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第1章 出会い
Act.2 居眠りの代償(アンナ)
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「アンナ……アンナ!」
「お姉さまっ!?」
❀.*・゚
ガタッと大きな音を立てて、椅子が倒れた。咄嗟に立ち上がったアンナは状況が理解できずに周りを見わたす。──硬い床、慣れ親しんだ香り、そして隣で自分の席に座ったまま唖然とこちらを見上げている赤い髪の少女。それだけではない、周囲の視線がほとんど自分に注がれていることに気づいてアンナはさらに混乱した。
「へっ、あれ、敵は? お姉さまは?」
「何言ってるの……ここは教室で今は授業中」
「ぶふっ……くくっ」
赤髪の少女──朝木かなでが呆れ顔で答えると、アンナの後ろの席で、アンナのものよりもさらに眩い金髪の少女が堪えきれないといった様子で笑い声を上げ始めた。
「ふ、ふふっ……あ、あははっ! ひ、ひぃぃ、マジウケるんですけど!」
「何が面白いのですか金居さん?」
「ふぁーっははははっ!」
アンナが尋ねると更に大声で笑い始める金髪の少女こと金居・エルドラード・セレーナ。クラスのムードメーカーの彼女が笑い始めたことで、クラス中から釣られるようにクスクスと控えめな笑い声が上がり始め、アンナはやっと自分が置かれている状況を認識した。ここは征華女子魔導高専、3年強襲科Aクラスの教室。そして──
(わたくしは夢を……? 授業中に居眠りをしていたのですわ……)
赤面して前を向くと、教官と目が合った。黒がかった緑色の髪を炎のように揺らめかせた謎めいた雰囲気の教官──ミス・ジェイドと呼ばれていた。
ミス・ジェイドは感情のこもっていない瞳でアンナを見つめ返すと、にこりともせずにこう口にする。
「おはようございますアンナさん。よく眠れたようでなによりです」
「お、おはようございますわ」
アンナの返事に満足したように頷くと、今度はぐるりと教室を見回すように視線を投げ、最終的にアンナの後ろの席のセレーナに目を向けた。
「セレーナさん。アンナさんの姉妹の姉は2年前の小田原挟撃戦で負傷され、退学されています。それでアンナさんも相当心の傷を負っているはず。……笑ってはいけませんよ?」
「はぁい……」
セレーナはこの教官に口答えしても無駄だと知っているのか、はたまた悪い事をしたと思ったのか、すぐに笑うのをやめて返事をした。
「素直でよろしい。──それで、アンナさん?」
「は、はいっ!」
再び矢面に立たされたアンナは、起立した状態のまま背筋を正す。一瞬見逃してくれるのかと思ったが、そこまで甘くはないようだった。
「それとこれとは別問題です。わかりますね?」
「で、ですわね」
ミス・ジェイドは黙って親指で教室の扉を示す。アンナは肩を落とすと、同じく無言で扉に向かい、ザワつく教室の喧騒を背にそのまま廊下に出た。そして、教室側の壁を背にして立ち、腕を組む。教室ではすぐに授業が再開されたようで、教官の声が聞こえてきた。
(廊下に立たされるのは初めてではないとはいえ、これでは学校中の笑いものになってしまいますわ……)
ただでさえ、異世界人であることや、勇者の末裔であること、その荒っぽい戦闘スタイルや、今年中のシングルナンバー候補であること等から一定の注目を集めているアンナにとって、それは耐え難いことだった。
(なによりも、勇者の末裔として責任を果たさなければならないわたくしが、授業すらまともにきけずにこんな辱めを受けるなど、あってはならな──)
その時、アンナの脳内に名案が浮かんだ。彼女は便所に駆け込むと、掃除用具入れの中から大きな金属製のバケツを二つ持ち出し、流し台でそれに水を満杯にいれる。そして、教室の前に戻ると両手にバケツを持ったままそれを頭上に掲げた。
(トレーニング! そう、わたくしはトレーニングをしているだけですの!)
水の入った巨大なバケツは、一つだけで10キロ程度、ふたつ合わせれば20キロを超える重量があったが、怪力のアンナにとってはこれくらい朝飯前だった。
授業中なのが幸いだったか、アンナは通りかかった数人の教官から変なものを見るような目で見られただけで済んだ。
数十分後、キンコンカンコンと聞き慣れたチャイムで授業が終わると、真っ先にミス・ジェイドが出てきた。彼女は教室の前でバケツを持って立っているアンナを見ると、さすがに少しだけ驚いたようで、目を見開いた。
「何やってるんですかあなたは……」
「時間がもったいないので、筋力トレーニングを」
「その心意気には感心しますが、これでは他の人から私がまるで体罰をしているように見えるじゃないですか……」
「わたくしなりの反省の態度を示したつもりなのですが」
「物は言いようですね。とりあえず、それを地面において私の話を聞いてくださいアンナ=カトリーン・フェルトマイアーさん」
「はい」
ミス・ジェイドの口調からそれとない苛立ちを感じたアンナは、バケツを地面におろして教官を見つめる。背後では授業が終わって教室からぞろぞろと出てきた生徒たちが、こちらをチラチラとうかがいながら各々昼食をとりに食堂にでも向かうようだ。クラスの人気者のセレーナの姿もある。
生徒の一団がはけるのを待ってから、ミス・ジェイドはアンナに顔を寄せて小声で話し始めた。
「さてアンナさん。最近疲れが溜まっているようですが……姉妹のことで悩んでいるのですね?」
「なんでもお見通しですのね」
アンナは苦笑した。
「担任ですから。──まあ気持ちはわかりますよ。この征華では小田原挟撃戦で姉を亡くした生徒が多い。その子たちが、自分が3年生になった時に妹を貰いたがらないのは、もうこれ以上大切な人を失いたくないから、なのでしょう」
「……」
「アンナさんの場合はそれに加えて自分が異世界人であること、勇者であることで、妹が周囲から白い目で見られないか心配というのもあるのでしょうね」
「……そのとおりですわ」
アンナの返答を聞いて、やはりといった様子で頷いたミス・ジェイド。彼女は「しかし……」と前置きしてからなおも続けた。
「大切な人を守るための魔法でしょう。そのための力でしょう。……それを今学んでいるのでしょう」
「ミス・ジェイド、あなたは──」
ミス・ジェイドの口調は一切感情がこもっていない。淡々と、事実のみを告げている。が、それがアンナの心を激しく揺さぶっていた。
「私は軍人として、様々な人や物──ひいてはこの国自体を守ってきました。上級生として、下級生一人の面倒すら見れないような人に、将来魔導士となって世界を守るなんてことはできると思いますか?」
「では、わたくしはどうしたら……」
「朗報ですが、あなたの強さに惚れ込んで妹になりたがっている新入生は大勢いるようですよ。その中から選んで姉妹を組みなさい。きっと良い影響を与えてくれるでしょう。もしかしたら、あなたが探しているものも見つかるかもしれないですよ」
「……どうしてもですか?」
「どうしてもです。他の生徒には別に姉妹を組むことを強制するつもりはありませんが、あなたは別ですアンナさん」
今日初めてミス・ジェイドは笑みらしきものを浮かべた。ニコッというよりはニヤッとミステリアスなものであったが、アンナにその笑みの意図はよく分からなかった。
「……検討してみますわ」
「急がないと、いい子は真っ先に取られちゃいますよ?」
ミス・ジェイドはそう言うと、用は済んだとばかりに立ち去ろうとしたが、ふと立ち止まって振り返った。
「それともう一つだけ」
「なんですの?」
「魔力体系学の授業はとても重要ですので、居眠りをされると困るんです。……次やったら、宿題を増やしますのでそのつもりで」
「……はい」
「あぁ、友人のかなでさんも連帯責任で──」
「かなでさんは関係ありませんわ!?」
慌てたアンナが思わず食ってかかると、ミス・ジェイドは相変わらずの無表情で「嫌なら居眠りをしないでください」と釘を刺した。分かりやすく項垂れるアンナ。
「力づくもいいですが、相手の弱点を的確につくのも重要なスキルですよ?」
「肝に銘じておきますわ」
「……噂をすれば」
ミス・ジェイドの声に顔を上げると、教室からかなでが出てくるところだった。ミス・ジェイドに代わってアンナの前にやってくると、この幼女然とした可愛らしい友人は、にこにこと笑顔を浮かべた。
「お説教終わったー? ご飯食べにいこーアンナ」
「そうですわね。お腹がペコペコですわ」
「授業中寝てたのにお腹空いてるのー?」
アンナは黙って地面に置いてあった二つのバケツを持ち上げてみせる。かなでは「うわぉ」と声を上げて驚いてみせた。
「やるねぇ」
「かなでさんもこれくらいできるでしょう?」
「まーね」
と、その時再びチャイムが鳴って校内放送が流れた。
『待機中のチームに告げます。哨戒班より魔物の出現が観測されました。直ちに現場に向かい対処をお願いします』
「……っと、午後はかなたち待機なんだった。明日じゃなくてよかったね」
「どうしてですの?」
「明日は新入生が入ってくる日だから。入学式の途中で襲撃があったらめちゃめちゃになっちゃうでしょ?」
「違いありませんわね」
言葉を交わしながら、二人は早足で食堂とは反対側へ急ぐ。
「……お昼ご飯はしばらくおあずけですわね」
「終わったら戦勝祝いにパーッとやろうよ」
「いいですわねそれ!」
二人が階段を上り屋上へ続く鉄製の扉を開けると、そこには一台の小型ヘリコプターと、お団子に三つ編みの少女──陳玲果の姿があった。
「やあやあお二人共、待ってたよー! ……乗ってく?」
「お姉さまっ!?」
❀.*・゚
ガタッと大きな音を立てて、椅子が倒れた。咄嗟に立ち上がったアンナは状況が理解できずに周りを見わたす。──硬い床、慣れ親しんだ香り、そして隣で自分の席に座ったまま唖然とこちらを見上げている赤い髪の少女。それだけではない、周囲の視線がほとんど自分に注がれていることに気づいてアンナはさらに混乱した。
「へっ、あれ、敵は? お姉さまは?」
「何言ってるの……ここは教室で今は授業中」
「ぶふっ……くくっ」
赤髪の少女──朝木かなでが呆れ顔で答えると、アンナの後ろの席で、アンナのものよりもさらに眩い金髪の少女が堪えきれないといった様子で笑い声を上げ始めた。
「ふ、ふふっ……あ、あははっ! ひ、ひぃぃ、マジウケるんですけど!」
「何が面白いのですか金居さん?」
「ふぁーっははははっ!」
アンナが尋ねると更に大声で笑い始める金髪の少女こと金居・エルドラード・セレーナ。クラスのムードメーカーの彼女が笑い始めたことで、クラス中から釣られるようにクスクスと控えめな笑い声が上がり始め、アンナはやっと自分が置かれている状況を認識した。ここは征華女子魔導高専、3年強襲科Aクラスの教室。そして──
(わたくしは夢を……? 授業中に居眠りをしていたのですわ……)
赤面して前を向くと、教官と目が合った。黒がかった緑色の髪を炎のように揺らめかせた謎めいた雰囲気の教官──ミス・ジェイドと呼ばれていた。
ミス・ジェイドは感情のこもっていない瞳でアンナを見つめ返すと、にこりともせずにこう口にする。
「おはようございますアンナさん。よく眠れたようでなによりです」
「お、おはようございますわ」
アンナの返事に満足したように頷くと、今度はぐるりと教室を見回すように視線を投げ、最終的にアンナの後ろの席のセレーナに目を向けた。
「セレーナさん。アンナさんの姉妹の姉は2年前の小田原挟撃戦で負傷され、退学されています。それでアンナさんも相当心の傷を負っているはず。……笑ってはいけませんよ?」
「はぁい……」
セレーナはこの教官に口答えしても無駄だと知っているのか、はたまた悪い事をしたと思ったのか、すぐに笑うのをやめて返事をした。
「素直でよろしい。──それで、アンナさん?」
「は、はいっ!」
再び矢面に立たされたアンナは、起立した状態のまま背筋を正す。一瞬見逃してくれるのかと思ったが、そこまで甘くはないようだった。
「それとこれとは別問題です。わかりますね?」
「で、ですわね」
ミス・ジェイドは黙って親指で教室の扉を示す。アンナは肩を落とすと、同じく無言で扉に向かい、ザワつく教室の喧騒を背にそのまま廊下に出た。そして、教室側の壁を背にして立ち、腕を組む。教室ではすぐに授業が再開されたようで、教官の声が聞こえてきた。
(廊下に立たされるのは初めてではないとはいえ、これでは学校中の笑いものになってしまいますわ……)
ただでさえ、異世界人であることや、勇者の末裔であること、その荒っぽい戦闘スタイルや、今年中のシングルナンバー候補であること等から一定の注目を集めているアンナにとって、それは耐え難いことだった。
(なによりも、勇者の末裔として責任を果たさなければならないわたくしが、授業すらまともにきけずにこんな辱めを受けるなど、あってはならな──)
その時、アンナの脳内に名案が浮かんだ。彼女は便所に駆け込むと、掃除用具入れの中から大きな金属製のバケツを二つ持ち出し、流し台でそれに水を満杯にいれる。そして、教室の前に戻ると両手にバケツを持ったままそれを頭上に掲げた。
(トレーニング! そう、わたくしはトレーニングをしているだけですの!)
水の入った巨大なバケツは、一つだけで10キロ程度、ふたつ合わせれば20キロを超える重量があったが、怪力のアンナにとってはこれくらい朝飯前だった。
授業中なのが幸いだったか、アンナは通りかかった数人の教官から変なものを見るような目で見られただけで済んだ。
数十分後、キンコンカンコンと聞き慣れたチャイムで授業が終わると、真っ先にミス・ジェイドが出てきた。彼女は教室の前でバケツを持って立っているアンナを見ると、さすがに少しだけ驚いたようで、目を見開いた。
「何やってるんですかあなたは……」
「時間がもったいないので、筋力トレーニングを」
「その心意気には感心しますが、これでは他の人から私がまるで体罰をしているように見えるじゃないですか……」
「わたくしなりの反省の態度を示したつもりなのですが」
「物は言いようですね。とりあえず、それを地面において私の話を聞いてくださいアンナ=カトリーン・フェルトマイアーさん」
「はい」
ミス・ジェイドの口調からそれとない苛立ちを感じたアンナは、バケツを地面におろして教官を見つめる。背後では授業が終わって教室からぞろぞろと出てきた生徒たちが、こちらをチラチラとうかがいながら各々昼食をとりに食堂にでも向かうようだ。クラスの人気者のセレーナの姿もある。
生徒の一団がはけるのを待ってから、ミス・ジェイドはアンナに顔を寄せて小声で話し始めた。
「さてアンナさん。最近疲れが溜まっているようですが……姉妹のことで悩んでいるのですね?」
「なんでもお見通しですのね」
アンナは苦笑した。
「担任ですから。──まあ気持ちはわかりますよ。この征華では小田原挟撃戦で姉を亡くした生徒が多い。その子たちが、自分が3年生になった時に妹を貰いたがらないのは、もうこれ以上大切な人を失いたくないから、なのでしょう」
「……」
「アンナさんの場合はそれに加えて自分が異世界人であること、勇者であることで、妹が周囲から白い目で見られないか心配というのもあるのでしょうね」
「……そのとおりですわ」
アンナの返答を聞いて、やはりといった様子で頷いたミス・ジェイド。彼女は「しかし……」と前置きしてからなおも続けた。
「大切な人を守るための魔法でしょう。そのための力でしょう。……それを今学んでいるのでしょう」
「ミス・ジェイド、あなたは──」
ミス・ジェイドの口調は一切感情がこもっていない。淡々と、事実のみを告げている。が、それがアンナの心を激しく揺さぶっていた。
「私は軍人として、様々な人や物──ひいてはこの国自体を守ってきました。上級生として、下級生一人の面倒すら見れないような人に、将来魔導士となって世界を守るなんてことはできると思いますか?」
「では、わたくしはどうしたら……」
「朗報ですが、あなたの強さに惚れ込んで妹になりたがっている新入生は大勢いるようですよ。その中から選んで姉妹を組みなさい。きっと良い影響を与えてくれるでしょう。もしかしたら、あなたが探しているものも見つかるかもしれないですよ」
「……どうしてもですか?」
「どうしてもです。他の生徒には別に姉妹を組むことを強制するつもりはありませんが、あなたは別ですアンナさん」
今日初めてミス・ジェイドは笑みらしきものを浮かべた。ニコッというよりはニヤッとミステリアスなものであったが、アンナにその笑みの意図はよく分からなかった。
「……検討してみますわ」
「急がないと、いい子は真っ先に取られちゃいますよ?」
ミス・ジェイドはそう言うと、用は済んだとばかりに立ち去ろうとしたが、ふと立ち止まって振り返った。
「それともう一つだけ」
「なんですの?」
「魔力体系学の授業はとても重要ですので、居眠りをされると困るんです。……次やったら、宿題を増やしますのでそのつもりで」
「……はい」
「あぁ、友人のかなでさんも連帯責任で──」
「かなでさんは関係ありませんわ!?」
慌てたアンナが思わず食ってかかると、ミス・ジェイドは相変わらずの無表情で「嫌なら居眠りをしないでください」と釘を刺した。分かりやすく項垂れるアンナ。
「力づくもいいですが、相手の弱点を的確につくのも重要なスキルですよ?」
「肝に銘じておきますわ」
「……噂をすれば」
ミス・ジェイドの声に顔を上げると、教室からかなでが出てくるところだった。ミス・ジェイドに代わってアンナの前にやってくると、この幼女然とした可愛らしい友人は、にこにこと笑顔を浮かべた。
「お説教終わったー? ご飯食べにいこーアンナ」
「そうですわね。お腹がペコペコですわ」
「授業中寝てたのにお腹空いてるのー?」
アンナは黙って地面に置いてあった二つのバケツを持ち上げてみせる。かなでは「うわぉ」と声を上げて驚いてみせた。
「やるねぇ」
「かなでさんもこれくらいできるでしょう?」
「まーね」
と、その時再びチャイムが鳴って校内放送が流れた。
『待機中のチームに告げます。哨戒班より魔物の出現が観測されました。直ちに現場に向かい対処をお願いします』
「……っと、午後はかなたち待機なんだった。明日じゃなくてよかったね」
「どうしてですの?」
「明日は新入生が入ってくる日だから。入学式の途中で襲撃があったらめちゃめちゃになっちゃうでしょ?」
「違いありませんわね」
言葉を交わしながら、二人は早足で食堂とは反対側へ急ぐ。
「……お昼ご飯はしばらくおあずけですわね」
「終わったら戦勝祝いにパーッとやろうよ」
「いいですわねそれ!」
二人が階段を上り屋上へ続く鉄製の扉を開けると、そこには一台の小型ヘリコプターと、お団子に三つ編みの少女──陳玲果の姿があった。
「やあやあお二人共、待ってたよー! ……乗ってく?」
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