解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流

文字の大きさ
20 / 40
第1章 守護龍の謎

第20話 守護龍の書を手に入れました

しおりを挟む
 その日は適当な洞窟をねぐらにして、翌日俺たちはフラウの生まれた地を目指して旅を続けた。

「この辺りです」

 フラウは山の一角を指し示した。そこには切り立った崖があり、昨日ねぐらにした洞窟よりもだいぶ深そうな洞窟が口を開けている。

「ここに昔住んでいたんです」
「今は誰も住んでないのか?」
「どうでしょう? ドラゴンのねぐらには少し目を離した隙に他の魔物が住みつくことが多いので、もしかしたら……」

 フラウの言う「ちょっと目を離した隙」っていうのは、人間の時間に換算するとどうせ数年単位だと思うので、あまり気にしないことにする。

「とりあえず中に入ってみるか?」
「そうですね……」

 洞窟の中に入ると、ひんやりとした空気に包まれた。薄暗い洞窟内を進んでいくと、やがて広い空間に出た。天井からは鍾乳石が垂れ下がり、地面や壁を伝う水滴がピチョン、ピチョンという音を立てながら地面に吸い込まれていく。

「なんか気味が悪いな……」
「私はこれくらいの方が落ち着きますけどねっ」

 フラウはそう言いながらも、俺の腕に抱きついてきた。

「おい、あんまりくっつかない方がいいぞ」
「どうしてですか?」
「地面が滑りやすいからバランス崩すだろ?」
「ふーん……」

 フラウはつまらなさそうに唇を尖らせると、今度は腰に手を回してきた。

「これで問題ありませんよね?」
「まあな……」

 それからしばらくのあいだ、俺たちは無言のまま歩き続けた。時折、何かが動く気配を感じることもあったが、襲ってくるようなことはなかったため、無視して先に進むことにした。

 だが、突如として洞窟の奥から何か大きなものが近づいてくる気配がした。足音からして、大型の魔物だろうか。

「フラウ!」

 俺はフラウに注意を促すと、進化した龍鎧をまとい、剣を抜いて身構える。
 俺たちの目の前に現れたのは、巨大な単眼の巨人──サイクロプスだった。その膂力りょりょくもさることながら、強力な再生能力があるので厄介な相手だ。

「グァァァッ!」

 サイクロプスが咆哮し、手に持っていた棍棒を振り上げる。

「邪魔だぁぁぁっ!」

 俺は勢いよく奴の間合いに踏み込むと、棍棒を振り下ろす暇も与えず胴体を一閃した。すると、それだけでサイクロプスの腹部は木っ端微塵に粉砕された。

「グォォォォ……」
「……これが完全契約の力か」

 感心している暇はない。奴が再生する暇を与えず、素早く背後に回り込んで両脚を吹き飛ばし、倒れたところに脳天に一撃。さらに首をはねてトドメをさした。

「さすがですロイ」

 背後でフラウが手を叩いていた。

「ま、まさかあのサイクロプスをこんなに簡単に葬れるなんて……」
「言いましたよね? 完全契約したドラゴンライダーは、それはもう強いんですよ」
「……これならもう女神と戦っても勝てるんじゃないか?」
「それは、どうでしょうか?」

 苦笑するフラウ。

 ふと、俺は洞窟の壁になにか違和感を感じた。まるでなにかを隠しているかように、そこだけ岩肌の色が違うのだ。

「ロイ、そっちは行き止まりですよ?」
「ああ、わかってる」

 俺はそう答えると、足を止めて壁に手を当てた。

「……ここだな」
「何がわかったんですか?」
「見てればわかるさ。──『解呪ディスペル』!」

 俺が魔法を唱えると、なにか封印のようなものが壊れる感覚があった。そしてそのまま右手を壁に押し当てると、ゆっくりと力を込めていった。すると、ゴゴッと鈍い音がして、目の前の壁が横にスライドしていく。

「隠し扉……!?」
「みたいだな」
「凄いです! ここに住んでた私でも、全く気づかなかったです!」
「そりゃそうだ。見た感じ、相当強力な封印が施されていたみたいだしな」

 俺は苦笑しながら、開いた通路の奥へと進んで行った。そしてその先には

「これは……祭壇?」

 大きな部屋の中にポツンと置かれた台座の上には、白い布が敷かれており、その上には銀色に輝く小さな箱が置かれていた。

「フラウ、これがなんだか知ってるか?」
「はい……。おそらく、守護龍の秘宝……でも、こんな所にあったなんて……」
「フラウはこの場所を知ってたんだろ?」
「ええ。私はここで生まれましたし。でも、隠し扉のことも祭壇のことも全く知りませんでした。……秘宝も、既に失われたものと……」
「どうやらまだまだ守護龍とドラゴンライダーにまつわる秘密は山積みらしいな」
「そのようですね……」

 フラウは複雑そうな表情を浮かべると、俺の手を握った。

「フラウ、お前はどうしたい?」
「え?」
「全てを知ってしまったら、引き返すことはできないかもしれない。お前が隠し扉や秘宝のことを知らされていなかったのはなにか理由があるんだろうと思う。……それでも真実を知りたいのか?」
「……」

 俺の言葉を聞いたフラウはしばらくの間無言で俯いていたが、やがて顔を上げると俺の目を見つめ返した。

「わかりません。でも、私はロイと一緒にどこまでも行きます。例えそれが地獄のような道であっても、二人で歩むことができるなら、きっとそれは幸せですから」
「フラウ……」
「それに、私たち守護龍が本当はどんな存在で、何をするために生まれてきたのか、知りたい気持ちもあるんです」
「……」
「だから、全て受けいれます。守護龍のこと、ドラゴンライダーのこと、その真実を全て……」
「わかったよ」

 俺はフラウの手を引いて、部屋の中央に置かれた銀製の箱の前に立った。そして、蓋を開けると、中には白銀の指輪が入っていた。

「綺麗……」

 フラウはその輝きに見惚れていた。俺も同じ感想だった。

「この指輪を嵌めるのは誰なんだろうな……」
「聞いた話では、ドラゴンと契約した者がその証として装着したようです」
「そうか。じゃあ、試してみるしかないな」

 俺は左手の薬指に指輪を嵌めた。すると、指輪が眩く光り輝いた。

「まさか、本当に……」
「ああ。どうやらフラウとの契約者は俺で間違いないようだな」

 俺は苦笑いを浮かべながら言った。

「当たり前じゃないですかぁ……あれだけのことをしたのに、まだ契約が不十分だっていうなら、それこそ怒ります」

 フラウは頬を膨らませて不満そうに呟くと、俺の腕に抱きついてきた。

「おい、だからそんなにくっつくなって……」
「嫌です。絶対に離れませんから」
「ったく……」

 俺はため息をつくと、フラウに微笑みかけた。すると、フラウは顔を真っ赤にして恥ずかしそうに目を逸らしてしまった。

「フラウ? どうかしたか?」
「な、なんでもありません!」
「そっか。とりあえずこの部屋を調べてみよう。他にも何かあるかもしれない」
「はい……」

 俺たちは部屋をくまなく調べてみたが、他に特にめぼしいものはなかった。
 諦めて引き返そうとした時、唐突にフラウが指輪の入っていた箱を指さして叫んだ。

「ロイ!」
「はいはい、なんだよびっくりするなぁ……」
「ロイ! あれに解呪ディスペルをかけてみてもらえますか?」
「なんでだ? 何の変哲もない箱に見えるけど?」
「……ローイー?」
「わかったよ! ──『解呪ディスペル』!」

 俺が箱に近づいて魔法を唱えると、箱は眩い光を放ちながら消滅し、それのあった場所に一冊の古びた本が現れた。

 俺はその本を拾い上げると表紙を見た。そこには掠れた文字でこう書かれていた。

【守護龍の書】
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【第2章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む

凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

処理中です...