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♡イベント最終日 頂上決戦♡

決勝戦! 〜ユキノちゃんの相手はニンジャさん!〜

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 ◇  ◆  ◇


 ――イベント最終日。


 決勝戦は、ベータテスター枠と初心者枠の2試合しか行われないということもあり、間近で観戦できるんだよと、ログインの時にレーヴくんが案内してくれた。せっかくなので間近で見てみたいと答えると、試合時間になったら闘技場に転送すると言われて――

 今私は闘技場(コロシアム)の観客席にいます。形状は、昨日ユキノちゃんと戦った闘技場と同じ造りのようだったけれど、今その観客席には所狭しとギャラリーによって埋められている。そして、どうやら研究熱心なクラウスさんやキラくんも間近で観戦したいと答えたクチのようで、私の隣でひたすらどちらが勝つかについて議論していた。

 私は興味がないので、ミルクちゃんといちゃいちゃ――


『レディース・エーンド・ジェントルメーン♪ ボーイズ・エーンド・ガールズ♪』

 うわ、びっくりした! 突然ザワついている闘技場中に響くような大音量で女の子の声が聞こえた。

『さあさあ皆さんお待ちかね! 第1回トロイメ杯 決勝戦のお時間がやってまいりましたぁ! 実況は私、サポートNPCのユメ、解説は同じくサポートNPCのレーヴでお送りいたします!』


 ――ウォォォォォッ!!


 と歓声が辺りを包み込む。

『数多のプレイヤーの頂点に立ち、初代トロイメ杯を制するのはいったい誰なのか!? まずは初心者枠、行ってみよーう! ――それでは選手の入場です!』


 ――パンパカパーンパーンパーンパパーン!


 盛大なファンファーレと共に、ガシャンと闘技場の両サイドに設置されている入口の扉が開き、二人の人物が入場してきた。どちらもローブのようなものを身につけているが、その色は白と黒で対照的だ。

 二人は闘技場中央付近で10メートルほど間を空けて対峙する。

『えーっと、青コーナー! 全戦全勝で決勝まで駆け上がったスペシャリスト! 戦闘スタイルは変幻自在、見ているこちらが思わず目を見張る属性付与の神速インファイター! ユキノさんです!』

『ちょっとユメ、青コーナーなんてないし、決勝に来てるんだから全戦全勝は当たり前でしょ? しっかりしてよ』

 ハイテンションで叫ぶユメちゃんの声に、レーヴくんの声がしっかりツッコミを入れた。

『えっ、あ、そうでした! と、とりあえずユキノさん、意気込みはいかがですか?』


 すると、白いローブの方の人影が、ローブのフードを脱いでその素顔を露わにする。ユキノちゃんお馴染みの水色のサイドテールが揺れて、会場の盛り上がりが一段階上がったような気がした。

「えっと……ここまで来たからには優勝目指して頑張りますっ!」

 どんな魔法を使っているのか、ユキノちゃんの声は私の耳にしっかりと聞こえたし、なんなら二人の息遣いも、風でローブがはためく音も聞こえる。まさに臨場感MAXだね。


『対するは、こちらも全戦全勝! 搦手ならなんでもござれ! 相手を倒すためなら手段を選ばない状態異常の遣い手! リーナさんです!』

 紹介された黒いローブの人影もローブのフードを――というかローブ自体を脱ぎ捨てた。黒い和装のような……例えるなら忍者のような装備を身につけていて、顔の下半分は黒い布で覆われている。ただ、その髪は美しい金髪で、それがミスマッチでもあった。

「エクストラジョブの『ニンジャ』だな。噂によると『アサシン』の上位版のようなジョブだとか」

「スピード勝負になりそうですね。これは見ものだなぁ」

 その様子にクラウスさんとキラくんがコメントするけど、私にはよく分からないので、とりあえず、へー、そうなんだー。とだけ思っておく。


「早く始めましょう? わたし、戦いたくてうずうずしてるの」

 とリーナちゃん。

『ふふふっ♪ 慌てなくてもすぐに始まりますよー! お二人共、武器を構えてください!』

 ユメちゃんの合図で、ユキノちゃんがローブを脱ぎ捨てた。例の、黒い胸当てとブーツとスパッツというなかなかに露出度の高い衣装がお披露目して、会場のボルテージがまた一段階上がった。

 篭手が武器のユキノちゃんに対して、リーナちゃんは腰から小刀のようなものを抜いて逆手で構える。うーん、リーナちゃんのほうがどちらかというとアサシンっぽいなぁ。


『それではカウントダウンを始めます! 皆さんご一緒に♪ ――5!――4! ――3!』

 ユメちゃんがカウントダウンを始めると、それに合わせて会場の観衆が合唱する。かなりの人数が叫んでいるのでどっと地響きのような揺れさえ感じられた。

『2! ――1!――試合開始♪』


 ――ウォォォォォッ!!


 凄まじい歓声と共にユキノちゃんとリーナちゃんの二人は私の視界から消えた。ガィンッ! という音が空中で響き、さらに数回、金属同士がぶつかる音がする。

「やはりこうなるか、さすがに速ぇ」

「追うのがやっとですね……」

「えっ、追えるのあれ……」

 私は咄嗟にキラくんの発言に食いついたけど、すぐにしまったと思った。そうだ、こいつは変態だったんだ……。私の言葉に心底嬉しそうな声で答えてくれるキラくん。

「はい、なんとか! 状態異常を付与する武器を当てようとするリーナさんの攻撃をなんとかユキノさんが防いでいる状態ですね。憑依(エンチャント)を発動するスキもないのでこれはさすがに分が悪いかなぁ?」


「は、はあそう……へぇ?」

 私の塩対応にもどこか嬉しそうなキラくんはどうすればいいの!? 私は背筋に悪寒を感じて、そのまま無視することに決めた。幸い、私の危機を察知したミルクちゃんが、キラくんとの間にカットインしてくれて、視線を遮ってくれた。ありがとうミルクちゃん!

 そんなことをしているうちにも試合は進む。目が慣れてきた私は、少しずつ二人の動きを追えるようになってきた。


 ――ガァァンッ!


 一際大きな音がして、リーナちゃんが大きく弾かれた。その隙に、身軽に地面に着地したユキノちゃんは魔法を唱えた。

「憑依(エンチャント)、【火焔(かえん)】! 二重憑依(ダブルエンチャント)、【氷結(ひょうけつ)】!」

 ブワンッ! とユキノちゃんの両手に直径40センチほどの赤と青の魔法陣が展開され、右手に炎、左手に氷の力をまとったユキノちゃん。

「――さあ、反撃ですよ!」

 そう叫んで、一直線にリーナちゃんの元へと駆け出した。
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