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第一話
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広い室内の至るところに豪華絢爛な装飾が施された公爵令嬢の自室。私は公爵令嬢本人から急にそこへ招かれ、外国から仕入れたという高級茶葉で淹れた紅茶でもてなされていた。
「──でね、そのドミニクって奴ったらおかしいのよ。わざわざ自分から当主の座を降りて弟に爵位を譲るんですから。配下から信頼されてないと全てを失うのねー! 哀れだわ」
「そうですね。アンネローゼ様」
「その点あなたは恵まれているわマヤ。なんてったって公爵令嬢であるこのアンネローゼ・ヴァナーがついているもの」
「……ありがとうございます」
上機嫌で喋りまくる公爵令嬢──アンネローゼ。だが私はその言葉が全く頭に入ってこなかった。
嫌な予感がして紅茶の入ったカップを持つ手の震えが止まらない。精一杯堪えてアンネローゼに気取られないようにしているものの、この歓待の意味を理解している私としては内心が全く穏やかではなかった。
「──どうしたの? 顔色が悪いじゃない? お紅茶がお口に合わなかったかしら?」
「い、いえ……そういうわけでは……」
ピンク色のヒラヒラドレスを身につけたアンネローゼは、カチャッと小さな音を立てながら自分のカップを皿の上に置くと、ふかふかのソファから立ち上がり私の隣にやってくる。
「何か悩み事? あたしでよければ話聞いてあげるけど?」
なんと白々しい。こいつは──悪魔なのだ。でもその優しげな口調からはとても想像できないかもしれない。──私も昔はそうだった。
その上品で優しげなアンネローゼにまんまと騙されて。気づいたら彼女のおもちゃに成り下がっていた。
が、「あなたの存在そのものが悩み事なんですよ!」なんて口が裂けても言えない。
私は口元にぎこちない笑みを浮かべながら誤魔化すしかなかった。
「なんでも相談しなさいよ? あたしとあなたは『親友』なのだからね」
「……はい。ありがとうございます」
私がそう返事をした時、扉の前がなにやら騒がしくなり──勢いよく開かれた。入ってきたのは赤い制服で統一された公爵家の私兵が数名。彼らはアンネローゼに近距離で話しかけられている私にチラッと視線を向けて揃って怪訝な表情をした後、アンネローゼに向けて声をかけた。
「お嬢様大変です!」
「なにごと? あたしは今親友と大事な話をしているのだけど?」
対するアンネローゼは余裕の態度だ。
「いえ、それが……厩舎の馬が十頭ほど逃げ出しまして……」
「なんですって?」
「何者かが厩舎係の隙をついて厩舎の扉を開け、縄を解いて逃がしたものと……」
「──一体誰がそんなことを……!」
「公爵閣下がこのことを知ったらきっと激怒されますぞ! お帰りになるまでに犯人を特定しませんと」
「困ったわね……」
アンネローゼは険しい表情をしながら、指先で私の肩をトントンと叩いた。
(やっぱりかぁ……)
──また始まってしまった。
私は心の中で深いため息をついた。
「あら? マヤ? 何か言いたいことがあって?」
「あ、えっと……その……」
じっとアンネローゼがこちらを覗き込んでくる。その瞳が「早くしろ」と急かしてる。
私は腹を括った。
「──私がやりました」
◇◇◆◇◇
アンネローゼのイタズラ癖は幼い頃からあったものらしい。わりと奔放な彼女は公爵令嬢として淑やかに生きることにストレスを感じていたのか、よく公爵家のものを壊したり隠したり……それは歳を重ねるごとにエスカレートしていった。
幼い頃はまだ子供のやったことだからと大目に見てもらえたものの、ある日アンネローゼは父親であるヴァナー公爵が国王陛下より賜った立派な陶器の壺を割ってしまいこっぴどく叱られた。それに懲りたアンネローゼはイタズラを辞めた──わけではなく、身代わりを立てることを覚えた。そこで白羽の矢が立ったのが男爵家令嬢でアンネローゼには頭が上がらないこの私──マヤ・キルステンだったという話だ。
それにしても『灰かぶり娘』という表現は今の私をよく表している。
本来は「惨めな」とか「みすぼらしい」とかいう意味合いなのだが、私は文字通りアンネローゼに降りかかる『灰』を代わりに『かぶって』いるのだから。
あの後、私が名乗り出たことで公爵家の私兵たちは「またお前か」みたいな反応をして私を捕らえようとしたが、アンネローゼが私を庇った。曰く「マヤは繋がれている馬たちを見て可哀想だと思ったのよ! 優しくていい子だわ!」と。私兵たちは「優しいのはこんな罪人を庇うお嬢様の方です! いい加減縁を切ってください!」と血を吐くように怒鳴り、それに対してアンネローゼは「マヤは大切な親友だもの!」とのたまった。
まったく笑えてくる。
結局その場で捕えられることはなかったものの、アンネローゼと別れて屋敷を出ようとしたところで案の定私兵に捕まり、冷たい地下牢に放り込まれた。
公爵家の地下牢はアンネローゼの身代わりになった時に何度か入ったことがあるが、床はじめじめと濡れているので尻をつけて座るわけにもいかず、おまけに暗いし隙間風が寒いので環境は劣悪だった。しかも鉄と岩とカビの混じりあったような変な匂いもする。
(はぁ……いつまでここにいなきゃいけないんだろう……)
(帰ったらまたお父様に叱られるわ……)
悩みは尽きない。いっそのことアンネローゼとの縁を切ってしまえばいいのだが、物事はそんなに単純でもない。私の父親であるキルステン男爵はヴァナー公爵から多大の借金をしており、私とアンネローゼの決別がそれにどう影響を与えるのか想像に難くない。最悪私たち家族は国を追われ路頭に迷う可能性もあるのだ。それに比べれば私一人の犠牲で済むだけマシなのかもしれない。
と、考えを巡らせていると、階上がドタバタと騒がしくなってきた。なにやら話し声も聞こえてくる。
「お嬢様! おやめください!」
「いいから下がってなさい! なんで勝手にあたしの親友を牢屋に入れるわけ? そんなこと許可したかしら?」
「し、しかし……!」
「お父様にはあたしから話しておくから、マヤを出してあげなさい!」
「あっ、お嬢様!?」
「そこで待ってなさい! いい? 動かないで。動いたらクビよ!」
カツカツと石造りの階段を鳴らすヒールの音がする。足音は段々と大きくなってきて、やがて私の牢の前で止まった。アンネローゼは、手に持ったランプを床に置くとガシャガシャと音をさせながら鍵を開けて牢の扉を開けた。
「うちの私兵が悪かったわね。怪我はない? 手荒いことはされなかったかしら?」
「大丈夫です。ありがとうございますアンネローゼ様」
「いいのよ。あたしとあなたは『親友』でしょう? 困った時はお互い様よ」
やたらと『親友』という単語を強調してくる。自分の身代わりになった私に対して自分の行いを詫びるという気持ちはこれっぽっちもないらしい。私を牢から出したのだって、どうせ公爵が帰ってきて私が尋問された時に恐怖のあまり本当のことを話してしまうという事態を恐れたからに違いないのだから。
(……少し、言ってみようかな)
少しだけ勇気を出して、私はアンネローゼにこんな言葉をかけてみた。
「あの、アンネローゼ様……」
「なにかしら?」
「──もう、やめませんか? こういうこと」
「……」
アンネローゼからの返答はない。そっと彼女の顔を窺ってみると、彼女は無表情だった。何を考えているのか分からない。ただ、ランプの炎が彼女の顔を赤く染めているのみだった。
「──ねぇマヤ?」
その声にはほとんど感情がこもっていなかった。
「は、はい……」
「あたしたち、『親友』よね……?」
「はい……!」
私は力強く頷いた。何故だかそうせざるを得ないような、一種の強迫観念のようなものに突き動かされた結果だった。
私の返事を聞いたアンネローゼは先程までの無表情はどこへやら、満面の笑みを浮かべる。
「そうよね……よかったわ」
その後、アンネローゼは「さあ、ご家族が待っているでしょう? 門まで送るわ」と言って私を見送ってくれた。私は悶々とした気持ちを抱きながらも自分の屋敷に戻ったのだった。
「──でね、そのドミニクって奴ったらおかしいのよ。わざわざ自分から当主の座を降りて弟に爵位を譲るんですから。配下から信頼されてないと全てを失うのねー! 哀れだわ」
「そうですね。アンネローゼ様」
「その点あなたは恵まれているわマヤ。なんてったって公爵令嬢であるこのアンネローゼ・ヴァナーがついているもの」
「……ありがとうございます」
上機嫌で喋りまくる公爵令嬢──アンネローゼ。だが私はその言葉が全く頭に入ってこなかった。
嫌な予感がして紅茶の入ったカップを持つ手の震えが止まらない。精一杯堪えてアンネローゼに気取られないようにしているものの、この歓待の意味を理解している私としては内心が全く穏やかではなかった。
「──どうしたの? 顔色が悪いじゃない? お紅茶がお口に合わなかったかしら?」
「い、いえ……そういうわけでは……」
ピンク色のヒラヒラドレスを身につけたアンネローゼは、カチャッと小さな音を立てながら自分のカップを皿の上に置くと、ふかふかのソファから立ち上がり私の隣にやってくる。
「何か悩み事? あたしでよければ話聞いてあげるけど?」
なんと白々しい。こいつは──悪魔なのだ。でもその優しげな口調からはとても想像できないかもしれない。──私も昔はそうだった。
その上品で優しげなアンネローゼにまんまと騙されて。気づいたら彼女のおもちゃに成り下がっていた。
が、「あなたの存在そのものが悩み事なんですよ!」なんて口が裂けても言えない。
私は口元にぎこちない笑みを浮かべながら誤魔化すしかなかった。
「なんでも相談しなさいよ? あたしとあなたは『親友』なのだからね」
「……はい。ありがとうございます」
私がそう返事をした時、扉の前がなにやら騒がしくなり──勢いよく開かれた。入ってきたのは赤い制服で統一された公爵家の私兵が数名。彼らはアンネローゼに近距離で話しかけられている私にチラッと視線を向けて揃って怪訝な表情をした後、アンネローゼに向けて声をかけた。
「お嬢様大変です!」
「なにごと? あたしは今親友と大事な話をしているのだけど?」
対するアンネローゼは余裕の態度だ。
「いえ、それが……厩舎の馬が十頭ほど逃げ出しまして……」
「なんですって?」
「何者かが厩舎係の隙をついて厩舎の扉を開け、縄を解いて逃がしたものと……」
「──一体誰がそんなことを……!」
「公爵閣下がこのことを知ったらきっと激怒されますぞ! お帰りになるまでに犯人を特定しませんと」
「困ったわね……」
アンネローゼは険しい表情をしながら、指先で私の肩をトントンと叩いた。
(やっぱりかぁ……)
──また始まってしまった。
私は心の中で深いため息をついた。
「あら? マヤ? 何か言いたいことがあって?」
「あ、えっと……その……」
じっとアンネローゼがこちらを覗き込んでくる。その瞳が「早くしろ」と急かしてる。
私は腹を括った。
「──私がやりました」
◇◇◆◇◇
アンネローゼのイタズラ癖は幼い頃からあったものらしい。わりと奔放な彼女は公爵令嬢として淑やかに生きることにストレスを感じていたのか、よく公爵家のものを壊したり隠したり……それは歳を重ねるごとにエスカレートしていった。
幼い頃はまだ子供のやったことだからと大目に見てもらえたものの、ある日アンネローゼは父親であるヴァナー公爵が国王陛下より賜った立派な陶器の壺を割ってしまいこっぴどく叱られた。それに懲りたアンネローゼはイタズラを辞めた──わけではなく、身代わりを立てることを覚えた。そこで白羽の矢が立ったのが男爵家令嬢でアンネローゼには頭が上がらないこの私──マヤ・キルステンだったという話だ。
それにしても『灰かぶり娘』という表現は今の私をよく表している。
本来は「惨めな」とか「みすぼらしい」とかいう意味合いなのだが、私は文字通りアンネローゼに降りかかる『灰』を代わりに『かぶって』いるのだから。
あの後、私が名乗り出たことで公爵家の私兵たちは「またお前か」みたいな反応をして私を捕らえようとしたが、アンネローゼが私を庇った。曰く「マヤは繋がれている馬たちを見て可哀想だと思ったのよ! 優しくていい子だわ!」と。私兵たちは「優しいのはこんな罪人を庇うお嬢様の方です! いい加減縁を切ってください!」と血を吐くように怒鳴り、それに対してアンネローゼは「マヤは大切な親友だもの!」とのたまった。
まったく笑えてくる。
結局その場で捕えられることはなかったものの、アンネローゼと別れて屋敷を出ようとしたところで案の定私兵に捕まり、冷たい地下牢に放り込まれた。
公爵家の地下牢はアンネローゼの身代わりになった時に何度か入ったことがあるが、床はじめじめと濡れているので尻をつけて座るわけにもいかず、おまけに暗いし隙間風が寒いので環境は劣悪だった。しかも鉄と岩とカビの混じりあったような変な匂いもする。
(はぁ……いつまでここにいなきゃいけないんだろう……)
(帰ったらまたお父様に叱られるわ……)
悩みは尽きない。いっそのことアンネローゼとの縁を切ってしまえばいいのだが、物事はそんなに単純でもない。私の父親であるキルステン男爵はヴァナー公爵から多大の借金をしており、私とアンネローゼの決別がそれにどう影響を与えるのか想像に難くない。最悪私たち家族は国を追われ路頭に迷う可能性もあるのだ。それに比べれば私一人の犠牲で済むだけマシなのかもしれない。
と、考えを巡らせていると、階上がドタバタと騒がしくなってきた。なにやら話し声も聞こえてくる。
「お嬢様! おやめください!」
「いいから下がってなさい! なんで勝手にあたしの親友を牢屋に入れるわけ? そんなこと許可したかしら?」
「し、しかし……!」
「お父様にはあたしから話しておくから、マヤを出してあげなさい!」
「あっ、お嬢様!?」
「そこで待ってなさい! いい? 動かないで。動いたらクビよ!」
カツカツと石造りの階段を鳴らすヒールの音がする。足音は段々と大きくなってきて、やがて私の牢の前で止まった。アンネローゼは、手に持ったランプを床に置くとガシャガシャと音をさせながら鍵を開けて牢の扉を開けた。
「うちの私兵が悪かったわね。怪我はない? 手荒いことはされなかったかしら?」
「大丈夫です。ありがとうございますアンネローゼ様」
「いいのよ。あたしとあなたは『親友』でしょう? 困った時はお互い様よ」
やたらと『親友』という単語を強調してくる。自分の身代わりになった私に対して自分の行いを詫びるという気持ちはこれっぽっちもないらしい。私を牢から出したのだって、どうせ公爵が帰ってきて私が尋問された時に恐怖のあまり本当のことを話してしまうという事態を恐れたからに違いないのだから。
(……少し、言ってみようかな)
少しだけ勇気を出して、私はアンネローゼにこんな言葉をかけてみた。
「あの、アンネローゼ様……」
「なにかしら?」
「──もう、やめませんか? こういうこと」
「……」
アンネローゼからの返答はない。そっと彼女の顔を窺ってみると、彼女は無表情だった。何を考えているのか分からない。ただ、ランプの炎が彼女の顔を赤く染めているのみだった。
「──ねぇマヤ?」
その声にはほとんど感情がこもっていなかった。
「は、はい……」
「あたしたち、『親友』よね……?」
「はい……!」
私は力強く頷いた。何故だかそうせざるを得ないような、一種の強迫観念のようなものに突き動かされた結果だった。
私の返事を聞いたアンネローゼは先程までの無表情はどこへやら、満面の笑みを浮かべる。
「そうよね……よかったわ」
その後、アンネローゼは「さあ、ご家族が待っているでしょう? 門まで送るわ」と言って私を見送ってくれた。私は悶々とした気持ちを抱きながらも自分の屋敷に戻ったのだった。
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