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第5章 魔法天使プルシアン・ブロッサム
ふぉと☆ぐらふぃー
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*
――パシャッパシャッ
連続でシャッターが切られる音とともに、眩しい閃光があたしを襲います。あたしは眩しさに目を閉じないように気をつけながら、向けられているカメラのレンズに向かって微笑みます。
「いいよー! かわいいよー! もう少し顎引いて……はいかわいい! ……次は膝に両手をついてみようか――」
凄腕という噂の黒服スキンヘッドのカメラマンさんの指示に従って、あたしは次々と決められたポーズをこなしていきました。
「はい、いい感じ! ちょっと見せてみて?」
カメラマンさんの後ろで腕を組んで控えていた金髪の『週刊アイドルウィーク』の20代敏腕女編集長――彩葉さんの友人のナギサさんのお姉さんのようです――がカメラマンさんに声をかけました。そして、カメラマンさんと二人で目の前のパソコンの画面を覗き込んでいます。
やがて、編集長さんは何やらカメラマンさんに指示を出し、白い幕を背景に立っているあたしの方に歩いてきました。――手で頭上に大きなマルを作りながら。
「バッチリよ愛留《める》ちゃん! 期待のJS天使で強さもビジュアルも申し分ない。おまけに賢いし、初めての週刊誌の表紙とグラビア撮影でも落ち着いている。ほぼリテイクなしで撮影が進んでいるわ。――逸材ね」
「ありがとうございます」
「――どう? 可愛いでしょ?」
編集長さんがあたしの背後の白い背景を示すと、そこにはプロジェクターで大きく投影されたあたしの写真が四枚ほど映っていました。
小学生らしく、ランドセルを背負って微笑む写真。変身してポーズを決める写真。ステッキを構える写真、そしてお尻を突き出したちょっとセクシーな写真まで。
「あぁぁぁぁぁぁっ!! うちの愛留になんて格好させてるんだ!! そんなのが週刊誌に載るなんて認められないからな!」
案の定というか、撮影セットの脇に控えていたお父さんから早速クレームがつきました。週刊誌ってそういうものだと思いますけど。むしろ、まだ小学生だからという配慮で、お色気系の写真は少なめにされていますし、際どい露出は一切ありません。至って健全なグラビアだと思います。
それをお父さんに説明してあげようとした時、お父さんのから少し離れたところに一人立っていたオレンジ髪のお嬢様にして最強の天使――葵《あおい》 癒姫《ゆき》さんがこちらに歩いてきました。
「むしろヌルいくらいですわ。もっと大胆にヌード写真でも出した方がファンは増えますわよ」
最強天使の発言に言葉を失うお父さん。その様子を見て編集長さんが苦笑しました。
「さすがに18歳未満の天使のヌードは色々引っかかるからダメだし、愛留ちゃんは脱がなくても十分魅力的よ? 真面目系の天使には一定の需要があるし、このままの路線を貫いてもいいかも」
「……あら、そうですか」
「最近は、華帆ちゃん、『トライブライト』、『スターダスト☆シューター』『ラブリーツインズ』、そして癒姫ちゃんとセクシー系が流行ってたからね。そろそろ皆飽きてきてるのよ」
「な、なんですって!? では私もそろそろ路線変更を……」
「癒姫ちゃんは無類の強さがあるから心配しなくてもファンが減ることはないわよ」
編集長さんの言葉に最強の天使でさえもタジタジになってしまいます。それほど天使《アイドル》にとってファンの存在は重要であり、ファンを増やすために欠かせない新聞、テレビ、ラジオ、週刊誌、ネットニュースなどの記者、編集長は天使や天使事務所に絶大な影響力を誇っています。
無名だった天使が週刊誌で特集されたことをきっかけに最強天使ランキング入りを果たすなんてこともあったようなので、なんとかして彼らの目に止まるようにプロデューサーは躍起になるようです。
あたしの場合は華帆さんと戦闘した動画が「『天使狩り』を撃退したお手柄新人天使(しかも強くて可愛い)」ということで爆発的な人気が出て急上昇ランキング一位を獲得し、そのまま週間ランキング入りをしました。そして週刊誌で表紙とグラビアを務めることになったという逆パターンなのですが、これでまたファンが増えることは間違いないでしょう。
もう既にあたしの実力は癒姫さんに次いで二位だとまとめるネット記事すらもあります。セクシーな写真の一枚や二枚くらい必要経費です。
「……ふぅ」
さすがに少し撮影の疲れが出て、あたしが小さく息を吐くと
「――愛留ちゃん、お疲れ様。はい、これ……」
横から声をかけられ、ペットボトルに入った冷たいスポーツドリンクが差し出されました。
「ありがとうございます美留さん」
あたしを専属でせっせとお世話してくれるマネージャー(仮)のキャンサーこと美留さん。最初はそのよく似た容姿で妹かと間違えられたものですが、数日も経てばすでに事務所に馴染んでしまいました。さすがは青海プロダクション、受容性が高いです。
あたしはペットボトルの蓋を開けてスポーツドリンクをごくごくと飲みました。程よく甘くて美味しい……美留さんはあたしの好みのメーカーも把握してくれているようです。――伝えた覚えはなかったのですが。
「少し休んだら、今度は愛留ちゃんと癒姫ちゃんのツーショットいくわよ。期待の二人なんだから最高にかっこよくて可愛い絵を撮るわ。――もちろんお色気は少なめでね?」
「……仕方ないですわね」
すらっとしたスタイルの良さで水着グラビアを得意とし、天使狩りによって壊滅した『スターダスト☆シューター』のファン層をごっそり獲得している癒姫さんは少し残念そうです。
水着でツーショットなんて撮ったら格差が酷すぎてあたしのファンが癒姫さんに流れていくことでしょう。
「――美留さん。後ろは大丈夫ですか?」
美留さんはなにやら目の前に透明なディスプレイのようなものを展開しながら答えました。
「えっと、13時からテレビの生放送が一本。その後CM撮影でその後はゲスト出演するドラマの撮影」
「……ハードですね」
ランキング入りを果たしたあたしの仕事は一気に増えました。このまま売れ続ければ社長さんは今の古いビルから大きなビルへ事務所を移転し、スタッフや天使の数も増やしていくと話していました。つまり、青海プロダクションの未来はあたしの頑張り次第ということです。
頑張らないと……!
あたしはグッと両拳を握って気合を入れました。
「さっさと始めましょう」
「あら、やる気満々ですわね」
あたしの様子を見た癒姫さんは何を思ったのかクスクスと笑うのでした。
――パシャッパシャッ
連続でシャッターが切られる音とともに、眩しい閃光があたしを襲います。あたしは眩しさに目を閉じないように気をつけながら、向けられているカメラのレンズに向かって微笑みます。
「いいよー! かわいいよー! もう少し顎引いて……はいかわいい! ……次は膝に両手をついてみようか――」
凄腕という噂の黒服スキンヘッドのカメラマンさんの指示に従って、あたしは次々と決められたポーズをこなしていきました。
「はい、いい感じ! ちょっと見せてみて?」
カメラマンさんの後ろで腕を組んで控えていた金髪の『週刊アイドルウィーク』の20代敏腕女編集長――彩葉さんの友人のナギサさんのお姉さんのようです――がカメラマンさんに声をかけました。そして、カメラマンさんと二人で目の前のパソコンの画面を覗き込んでいます。
やがて、編集長さんは何やらカメラマンさんに指示を出し、白い幕を背景に立っているあたしの方に歩いてきました。――手で頭上に大きなマルを作りながら。
「バッチリよ愛留《める》ちゃん! 期待のJS天使で強さもビジュアルも申し分ない。おまけに賢いし、初めての週刊誌の表紙とグラビア撮影でも落ち着いている。ほぼリテイクなしで撮影が進んでいるわ。――逸材ね」
「ありがとうございます」
「――どう? 可愛いでしょ?」
編集長さんがあたしの背後の白い背景を示すと、そこにはプロジェクターで大きく投影されたあたしの写真が四枚ほど映っていました。
小学生らしく、ランドセルを背負って微笑む写真。変身してポーズを決める写真。ステッキを構える写真、そしてお尻を突き出したちょっとセクシーな写真まで。
「あぁぁぁぁぁぁっ!! うちの愛留になんて格好させてるんだ!! そんなのが週刊誌に載るなんて認められないからな!」
案の定というか、撮影セットの脇に控えていたお父さんから早速クレームがつきました。週刊誌ってそういうものだと思いますけど。むしろ、まだ小学生だからという配慮で、お色気系の写真は少なめにされていますし、際どい露出は一切ありません。至って健全なグラビアだと思います。
それをお父さんに説明してあげようとした時、お父さんのから少し離れたところに一人立っていたオレンジ髪のお嬢様にして最強の天使――葵《あおい》 癒姫《ゆき》さんがこちらに歩いてきました。
「むしろヌルいくらいですわ。もっと大胆にヌード写真でも出した方がファンは増えますわよ」
最強天使の発言に言葉を失うお父さん。その様子を見て編集長さんが苦笑しました。
「さすがに18歳未満の天使のヌードは色々引っかかるからダメだし、愛留ちゃんは脱がなくても十分魅力的よ? 真面目系の天使には一定の需要があるし、このままの路線を貫いてもいいかも」
「……あら、そうですか」
「最近は、華帆ちゃん、『トライブライト』、『スターダスト☆シューター』『ラブリーツインズ』、そして癒姫ちゃんとセクシー系が流行ってたからね。そろそろ皆飽きてきてるのよ」
「な、なんですって!? では私もそろそろ路線変更を……」
「癒姫ちゃんは無類の強さがあるから心配しなくてもファンが減ることはないわよ」
編集長さんの言葉に最強の天使でさえもタジタジになってしまいます。それほど天使《アイドル》にとってファンの存在は重要であり、ファンを増やすために欠かせない新聞、テレビ、ラジオ、週刊誌、ネットニュースなどの記者、編集長は天使や天使事務所に絶大な影響力を誇っています。
無名だった天使が週刊誌で特集されたことをきっかけに最強天使ランキング入りを果たすなんてこともあったようなので、なんとかして彼らの目に止まるようにプロデューサーは躍起になるようです。
あたしの場合は華帆さんと戦闘した動画が「『天使狩り』を撃退したお手柄新人天使(しかも強くて可愛い)」ということで爆発的な人気が出て急上昇ランキング一位を獲得し、そのまま週間ランキング入りをしました。そして週刊誌で表紙とグラビアを務めることになったという逆パターンなのですが、これでまたファンが増えることは間違いないでしょう。
もう既にあたしの実力は癒姫さんに次いで二位だとまとめるネット記事すらもあります。セクシーな写真の一枚や二枚くらい必要経費です。
「……ふぅ」
さすがに少し撮影の疲れが出て、あたしが小さく息を吐くと
「――愛留ちゃん、お疲れ様。はい、これ……」
横から声をかけられ、ペットボトルに入った冷たいスポーツドリンクが差し出されました。
「ありがとうございます美留さん」
あたしを専属でせっせとお世話してくれるマネージャー(仮)のキャンサーこと美留さん。最初はそのよく似た容姿で妹かと間違えられたものですが、数日も経てばすでに事務所に馴染んでしまいました。さすがは青海プロダクション、受容性が高いです。
あたしはペットボトルの蓋を開けてスポーツドリンクをごくごくと飲みました。程よく甘くて美味しい……美留さんはあたしの好みのメーカーも把握してくれているようです。――伝えた覚えはなかったのですが。
「少し休んだら、今度は愛留ちゃんと癒姫ちゃんのツーショットいくわよ。期待の二人なんだから最高にかっこよくて可愛い絵を撮るわ。――もちろんお色気は少なめでね?」
「……仕方ないですわね」
すらっとしたスタイルの良さで水着グラビアを得意とし、天使狩りによって壊滅した『スターダスト☆シューター』のファン層をごっそり獲得している癒姫さんは少し残念そうです。
水着でツーショットなんて撮ったら格差が酷すぎてあたしのファンが癒姫さんに流れていくことでしょう。
「――美留さん。後ろは大丈夫ですか?」
美留さんはなにやら目の前に透明なディスプレイのようなものを展開しながら答えました。
「えっと、13時からテレビの生放送が一本。その後CM撮影でその後はゲスト出演するドラマの撮影」
「……ハードですね」
ランキング入りを果たしたあたしの仕事は一気に増えました。このまま売れ続ければ社長さんは今の古いビルから大きなビルへ事務所を移転し、スタッフや天使の数も増やしていくと話していました。つまり、青海プロダクションの未来はあたしの頑張り次第ということです。
頑張らないと……!
あたしはグッと両拳を握って気合を入れました。
「さっさと始めましょう」
「あら、やる気満々ですわね」
あたしの様子を見た癒姫さんは何を思ったのかクスクスと笑うのでした。
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