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第35話 そういう問題じゃないのよ
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☆
リサちゃんのおねだり攻撃に耐え切れず、とうとう『それ』を口にしてしまいそうになったのは、出発してから2日目のことだった。
「アニータさん」
その声に振り向くと、リサちゃんがニコニコしながら立っていた。
「リサちゃん、もう体は大丈夫なの?」
「はい! すっかり元気になりました。ご心配をお掛けしてすみませんでした」
リサちゃんはペコリと頭を下げる。
「そう、よかった」
「あのですね、それで……リサは思ったのです。せっかくこうして二人きりで旅をしているわけですし、たまにはこういうのもいいんじゃないかなって……」
もじもじしながら言うと、彼女は上目遣いをしてくる。
あぁ……これはダメかも……と心の中で呟いた。しかし、私はすぐに思い直す。確かに、この子のためを思うなら、ここはきっぱりと断るべきなのだ。……しかし、こんな可愛らしい顔をされると決心が鈍ってしまう。あぁ、可愛い。……うん、可愛いのだ。
私が葛藤しているうちに、リサちゃんは話を進める。
「えっと……アニータさんがイヤじゃないのなら、ぜひ……と思いまして……。アニータさんがお望みなら、その……リサは……アニータさんと……したいです」
「そっ、そう? えっと……でも、まだ早いっていうか……ほんとに私でいいの?」
私は恥ずかしくなって思わず確認してしまう。
「はい、アニータさんじゃなきゃだめなんです。アニータさんは嫌ですか……?」
そう言って潤んだ瞳を向ける。……うぅむ、卑怯だぞ、小悪魔少女よ。
結局、私には断ることなどできるはずもなく……というか、最初から拒否するつもりなど無かったのだが、彼女の誘いに抗うことはできなかった。
私は大きく深呼吸をすると、リサちゃんの耳元に唇を寄せて囁いた。
──いいよ、おいで。
「はい……」
彼女は返事をすると、静かに目を閉じた。
私たちは馬車の影に身を潜めてキスをした。お互いに舌を差し出し絡め合う。まるで互いの熱を交換しているかのように感じた。彼女の口内は柔らかく、少し甘い匂いがした。
しばらくしてから私は彼女を離す。
彼女は真っ赤な顔でこちらを見つめてきた。私もおそらく同じようになっているのだろうな、と思った。それからしばらくの間見つめ合った後、どちらからともなく笑った。そして、もう一度口づけを交わす。
リサちゃんとなら、きっとどこまででも行ける。私は彼女の体温を感じながらそんなことを思っていた。そして、これからどんなことがあっても、決してこの温もりを忘れないと誓った。たとえ何が起ころうとも……。
「あの、リサは今とっても幸せです」
リサちゃんが嬉しそうな笑顔を浮かべながら言った。
「……私も同じこと思ってた」
私の返答に彼女は驚いたような表情を見せると、満面の笑顔になった。あれ、私って今とっても幸せなのかも? そう思った。
☆
王都に着いた私たちは真っ先に【エスポワール】のヘレナの元を訪れて、リサちゃんを診てもらった。
ヘレナはリサちゃんの姿を見るなり、彼女をバックヤードのベッドに寝かせて、自分はなにやら白衣のようなものに着替えた。
「……何をするつもりなの?」
「なにって、ちょっと診てあげるだけよ。──アニータちゃん、リサの服を脱がせて」
「ええっ!? 私が脱がせるの!?」
突然の指示に動揺してしまったが、当のリサちゃんは特に気にしていないようだった。それどころか、「お願いします」と言ってくる始末である。私は覚悟を決めると、恐る恐る彼女のワンピースに手をかけた。
露わになる白く透き通った肌を見て心臓が高鳴る。下着姿にさせるのがなんだかいけないことをしているような気分になってドキドキする。
彼女は恥じらう様子も見せずにじっとしていた。私に身を委ねているのだ。私はその事実に気付くと、一気に緊張した。
「もう、さっさと脱がせなさいよ」
ヘレナが急かす。……なんかこの女、ムカつくんですけど。
「分かってるわよ! ちょっと黙ってて!」
私はリサちゃんの胸を覆う薄い布を取り払うと、まじまじと見てしまった。子どものように見えて、リサちゃんも一人前の女性なのだということを思い出す。リサちゃんは頬を赤く染めていたが、私の視線に気づくと「……あまり見られると照れちゃいます」と言った。
「……ごめんね」
私が謝ると、彼女は優しく微笑んで首を振った。うぅ……罪悪感が。
彼女を上半身裸にすると、厨二娘のコルネリアがなにやら大きなボウルのようなものを持って現れた。
「スライムを持ってきましたわ」
「ありがとコルネリア」
「……スライム? なんに使うのよ?」
「もちろん、治療によ?」
ヘレナは平然と答えると、ボウルに両手を突っ込んだ。ヘレナの両手はたちまちスライムのゲルまみれになるけれど、彼女はそのままリサちゃんの身体に触れる。
「ちょっとヌメヌメするわよ?」
ヘレナの言葉にリサちゃんが小さく首肯する。そういえば魔法学校で、魔力伝達率の高いスライムを治療に使用する医師が存在すると聞いたことがある。私は医学は専門外だからなんとも言えないけれど、傍から見ている分には──なんというか、エロい。
ヘレナはリサちゃんの上半身を中心にスライムを塗りたくりながら、何か感触を確かめるように彼女の身体を何度も撫でている。それが妙にいやらしく感じてしまうのは私だけだろうか? 私は顔を赤らめながらも目を離すことができなかった。しばらくすると、おもむろにヘレナは口を開いた。
「……魔力切れね」
「どういうこと?」
「あたしのポーションは、対象の魔力を自然治癒力に変換するもの。──つまり、酷い怪我をした人に使うとその分たくさん魔力を消費する。……アニータちゃんが使う分には問題ないと思ったけれど、魔力の少ないリサに使うとこうなっちゃうのよ」
そう言いつつ、ヘレナはリサちゃんの頭に手を乗せながら魔力を込めた。リサちゃんの身体が一瞬黄金色の光を放って、彼女の顔色が明らかに良くなっていく。
「あ、ありがとうございますヘレナさん」
「いーのいーの、それにしてもリサが怪我するなんてね。敵は相当強い魔物だったみたいね」
「あー、いや。リサちゃんは私を守って怪我しちゃったのよ」
私が口を挟むと、ヘレナは「ふーん?」と意味深な笑みを浮かべた。
「あら、アニータちゃんを守りたいなら、もっと頑張らなきゃダメよリサ」
「ふぇっ、が、がんばります」
顔を赤くしながらリサちゃんは答えた。
私たちの会話を聞いていたらしいコルネリアが呆れたようにため息をつく。
「まったく、仲間を危険に晒すなんてとんでもないですわ。アニータちゃんは本当に無鉄砲ですのね。あなたはただでさえバカなんですから……気を付けてくださいまし」
どうせまた小言を言われるんだろうと思っていたが、相変わらず鼻につく言い方だ。
「おい、バカとはなんだバカとは? やんのかこのアホ厨二娘が!」
「黙りなさいこの単細胞暴れ馬!」
私たちは睨み合いを始めた。……もうこいつとは口をきいてやらないことにしよう。
「はい、そこ、ケンカしないの。とりあえずリサの体調は回復してるはずだから。今後のことを考えましょう?」
ヘレナの言葉に私たちは大人しく従うことにした。
リサちゃんの回復を待った後、私たちはエスポワールのバックヤードのテーブルを囲み、話し合いを始める。まずはヘレナが深刻そうに眉をひそめながら切り出した。
「2人がいない間に、恐れていたことが起きてしまったわ」
「……というと?」
「王国軍がヴラディ領に攻め入ったようよ」
「──ローラ」
私は、ヴラディ領にいるであろうローラやシュナイダー伯爵、アベルくんのことを思い出して憂鬱な気持ちになった。彼らも今頃は戦っているのだろうか。無事でいて欲しい。しかし、もし負けてしまっていたとしたら……。
私は嫌な想像を振り払う。そんなはずはない。負けそうだったとしても、誰かがまた彼らを逃がしてくれるはずだ。
──でも、万が一ということも。私は不安に駆られて拳を強く握りしめた。するとその手にリサちゃんが手を重ねて言う。
「大丈夫ですよ、きっとみんな無事に決まっています」
「そうだよね……」
私は大きく深呼吸をして心を落ち着かせると顔を上げる。
「戦況は?」
「あたしの聞いた話だと一進一退って感じかしらね。ヴラディ領はよく持ちこたえているわ。──王国軍の戦力は圧倒的だもの」
「……くっ」
私は思わず唇を噛む。
「……私、ローラたちを助けに行きたい」
思わずそう口にすると、ヘレナは黙って首を振った。
「私情で王国軍に楯突いたらすぐに反乱分子だと見なされるわよ?」
「でも……!」
「アニータちゃんが目をつけられるとあたしたちの活動も危うくなるの」
「だったらクビにしてくれて構わない!」
「そういう問題じゃないのよ。あたしたちはあくまで依頼されたことをこなすだけ。それ以上のことは基本的にはやらないの」
ヘレナの言葉を聞いているうちにだんだん頭が冷えてくる。
「ごめん、軽率なこと言った。私、自分の立場をわきまえるべきなのに」
私が謝罪するとヘレナは大きくため息をついた。
「はぁ、まあ気持ちは分かるわ。でもね、今は耐えて。……いずれその時が来たら──」
彼女は私の目を見て優しく微笑んだ。
「……!」
「いずれにせよ、あたしたちも戦力を確保しないとね。──会いに行くわよ、クラリスに」
ヘレナの言葉にリサちゃんとコルネリアが頷く。私は首を傾げた。
「クラリス?」
「あたしたちのギルド最後の1人。もう長い間引きこもってるのよ。叩き起してこないと」
リサちゃんのおねだり攻撃に耐え切れず、とうとう『それ』を口にしてしまいそうになったのは、出発してから2日目のことだった。
「アニータさん」
その声に振り向くと、リサちゃんがニコニコしながら立っていた。
「リサちゃん、もう体は大丈夫なの?」
「はい! すっかり元気になりました。ご心配をお掛けしてすみませんでした」
リサちゃんはペコリと頭を下げる。
「そう、よかった」
「あのですね、それで……リサは思ったのです。せっかくこうして二人きりで旅をしているわけですし、たまにはこういうのもいいんじゃないかなって……」
もじもじしながら言うと、彼女は上目遣いをしてくる。
あぁ……これはダメかも……と心の中で呟いた。しかし、私はすぐに思い直す。確かに、この子のためを思うなら、ここはきっぱりと断るべきなのだ。……しかし、こんな可愛らしい顔をされると決心が鈍ってしまう。あぁ、可愛い。……うん、可愛いのだ。
私が葛藤しているうちに、リサちゃんは話を進める。
「えっと……アニータさんがイヤじゃないのなら、ぜひ……と思いまして……。アニータさんがお望みなら、その……リサは……アニータさんと……したいです」
「そっ、そう? えっと……でも、まだ早いっていうか……ほんとに私でいいの?」
私は恥ずかしくなって思わず確認してしまう。
「はい、アニータさんじゃなきゃだめなんです。アニータさんは嫌ですか……?」
そう言って潤んだ瞳を向ける。……うぅむ、卑怯だぞ、小悪魔少女よ。
結局、私には断ることなどできるはずもなく……というか、最初から拒否するつもりなど無かったのだが、彼女の誘いに抗うことはできなかった。
私は大きく深呼吸をすると、リサちゃんの耳元に唇を寄せて囁いた。
──いいよ、おいで。
「はい……」
彼女は返事をすると、静かに目を閉じた。
私たちは馬車の影に身を潜めてキスをした。お互いに舌を差し出し絡め合う。まるで互いの熱を交換しているかのように感じた。彼女の口内は柔らかく、少し甘い匂いがした。
しばらくしてから私は彼女を離す。
彼女は真っ赤な顔でこちらを見つめてきた。私もおそらく同じようになっているのだろうな、と思った。それからしばらくの間見つめ合った後、どちらからともなく笑った。そして、もう一度口づけを交わす。
リサちゃんとなら、きっとどこまででも行ける。私は彼女の体温を感じながらそんなことを思っていた。そして、これからどんなことがあっても、決してこの温もりを忘れないと誓った。たとえ何が起ころうとも……。
「あの、リサは今とっても幸せです」
リサちゃんが嬉しそうな笑顔を浮かべながら言った。
「……私も同じこと思ってた」
私の返答に彼女は驚いたような表情を見せると、満面の笑顔になった。あれ、私って今とっても幸せなのかも? そう思った。
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王都に着いた私たちは真っ先に【エスポワール】のヘレナの元を訪れて、リサちゃんを診てもらった。
ヘレナはリサちゃんの姿を見るなり、彼女をバックヤードのベッドに寝かせて、自分はなにやら白衣のようなものに着替えた。
「……何をするつもりなの?」
「なにって、ちょっと診てあげるだけよ。──アニータちゃん、リサの服を脱がせて」
「ええっ!? 私が脱がせるの!?」
突然の指示に動揺してしまったが、当のリサちゃんは特に気にしていないようだった。それどころか、「お願いします」と言ってくる始末である。私は覚悟を決めると、恐る恐る彼女のワンピースに手をかけた。
露わになる白く透き通った肌を見て心臓が高鳴る。下着姿にさせるのがなんだかいけないことをしているような気分になってドキドキする。
彼女は恥じらう様子も見せずにじっとしていた。私に身を委ねているのだ。私はその事実に気付くと、一気に緊張した。
「もう、さっさと脱がせなさいよ」
ヘレナが急かす。……なんかこの女、ムカつくんですけど。
「分かってるわよ! ちょっと黙ってて!」
私はリサちゃんの胸を覆う薄い布を取り払うと、まじまじと見てしまった。子どものように見えて、リサちゃんも一人前の女性なのだということを思い出す。リサちゃんは頬を赤く染めていたが、私の視線に気づくと「……あまり見られると照れちゃいます」と言った。
「……ごめんね」
私が謝ると、彼女は優しく微笑んで首を振った。うぅ……罪悪感が。
彼女を上半身裸にすると、厨二娘のコルネリアがなにやら大きなボウルのようなものを持って現れた。
「スライムを持ってきましたわ」
「ありがとコルネリア」
「……スライム? なんに使うのよ?」
「もちろん、治療によ?」
ヘレナは平然と答えると、ボウルに両手を突っ込んだ。ヘレナの両手はたちまちスライムのゲルまみれになるけれど、彼女はそのままリサちゃんの身体に触れる。
「ちょっとヌメヌメするわよ?」
ヘレナの言葉にリサちゃんが小さく首肯する。そういえば魔法学校で、魔力伝達率の高いスライムを治療に使用する医師が存在すると聞いたことがある。私は医学は専門外だからなんとも言えないけれど、傍から見ている分には──なんというか、エロい。
ヘレナはリサちゃんの上半身を中心にスライムを塗りたくりながら、何か感触を確かめるように彼女の身体を何度も撫でている。それが妙にいやらしく感じてしまうのは私だけだろうか? 私は顔を赤らめながらも目を離すことができなかった。しばらくすると、おもむろにヘレナは口を開いた。
「……魔力切れね」
「どういうこと?」
「あたしのポーションは、対象の魔力を自然治癒力に変換するもの。──つまり、酷い怪我をした人に使うとその分たくさん魔力を消費する。……アニータちゃんが使う分には問題ないと思ったけれど、魔力の少ないリサに使うとこうなっちゃうのよ」
そう言いつつ、ヘレナはリサちゃんの頭に手を乗せながら魔力を込めた。リサちゃんの身体が一瞬黄金色の光を放って、彼女の顔色が明らかに良くなっていく。
「あ、ありがとうございますヘレナさん」
「いーのいーの、それにしてもリサが怪我するなんてね。敵は相当強い魔物だったみたいね」
「あー、いや。リサちゃんは私を守って怪我しちゃったのよ」
私が口を挟むと、ヘレナは「ふーん?」と意味深な笑みを浮かべた。
「あら、アニータちゃんを守りたいなら、もっと頑張らなきゃダメよリサ」
「ふぇっ、が、がんばります」
顔を赤くしながらリサちゃんは答えた。
私たちの会話を聞いていたらしいコルネリアが呆れたようにため息をつく。
「まったく、仲間を危険に晒すなんてとんでもないですわ。アニータちゃんは本当に無鉄砲ですのね。あなたはただでさえバカなんですから……気を付けてくださいまし」
どうせまた小言を言われるんだろうと思っていたが、相変わらず鼻につく言い方だ。
「おい、バカとはなんだバカとは? やんのかこのアホ厨二娘が!」
「黙りなさいこの単細胞暴れ馬!」
私たちは睨み合いを始めた。……もうこいつとは口をきいてやらないことにしよう。
「はい、そこ、ケンカしないの。とりあえずリサの体調は回復してるはずだから。今後のことを考えましょう?」
ヘレナの言葉に私たちは大人しく従うことにした。
リサちゃんの回復を待った後、私たちはエスポワールのバックヤードのテーブルを囲み、話し合いを始める。まずはヘレナが深刻そうに眉をひそめながら切り出した。
「2人がいない間に、恐れていたことが起きてしまったわ」
「……というと?」
「王国軍がヴラディ領に攻め入ったようよ」
「──ローラ」
私は、ヴラディ領にいるであろうローラやシュナイダー伯爵、アベルくんのことを思い出して憂鬱な気持ちになった。彼らも今頃は戦っているのだろうか。無事でいて欲しい。しかし、もし負けてしまっていたとしたら……。
私は嫌な想像を振り払う。そんなはずはない。負けそうだったとしても、誰かがまた彼らを逃がしてくれるはずだ。
──でも、万が一ということも。私は不安に駆られて拳を強く握りしめた。するとその手にリサちゃんが手を重ねて言う。
「大丈夫ですよ、きっとみんな無事に決まっています」
「そうだよね……」
私は大きく深呼吸をして心を落ち着かせると顔を上げる。
「戦況は?」
「あたしの聞いた話だと一進一退って感じかしらね。ヴラディ領はよく持ちこたえているわ。──王国軍の戦力は圧倒的だもの」
「……くっ」
私は思わず唇を噛む。
「……私、ローラたちを助けに行きたい」
思わずそう口にすると、ヘレナは黙って首を振った。
「私情で王国軍に楯突いたらすぐに反乱分子だと見なされるわよ?」
「でも……!」
「アニータちゃんが目をつけられるとあたしたちの活動も危うくなるの」
「だったらクビにしてくれて構わない!」
「そういう問題じゃないのよ。あたしたちはあくまで依頼されたことをこなすだけ。それ以上のことは基本的にはやらないの」
ヘレナの言葉を聞いているうちにだんだん頭が冷えてくる。
「ごめん、軽率なこと言った。私、自分の立場をわきまえるべきなのに」
私が謝罪するとヘレナは大きくため息をついた。
「はぁ、まあ気持ちは分かるわ。でもね、今は耐えて。……いずれその時が来たら──」
彼女は私の目を見て優しく微笑んだ。
「……!」
「いずれにせよ、あたしたちも戦力を確保しないとね。──会いに行くわよ、クラリスに」
ヘレナの言葉にリサちゃんとコルネリアが頷く。私は首を傾げた。
「クラリス?」
「あたしたちのギルド最後の1人。もう長い間引きこもってるのよ。叩き起してこないと」
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