50 / 59
第5章 魔法天使プルシアン・ブロッサム
ねばねば☆ぎぶあっぷ
しおりを挟む
「えっ?」
マネージャーさんが首を傾げると同時に、華帆さんが大声を上げました。
「弱小事務所がぁぁぁっ!! 舐めんなよ!! あたしはアイルのエースなのよ!!」
「落ち着いて秋茜さん! こんなことする理由を聞かせてください!」
彩葉さんの声掛けにも聞く耳を持たないようです。
「うるさぁぁぁいっ!!」
――ゴッ!!
轟音が響きました。華帆さんの近くから何かが猛スピードで飛んでいって、橋脚にめり込みました。
「笑鈴っ!!」
彩葉さんの言葉で、華帆さんが錨(アンカー)を手繰り寄せて笑鈴お姉ちゃんを無理やり引き寄せ、その身体に蹴りを入れて吹き飛ばしたのだと分かりました。
「お姉ちゃんっ!!」
あたしも思わず叫びました。
華帆さんは続けて背中に取り付いていた彩葉さんをいとも簡単に引き剥がすと片手で地面に叩きつけます。――このままだとまずいです!
「マネージャーさん、撤退しましょう!」
「しかし……」
マネージャーさんは、こんな小学生の指示に従ってもいいものか悩んでいるようですが、敵は待ってはくれません。彩葉さんは地面に叩きつけられながらも、すぐさま横に転がって追撃のかかと落としを回避します。
――ガガッ!
華帆さんのかかと落としで地面が抉れ、土や石が飛び散りました。華帆さんは、彩葉さんが放った足払いをひょいと身軽にかわすと、黒い金属製の尻尾で彩葉さんを突き刺しにいきました。攻撃がかわされると思っていなかった彩葉さんは反応が遅れたようでした。
「くっ……」
なんとか両手で受け止めたものの、その口から苦悶の声が漏れます。
「てめぇ! センパイに何すんだボケ!」
先程飛ばされていったはずの柊里さんが横から華帆さんに奇襲を仕掛けますが、華帆さんは落ち着いて柊里さんの身体を片手で受け止めます。
「えりりんも、いろはすも、ひまりんも、なんであたしの邪魔をするの!? あたしはただ『天使狩り』を始末しようとして――」
「お前が『天使狩り』なんだろ!?」
「うるさい裏切り者!」
柊里さんの言葉に逆上した華帆さんは、柊里さんの衣装(コスチューム)のベルトに手をかけて力ずくで引きちぎりました。
「……くぁぁぁぁっ!?」
途端に柊里さんの衣装はビシビシと火花を散らしながら消滅してしまい、パーカー姿の柊里さん本体が露わになってしまいました。
「柊里ちゃん!」
「ちっ、さすがにこれはまずいか!」
彩葉さんとマネージャーさんが叫びますが、華帆さんは構わず生身の柊里さんの身体を締め上げました。
グシャッとおぞましい音がして、華帆さんは興味を失って柊里さんをそこら辺に投げ捨てます。そして、彩葉さんが受け止めていた尻尾を引きました。
ブシャッと血しぶきが飛び、彩葉さんがゆっくりと膝をつきました。どうやら尻尾は彩葉さんの身体に突き刺さっていたようです。
「だからはやく撤退をといったんです!」
「クソッ! 愛留(める)ちゃん、青葉さんを連れて逃げろ。俺が時間を稼ぐ!」
「はっ、笑わせないで! クズみたいなあたしが助けてもらって小学生と一緒に逃げる? ふざけるじゃないわよ。あたしも戦うわ。あいつは大事な人の仇だからね」
毒の麻痺から回復したのか、結衣香さんも光る剣を構えながらマネージャーさんの前に進み出ます。あたしは、はぁぁっと大きくため息をつきました。
「あなたたちはバカですか! なんでカッコつけようとするんですかねぇ……一番の戦力に逃げろなんて言って」
「愛留ちゃん?」
「あたしが戦います!」
「無茶だ! 君はまだ小学生だし、だいたい機装だって……君にもしものことがあったら倉橋博士に殺される!」
「はぁぁ、これだから男は……自分の感情に左右されて適切な判断が出来ないんですよ!」
「はぁ?」
面食らった様子のマネージャーさん。そうこうしているうちに、彩葉さんを始末した華帆さんはまっすぐにこちらに歩いてきました。もうどちらにせよ逃げるのは手遅れです。
「倉橋愛留、あなたはあたしの保護対象よ。先に死ぬことは許されないわ」
「わかってます」
「――で、どうするの?」
「……?」
「あれだけ大口叩いたんだから、なにか考えがあるんでしょ?」
結衣香さんの問いかけにあたしは頷きました。
「もちろんです」
「ごちゃごちゃうるさいよ雑魚がよぉぉぉっ!!」
――ブゥンッ!!
華帆さんの赤い二本の剣が唸りを上げて襲いかかってきます。
――ブシュンッ
それらはそれぞれ、マネージャーさんの盾と結衣香さんの剣に防がれました。
「食らえっ!」
マネージャーさんは青いものを華帆さんに投げつけます。
――ブワッ!!
青いものから溢れ出した青色の光が辺りを包みます。
「ぐぁぁぁぁぁっ!?」
華帆さんが苦悶の声を上げました。
「どうだ、これで機装は強制停止されて変身は解除され――」
確かに華帆さんの身体は青色の光に包まれ、変身は解除されました。しかし、華帆さんはニヤッと不敵に笑います。
「機装の? ふーん、そう。じゃあ――『星装変身(アストロチェンジ)』! 『黄道十二宮(ゾディアック・イクリプス)』、の『ヴィルゴ』、推参(レコメンド)!」
「「――っ!?」」
あたしたちは息を飲みました。華帆さんの身体は、黒い鎧のようなものに全身を覆われたからです。
「やっぱり、あれは機装ではなくもっと他の!」
「どーすんのよ! あたしたちの変身まで解除されたじゃない!」
「すまん! あんなのがあるなんて知らなかった!」
マネージャーさんと結衣香さんが言い合いをしていると――
「雑魚が何匹集まっても雑魚なんだよぉぉぉぉっ!!」
「ぐはぁっ!?」
思いっきり蹴りを叩き込まれ、変身ができないマネージャーさんは呆気なく吹き飛ばされました。
「結衣香さん! 少しだけ持ちこたえてください!」
「わかったわ。あたしは生身でもそれなりに戦えるし、やってみる」
結衣香さんの応えを聞くと、あたしは倒れたマネージャーさんに駆け寄りました。
「時間がありません。早くその機装をよこしてください。ついでにエリクサーも」
「は?」
「あたしがその『プルシアン・ブロッサム』で変身するって言ってるんですよバカ。早くしてください」
「しかし……」
「あーもう、バカですか! このままだとみんな死にますよ? エリクサーはなくても変身できますが、あの秋茜華帆に単独で勝つにはどうしても必要です」
「しかし、青海の天使三人を相手にしてほぼ無傷の相手に、いくらエリクサーを使ったところで――」
――チッ
「つべこべ言うな! 死にたいんですか!」
あたしが一喝すると、ビビってしまったマネージャーさんは、すんなりと手首からピンクのブレスレットを取り外し、懐から小瓶を取り出して、両方をあたしに手渡してくれました。
「ふふっ、ありがとうございます♪」
あたしはブレスレットを右腕に装着すると、小瓶の蓋を開けて中身を一気に飲み干します。すると程なくして、身体中が温かくなって、お腹の底から力が湧いてくるような感覚がしました。――これならいける!
あたしはブレスレットに左手を添えると、変身したい姿を思い浮かべながらこう叫びました。
「機装変身(マジカルリコール)!!」
すると、あたしの身体をすっぽりと、ピンク色の球体状のものが覆い、瞬時に変身を完了させました。
あたしが変身したのは、日曜日の朝にテレビでよく見ていた所謂『魔法少女もの』といわれる女の子の衣装(コスチューム)。ピンク色のフリフリしたかわいい服に、頭には魔女っ子の帽子、そして手には魔法のステッキ。
「青海プロダクション所属の第二世代機装、『プルシアン・ブロッサム』の天使、倉橋(くらはし)愛留(める)。――交戦開始(エンゲージ)です」
あたしは目元でピースサインをしながら告げました。それを遅れて到着したドローンが上空からしっかりと捉えていて、あたしの身体にまた一段と力がみなぎります。
「愛留ちゃん……」
「なんですか? マネージャーさん」
「……すごく、可愛いよ」
「――はっ」
思わず呟いてしまったようなその声にあたしは思わず鼻で笑ってしまいました。なんでこの人は小学生を口説いてるんですか。
「秋茜華帆さん、あなたの相手はあたしです」
まさに地面に倒れた結衣香さんにトドメをさそうとしていた華帆さんは、ゆっくりとこちらを振り返りました。
「まあ、ずいぶんと可愛いのがいるね」
「そりゃあ現役JSですからね。――オバサン」
あたしの挑発に華帆さんはピクリと眉を動かしました。
「めるっち。あなたは弱っちいし、ションベンくさいガキだから生かしておいてやろうと思ってたんだけど気が変わったよ。悪く思わないでね?」
「その言葉、お返しします。死ぬのはあなたの方です。焦りが見えますよ? オバサン」
「――死ね☆」
――ダッ!
地を蹴って凄まじい勢いで華帆さんが迫ってしました。前よりも明らかにスピードが上がっています。あれが本気なんですかね。それならなんとかなりそうです。
「はぁぁっ!!」
あたしは魔法のステッキを構えながら念じました。なにか、盾になるようなもの! 小学生のあたしにとって咄嗟に思いついたものはこれでした。
――バッ!
ステッキから姿を変えたのは、赤いランドセルでした。ランドセルは華帆さんの身体を弾き返します。上手くいったようです。
「もういっちょです!」
――バッ!
今度はランドセルを体操着袋に変化させました。そして紐の部分を掴んでそのまま華帆さんに振り下ろします。
「ぶわっ!」
かなりのスピードで振り下ろされた体操着袋は華帆さんを吹き飛ばしました。
あたしは華帆さんに駆け寄ると、体操着袋を大きなリコーダーに変化させて、先を鎧に包まれた華帆さんの身体に突きつけました。
「JSの怖さ、わかっていただけましたか? あたしたちは毎日重いランドセルを背負って通学路を走り、教室の階段を駆け上り、休み時間になったら校庭で走り回り、掃除の時間はほうきでチャンバラしたり、雑巾がけで競走して遊ぶんです。舐めてもらっては困ります」
マネージャーさんが首を傾げると同時に、華帆さんが大声を上げました。
「弱小事務所がぁぁぁっ!! 舐めんなよ!! あたしはアイルのエースなのよ!!」
「落ち着いて秋茜さん! こんなことする理由を聞かせてください!」
彩葉さんの声掛けにも聞く耳を持たないようです。
「うるさぁぁぁいっ!!」
――ゴッ!!
轟音が響きました。華帆さんの近くから何かが猛スピードで飛んでいって、橋脚にめり込みました。
「笑鈴っ!!」
彩葉さんの言葉で、華帆さんが錨(アンカー)を手繰り寄せて笑鈴お姉ちゃんを無理やり引き寄せ、その身体に蹴りを入れて吹き飛ばしたのだと分かりました。
「お姉ちゃんっ!!」
あたしも思わず叫びました。
華帆さんは続けて背中に取り付いていた彩葉さんをいとも簡単に引き剥がすと片手で地面に叩きつけます。――このままだとまずいです!
「マネージャーさん、撤退しましょう!」
「しかし……」
マネージャーさんは、こんな小学生の指示に従ってもいいものか悩んでいるようですが、敵は待ってはくれません。彩葉さんは地面に叩きつけられながらも、すぐさま横に転がって追撃のかかと落としを回避します。
――ガガッ!
華帆さんのかかと落としで地面が抉れ、土や石が飛び散りました。華帆さんは、彩葉さんが放った足払いをひょいと身軽にかわすと、黒い金属製の尻尾で彩葉さんを突き刺しにいきました。攻撃がかわされると思っていなかった彩葉さんは反応が遅れたようでした。
「くっ……」
なんとか両手で受け止めたものの、その口から苦悶の声が漏れます。
「てめぇ! センパイに何すんだボケ!」
先程飛ばされていったはずの柊里さんが横から華帆さんに奇襲を仕掛けますが、華帆さんは落ち着いて柊里さんの身体を片手で受け止めます。
「えりりんも、いろはすも、ひまりんも、なんであたしの邪魔をするの!? あたしはただ『天使狩り』を始末しようとして――」
「お前が『天使狩り』なんだろ!?」
「うるさい裏切り者!」
柊里さんの言葉に逆上した華帆さんは、柊里さんの衣装(コスチューム)のベルトに手をかけて力ずくで引きちぎりました。
「……くぁぁぁぁっ!?」
途端に柊里さんの衣装はビシビシと火花を散らしながら消滅してしまい、パーカー姿の柊里さん本体が露わになってしまいました。
「柊里ちゃん!」
「ちっ、さすがにこれはまずいか!」
彩葉さんとマネージャーさんが叫びますが、華帆さんは構わず生身の柊里さんの身体を締め上げました。
グシャッとおぞましい音がして、華帆さんは興味を失って柊里さんをそこら辺に投げ捨てます。そして、彩葉さんが受け止めていた尻尾を引きました。
ブシャッと血しぶきが飛び、彩葉さんがゆっくりと膝をつきました。どうやら尻尾は彩葉さんの身体に突き刺さっていたようです。
「だからはやく撤退をといったんです!」
「クソッ! 愛留(める)ちゃん、青葉さんを連れて逃げろ。俺が時間を稼ぐ!」
「はっ、笑わせないで! クズみたいなあたしが助けてもらって小学生と一緒に逃げる? ふざけるじゃないわよ。あたしも戦うわ。あいつは大事な人の仇だからね」
毒の麻痺から回復したのか、結衣香さんも光る剣を構えながらマネージャーさんの前に進み出ます。あたしは、はぁぁっと大きくため息をつきました。
「あなたたちはバカですか! なんでカッコつけようとするんですかねぇ……一番の戦力に逃げろなんて言って」
「愛留ちゃん?」
「あたしが戦います!」
「無茶だ! 君はまだ小学生だし、だいたい機装だって……君にもしものことがあったら倉橋博士に殺される!」
「はぁぁ、これだから男は……自分の感情に左右されて適切な判断が出来ないんですよ!」
「はぁ?」
面食らった様子のマネージャーさん。そうこうしているうちに、彩葉さんを始末した華帆さんはまっすぐにこちらに歩いてきました。もうどちらにせよ逃げるのは手遅れです。
「倉橋愛留、あなたはあたしの保護対象よ。先に死ぬことは許されないわ」
「わかってます」
「――で、どうするの?」
「……?」
「あれだけ大口叩いたんだから、なにか考えがあるんでしょ?」
結衣香さんの問いかけにあたしは頷きました。
「もちろんです」
「ごちゃごちゃうるさいよ雑魚がよぉぉぉっ!!」
――ブゥンッ!!
華帆さんの赤い二本の剣が唸りを上げて襲いかかってきます。
――ブシュンッ
それらはそれぞれ、マネージャーさんの盾と結衣香さんの剣に防がれました。
「食らえっ!」
マネージャーさんは青いものを華帆さんに投げつけます。
――ブワッ!!
青いものから溢れ出した青色の光が辺りを包みます。
「ぐぁぁぁぁぁっ!?」
華帆さんが苦悶の声を上げました。
「どうだ、これで機装は強制停止されて変身は解除され――」
確かに華帆さんの身体は青色の光に包まれ、変身は解除されました。しかし、華帆さんはニヤッと不敵に笑います。
「機装の? ふーん、そう。じゃあ――『星装変身(アストロチェンジ)』! 『黄道十二宮(ゾディアック・イクリプス)』、の『ヴィルゴ』、推参(レコメンド)!」
「「――っ!?」」
あたしたちは息を飲みました。華帆さんの身体は、黒い鎧のようなものに全身を覆われたからです。
「やっぱり、あれは機装ではなくもっと他の!」
「どーすんのよ! あたしたちの変身まで解除されたじゃない!」
「すまん! あんなのがあるなんて知らなかった!」
マネージャーさんと結衣香さんが言い合いをしていると――
「雑魚が何匹集まっても雑魚なんだよぉぉぉぉっ!!」
「ぐはぁっ!?」
思いっきり蹴りを叩き込まれ、変身ができないマネージャーさんは呆気なく吹き飛ばされました。
「結衣香さん! 少しだけ持ちこたえてください!」
「わかったわ。あたしは生身でもそれなりに戦えるし、やってみる」
結衣香さんの応えを聞くと、あたしは倒れたマネージャーさんに駆け寄りました。
「時間がありません。早くその機装をよこしてください。ついでにエリクサーも」
「は?」
「あたしがその『プルシアン・ブロッサム』で変身するって言ってるんですよバカ。早くしてください」
「しかし……」
「あーもう、バカですか! このままだとみんな死にますよ? エリクサーはなくても変身できますが、あの秋茜華帆に単独で勝つにはどうしても必要です」
「しかし、青海の天使三人を相手にしてほぼ無傷の相手に、いくらエリクサーを使ったところで――」
――チッ
「つべこべ言うな! 死にたいんですか!」
あたしが一喝すると、ビビってしまったマネージャーさんは、すんなりと手首からピンクのブレスレットを取り外し、懐から小瓶を取り出して、両方をあたしに手渡してくれました。
「ふふっ、ありがとうございます♪」
あたしはブレスレットを右腕に装着すると、小瓶の蓋を開けて中身を一気に飲み干します。すると程なくして、身体中が温かくなって、お腹の底から力が湧いてくるような感覚がしました。――これならいける!
あたしはブレスレットに左手を添えると、変身したい姿を思い浮かべながらこう叫びました。
「機装変身(マジカルリコール)!!」
すると、あたしの身体をすっぽりと、ピンク色の球体状のものが覆い、瞬時に変身を完了させました。
あたしが変身したのは、日曜日の朝にテレビでよく見ていた所謂『魔法少女もの』といわれる女の子の衣装(コスチューム)。ピンク色のフリフリしたかわいい服に、頭には魔女っ子の帽子、そして手には魔法のステッキ。
「青海プロダクション所属の第二世代機装、『プルシアン・ブロッサム』の天使、倉橋(くらはし)愛留(める)。――交戦開始(エンゲージ)です」
あたしは目元でピースサインをしながら告げました。それを遅れて到着したドローンが上空からしっかりと捉えていて、あたしの身体にまた一段と力がみなぎります。
「愛留ちゃん……」
「なんですか? マネージャーさん」
「……すごく、可愛いよ」
「――はっ」
思わず呟いてしまったようなその声にあたしは思わず鼻で笑ってしまいました。なんでこの人は小学生を口説いてるんですか。
「秋茜華帆さん、あなたの相手はあたしです」
まさに地面に倒れた結衣香さんにトドメをさそうとしていた華帆さんは、ゆっくりとこちらを振り返りました。
「まあ、ずいぶんと可愛いのがいるね」
「そりゃあ現役JSですからね。――オバサン」
あたしの挑発に華帆さんはピクリと眉を動かしました。
「めるっち。あなたは弱っちいし、ションベンくさいガキだから生かしておいてやろうと思ってたんだけど気が変わったよ。悪く思わないでね?」
「その言葉、お返しします。死ぬのはあなたの方です。焦りが見えますよ? オバサン」
「――死ね☆」
――ダッ!
地を蹴って凄まじい勢いで華帆さんが迫ってしました。前よりも明らかにスピードが上がっています。あれが本気なんですかね。それならなんとかなりそうです。
「はぁぁっ!!」
あたしは魔法のステッキを構えながら念じました。なにか、盾になるようなもの! 小学生のあたしにとって咄嗟に思いついたものはこれでした。
――バッ!
ステッキから姿を変えたのは、赤いランドセルでした。ランドセルは華帆さんの身体を弾き返します。上手くいったようです。
「もういっちょです!」
――バッ!
今度はランドセルを体操着袋に変化させました。そして紐の部分を掴んでそのまま華帆さんに振り下ろします。
「ぶわっ!」
かなりのスピードで振り下ろされた体操着袋は華帆さんを吹き飛ばしました。
あたしは華帆さんに駆け寄ると、体操着袋を大きなリコーダーに変化させて、先を鎧に包まれた華帆さんの身体に突きつけました。
「JSの怖さ、わかっていただけましたか? あたしたちは毎日重いランドセルを背負って通学路を走り、教室の階段を駆け上り、休み時間になったら校庭で走り回り、掃除の時間はほうきでチャンバラしたり、雑巾がけで競走して遊ぶんです。舐めてもらっては困ります」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。
虎柄トラ
SF
あるところに誰もがうらやむ才能を持った科学者がいた。
科学者は天賦の才を得た代償なのか、天涯孤独の身で愛する家族も頼れる友人もいなかった。
愛情に飢えた科学者は存在しないのであれば、創造すればいいじゃないかという発想に至る。
そして試行錯誤の末、科学者はありとあらゆる癖を詰め込んだ最高傑作を完成させた。
科学者は人工生命体にリアムと名付け、それはもうドン引きするぐらい溺愛した。
そして月日は経ち、可憐な少女に成長したリアムは二度目の誕生日を迎えようとしていた。
誕生日プレゼントを手に入れるため科学者は、リアムに留守番をお願いすると家を出て行った。
それからいくつも季節が通り過ぎたが、科学者が家に帰ってくることはなかった。
科学者が帰宅しないのは迷子になっているからだと、推察をしたリアムはある行動を起こした。
「お母さん待っててな、リアムがいま迎えに行くから!」
一度も外に出たことがない関西訛りな箱入り娘による壮大な母親探しの旅がいまはじまる。
❤️レムールアーナ人の遺産❤️
apusuking
SF
アランは、神代記の伝説〈宇宙が誕生してから40億年後に始めての知性体が誕生し、更に20億年の時を経てから知性体は宇宙に進出を始める。
神々の申し子で有るレムルアーナ人は、数億年を掛けて宇宙の至る所にレムルアーナ人の文明を築き上げて宇宙は人々で溢れ平和で共存共栄で発展を続ける。
時を経てレムルアーナ文明は予知せぬ謎の種族の襲来を受け、宇宙を二分する戦いとなる。戦争終焉頃にはレムルアーナ人は誕生星系を除いて衰退し滅亡するが、レムルアーナ人は後世の為に科学的資産と数々の奇跡的な遺産を残した。
レムールアーナ人に代わり3大種族が台頭して、やがてレムルアーナ人は伝説となり宇宙に蔓延する。
宇宙の彼方の隠蔽された星系に、レムルアーナ文明の輝かしい遺産が眠る。其の遺産を手にした者は宇宙を征するで有ろ。但し、辿り付くには3つの鍵と7つの試練を乗り越えねばならない。
3つの鍵は心の中に眠り、開けるには心の目を開いて真実を見よ。心の鍵は3つ有り、3つの鍵を開けて真実の鍵が開く〉を知り、其の神代記時代のレムールアーナ人が残した遺産を残した場所が暗示されていると悟るが、闇の勢力の陰謀に巻き込まれゴーストリアンが破壊さ
魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~
MS
SF
これは戦争に巻き込まれた少年が世界を変えるために戦う物語。
戦歴2234年、人型ロボット兵器キャスター、それは魔術師と呼ばれる一部の人しか扱えない兵器であった。
そのパイロットになるためアルバート・デグレアは軍の幼年学校に通っていて卒業まであと少しの時だった。
親友が起こしたキャスター強奪事件。
そして大きく変化する時代に巻き込まれていく。
それぞれの正義がぶつかり合うなかで徐々にその才能を開花させていき次々と大きな戦果を挙げていくが……。
新たな歴史が始まる。
************************************************
小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。
投降は当分の間毎日22時ごろを予定しています。
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
惑星保護区
ラムダムランプ
SF
この物語について
旧人類と別宇宙から来た種族との出来事にまつわる話です。
概要
かつて地球に住んでいた旧人類と別宇宙から来た種族がトラブルを引き起こし、その事が発端となり、地球が宇宙の中で【保護区】(地球で言う自然保護区)に制定され
制定後は、他の星の種族は勿論、あらゆる別宇宙の種族は地球や現人類に対し、安易に接触、交流、知能や技術供与する事を固く禁じられた。
現人類に対して、未だ地球以外の種族が接触して来ないのは、この為である。
初めて書きますので読みにくいと思いますが、何卒宜しくお願い致します。
まほカン
jukaito
ファンタジー
ごく普通の女子中学生だった結城かなみはある日両親から借金を押し付けられた黒服の男にさらわれてしまう。一億もの借金を返済するためにかなみが選ばされた道は、魔法少女となって会社で働いていくことだった。
今日もかなみは愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミとなって悪の秘密結社と戦うのであった!新感覚マジカルアクションノベル!
※基本1話完結なのでアニメを見る感覚で読めると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる