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第1章 守護龍の謎
第1話 追放されました
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「ロイ・クノール。お前は追放だ」
金髪の長身男が俺を指差しながら淡々と告げる。それを聞いた時、流石に冗談か聞き間違いかと思った。
「……は?」
「聞こえなかったのか? お前は追放だと言っている」
追放って……俺はついこの前冒険者になってこのSランクパーティーに入ったばかりだろ!
「ちょっと待て! せめて理由を聞かせてくれないか?」
俺の必死の問いかけに、金髪の男は無表情で応じた。周りのパーティーメンバーも皆揃って俺に冷たい視線を送っている。
「わからねぇなら教えてやろうか。お前が使える『解呪』のスキルは普通は使えない雑魚スキルだが、どんな呪いでも解ける。そのくらいしか利用価値がない。つまり、呪いの宝箱を解呪したお前はもう用無しだ」
「なんだと! ちゃんと言われたとおり解呪したじゃないか!」
「雑魚のお前に分け与える報酬はねぇんだよ。かといってこのまま生きて帰してパーティーの悪い噂流されたらかなわねぇからな。このダンジョンで行方不明になったことにさせてもらうぜ」
俺は果てしなく続く暗い洞窟の奥に目を向けた。ここは洞窟型ダンジョンの最深部付近。初心者冒険者の俺がここから一人で脱出するのは不可能だろう。出口までの道程では数多くの魔物が待ち構えているはずだ。
「クソッ! 騙したな! 最初から俺を見捨てるつもりだったってことか!」
「騙したもなにも、初心者の役立たずにオレたちSランクパーティーが声かけた時点で怪しまないお前が悪いだろ。バーカ! 恨むんならこの世界を作った女神様を恨めよ!」
金髪男が蹴りを放ってきた。突然のことに反応が遅れた俺は、男の蹴りをまともに腹に受けてしまい、そのオーガのような怪力で吹き飛ばされた。
「ぐはっ!」
そして、最悪なことに俺が吹き飛んだ先は崖になっており、深淵が口を開けていた。俺は深淵の底へときりもみになりながら落ちていった。
どのくらい落ちただろうか、俺はすぐに意識を取り戻した。身体中が痛い。骨折まではしていないようだったが、落下の際に打ち付けた場所がズキズキする。あれだけ落ちてこの怪我ならむしろかなり運がいいと思う。
「うぅ……」
痛みに耐えつつ、なんとか上体を起こそうとすると、そこは大きな広間のような場所であり、目の前に巨大な物体があることに気づいた。
よく見ると壁が、広間全体がぼんやりと光っている。
目が慣れてきて目の前の物体の正体に気づいた俺は驚愕した。
「……っ! う、ウソだろ」
俺は絶望的な気分になった。
そこにいたのは巨大ドラゴンだった。その大きさは優に10メートルを超えており、漆黒の鱗に全身を覆われている。そして、その手足からは禍々しい色の鎖のようなものが伸び、広間の壁に繋がれていた。
歴史書で読んだことがある。
その昔、暴虐の限りを尽くし世界に混沌をもたらした邪龍がいたらしい。そいつは、当時の英雄ディートリッヒ率いる討伐隊と死闘を繰り広げた挙句、英雄と女神ソフィアの力でどこか地中深くに封印されたらしい。
目の前のドラゴンはまさに邪龍というに相応しい見た目をしていた。どうしてよりにもよってこんなところに邪龍が!?
俺の存在に気づいたらしい邪龍が、首をもたげる。まずい! でも驚きのあまり腰を抜かしてしまった俺は、ジリジリと後ずさりしかできなかった。
「グルルル……」
邪龍の喉から低く不気味な音が発せられる。
「グガァアアッ!!」
次の瞬間、俺は信じられないものを見た。俺に襲いかかろうとした邪龍の身体に、手足を拘束していた鎖から強力な魔力が流れ込んだのだ。まるで、身体を焼いているかのような閃光がほとばしり、邪龍は苦悶の呻き声を上げながらその場に倒れ込んだ。
すぐに起き上がった邪龍は何とかして鎖の拘束を振りほどこうとするが、その度に鎖から魔力が流れ邪龍の身体を痛めつけていく。よく見るとその身体は既にボロボロで、血のような体液も流れ出している。きっと、ずっとここで傷つけられていたのだろう。
俺は呆然とその様子を眺めていたが、ハッとして我に返った。今なら逃げられるかもしれない! でも、何故か苦しげにのたうち回る邪龍を見ていると、どうも放っておけなくなった。
封印を解いたら、俺は邪龍に食われるかもしれない。でも、このまま洞窟から抜け出せる可能性も低い。だったら、目の前で死にかけているこいつを助ける方がまだマシな気がしてきた。幸い、俺にはこいつの封印を解く『解呪』がある。
「よし、今助けるから食わないでくれよ……」
覚悟を決めた俺は、恐る恐る邪龍に近づき、手をかざした。
「──『解呪』!」
俺がディスペルを使った瞬間、邪龍の巨体が光に包まれた。
「うわっ眩しっ!」
反射的に両手で目を覆う。光が収まって再び目を開けると、邪龍を縛っていた鎖は消え去っていた。そればかりか、あれだけ禍々しい見た目をしていた邪龍は、純白の鱗を持つ神々しい姿に変わっていた。身体に刻まれた痛々しい傷は治っていないが、これは俺が治癒魔法を使えないので致し方ない。
それにしても……
「……?」
俺は自分の目を疑った。
なんでだ? 俺が使った魔法は『解呪』だよな……?
確かに『|解呪《ディスペル)』はあらゆる魔法や呪いを解除できる便利なスキルだが、対象を強化したり進化させるようなことはできない。
だとしたら考えられることはただ一つ。この姿が『邪龍』の真の姿だということだ。
「……」
言葉を失ったまま立ち尽くす俺を、真の姿を解放した邪龍がじっと見つめてくる。それはまるで、初めて見るものを警戒しているかのようだった。
「おい、大丈夫か?」
とりあえず話しかけてみる。邪龍は反応しない。でも、とりあえず襲ってくる気配はなかった。
突然、邪龍の身体が輝いて、そこには純白の衣装に身を包んだ銀髪の少女が立っていた。背丈は男としては人並みの俺よりもだいぶ小さめだが、腰くらいの長さに伸ばした銀髪はぼんやりと光を放っており、常人離れしたオーラを感じる。そして、彼女のまとっている雰囲気のなせる技か、少女はかなりの美形に見えた。美しいというよりは可愛らしいタイプの美少女だ。
いったい何が起きているんだ!? 俺はさっきから驚きっぱなしだぞ。
「ごほん、あー、あー……。人間の言葉はこれで合ってましたっけ?」
少女は俺に向かってそう言った。
金髪の長身男が俺を指差しながら淡々と告げる。それを聞いた時、流石に冗談か聞き間違いかと思った。
「……は?」
「聞こえなかったのか? お前は追放だと言っている」
追放って……俺はついこの前冒険者になってこのSランクパーティーに入ったばかりだろ!
「ちょっと待て! せめて理由を聞かせてくれないか?」
俺の必死の問いかけに、金髪の男は無表情で応じた。周りのパーティーメンバーも皆揃って俺に冷たい視線を送っている。
「わからねぇなら教えてやろうか。お前が使える『解呪』のスキルは普通は使えない雑魚スキルだが、どんな呪いでも解ける。そのくらいしか利用価値がない。つまり、呪いの宝箱を解呪したお前はもう用無しだ」
「なんだと! ちゃんと言われたとおり解呪したじゃないか!」
「雑魚のお前に分け与える報酬はねぇんだよ。かといってこのまま生きて帰してパーティーの悪い噂流されたらかなわねぇからな。このダンジョンで行方不明になったことにさせてもらうぜ」
俺は果てしなく続く暗い洞窟の奥に目を向けた。ここは洞窟型ダンジョンの最深部付近。初心者冒険者の俺がここから一人で脱出するのは不可能だろう。出口までの道程では数多くの魔物が待ち構えているはずだ。
「クソッ! 騙したな! 最初から俺を見捨てるつもりだったってことか!」
「騙したもなにも、初心者の役立たずにオレたちSランクパーティーが声かけた時点で怪しまないお前が悪いだろ。バーカ! 恨むんならこの世界を作った女神様を恨めよ!」
金髪男が蹴りを放ってきた。突然のことに反応が遅れた俺は、男の蹴りをまともに腹に受けてしまい、そのオーガのような怪力で吹き飛ばされた。
「ぐはっ!」
そして、最悪なことに俺が吹き飛んだ先は崖になっており、深淵が口を開けていた。俺は深淵の底へときりもみになりながら落ちていった。
どのくらい落ちただろうか、俺はすぐに意識を取り戻した。身体中が痛い。骨折まではしていないようだったが、落下の際に打ち付けた場所がズキズキする。あれだけ落ちてこの怪我ならむしろかなり運がいいと思う。
「うぅ……」
痛みに耐えつつ、なんとか上体を起こそうとすると、そこは大きな広間のような場所であり、目の前に巨大な物体があることに気づいた。
よく見ると壁が、広間全体がぼんやりと光っている。
目が慣れてきて目の前の物体の正体に気づいた俺は驚愕した。
「……っ! う、ウソだろ」
俺は絶望的な気分になった。
そこにいたのは巨大ドラゴンだった。その大きさは優に10メートルを超えており、漆黒の鱗に全身を覆われている。そして、その手足からは禍々しい色の鎖のようなものが伸び、広間の壁に繋がれていた。
歴史書で読んだことがある。
その昔、暴虐の限りを尽くし世界に混沌をもたらした邪龍がいたらしい。そいつは、当時の英雄ディートリッヒ率いる討伐隊と死闘を繰り広げた挙句、英雄と女神ソフィアの力でどこか地中深くに封印されたらしい。
目の前のドラゴンはまさに邪龍というに相応しい見た目をしていた。どうしてよりにもよってこんなところに邪龍が!?
俺の存在に気づいたらしい邪龍が、首をもたげる。まずい! でも驚きのあまり腰を抜かしてしまった俺は、ジリジリと後ずさりしかできなかった。
「グルルル……」
邪龍の喉から低く不気味な音が発せられる。
「グガァアアッ!!」
次の瞬間、俺は信じられないものを見た。俺に襲いかかろうとした邪龍の身体に、手足を拘束していた鎖から強力な魔力が流れ込んだのだ。まるで、身体を焼いているかのような閃光がほとばしり、邪龍は苦悶の呻き声を上げながらその場に倒れ込んだ。
すぐに起き上がった邪龍は何とかして鎖の拘束を振りほどこうとするが、その度に鎖から魔力が流れ邪龍の身体を痛めつけていく。よく見るとその身体は既にボロボロで、血のような体液も流れ出している。きっと、ずっとここで傷つけられていたのだろう。
俺は呆然とその様子を眺めていたが、ハッとして我に返った。今なら逃げられるかもしれない! でも、何故か苦しげにのたうち回る邪龍を見ていると、どうも放っておけなくなった。
封印を解いたら、俺は邪龍に食われるかもしれない。でも、このまま洞窟から抜け出せる可能性も低い。だったら、目の前で死にかけているこいつを助ける方がまだマシな気がしてきた。幸い、俺にはこいつの封印を解く『解呪』がある。
「よし、今助けるから食わないでくれよ……」
覚悟を決めた俺は、恐る恐る邪龍に近づき、手をかざした。
「──『解呪』!」
俺がディスペルを使った瞬間、邪龍の巨体が光に包まれた。
「うわっ眩しっ!」
反射的に両手で目を覆う。光が収まって再び目を開けると、邪龍を縛っていた鎖は消え去っていた。そればかりか、あれだけ禍々しい見た目をしていた邪龍は、純白の鱗を持つ神々しい姿に変わっていた。身体に刻まれた痛々しい傷は治っていないが、これは俺が治癒魔法を使えないので致し方ない。
それにしても……
「……?」
俺は自分の目を疑った。
なんでだ? 俺が使った魔法は『解呪』だよな……?
確かに『|解呪《ディスペル)』はあらゆる魔法や呪いを解除できる便利なスキルだが、対象を強化したり進化させるようなことはできない。
だとしたら考えられることはただ一つ。この姿が『邪龍』の真の姿だということだ。
「……」
言葉を失ったまま立ち尽くす俺を、真の姿を解放した邪龍がじっと見つめてくる。それはまるで、初めて見るものを警戒しているかのようだった。
「おい、大丈夫か?」
とりあえず話しかけてみる。邪龍は反応しない。でも、とりあえず襲ってくる気配はなかった。
突然、邪龍の身体が輝いて、そこには純白の衣装に身を包んだ銀髪の少女が立っていた。背丈は男としては人並みの俺よりもだいぶ小さめだが、腰くらいの長さに伸ばした銀髪はぼんやりと光を放っており、常人離れしたオーラを感じる。そして、彼女のまとっている雰囲気のなせる技か、少女はかなりの美形に見えた。美しいというよりは可愛らしいタイプの美少女だ。
いったい何が起きているんだ!? 俺はさっきから驚きっぱなしだぞ。
「ごほん、あー、あー……。人間の言葉はこれで合ってましたっけ?」
少女は俺に向かってそう言った。
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