」
「……どうして?」
「どうしてもこうしてもないです。ただ単純に、あなたのことを独り占めしたいだけなんですよ」
「……」

 ……正直、嬉しい気持ちはある。俺だってできることならフラウを独占したい。でも……。
 俺には、女神との戦いが終わったらあることをすると決意していた。もう、フラウが誰にも縛られなくてもいいように。

「……なあフラウ」
「なんですか?」
「守護龍がドラゴンライダーに譲渡した魔力って、返したりできないのか?」
「守護龍が魔力を譲渡し、ドラゴンライダーがそれを行使して共に戦うというのが契約ですから。契約が有効である以上、不可能です」
「じゃあさ……」

 俺は少し間を置いてから続けた。

「契約を解除したらどうなるんだ?」
「……ロイ?」
「……いや、なんでもない忘れてくれ」
「もしかしてロイ、私との契約を解除するつもりですか?」

 フラウの声が震えている。……しまった。こんな言い方じゃ、まるで図星みたいじゃないか。……いや、でもこのままだとフラウが不幸になるだけだ。俺は間違っていないはず。

「ロイは私のことが嫌いなんですね! 一緒にはいられない、そういうことですかっ!?」
「そんなわけないだろ? 俺がフラウのことを嫌いになると思うか?」
「……だったら!」
「──っ!」
「だったら、最期まで一緒にいてくださいよ!」

 フラウは涙を流しながら叫んだ。俺はその姿を見て、胸が締め付けられる思いに駆られる。契約を解除すればフラウが救われるなんて、短絡的だったかもしれない。
 彼女の身体は救われるかもしれないが、心に傷を負ってしまえば本末転倒だ。

「……そうだな。悪かった」
「いえ、私こそ取り乱してすみません……」

 フラウは涙を拭うと、俺の方を向いた。

「そもそも、ドラゴンライダーの契約を解除するなんて前代未聞ですよ。契約が解除されるときは、どちらかが死んだ時です」
「そうなんだ」
「ええ。ですから、どちらかが死ぬまで私とロイの契約が解除されることはありません。そして、ロイは私が死なせません」
「……そっか」

 俺はフラウの頭を撫でる。彼女は気持ち良さそうに目を細めた。

「あの、一つだけお願いがあるんですが……」

 フラウが上目遣いでこちらを見てくる。……こういうところは本当に可愛いな。

「なんだ?」
「……抱きしめてもらってもいいですか?」
「ああ」

 俺はフラウを抱き寄せる。フラウもおずおずと腕を伸ばしてきた。

「ロイの心臓の音を聞くのは落ち着きますね」
「だな」
「ロイは温かいです」
「それは良かった」
「こうしてると、ロイが生きてるんだなって感じます。……私も、まだ生きてますか?」
「ああ、生きてるぞ」

 しばらく無言の時間が流れる。フラウは穏やかな表情を浮かべていた。

「……ねえ、ロイ」
「ん?」
「大好きです」

 フラウはそう言うと、俺の腕の中で眠りについた。俺はそんなフラウを見て微笑む。
 俺は絶対にこの子を守る。たとえ何を犠牲にしても。……俺はフラウを守り続けるだろう。例えそれがどんな結末を迎えるとしても。



 翌日、俺たちは再びドラゴンスレイヤーを探し始めた。そして、ふと空を見上げた時、名案を思いついた。……というか、今まで何故思い浮かばなかったのか不思議なくらいだ。

「なあ……ドラゴンスレイヤーなら、フラウがドラゴンの姿で飛び回ってたら追いかけてくるんじゃないか?」
「そうかもしれませんけど、ドラゴンの姿で空を飛ぶのは目立つし、他の魔物を呼び寄せてしまってロイにも迷惑がかかるから嫌です」
「まあまあ、ものは試しさ。でもくれぐれも戦闘はするなよ?」

 俺はフラウを説得してドラゴンの姿になってもらうことにした。

「……わかりました。ちょっとだけですよ?」

 フラウは渋々といった様子だったが、すぐに変身してくれた。やはり、空を飛べるというのは便利だな。

「俺は地面から探すから、適当にぐるぐる飛び回ってからまたこの辺に降りてくれ」
「了解です」

 フラウは翼を羽ばたかせ、ゆっくりと上昇していく。周囲の木々からは慌てふためいた鳥たちが一斉に飛び立ち、森の中はそれなりの騒ぎになった。
 それから一時間ほど経った頃だろうか。辺りを飛び回ったフラウが戻ってきて、人間をの姿に変身した。やはり、人間の姿の方が楽のようだ。

 しばらく周囲を警戒していると、案の定茂みをかき分けて大剣を担いだスキンヘッドの大男が現れた。男は俺たちに気づくと目を丸くした。

「ありゃ、いつぞやの兄ちゃんと嬢ちゃんじゃねぇか。どうしてこんな所にいるんだよ?」
「それはこっちのセリフだよおっさん。何しに行くところだ?」
「あぁ、さっきこの辺にドラゴンが降りるのを見てな。兄ちゃんたち、ドラゴンを見てねぇか? どっちに行ったか教えてくれ」

「ドラゴンって……こいつのことか?」
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