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第4章 隠密天使マリブ・サーフ
友情ノ即劇
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少女たちが元気よく叫ぶと、あたしの頭部を数本の赤い照準のレーザーが射抜いた。――本当に殺(や)る気だ。
「仕掛けてきたのはそっちなんだから、恨みっこなしよ――?」
あたしはそれだけ言うと、機装の力で強化された脚力で、真っ直ぐに駆けた。このスピードに初見で対応できる者は、いくら天使(アイドル)と言えどもごく少数だろう。実際、STの元トップ天使の伺見(うかがみ) 笑鈴(えりん)ですら一瞬反応が遅れてしまったのだから。
そして――
――目が慣れた頃にはもう手遅れだ
「は、はやっ……!?」
リーダー格の少女が驚きの声を上げた時には、あたしはすでに彼女の背後に回っている。――がら空きの背中、ライトブレードを振ればこの少女を殺すのは容易だ。だが、そうはしない。代わりにあたしは、ライトブレードを展開して、とあるものに振り下ろした。
―――ブゥン――ブゥン
二回、ブレードが唸り、ガシャンと音を立てて、真っ二つにされた二基のドローンの残骸がコンクリートに上に落下した。
「ドローンが!」
別の少女が悲痛な叫びを上げる。あたしはそのまま、呆気にとられた様子でこちらを振り向いたリーダー格の少女に駆け寄り、その手に握られていたライフル型の水鉄砲を破壊しようとした。――が、そんなあたしと彼女の間に割って入る者がいた。
「――隊長ぉっ!!」
どういう仕組みなのか、燦然(さんぜん)と光り輝く白いツインテール。そして同じくらい白いスクール水着と、両手に白い二丁拳銃のような水鉄砲を構えた少女。彼女が恐怖に引きつった顔をしながらも、仲間を庇うべく咄嗟に動いたのだろう。なかなか悪くない反応だ。だけど、二丁拳銃を構えながらも彼女の視線はあたしを追いきれていないし、なにより味方の射線に割って入ってしまっているので、こちらとしては好都合だった。
「悪いわね、お嬢ちゃん」
あたしは体を屈めて二丁拳銃の射撃をかわしながら、ハイキックで彼女の手首に一撃加えて拳銃を叩き落とし、ライトブレードの一閃でもう片方の拳銃を破壊すると、ツインテール少女の背後に回ってその喉元にライトブレードを突きつけた。
「ひいっ!?」
彼女の喉から悲鳴のような声が漏れる。そこでやっと、他の二人はあたしの方に武器を向けることができたようだ。でも遅すぎる。さすがに人質ごと撃ってくるなんてことはないだろう。
「引きなさい。この子がどうなってもいいの?」
あたしがリーダー格の少女に呼びかけると、彼女は歯を食いしばりながら一度目を閉じた。
「くそっ……汚いぞ『天使狩り』」
「それは心外ね? 屁理屈つけて襲ってきたのはあなたたちの方でしょう?」
リーダー格の少女は、顔を上げるとキッとあたしを睨みつける。が、仲間を人質に取られて動けずにいる。時間の無駄だから早く引きなさいよ。こっちにも活動限界があるのよ。
その時、あたしの手の中で震えていたツインテール少女がこんなことを叫んだ。
「私に構わず! 私ごと撃ってください!」
はぁ? ばっかじゃないの? 死ぬ気? それとも何か手があるのだろうか?
しかし、ぶるぶると震える少女に何か手があるようには見えないし、ただの捨て身か? そういうの本当に面倒なだけだからやめてほしい。
「ば、馬鹿野郎! そんなことできるか! これ以上戦友を失うわけにはいかん!」
「そうよリオンちゃん! 必ず助けるから!」
他のメンバーが口々に叫び返す。あたしは一体何を見せられているのだろう。こいつらのお涙頂戴友情即劇に付き合うつもりはないのだけど。
「あー、大丈夫よ。見逃してくれたらこの子はちゃんと解放するから。機神様にかけて誓うわ」
正直、このリオンという少女の行動は予想外に素早かったのとあまりに捨て身だったので、これ以上三人相手に戦い続けていると間違えて誰かを殺してしまいかねなかった。それは何としても避けたい。このまま引いてくれるなら御の字だけど。
「隊長! なにやってるんですか! 早く私を! ダメダメな私がいなくなっても隊長なら――」
「言うな! お前は大切な――大切な仲間だ! 『スターダスト☆シューター』には欠かせない存在だ!」
あぁ、うるさいなぁ。どうしてくれようか。
「さっさとしないと、この子を殺すわよ」
あたしが告げると、リーダー格の少女の表情がより険しくなり、リオンがビクッと大きく震えてバクバクいっている心臓の音までも感じられるようになった。この子、完全にビビっている。
「く、くそっ! 私は……私はまた仲間を失ってしまうというのか! 私は、なんて無能な隊長なのだ!」
悔しそうに顔を歪める隊長さん。
あ、あのー? ドローン壊したからもう配信されてないはずなんだけどなー? いつまでつづけます? これ?
「か、かくなる上は……隊長、マヤさん、今までありがとうございました!」
ま、まさかリオンちゃん……?
「おい馬鹿! やめろリオン!」
隊長さんがあたしの心の声を代弁してくれた。あたしが慌てて捕まえていたリオンをうかがうと、彼女は右手で腰の水風船を掴んでいた。――しまった、あたしとしたことが油断した!
「『スターダスト☆シューター』に――『アイル・エンタープライズ』に栄光あれ!」
「――っ! AA(アドバンスアクト)『思念動力(テレキネシス)』!」
あたしは咄嗟に物体を自由に移動できるAAを発動して、リオンが掴んでいた水風船を真上に吹き飛ばした。と、ほぼ同時に、上空で水風船は爆ぜる。
――バァァァンッ!
まるで花火だ。
唖然とする隊長さんとマヤさん。その隙に、あたしはリオンの後頭部に手刀で一撃を加えて気絶させ、そのまま抱えてその場を立ち去ったのだった。
さっきの爆発はきっと大人数の目に止まったはずだ。天使の援軍が来るかもしれないし、警察や民間人が寄ってきても面倒だ。人が増えれば増えるほど、殺さずに戦うのは難しくなる。
なにより、AAを使ってしまったこともあって、そろそろ活動限界が近かった。
「まあいいわ、思わぬ手土産もできたしね。一旦拠点に戻ることにしましょうか」
あたしは夕闇に紛れて『光導機神教団(こうどうきしんきょうだん)』のアジトへと引きあげたのだった。
*
青葉(あおば) 結衣香(ゆいか)が立ち去った後、その場に残されたアイル・エンタープライズ所属の『スターダスト☆シューター』の隊長とマヤは、やっと硬直状態から復帰した。
「あ、あれ? リオンちゃんと『天使狩り』は?」
「逃げられたんだよ! くそっ! また助けられなかった……リオンは、殺されてしまうだろう」
肩を落とし、涙を流す隊長。そんな隊長の背中をマヤが優しく撫でた。
「隊長、隊長の側には私がいるわ。私はどこにも行かない。だから安心して――」
「できるか! 戦友(とも)が殺されたんだぞ!? よくそんなのんきでいられるな!」
「隊長……私、隊長のことがずっと……」
「やめろ……」
隊長の小さな体を抱きしめようとするマヤ。しかし隊長はそんな彼女を振り払うと、悲痛な眼差しをマヤに向けた。
「……やめてくれ」
その視線に、マヤは黙って頷くしかなかった。
が、その時、誰もいなかったはずの住宅地、彼女たちの背後にふっと人影が現れた。
「誰だっ!?」
気配を感じ、慌てて振り向く隊長とマヤ。青葉が戻ってきたのかと思ったがそうではなかった。そもそも青葉の実力をもってすれば二人に気づかれずに接近するのは容易かっただろう。
振り向いた二人は、その視線の先にいた人物を見て目を丸くした。
「うそ……」
「まさか……」
そう、その人物は彼女たちのよく知った人物だったのだ。
人影は柔らかな空気をまとって、二人に親しげに手を振る。
「やっほー、すごい爆発が見えたから駆けつけたら――スタシューの二人じゃん! どしたのー?」
「あ、あ、ああああっ」
「か、か、かかかかっ」
その人物は、チア衣装を身につけた金髪の美少女。アイル・エンタープライズのエース、秋茜(あきせ) 華帆(かほ)その人だったのだ。
「あ、秋茜先輩!」
「か、華帆さん!」
「ピンポーン! せいかい!」
華帆は頭の後ろに手を回してえへへと笑った。
「どうして……機獣にやられたはずじゃ……」
「あー、あんなことであたしがやられるわけないって。上手く逃げ出してすこし前に戻ってきたの」
「で、ですよね! 信じてましたよ!」
隊長とマヤは頼れるエースの復活に舞い上がってしまい!先を争って華帆に駆け寄ると、その豊満な体に抱きついて再会を喜んだ。
「えへへ、くすぐったいよー二人ともー」
「あ、秋茜先輩! そういえばうちのリオンが『天使狩り』に捕まってしまったんです!」
「『天使狩り』に? それは大変! あたしがなんとかして探し出すから二人は――」
隊長の言葉に、華帆のまとっていたゆるふわな空気は一瞬ピリッと張りつめた。――それは、仲間の危機を聞いたからか――それとも。
「――二人はそのまま死んどいてね?」
『スターダスト☆シューター』の二人は、何が起きたのか分からないまま、華帆に抱きかかえられるようにして事切れていた。
「さてと、なるほど『天使狩り』かぁ。どこの誰かは分からないけど、利用させてもらうね?」
華帆は、的確に心臓を撃ち抜かれて即死した二人の亡骸をゆっくりと地面に下ろすと、右手のブレスレットに頭を近づけて指揮官(プロデューサー)に念話(テレパシー)を送った。
『こちら『ラスティー・ネール』の秋茜華帆です。――スターダスト☆シューターの隊長ちゃんとマヤちゃんが『天使狩り』に殺されちゃったみたい。リオンちゃんも連れ去られて――あたしが駆けつけた時には既に――』
『な、なんだって!? スターダスト☆シューターが!? 『天使狩り』め! ――よし、戻ってこい華帆! 体勢を立て直してやつを必ず捕まえるぞ! 89プロデュースにも連絡をとって共同戦線を敷く! 我々アイルを本気にさせたこと、後悔させてやる!』
あーあー、お気に入りのスタシューがやられたことで指揮官のやつ完全に頭に血が上ってる。面白くなってきたよぉ。と華帆はほくそ笑んだ。
『了解しました。『ラスティー・ネール』帰投します』
「仕掛けてきたのはそっちなんだから、恨みっこなしよ――?」
あたしはそれだけ言うと、機装の力で強化された脚力で、真っ直ぐに駆けた。このスピードに初見で対応できる者は、いくら天使(アイドル)と言えどもごく少数だろう。実際、STの元トップ天使の伺見(うかがみ) 笑鈴(えりん)ですら一瞬反応が遅れてしまったのだから。
そして――
――目が慣れた頃にはもう手遅れだ
「は、はやっ……!?」
リーダー格の少女が驚きの声を上げた時には、あたしはすでに彼女の背後に回っている。――がら空きの背中、ライトブレードを振ればこの少女を殺すのは容易だ。だが、そうはしない。代わりにあたしは、ライトブレードを展開して、とあるものに振り下ろした。
―――ブゥン――ブゥン
二回、ブレードが唸り、ガシャンと音を立てて、真っ二つにされた二基のドローンの残骸がコンクリートに上に落下した。
「ドローンが!」
別の少女が悲痛な叫びを上げる。あたしはそのまま、呆気にとられた様子でこちらを振り向いたリーダー格の少女に駆け寄り、その手に握られていたライフル型の水鉄砲を破壊しようとした。――が、そんなあたしと彼女の間に割って入る者がいた。
「――隊長ぉっ!!」
どういう仕組みなのか、燦然(さんぜん)と光り輝く白いツインテール。そして同じくらい白いスクール水着と、両手に白い二丁拳銃のような水鉄砲を構えた少女。彼女が恐怖に引きつった顔をしながらも、仲間を庇うべく咄嗟に動いたのだろう。なかなか悪くない反応だ。だけど、二丁拳銃を構えながらも彼女の視線はあたしを追いきれていないし、なにより味方の射線に割って入ってしまっているので、こちらとしては好都合だった。
「悪いわね、お嬢ちゃん」
あたしは体を屈めて二丁拳銃の射撃をかわしながら、ハイキックで彼女の手首に一撃加えて拳銃を叩き落とし、ライトブレードの一閃でもう片方の拳銃を破壊すると、ツインテール少女の背後に回ってその喉元にライトブレードを突きつけた。
「ひいっ!?」
彼女の喉から悲鳴のような声が漏れる。そこでやっと、他の二人はあたしの方に武器を向けることができたようだ。でも遅すぎる。さすがに人質ごと撃ってくるなんてことはないだろう。
「引きなさい。この子がどうなってもいいの?」
あたしがリーダー格の少女に呼びかけると、彼女は歯を食いしばりながら一度目を閉じた。
「くそっ……汚いぞ『天使狩り』」
「それは心外ね? 屁理屈つけて襲ってきたのはあなたたちの方でしょう?」
リーダー格の少女は、顔を上げるとキッとあたしを睨みつける。が、仲間を人質に取られて動けずにいる。時間の無駄だから早く引きなさいよ。こっちにも活動限界があるのよ。
その時、あたしの手の中で震えていたツインテール少女がこんなことを叫んだ。
「私に構わず! 私ごと撃ってください!」
はぁ? ばっかじゃないの? 死ぬ気? それとも何か手があるのだろうか?
しかし、ぶるぶると震える少女に何か手があるようには見えないし、ただの捨て身か? そういうの本当に面倒なだけだからやめてほしい。
「ば、馬鹿野郎! そんなことできるか! これ以上戦友を失うわけにはいかん!」
「そうよリオンちゃん! 必ず助けるから!」
他のメンバーが口々に叫び返す。あたしは一体何を見せられているのだろう。こいつらのお涙頂戴友情即劇に付き合うつもりはないのだけど。
「あー、大丈夫よ。見逃してくれたらこの子はちゃんと解放するから。機神様にかけて誓うわ」
正直、このリオンという少女の行動は予想外に素早かったのとあまりに捨て身だったので、これ以上三人相手に戦い続けていると間違えて誰かを殺してしまいかねなかった。それは何としても避けたい。このまま引いてくれるなら御の字だけど。
「隊長! なにやってるんですか! 早く私を! ダメダメな私がいなくなっても隊長なら――」
「言うな! お前は大切な――大切な仲間だ! 『スターダスト☆シューター』には欠かせない存在だ!」
あぁ、うるさいなぁ。どうしてくれようか。
「さっさとしないと、この子を殺すわよ」
あたしが告げると、リーダー格の少女の表情がより険しくなり、リオンがビクッと大きく震えてバクバクいっている心臓の音までも感じられるようになった。この子、完全にビビっている。
「く、くそっ! 私は……私はまた仲間を失ってしまうというのか! 私は、なんて無能な隊長なのだ!」
悔しそうに顔を歪める隊長さん。
あ、あのー? ドローン壊したからもう配信されてないはずなんだけどなー? いつまでつづけます? これ?
「か、かくなる上は……隊長、マヤさん、今までありがとうございました!」
ま、まさかリオンちゃん……?
「おい馬鹿! やめろリオン!」
隊長さんがあたしの心の声を代弁してくれた。あたしが慌てて捕まえていたリオンをうかがうと、彼女は右手で腰の水風船を掴んでいた。――しまった、あたしとしたことが油断した!
「『スターダスト☆シューター』に――『アイル・エンタープライズ』に栄光あれ!」
「――っ! AA(アドバンスアクト)『思念動力(テレキネシス)』!」
あたしは咄嗟に物体を自由に移動できるAAを発動して、リオンが掴んでいた水風船を真上に吹き飛ばした。と、ほぼ同時に、上空で水風船は爆ぜる。
――バァァァンッ!
まるで花火だ。
唖然とする隊長さんとマヤさん。その隙に、あたしはリオンの後頭部に手刀で一撃を加えて気絶させ、そのまま抱えてその場を立ち去ったのだった。
さっきの爆発はきっと大人数の目に止まったはずだ。天使の援軍が来るかもしれないし、警察や民間人が寄ってきても面倒だ。人が増えれば増えるほど、殺さずに戦うのは難しくなる。
なにより、AAを使ってしまったこともあって、そろそろ活動限界が近かった。
「まあいいわ、思わぬ手土産もできたしね。一旦拠点に戻ることにしましょうか」
あたしは夕闇に紛れて『光導機神教団(こうどうきしんきょうだん)』のアジトへと引きあげたのだった。
*
青葉(あおば) 結衣香(ゆいか)が立ち去った後、その場に残されたアイル・エンタープライズ所属の『スターダスト☆シューター』の隊長とマヤは、やっと硬直状態から復帰した。
「あ、あれ? リオンちゃんと『天使狩り』は?」
「逃げられたんだよ! くそっ! また助けられなかった……リオンは、殺されてしまうだろう」
肩を落とし、涙を流す隊長。そんな隊長の背中をマヤが優しく撫でた。
「隊長、隊長の側には私がいるわ。私はどこにも行かない。だから安心して――」
「できるか! 戦友(とも)が殺されたんだぞ!? よくそんなのんきでいられるな!」
「隊長……私、隊長のことがずっと……」
「やめろ……」
隊長の小さな体を抱きしめようとするマヤ。しかし隊長はそんな彼女を振り払うと、悲痛な眼差しをマヤに向けた。
「……やめてくれ」
その視線に、マヤは黙って頷くしかなかった。
が、その時、誰もいなかったはずの住宅地、彼女たちの背後にふっと人影が現れた。
「誰だっ!?」
気配を感じ、慌てて振り向く隊長とマヤ。青葉が戻ってきたのかと思ったがそうではなかった。そもそも青葉の実力をもってすれば二人に気づかれずに接近するのは容易かっただろう。
振り向いた二人は、その視線の先にいた人物を見て目を丸くした。
「うそ……」
「まさか……」
そう、その人物は彼女たちのよく知った人物だったのだ。
人影は柔らかな空気をまとって、二人に親しげに手を振る。
「やっほー、すごい爆発が見えたから駆けつけたら――スタシューの二人じゃん! どしたのー?」
「あ、あ、ああああっ」
「か、か、かかかかっ」
その人物は、チア衣装を身につけた金髪の美少女。アイル・エンタープライズのエース、秋茜(あきせ) 華帆(かほ)その人だったのだ。
「あ、秋茜先輩!」
「か、華帆さん!」
「ピンポーン! せいかい!」
華帆は頭の後ろに手を回してえへへと笑った。
「どうして……機獣にやられたはずじゃ……」
「あー、あんなことであたしがやられるわけないって。上手く逃げ出してすこし前に戻ってきたの」
「で、ですよね! 信じてましたよ!」
隊長とマヤは頼れるエースの復活に舞い上がってしまい!先を争って華帆に駆け寄ると、その豊満な体に抱きついて再会を喜んだ。
「えへへ、くすぐったいよー二人ともー」
「あ、秋茜先輩! そういえばうちのリオンが『天使狩り』に捕まってしまったんです!」
「『天使狩り』に? それは大変! あたしがなんとかして探し出すから二人は――」
隊長の言葉に、華帆のまとっていたゆるふわな空気は一瞬ピリッと張りつめた。――それは、仲間の危機を聞いたからか――それとも。
「――二人はそのまま死んどいてね?」
『スターダスト☆シューター』の二人は、何が起きたのか分からないまま、華帆に抱きかかえられるようにして事切れていた。
「さてと、なるほど『天使狩り』かぁ。どこの誰かは分からないけど、利用させてもらうね?」
華帆は、的確に心臓を撃ち抜かれて即死した二人の亡骸をゆっくりと地面に下ろすと、右手のブレスレットに頭を近づけて指揮官(プロデューサー)に念話(テレパシー)を送った。
『こちら『ラスティー・ネール』の秋茜華帆です。――スターダスト☆シューターの隊長ちゃんとマヤちゃんが『天使狩り』に殺されちゃったみたい。リオンちゃんも連れ去られて――あたしが駆けつけた時には既に――』
『な、なんだって!? スターダスト☆シューターが!? 『天使狩り』め! ――よし、戻ってこい華帆! 体勢を立て直してやつを必ず捕まえるぞ! 89プロデュースにも連絡をとって共同戦線を敷く! 我々アイルを本気にさせたこと、後悔させてやる!』
あーあー、お気に入りのスタシューがやられたことで指揮官のやつ完全に頭に血が上ってる。面白くなってきたよぉ。と華帆はほくそ笑んだ。
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