解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流

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第1章 守護龍の謎

第16話 行使権限

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「ふふ……、血の気の多い人は嫌いじゃないですよ。単純ですからね」

 その言葉に俺はハッとして後ろを振り向いた。するとそこには、フリーダが立っていた。

「くそっ!」

 俺は慌てて距離を取ろうとしたが、フリーダの方が早かった。彼女は俺に向かって手を伸ばすと、指先で何かを描くように動かした。

「──【麻痺パラライズ】」

 次の瞬間、全身に痺れるような感覚が走った。たまらずに剣を落としてその場に倒れこむ。

「ぐっ……!」
「ふむ、やはり思った通りですね。今ので確信しました。生半可な攻撃を受け付けない龍の鱗も、身体に直接干渉する魔法は防げないようですね」

 フリーダはそう言うと、俺の近くまで歩いてくる。と、その前にフラウが両手を広げて立ちはだかった。

「これ以上ロイに手を出さないでください。……でないとあなたを殺します」
「できるんですか? 契約者であるドラゴンライダーがいなければ守護龍としての力を発揮できないあなたが?」

 フリーダはそう言うと、右手を掲げた。そして、そこから紫色に輝く魔法陣が現れると、中から禍々しいオーラを放つ杖が現れた。

「──気が変わりました。少し遊んであげましょう」
「あなたこそ、守護龍である私に勝てるとでも思っているんですか?」
「ふふふっ、私は勝てる喧嘩しかしませんよ?」

 フリーダは不敵に笑うと、フラウに向けて杖を構えた。

「さあ、かかってきなさい」
「……後悔しても知りませんから」

 フラウはそう言うと、目の前に落ちていた俺の剣を拾い上げて構えた。

「いきますよ! はぁあああっ!!」

 フラウは雄叫びを上げると、勢いよく駆け出した。

「ふっ、遅い……」

 フリーダはそう呟くと、呪文を唱え始めた。

「──【氷針弾アイスニードル】」

 彼女がそう唱えると、空中から無数の鋭い氷の槍が出現し、フラウ目掛けて飛んでいった。

「──っ!?」

 突然の攻撃に対して、フラウは驚きながらも龍鎧をまとって攻撃を防いだ。──しかし

爆破エクスプロージョン

 ドッ! ドッ! ドッ! と断続的な破裂音が響いて龍鎧に突き刺さった氷の槍が爆発する。衝撃を受けたフラウはもんどり打って地面に倒れた。

「うぅ……」
「さすがに守護龍、この程度では死にませんよね?」

 そう言って、フリーダはクスリと笑みを浮かべた。

「次はもう少し威力を上げてみますね。……【氷柱雨アイシクルレイン】」
「フラウッ!」

 俺は叫んで彼女の方に手を伸ばした。だが、麻痺のせいで身体が思うように動かない。

「──はあああっ!」

 フリーダがさらに魔力を込めたのか、先ほどよりも大きな氷の槍が無数に現れた。それらが一斉に降り注いでいく。

「ぐっ……!」
「くそっ!」

 フラウはフリーダの攻撃を受けながらも、俺を庇う姿勢のまま動こうとしない。俺はどうにかして止めようとしたが、フリーダはそんなことお構いなしに詠唱を続ける。

「──【風刃乱舞ウィンドカッター・ストーム】」

 フリーダの言葉と共に、空にいくつもの風の刃が現れ、次々とフラウを襲った。

「ぐあああっ!!!」 

 フラウの悲鳴が響き渡ると、俺は悔しさに歯噛みした。

「クソッ! 動け、動いてくれ……!」

 必死になって身体を動かそうとするも、まるで自分のものではないかのように全く反応しない。

「ふむ、これで終わりですか……。意外と呆気なかったですね」

 フリーダはそう言うと、こちらに向かって歩いてきた。

「やめろ……、来るな!」

 俺はフリーダに叫ぶが、彼女は気にせずに近づいてくる。

「……最後に言い残すことはありますか? 特別に聞いておいてあげましょう」

 フリーダは俺の前に立つと、冷たい視線を向けてきた。

「……俺の負けだ。だから、もうフラウには手を出さないでくれ」
「私は国王陛下の命令で動いています。陛下の標的があなたと彼女である以上、その願いは聞くことができませんね」

 フリーダがそう言った直後、彼女は表情を歪めた。その瞳に映るのは、俺ではなくフラウの姿だった。

「……どう、いう……ことです……か?」

 ボロボロになったフラウは、フリーダの足にすがりつきながら掠れた声でそう問いかけた。するとフリーダは肩をすくめて答えた。

「そのままの意味ですよ。あなたもそこのドラゴンライダーも、王家から追われる身です。私が殺さなくてもいずれ誰かに殺されることになる」
「そんな……!……ロイは、ロイは関係ないはずです……! お願いします、ロイだけは見逃してください……! 私からマリオンだけでなくロイまでも奪わないでください……!」

 フラウは涙を流しながら懇願するが、フリーダは首を横に振った。

「残念ですが、あなたたちの命はすでに私の手の中にあるのです。それに、私にも命令を遂行する義務がある。大丈夫、ちゃんと二人とも殺してあげますから」

 フリーダは杖を振り上げると、俺の首筋に狙いを定めた。

「では、さようなら」
「待って……、嫌っ! ロイ、逃げてぇえっ!!」

 フラウは絶叫しながら俺の上に覆いかぶさってきた。その直後、背中に強い衝撃を受けて息が詰まる。そして、首元から全身にかけて激痛が走った。それが、パートナーであるフラウからイメージとして俺に伝わってきたものだと分かった瞬間、目の前が真っ暗になる思いがした。

「ゴホッ!……フラウ」

 咳き込みながらもフラウに声をかけるが返事がない。代わりに、ピチャッという水音が聞こえた。

「フラウ、おい、しっかりしろ!」

 俺は必死になって声をかけるが、彼女が動く気配はない。恐る恐る顔を上げると、そこには真っ赤に染まった地面が広がっていた。その上に横たわるフラウの身体からは、血が流れ続けている。

「フラウ、嘘だよな……、目を開けてくれよ……」

 俺は彼女の身体を抱き寄せて涙を流す。すると、俺が握っていた彼女の手が僅かに動いた。

「ロ、イ……、よかっ……たです。無事……で……」

 フラウは弱々しい笑みを浮かべると、ゆっくりと手を伸ばして俺の頬に触れた。

「ごめん……なさい……。私、もう……だめみたい……です」
「何を言ってんだよ!?……死ぬな! 頼むから死なないでくれ!」

 俺はそう叫んだが、彼女の身体は徐々に冷たくなっていく。やがてフラウは力なく微笑んだ。

「……でもね、本当に嬉しかったんです。……ロイと会えて……」
「フラウッ……!」

 ダンジョンで追放されて死にかけていた俺にもう一度生きる希望を与えてくれたのは彼女だった。ずっと隣で、パートナーとして寄り添ってくれたのも彼女だった。俺にとってフラウは間違いなく欠かせない存在で、それが奪われようとしていることが、彼女を守れなかったことがたまらなく悔しかった。

 その時、俺の頬に触れていたフラウの指先から、俺の身体の中へ何かが流れ込んでくるのを感じた。これは……フラウと契約した時の感覚に似ている。

 フラウの指は、暖かいオレンジ色に輝いていた。彼女はゆっくりと告げる。

「──行使権限レギオンオーソリティを完全譲渡……」
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