解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流

文字の大きさ
24 / 40
第1章 守護龍の謎

第24話 契約には代償があるようです

しおりを挟む
 フラウは寂しげに答える。

「はぁ……やっぱりよく分かんない」

 アイシアはため息をつくと、俺の方をチラッと見て、すぐにフラウに視線を戻した。

「ねえ、ウチに何か用があるなら早く済ませてくれないかな。あと人間に話すことはないからさっさと消えて欲しいんだけど」

 アイシアは苛立った口調で急かす。

「待ってくれよ。君に聞きたいことがあるんだ」

 俺は慌てて言った。しかし、彼女は聞く耳を持たずに背を向ける。

「あ、あの……」

 フラウが呼び止めようとすると、アイシアは振り返らずに言った。

「あんたたち、フラウに免じて今までのことは水に流してあげるからもう二度とここへ来ないでくれる? 次戻ってきた時にまたいたら、今度こそ殺すから」

 アイシアはそのままドラゴンの姿に戻ると飛び去って行った。

「……」

 残された俺達はしばらく無言になる。

「……ロイごめんなさい。姉様はいつもあんな感じだから」

 沈黙を破ったのはフラウだ。その声音には元気がない。

「いや、ここにフラウの姉ちゃんが住んでいたことも想定外だし、ドラゴンスレイヤーのおっさんがフラウと間違えてアイシアを襲ったのも想定外だ。……仕方ないさ」

 俺は肩を落とすフラウに声をかける。

「でも、このままじゃいけないと思うんです。私も姉様も……。だって私のせいで姉様が殺されかけたんですよ? それなのに何もできないなんて嫌です」

 フラウは涙ぐんだ瞳で訴えかける。

「そうだな。……一緒に飲んだ手前少し気が引けるが、ドラゴンスレイヤーのおっさんを捕まえてアイシアのところに引っ張っていったら機嫌直してくれるかな?」

 俺は冗談交じりに提案した。

「そうですね。……でも、相手は姉様を追い詰めた相手です。無理はしないでくださいね」

 フラウは心配そうな顔でこちらを見つめる。

「大丈夫だよ。なんてったって俺は最強のドラゴンライダーで救世主になる予定の男だし、なによりフラウがいてくれるからな」

 俺は笑顔で答えた。

「ありがとうございます。……なんだか、ロイはいつでも前向きで本当に凄い人ですね。そんな人に会えてよかった……」

 フラウも微笑みを返してくれた。そして、彼女の身体が淡く光を放つ。つられるようにして、俺の身体もぼんやりと光り始めた。

「え!? なんですかこれ? 一体どうなって……」

 フラウは戸惑っているようだ。

「フラウ! 落ち着いてくれ。俺にも何が起こっているのか分からないんだ!」

 俺は焦ってフラウの手を握る。

「あ……ごめんなさい。……なんだか、力が抜けていくみたいで……」

 フラウの声は弱々しい。

「フラウ、しっかりしてくれ。これからおっさんを捕まえてアイシアのところに行くっていうのに、こんなところで倒れられたら困るんだよ」

 俺は必死に呼びかけるが、フラウは力なく首を横に振る。

「ごめんなさい。私にはもう時間が無いみたいなんです」
「どういうことだよ?」
「ロイ、私はロイに黙っていたことが一つだけありました」

 フラウは静かに語り始める。

「守護龍がドラゴンライダーと契約するのは一度だけ。契約相手を失った守護龍は普通、守護龍の役目を子どもに委ねると、寿命を迎えるまで永い眠りについてほとんど姿を現すことはありません」
「で、でもフラウは俺の前にマリオンとかいうやつと契約してたんだろ?」
「はい。……私がロイと契約したのは本来掟破りなんです。守護龍とドラゴンライダーの契約はその性質上、両者にとってとても負担が大きい。二度も人間に魔力を譲渡した私は、きっともう限界だったのでしょう」

 フラウは悲しげに笑う。

「そ、そんなこと急に言われても……どうして……」

 俺は激しく動揺していた。きっと、フラウと俺が完全契約を結んだのが引き金だったのだろう。彼女がやたらと俺との交尾を望むようになったのも、自分の死期を悟っていて、その前に子孫を残したいという本能だとしたら頷ける。
 ……でも、そんなこと王宮図書館の書物にも、守護龍の書にも書かれてなかったぞ?

「ごめんなさい。ロイは私の命を救ってくれたのに、私は何も恩返しができませんでした」

 フラウの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。

「……そんなこと言うなよ。俺はフラウのおかげでここまでやって来れたんだぜ。俺は君に何度も助けられてきたし、君のことを大切な仲間だと思ってる」

 俺はフラウを励まそうと言葉をかける。

「仲間……それだけですか?」
「いや……フラウは世界一大切な恋人だよ」
「嬉しい……。ロイはやっぱり優しいですね」

 フラウは嬉しさに顔をほころばせる。しかし、その表情はすぐに曇ってしまった。

「もう時間がありません。私が動けるうちに女神との決着をつけたいところですが……ふぅ」

 フラウの言葉はそこで途切れた。疲れた様子で息をついている。あまり無理しない方がよさそうだ。でも、アイシアが帰ってくる前にここから出ないといけない。

「……立てそうか?」

 俺はフラウに手を差し伸べる。

「はい」

 フラウは俺の手を取る。なんとか立ち上がることができたものの、彼女の足取りはかなり危うい。

「俺がおぶっていこうか? それなら多少楽になるだろ?」

 俺はフラウの身体を支えるように腕を伸ばす。

「ありがとうございます。では、お願いしますね」

 フラウは背中に体重をかけてくる。

「じゃあ行こうか」

 俺はフラウを背負って歩き出す。……そういえば、ドラゴンスレイヤーのおっさんはどこに行ったんだろうな。まさかとは思うけど、俺たちの後をつけてきていたりしないだろうか。
 いずれにせよ、さっさとここから立ち去るに限る。俺はフラウを背負いながら駆け出した。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「いいかい? 君と僕じゃ最初から住む世界が違うんだよ。これからは惨めな人生を送って一生後悔しながら過ごすんだね」 Fランク冒険者のアルディンは領主の息子であるザネリにそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 父親から譲り受けた大切なカードも奪われ、アルディンは失意のどん底に。 しばらくは冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうと街を離れることにしたアルディンは、その道中、メイド姉妹が賊に襲われている光景を目撃する。 彼女たちを救い出す最中、突如として【神眼】が覚醒してしまう。 それはこのカード世界における掟すらもぶち壊してしまうほどの才能だった。 無事にメイド姉妹を助けたアルディンは、大きな屋敷で彼女たちと一緒に楽しく暮らすようになる。 【神眼】を使って楽々とカードを集めてまわり、召喚獣の万能スライムとも仲良くなって、やがて天災級ドラゴンを討伐するまでに成長し、アルディンはどんどん強くなっていく。 一方その頃、ザネリのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 ダンジョン攻略も思うようにいかなくなり、ザネリはそこでようやくアルディンの重要さに気づく。 なんとか引き戻したいザネリは、アルディンにパーティーへ戻って来るように頼み込むのだったが……。 これは、かつてFランク冒険者だった青年が、チート能力を駆使してカード無双で成り上がり、やがて神話級改変者〈ルールブレイカー〉と呼ばれるようになるまでの人生逆転譚である。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

【第2章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む

凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!

処理中です...