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♡ゴスロリ魔王と最終決戦♡
いつもの日常?
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◇ ◆ ◇
目が覚めると、そこは私の部屋のベッドの上だった。――なんか、すごい悪夢を見ていたような気がする。ん? ちょっと待てよ……? なんか身体に違和感が……!
ゾッと背中を悪寒が駆け抜けた。もしかしてこれは……!?
慌ててかぶっていた布団をガバッと捲って身体を確認してみる。……が、特に恐れていたようなことは発生していないようだった。いつもの――記憶にあるとおりの私の身体。鏡を見ても異常なし。金髪に緋(あか)い目、可愛らしいベビーフェイスにおっきなおっぱい。
突然貧乳になってたりとか、男の子になってアレが生えてたりとか、そんなことはなかった。よかった……。
私は制服に着替え学校に行く準備を済ませると、家族が待つリビングへと走った。
リビングではいつも通りクラウスさんとホムラちゃん、セレナちゃんの三人が朝食を食べている。今日はどうやら和食らしく、焼いた鮭のいい匂いがしていた。
じゅるり……お腹すいたなぁ。――でも私はふと違和感を覚えた。
――私の分がない
いつもは置いてあるはずの私のお皿がない! そればかりか、ホムラちゃんの隣にあったはずの私の椅子すらなくなっている!
「どうなのですか? 勉強は? ちゃんとやってます? 期末試験は大丈夫ですか?」
「うるっせぇな! 言われなくてもやってるわ!」
セレナちゃんとホムラちゃんが激しく言い争っているので、私は恐る恐るクラウスさんに近づいて、話しかけた。
「あ、あのぅ……私のご飯は……」
背後から話しかけられたクラウスさんはゆっくりと振り返り、首を傾げた。
「あれ、こんな子家にいたか?」
――えっ
私はその言葉で衝撃を受けてしまった。えっと……まさかアルツハイマーとかになってるんじゃ……? でも、気づいたらセレナちゃんとホムラちゃんも言い争いをやめてこちらを凝視している。
「どこかで見たような……」
「いや、気のせいだろ。なんで家の中にいるんだ? 迷子か?」
「あの、こ、ココアです……」
「ココア? 聞いたことのない名前ですね。初心者プレイヤーですか?」
「いや、装備からしてベータテスターだと思う」
「ソロプレイヤーか。だからといって勝手に他人(ひと)の家に入るのは感心しないなお嬢ちゃん」
「いや……えと……あの……その」
――私がおかしいんだ!
でもどうして! さっき部屋が……!
急いで部屋に駆け戻った。素早く扉を開けて中を確認する。すると――
「――うそ」
私は言葉を失った。さっきまで私の部屋だったはずの場所は、家具の一切が綺麗さっぱり撤去された殺風景な内装にリフォームされており、部屋の真ん中には一人の少年がいて、こちらを睨みつけていた。
「誰だか知らないですけど、勝手にアオイの部屋に入らないでほしいのです! アオイは今食事中なのです!」
アオイちゃんは、手で大事そうに抱えていたドッグフードの入ったお皿を床に置くと、杖を構えてこちらに向かってきた! 明らかに敵意をもっている! ヤバい!
「あ、アオイちゃん! 私だよ? ココアだよ?」
「そーやってアオイを騙そうとしても無駄ですから。アオイはあなたなんか知りませんから!」
「ぎゃぁぁぁぁっ!! ごめんなさぁぁぁぁいっ!!!!」
私はバタンッ! と部屋の扉を閉めると、あっけに取られた様子の家族がいるリビングをダッシュで突っ切り、そのまま家の外に飛び出した! 玄関にあった車椅子に躓(つまず)きそうになったけど、誰のだっけこれ?
とりあえず今はそれどころじゃない! みんな変だ! いや、私が変なのかな?
誰か……他に頼れる人は……? そうだ学校! 学校に行こう!
学校への通学路――駅までの道を走る。道行く人はいつも通りに見える。みんな鎧とかローブとかを着て武装している――本当にいつも通りの世界。気づいたら私が手に持っていたはずのスクールバッグはどこかに消えていて、制服を身につけていたはずの私の身体は、緑色のワンピースのような衣装に変わっていた。
あれ、そっかこれが本来の私の姿。だからさっき違和感あったんだ。
青い同じ色のローブを着た集団と共に電車に乗る。定期券を忘れたと思ってたけど、駅の改札は何故か開けっ放しで、そのまま素通りすることができた。考えてみればみんな定期券なんて持っているわけないので、それが普通なのかもしれない。
私はいつもの駅で降りて、また走り出す。特に遅刻したわけでもないのに自分の教室に走り込んだ。――でも。
そこには私の席はなかった。
私の席のところだけぽっかりと空白のスペースができている。隣のリーナちゃんはいつも通りだるそうに座ってはいるけれど。
「――ねぇリーナちゃん。私の机は――」
「――あなた誰?」
……。
…………。
やっぱり。
やっぱりみんな私のこと忘れちゃってる! でもあの子なら! 親友のユキノちゃんなら覚えててくれるかもしれない! 私はユキノちゃんの席に駆け寄ってみた。
「ひぃっ!?」
そんなに鬼気迫った様子だったのか、ユキノちゃんはこちらを振り向くなり悲鳴を上げた。
「ユキノちゃん!」
「ひ、ひゃいっ!」
「ユキノちゃんは私のこと覚えててくれてるよね!?」
「え……う、うん。もちろんですよ?」
――よ
よかったぁぁぁぁぁっ!! やっぱり私がおかしいんじゃなくて、私のこと忘れた人がおかしかったんだ! やっぱり持つべきものは親友ですね! えへへへっ!
私はほっとしてユキノちゃんの席から離れた。すると、入れ替わるようにキラくんがユキノちゃんの席にやってきた。ユキノちゃん人気だね。なにを話しているのか気になるので、少し離れたところから外を眺めながら聞いていないような振りをしつつ聞き耳を立てることにする。私、これでも耳は結構いいほうなんです。
「――さっきの子誰ですか? すっごく可愛いけど」
「さぁ……わかりません。でも、めんどくさいから適当に話合わせておきました。……ていうかキラさん、まさか浮気するつもりですか……?」
「まさかぁ! 僕はユキノちゃん一筋ですよ!」
「……きもっ」
「ありがとうございます!」
………………………………………。
……。
あー、そういうことですかなるほどなるほど!
キラくんがまたこちらをチラチラ見てきたので、私は全部聞かなかったことにして教室を後にした。
学校を出てあてもなく歩く。この世界に私は必要とされていない。存在するなかったかのように扱われている。何故だかは分からないけれど。
ふと、公園のベンチが目に入ったので私はそこに座って頭を抱えた。これからどう生きよう。――いや、もういっその事死のうか。
――頼りになるクラウスさんとセレナちゃん
――私のことを気にかけてくれるホムラちゃん
――一緒にいると癒されるアオイちゃん
――親友のユキノちゃんとリーナちゃん
――少し変態だけど私のことを好きでいてくれるキラくん
彼らはもうどこにもいない。
「羨ましいわね。色んな人に大切にされて……でもその分、忘れられると辛くなる。胸がキリキリして押し潰されそうになる。……可哀想に」
そんな女の人の声が聞こえた。私に向かって話しかけてくれている? どうして? ていうか誰?
私が顔を上げると、目の前にゴスロリ衣装に身を包んだ幼女がちょこんと立っていた。
「あなたは……?」
「私の名前はイブリース。あなたの味方。――あなたを救ってあげるわ」
「どうやって……?」
「私は魔王。この世界の理を支配する者。なんでも望み通りにできるのよ?」
「だったら! だったら家族とか友達を元に戻して!」
私は縋るような思いでイブリースと名乗る幼女に頭を下げた。魔王はにっこりと笑った。
「いいわよ。その代わり条件があるわ」
「条件……?」
どうせ死ぬつもりだったんだ。できることならなんでもするつもりだった。
「教えて? 小見(おみ) 哲人(あきと)はデバッグデータをどこに隠したの?」
「おみ? あきと? でばっぐ?」
聞いたことのない単語に混乱していると、イブリースは私の顔を両手で挟んで再度問いかけてくる。
「思い出しなさい! デバッグデータの在処(ありか)を! 知ってるはずよ!」
「って言われても……」
確かに、言われてみれば知ってるような……でばっぐ……でばっぐ……もう少しで思い出せそう。考え込む私の脳内に、突然凛とした少女の声が響いた。
『言っちゃダメ!』
――ドンッ!
衝撃を感じて我に返ると、一人の高校生くらいの女の子が、イブリースと激しい取っ組み合いをしていた。
「!?」
私はその少女に見覚えがあった。
「あっ、サラお姉ちゃん!」
『騙されないで心凪(ここな)。――これは夢だよ!』
「チッ! 余計なプログラムを仕込みやがって……! はぁぁっ!」
イブリースは手から黒い炎を放ってサラお姉ちゃんを吹き飛ばした!
「お姉ちゃんっ!」
『大丈夫。じきに目が覚めるわ。――また向こうで会いましょう。――いい夢を』
お姉ちゃんのそんな声と共に、私の視界は徐々に闇に飲まれていった。
目が覚めると、そこは私の部屋のベッドの上だった。――なんか、すごい悪夢を見ていたような気がする。ん? ちょっと待てよ……? なんか身体に違和感が……!
ゾッと背中を悪寒が駆け抜けた。もしかしてこれは……!?
慌ててかぶっていた布団をガバッと捲って身体を確認してみる。……が、特に恐れていたようなことは発生していないようだった。いつもの――記憶にあるとおりの私の身体。鏡を見ても異常なし。金髪に緋(あか)い目、可愛らしいベビーフェイスにおっきなおっぱい。
突然貧乳になってたりとか、男の子になってアレが生えてたりとか、そんなことはなかった。よかった……。
私は制服に着替え学校に行く準備を済ませると、家族が待つリビングへと走った。
リビングではいつも通りクラウスさんとホムラちゃん、セレナちゃんの三人が朝食を食べている。今日はどうやら和食らしく、焼いた鮭のいい匂いがしていた。
じゅるり……お腹すいたなぁ。――でも私はふと違和感を覚えた。
――私の分がない
いつもは置いてあるはずの私のお皿がない! そればかりか、ホムラちゃんの隣にあったはずの私の椅子すらなくなっている!
「どうなのですか? 勉強は? ちゃんとやってます? 期末試験は大丈夫ですか?」
「うるっせぇな! 言われなくてもやってるわ!」
セレナちゃんとホムラちゃんが激しく言い争っているので、私は恐る恐るクラウスさんに近づいて、話しかけた。
「あ、あのぅ……私のご飯は……」
背後から話しかけられたクラウスさんはゆっくりと振り返り、首を傾げた。
「あれ、こんな子家にいたか?」
――えっ
私はその言葉で衝撃を受けてしまった。えっと……まさかアルツハイマーとかになってるんじゃ……? でも、気づいたらセレナちゃんとホムラちゃんも言い争いをやめてこちらを凝視している。
「どこかで見たような……」
「いや、気のせいだろ。なんで家の中にいるんだ? 迷子か?」
「あの、こ、ココアです……」
「ココア? 聞いたことのない名前ですね。初心者プレイヤーですか?」
「いや、装備からしてベータテスターだと思う」
「ソロプレイヤーか。だからといって勝手に他人(ひと)の家に入るのは感心しないなお嬢ちゃん」
「いや……えと……あの……その」
――私がおかしいんだ!
でもどうして! さっき部屋が……!
急いで部屋に駆け戻った。素早く扉を開けて中を確認する。すると――
「――うそ」
私は言葉を失った。さっきまで私の部屋だったはずの場所は、家具の一切が綺麗さっぱり撤去された殺風景な内装にリフォームされており、部屋の真ん中には一人の少年がいて、こちらを睨みつけていた。
「誰だか知らないですけど、勝手にアオイの部屋に入らないでほしいのです! アオイは今食事中なのです!」
アオイちゃんは、手で大事そうに抱えていたドッグフードの入ったお皿を床に置くと、杖を構えてこちらに向かってきた! 明らかに敵意をもっている! ヤバい!
「あ、アオイちゃん! 私だよ? ココアだよ?」
「そーやってアオイを騙そうとしても無駄ですから。アオイはあなたなんか知りませんから!」
「ぎゃぁぁぁぁっ!! ごめんなさぁぁぁぁいっ!!!!」
私はバタンッ! と部屋の扉を閉めると、あっけに取られた様子の家族がいるリビングをダッシュで突っ切り、そのまま家の外に飛び出した! 玄関にあった車椅子に躓(つまず)きそうになったけど、誰のだっけこれ?
とりあえず今はそれどころじゃない! みんな変だ! いや、私が変なのかな?
誰か……他に頼れる人は……? そうだ学校! 学校に行こう!
学校への通学路――駅までの道を走る。道行く人はいつも通りに見える。みんな鎧とかローブとかを着て武装している――本当にいつも通りの世界。気づいたら私が手に持っていたはずのスクールバッグはどこかに消えていて、制服を身につけていたはずの私の身体は、緑色のワンピースのような衣装に変わっていた。
あれ、そっかこれが本来の私の姿。だからさっき違和感あったんだ。
青い同じ色のローブを着た集団と共に電車に乗る。定期券を忘れたと思ってたけど、駅の改札は何故か開けっ放しで、そのまま素通りすることができた。考えてみればみんな定期券なんて持っているわけないので、それが普通なのかもしれない。
私はいつもの駅で降りて、また走り出す。特に遅刻したわけでもないのに自分の教室に走り込んだ。――でも。
そこには私の席はなかった。
私の席のところだけぽっかりと空白のスペースができている。隣のリーナちゃんはいつも通りだるそうに座ってはいるけれど。
「――ねぇリーナちゃん。私の机は――」
「――あなた誰?」
……。
…………。
やっぱり。
やっぱりみんな私のこと忘れちゃってる! でもあの子なら! 親友のユキノちゃんなら覚えててくれるかもしれない! 私はユキノちゃんの席に駆け寄ってみた。
「ひぃっ!?」
そんなに鬼気迫った様子だったのか、ユキノちゃんはこちらを振り向くなり悲鳴を上げた。
「ユキノちゃん!」
「ひ、ひゃいっ!」
「ユキノちゃんは私のこと覚えててくれてるよね!?」
「え……う、うん。もちろんですよ?」
――よ
よかったぁぁぁぁぁっ!! やっぱり私がおかしいんじゃなくて、私のこと忘れた人がおかしかったんだ! やっぱり持つべきものは親友ですね! えへへへっ!
私はほっとしてユキノちゃんの席から離れた。すると、入れ替わるようにキラくんがユキノちゃんの席にやってきた。ユキノちゃん人気だね。なにを話しているのか気になるので、少し離れたところから外を眺めながら聞いていないような振りをしつつ聞き耳を立てることにする。私、これでも耳は結構いいほうなんです。
「――さっきの子誰ですか? すっごく可愛いけど」
「さぁ……わかりません。でも、めんどくさいから適当に話合わせておきました。……ていうかキラさん、まさか浮気するつもりですか……?」
「まさかぁ! 僕はユキノちゃん一筋ですよ!」
「……きもっ」
「ありがとうございます!」
………………………………………。
……。
あー、そういうことですかなるほどなるほど!
キラくんがまたこちらをチラチラ見てきたので、私は全部聞かなかったことにして教室を後にした。
学校を出てあてもなく歩く。この世界に私は必要とされていない。存在するなかったかのように扱われている。何故だかは分からないけれど。
ふと、公園のベンチが目に入ったので私はそこに座って頭を抱えた。これからどう生きよう。――いや、もういっその事死のうか。
――頼りになるクラウスさんとセレナちゃん
――私のことを気にかけてくれるホムラちゃん
――一緒にいると癒されるアオイちゃん
――親友のユキノちゃんとリーナちゃん
――少し変態だけど私のことを好きでいてくれるキラくん
彼らはもうどこにもいない。
「羨ましいわね。色んな人に大切にされて……でもその分、忘れられると辛くなる。胸がキリキリして押し潰されそうになる。……可哀想に」
そんな女の人の声が聞こえた。私に向かって話しかけてくれている? どうして? ていうか誰?
私が顔を上げると、目の前にゴスロリ衣装に身を包んだ幼女がちょこんと立っていた。
「あなたは……?」
「私の名前はイブリース。あなたの味方。――あなたを救ってあげるわ」
「どうやって……?」
「私は魔王。この世界の理を支配する者。なんでも望み通りにできるのよ?」
「だったら! だったら家族とか友達を元に戻して!」
私は縋るような思いでイブリースと名乗る幼女に頭を下げた。魔王はにっこりと笑った。
「いいわよ。その代わり条件があるわ」
「条件……?」
どうせ死ぬつもりだったんだ。できることならなんでもするつもりだった。
「教えて? 小見(おみ) 哲人(あきと)はデバッグデータをどこに隠したの?」
「おみ? あきと? でばっぐ?」
聞いたことのない単語に混乱していると、イブリースは私の顔を両手で挟んで再度問いかけてくる。
「思い出しなさい! デバッグデータの在処(ありか)を! 知ってるはずよ!」
「って言われても……」
確かに、言われてみれば知ってるような……でばっぐ……でばっぐ……もう少しで思い出せそう。考え込む私の脳内に、突然凛とした少女の声が響いた。
『言っちゃダメ!』
――ドンッ!
衝撃を感じて我に返ると、一人の高校生くらいの女の子が、イブリースと激しい取っ組み合いをしていた。
「!?」
私はその少女に見覚えがあった。
「あっ、サラお姉ちゃん!」
『騙されないで心凪(ここな)。――これは夢だよ!』
「チッ! 余計なプログラムを仕込みやがって……! はぁぁっ!」
イブリースは手から黒い炎を放ってサラお姉ちゃんを吹き飛ばした!
「お姉ちゃんっ!」
『大丈夫。じきに目が覚めるわ。――また向こうで会いましょう。――いい夢を』
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