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第2章 美少女天使スクリュー・ドライバー
謎の敵、守れ街の平和
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金属と金属が激しくぶつかり合う音――銃撃音――爆発音――何かが空を切り裂いて飛んでいく音。
何かが焦げる匂いもする。
東京港の広いコンテナターミナルには、ピンク色の舞台が所狭しと展開され、大小様々な種類の機獣、様々な事務所の天使、そして『未確認』と呼ばれる紫の装甲に覆われた戦士達が入り乱れて戦っていた。
その中でも一段と派手に暴れていて目立っている大柄の『未確認』――『黄道十二宮(ゾディアック・イクリプス)』の一員、タウラスだ。彼は、近づく天使たちを片っ端からその手に持った大斧の一撃で葬り去っていく。彼の足元には何人もの天使が倒れており、気づくと流石に学習したのか、彼に近づく天使はいなくなっていた。
タウラスは新しい獲物を探すように一歩一歩ゆっくり歩き出した。彼が一歩を踏み出す度にドシンドシンと地響きがした。タウラスがターミナルの外れにやってきた時、突然その頭部に何条ものビームが直撃した。
「グォォォォッ!!」
咆哮するタウラス。彼の歩みが止まった。
少し離れたコンテナの裏から、四人ほどの天使が顔を覗かせている。彼女たちは全員水着のような機装(ギア)を身につけており、手には様々なタイプの水鉄砲のような武器を持っていた。その水鉄砲からビームを放っていたらしい。
「撃て撃て! 撃ちまくれっ! ここから先には虫一匹入れるなぁっ!」
リーダー格と思われる、巨大なライフル型の水鉄砲を構えた少女が叫ぶと、その声に呼応するように、一段と砲火の嵐は強くなった。
「グァァァァッ!!」
しかし、タウラスは苦しげに咆哮するものの、いっこうに倒れる気配はない。
「た、隊長っ! もうエネルギーがもちませんっ!」
両手に小型のピストル型水鉄砲を構えた天使が半泣きで叫んだ。
「ここを突破されると街に被害が出る! とにかく撃てっ! エネルギーが尽きても撃てぇっ!」
「そんな無茶なぁ……」
接近しようとするタウラス、そうはさせまいとする天使たち。双方一歩も譲らず、しばし均衡状態であったが、やがて先程弱音を吐いた天使が「うきゅぅ……」という声を上げて、強制解除(クラッシュ)して倒れてしまった。続いてその隣でビームを照射していた天使も倒れて、弾幕は明らかに薄くなった。
タウラスが再び前進を開始する。
それを見た残りの同僚が、武器を置くと腰にいくつかついていた水風船を両手に持ってリーダーに声をかける。
「隊長、かくなる上はこの私が命をかけてでもやつを止めてみせます!」
「ばかやろう! 全員で事務所に帰ると決めただろう!」
「しかし! このままでは街に被害が……『スターダスト☆シューター』の天使として、それはなんとしても防がないと!」
「ええい! ならば私も行く! 共に死のう戦友(とも)よ!」
リーダー格の天使も自分の腰の水風船に手をやった。しかし、部下は首を横に振ると、傍で倒れている二人の天使たちを指さした。
「いけません! 隊長が死んだら、誰がこいつらをまとめるんですか! ……後は任せましたよ!」
そう言い残すと、部下は真っ直ぐにタウラスに向けて駆け出した。
「やめろ! 戻れ! 隊長命令だ!」
しかし部下は戻らない。タウラスが斧を振り上げた。そしてそのまま振り下ろし……
――閃光(パアッ!)
リーダー格の天使は部下の名前を大声で叫んだが、爆発の衝撃でその声はかき消された。
砕けたコンクリートが砂ぼこりとなってたちこめる。
「……グスッ、まったく……出来の悪い部下だ!」
しばらくして呟いたリーダー格は右腕で乱暴に涙を拭った。
そして、部下の成果を確かめようと、砂ぼこりの中を一歩踏み出した時……
「おい……うそ……だろ……?」
その目を疑った。タウラスは何事も無かったかのようにそこに立っていた。
そしてリーダー格の天使の姿を確認すると、再び斧を振り上げた。リーダー格は尻もちをついて動けなくなった。水着姿で装甲などほとんどない彼女は、攻撃を受けたらひとたまりもない。……まあ装甲があったところで、タウラスの大斧の前ではほとんど意味をなさないのだが。
「もはやこれまでか……アイル・エンタープライズに……『スターダスト☆シューター』に栄光あれ!」
彼女は覚悟を決めて目を閉じた。
――ドッ!
と、タウラスは側面からキャノン砲による攻撃を受けて再び動きを止めた。その上半身が僅かに揺らぐ。攻撃が効いている。
「STの『ΣCROSS(シグマクロス)』だ。助太刀させてもらう」
「さっすが兄さん! 優しい!」
「軽口叩くな美唯菜(みいな)。……行くぞ」
「はい、兄さん!」
タウラスの背後から走ってきた金銀のスチームパンク衣装(コスチューム)に身を包んだ兄弟は、タウラスの攻撃を軽々とかわしながら的確に背後に回り、キャノン砲やショットガンでダメージを与えていく。
「STの……助かった……」
『スターダスト☆シューター』のリーダーの天使は、そう呟くと気を失った。
一方上空では、同じくSTの『トライブライト』の天使、伺見笑鈴と、『黄道十二宮』の一人で大翼で空を飛ぶ戦士――ジェミニが激しい空中戦を繰り広げていた。
「なんなのこいつ! めちゃくちゃだよ!」
ジェミニは笑鈴の放ったミサイルを急降下ですんでのところでかわしながら叫んだ。どうやら誰かと会話しているようだ。
「タウラス! は、あっちはあっちで大変そうだね……。スコーピスには頼りたくないし。まあ空飛べるのは僕だけだから、自分でなんとかするしかないよね!」
「あはははっ♪ 逃がさないよ~? 空のもずくにしてやるルンッ♪ あ、もずくは海かぁ~……まあどっちでもいいや! ふぁいやー!」
大翼で自由自在に飛び回るジェミニを、背中に装備されたジェットパックを使って猛スピードで追跡する笑鈴は、脇についていた空になったミサイルパックを切り離すと、今度は両脚に取り付けられたミサイルパックから再びミサイルを発射した。
「あはははっ♪ めんどくさーい!」
またもや、すんでのところでかわすジェミニ。
「ちょろちょろうっとうしいねー!」
「そっちがねー!」
ジェミニと笑鈴は似たようなテンションで煽りあいながら、鬼ごっこは続く。
「ねーねー、おねーさんってさ、『第三世代』なんでしょ?」
「だったらなにかなー?」
「うーん、べつに? ちょっと確認したかっただけだ……よっと!」
突然ジェミニは翼を広げて空中で急停止すると、大翼から無数の羽根を飛ばして反撃した。
「うわぁっ!?」
笑鈴は咄嗟に背中から盾のようなものを取り出してその攻撃を防いだ。
「ふぅ、危なかったぁ……うかがみちゃんびっくりだぞ~?」
「うっそぉ! バケモノじゃん!」
ジェミニは笑いながら言うと、すっと遠くに視線を投げた。笑鈴も釣られてそちらに視線を向けると、ちょうど『殲滅兵器スカイツリー』が轟音を上げながら破壊されるところだった。
「あちゃー、やっぱりかぁ……」
「ふーん、ピスケス達は成功したんだね。じゃあ僕らもひとまずは撤退するかなー? ……また遊ぼうねおねーさん!」
苦笑する笑鈴に笑いかけると、ジェミニは身を翻して去っていった。一瞬追いかけようとした笑鈴だったが、手首を額に近づけて念話(テレパシー)で何かを話すと、ゆっくりと地面に降りた。と同時に、全身にゴテゴテと取り付けられていた武装が、ガシャンと音を立てて落下した。不要な武装を切り離し、常に武器を入れ替えながら戦う。それが笑鈴の戦闘スタイルだった。
笑鈴はついに背中のジェットパックや翼までも切り離して、身体にぴったりと張り付くボディースーツだけの姿になった。
「はぁ……はぁ……」
辛い戦闘だったのか、荒い息をつきながら両手で身体を抱く笑鈴。
「あー、痛いっ」
笑鈴は盾で防ぎ損ねて左足首に突き刺さっていた黒い羽根を引っこ抜いた。動きを確かめるように左足を振ると、首を傾げた。
「何してるんですか? はしたないですよ、うかがみちゃん」
「そうです。そこら辺に武装を捨てておかないでください」
笑鈴の後ろからそう声をかけたのは、彼女と同じように全身に大量の武装を身にまとっている二人の少女。二人はよく似た……というか瓜二つの容姿をしている。双子だ。名前を関枚蓮花(せきひられんか)、関枚甜花(せきひらてんか)といい、笑鈴と同じく『トライブライト』のメンバーだが、彼女たちの機装は第二世代なので飛行能力は持ち合わせていない。
「う、うるさい……」
笑鈴は心底嫌そうな顔で二人を睨んだ。
「ユニットメンバーなんだから少しは心配したらー?」
「私たちの任務はあなたの監視ですので」
「ですので」
双子は淡々とそう答えた。
ジェミニが撤退したことで、他の『黄道十二宮』や機獣達も海へと引き揚げていく。天使たちはそんな敵に追撃をする余裕はなかった。
東京港の戦いはひとまず引き分けということで終わった。しかし、日本国は殲滅兵器スカイツリーを破壊され、多数の天使を失う、または負傷されることとなってしまい、実質敗北だった。
機獣はたくさん倒したものの、敵の『未確認』はあと一歩の所まで追い詰めながらも一体も撃破には至っていなかった。
――そしてその夜
『黄道十二宮』の殿皇アリエスが計画を次の段階へ移行したことも。
機獣や天使が立ち去った後のターミナル。危険なので一般人の立ち入りが禁止されているその場所で一人、黒ずくめの服を着て軍手をはめ、マスクをした人物が一人。地面に這いつくばりながら、何かを必死に集めていたことも。
株式会社STの衛洲が、金儲けのための新たな企みを始めたことも。
そのSTの『トライブライト』第三世代の伺見笑鈴の身に起きた〝異変〟についても。
ネットのとあるマイナー掲示板で話題になっていた『一人で未確認と戦って撃退した美少女天使』のことも。
当事者以外にはほとんど知られない事だった。
金属と金属が激しくぶつかり合う音――銃撃音――爆発音――何かが空を切り裂いて飛んでいく音。
何かが焦げる匂いもする。
東京港の広いコンテナターミナルには、ピンク色の舞台が所狭しと展開され、大小様々な種類の機獣、様々な事務所の天使、そして『未確認』と呼ばれる紫の装甲に覆われた戦士達が入り乱れて戦っていた。
その中でも一段と派手に暴れていて目立っている大柄の『未確認』――『黄道十二宮(ゾディアック・イクリプス)』の一員、タウラスだ。彼は、近づく天使たちを片っ端からその手に持った大斧の一撃で葬り去っていく。彼の足元には何人もの天使が倒れており、気づくと流石に学習したのか、彼に近づく天使はいなくなっていた。
タウラスは新しい獲物を探すように一歩一歩ゆっくり歩き出した。彼が一歩を踏み出す度にドシンドシンと地響きがした。タウラスがターミナルの外れにやってきた時、突然その頭部に何条ものビームが直撃した。
「グォォォォッ!!」
咆哮するタウラス。彼の歩みが止まった。
少し離れたコンテナの裏から、四人ほどの天使が顔を覗かせている。彼女たちは全員水着のような機装(ギア)を身につけており、手には様々なタイプの水鉄砲のような武器を持っていた。その水鉄砲からビームを放っていたらしい。
「撃て撃て! 撃ちまくれっ! ここから先には虫一匹入れるなぁっ!」
リーダー格と思われる、巨大なライフル型の水鉄砲を構えた少女が叫ぶと、その声に呼応するように、一段と砲火の嵐は強くなった。
「グァァァァッ!!」
しかし、タウラスは苦しげに咆哮するものの、いっこうに倒れる気配はない。
「た、隊長っ! もうエネルギーがもちませんっ!」
両手に小型のピストル型水鉄砲を構えた天使が半泣きで叫んだ。
「ここを突破されると街に被害が出る! とにかく撃てっ! エネルギーが尽きても撃てぇっ!」
「そんな無茶なぁ……」
接近しようとするタウラス、そうはさせまいとする天使たち。双方一歩も譲らず、しばし均衡状態であったが、やがて先程弱音を吐いた天使が「うきゅぅ……」という声を上げて、強制解除(クラッシュ)して倒れてしまった。続いてその隣でビームを照射していた天使も倒れて、弾幕は明らかに薄くなった。
タウラスが再び前進を開始する。
それを見た残りの同僚が、武器を置くと腰にいくつかついていた水風船を両手に持ってリーダーに声をかける。
「隊長、かくなる上はこの私が命をかけてでもやつを止めてみせます!」
「ばかやろう! 全員で事務所に帰ると決めただろう!」
「しかし! このままでは街に被害が……『スターダスト☆シューター』の天使として、それはなんとしても防がないと!」
「ええい! ならば私も行く! 共に死のう戦友(とも)よ!」
リーダー格の天使も自分の腰の水風船に手をやった。しかし、部下は首を横に振ると、傍で倒れている二人の天使たちを指さした。
「いけません! 隊長が死んだら、誰がこいつらをまとめるんですか! ……後は任せましたよ!」
そう言い残すと、部下は真っ直ぐにタウラスに向けて駆け出した。
「やめろ! 戻れ! 隊長命令だ!」
しかし部下は戻らない。タウラスが斧を振り上げた。そしてそのまま振り下ろし……
――閃光(パアッ!)
リーダー格の天使は部下の名前を大声で叫んだが、爆発の衝撃でその声はかき消された。
砕けたコンクリートが砂ぼこりとなってたちこめる。
「……グスッ、まったく……出来の悪い部下だ!」
しばらくして呟いたリーダー格は右腕で乱暴に涙を拭った。
そして、部下の成果を確かめようと、砂ぼこりの中を一歩踏み出した時……
「おい……うそ……だろ……?」
その目を疑った。タウラスは何事も無かったかのようにそこに立っていた。
そしてリーダー格の天使の姿を確認すると、再び斧を振り上げた。リーダー格は尻もちをついて動けなくなった。水着姿で装甲などほとんどない彼女は、攻撃を受けたらひとたまりもない。……まあ装甲があったところで、タウラスの大斧の前ではほとんど意味をなさないのだが。
「もはやこれまでか……アイル・エンタープライズに……『スターダスト☆シューター』に栄光あれ!」
彼女は覚悟を決めて目を閉じた。
――ドッ!
と、タウラスは側面からキャノン砲による攻撃を受けて再び動きを止めた。その上半身が僅かに揺らぐ。攻撃が効いている。
「STの『ΣCROSS(シグマクロス)』だ。助太刀させてもらう」
「さっすが兄さん! 優しい!」
「軽口叩くな美唯菜(みいな)。……行くぞ」
「はい、兄さん!」
タウラスの背後から走ってきた金銀のスチームパンク衣装(コスチューム)に身を包んだ兄弟は、タウラスの攻撃を軽々とかわしながら的確に背後に回り、キャノン砲やショットガンでダメージを与えていく。
「STの……助かった……」
『スターダスト☆シューター』のリーダーの天使は、そう呟くと気を失った。
一方上空では、同じくSTの『トライブライト』の天使、伺見笑鈴と、『黄道十二宮』の一人で大翼で空を飛ぶ戦士――ジェミニが激しい空中戦を繰り広げていた。
「なんなのこいつ! めちゃくちゃだよ!」
ジェミニは笑鈴の放ったミサイルを急降下ですんでのところでかわしながら叫んだ。どうやら誰かと会話しているようだ。
「タウラス! は、あっちはあっちで大変そうだね……。スコーピスには頼りたくないし。まあ空飛べるのは僕だけだから、自分でなんとかするしかないよね!」
「あはははっ♪ 逃がさないよ~? 空のもずくにしてやるルンッ♪ あ、もずくは海かぁ~……まあどっちでもいいや! ふぁいやー!」
大翼で自由自在に飛び回るジェミニを、背中に装備されたジェットパックを使って猛スピードで追跡する笑鈴は、脇についていた空になったミサイルパックを切り離すと、今度は両脚に取り付けられたミサイルパックから再びミサイルを発射した。
「あはははっ♪ めんどくさーい!」
またもや、すんでのところでかわすジェミニ。
「ちょろちょろうっとうしいねー!」
「そっちがねー!」
ジェミニと笑鈴は似たようなテンションで煽りあいながら、鬼ごっこは続く。
「ねーねー、おねーさんってさ、『第三世代』なんでしょ?」
「だったらなにかなー?」
「うーん、べつに? ちょっと確認したかっただけだ……よっと!」
突然ジェミニは翼を広げて空中で急停止すると、大翼から無数の羽根を飛ばして反撃した。
「うわぁっ!?」
笑鈴は咄嗟に背中から盾のようなものを取り出してその攻撃を防いだ。
「ふぅ、危なかったぁ……うかがみちゃんびっくりだぞ~?」
「うっそぉ! バケモノじゃん!」
ジェミニは笑いながら言うと、すっと遠くに視線を投げた。笑鈴も釣られてそちらに視線を向けると、ちょうど『殲滅兵器スカイツリー』が轟音を上げながら破壊されるところだった。
「あちゃー、やっぱりかぁ……」
「ふーん、ピスケス達は成功したんだね。じゃあ僕らもひとまずは撤退するかなー? ……また遊ぼうねおねーさん!」
苦笑する笑鈴に笑いかけると、ジェミニは身を翻して去っていった。一瞬追いかけようとした笑鈴だったが、手首を額に近づけて念話(テレパシー)で何かを話すと、ゆっくりと地面に降りた。と同時に、全身にゴテゴテと取り付けられていた武装が、ガシャンと音を立てて落下した。不要な武装を切り離し、常に武器を入れ替えながら戦う。それが笑鈴の戦闘スタイルだった。
笑鈴はついに背中のジェットパックや翼までも切り離して、身体にぴったりと張り付くボディースーツだけの姿になった。
「はぁ……はぁ……」
辛い戦闘だったのか、荒い息をつきながら両手で身体を抱く笑鈴。
「あー、痛いっ」
笑鈴は盾で防ぎ損ねて左足首に突き刺さっていた黒い羽根を引っこ抜いた。動きを確かめるように左足を振ると、首を傾げた。
「何してるんですか? はしたないですよ、うかがみちゃん」
「そうです。そこら辺に武装を捨てておかないでください」
笑鈴の後ろからそう声をかけたのは、彼女と同じように全身に大量の武装を身にまとっている二人の少女。二人はよく似た……というか瓜二つの容姿をしている。双子だ。名前を関枚蓮花(せきひられんか)、関枚甜花(せきひらてんか)といい、笑鈴と同じく『トライブライト』のメンバーだが、彼女たちの機装は第二世代なので飛行能力は持ち合わせていない。
「う、うるさい……」
笑鈴は心底嫌そうな顔で二人を睨んだ。
「ユニットメンバーなんだから少しは心配したらー?」
「私たちの任務はあなたの監視ですので」
「ですので」
双子は淡々とそう答えた。
ジェミニが撤退したことで、他の『黄道十二宮』や機獣達も海へと引き揚げていく。天使たちはそんな敵に追撃をする余裕はなかった。
東京港の戦いはひとまず引き分けということで終わった。しかし、日本国は殲滅兵器スカイツリーを破壊され、多数の天使を失う、または負傷されることとなってしまい、実質敗北だった。
機獣はたくさん倒したものの、敵の『未確認』はあと一歩の所まで追い詰めながらも一体も撃破には至っていなかった。
――そしてその夜
『黄道十二宮』の殿皇アリエスが計画を次の段階へ移行したことも。
機獣や天使が立ち去った後のターミナル。危険なので一般人の立ち入りが禁止されているその場所で一人、黒ずくめの服を着て軍手をはめ、マスクをした人物が一人。地面に這いつくばりながら、何かを必死に集めていたことも。
株式会社STの衛洲が、金儲けのための新たな企みを始めたことも。
そのSTの『トライブライト』第三世代の伺見笑鈴の身に起きた〝異変〟についても。
ネットのとあるマイナー掲示板で話題になっていた『一人で未確認と戦って撃退した美少女天使』のことも。
当事者以外にはほとんど知られない事だった。
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