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しおりを挟む翌日。何事もなかったかのように二人は街はずれの丘に向かった。爽やかな晴天と心地良いそよ風、そして素晴らしい展望を満喫する。近くに湖もあって、ちょっとした観光スポットだ。
秋生は今までのことをマキニヴァに謝りたかった。本当ならもっと感謝して大切にしなければならないマキニヴァにずいぶんひどいセックスをしてきた。ちんこが自分の一番の長所なのに昨日は中折れなんかして。がっかりして、自分への気持ちが変わったんじゃないだろうか。秋生は辺りをうかがって、適度に人がまばらになったときを狙って切り出した。
「話があるんだ、マキニヴァ」
「いやだ! 聞きたくない!」
思いがけない反応に秋生はたじろいだ。いったい何がそうさせたのか知らないが、珍しくマキニヴァが感情を昂らせている。マキニヴァはいい奴で信用してるけど昨日秒殺された男たちが脳裏をよぎる。さっきはちょっと離れていてほしいなと思った他の人たちに、今度は助けてほしくて視線を送った。しかしみんな喧嘩慣れしていて、言い合いだけでは誰一人として見向きもしない。
「俺はアキオが好きだ! その気持ちは誰にも負けない! 俺はもうアキオなしでは生きていけないんだ! だから別れるなんて言わないで!」
「お、落ち着こうマキニヴァ。俺の話は別れとかそんなんじゃないよ……?」
「あ……そう、だったんだ……? ごめん、取乱して……もしかしてプロポーズの返事を聞かせてくれるの? 俺、期待してもいいのかな……」
マキニヴァは落ち着いたようでまだ落ち着いていない。顔が赤くて少し目が潤んでいる。これほどの男が自分のために必死になっていると思うと、秋生はセックス以外で初めてマキニヴァが可愛く見えてきた。
「俺はまだ結婚がよくわからないから、もうちょっと時間がほしい。この世界をもっと知って、ちゃんと準備がしたい。それまで待ってくれる? マキニヴァ」
マキニヴァは跪いて顔の高さを合わせた。神に祈るように秋生を見詰める。
「今までごめんねマキニヴァ。結婚しよう」
ちゅっとキスをして抱き締める。公衆の面前でキスとか、マキニヴァの圧に負けて柄にもない行動をとってしまった。この期に及んで言い訳ばかりの姑息な回答。それでも一応の承諾にマキニヴァは喜びの涙を流した。
周囲の人たちの顔がこっちを向いているような気がするけど、たぶん気がするだけだ。みんなさっきまであんなに無関心だったくせに、ちくしょう。他人なんか気にするもんか。結婚には勢いが大事ってこういう事かも知れない。そう思いながら、秋生はマキニヴァが泣き止むまで頭を撫でて背中をさすった。
二人は丘を下りた。午後は街中を散策する。マキニヴァの案内で秋生は観光を楽しんだ。結婚したらコンタンノウシで暮らしてもいいかも知れない。道はきれいに整えられているし、食べ物や売ってる服もこっちの方がレベルが高い。ここなら仕事も見つかりそうだ。
近くで見ると怖いけど、女性たちも皆着飾っていて華やかでいい。男がお子様サイズってことは、やっぱりまんこも小さいんだろうな、どんな形なんだろう、などと考えていたら信じられない言葉が耳に飛び込んできた。
「キモ童貞」
秋生の心は芯まで一気に凍りついた。後ろを振り返ると、さっきすれ違った女性たちもこちらを見ている。あの中の誰かがあの森の魔獣。もしかしたらあの幻獣なのかも知れない。ひそひそ話の内容は聞こえなくても想像がついた。
「家に帰ろうマキニヴァ。うっ、ぐす……もう帰りたいぃ」
さっきまであんなに楽しそうにしていたのに、突如半泣きでぐずりだす秋生。恥を忍んで事情を話すと、マキニヴァは予定を繰り上げて家路についてくれた。帰宅してからも落ち込む秋生をよしよしと慰める。
「もう大丈夫だよアキオ。俺がアキオを守るから安心して」
「ぐすっ……ありがとうマキニヴァ……結婚しよ……」
「うん、しようね。いつがいいかな」
「明日する……」
「っ!!! いいの?」
一人じゃ生きていけない秋生は、マキニヴァと結婚してタシュアプケで生涯を終える決心をした。マキニヴァは、子供みたいにこくりと頷く秋生を抱き締めた。
「ありがとうアキオ、愛してる。一生大切にする!」
秋生がいつまでも女への未練を捨てられないことにマキニヴァは気付いていた。コンタンノウシに連れて行ったのは、秋生の理想とかけ離れたこの世界の女を見せて未練をなくさせるためだ。女たちより自分の方がよっぽどかけ離れている事にも気が付かないくらい焦っていた。その日の夜の身の入らないセックス。中折れまでされて、愛の終わりに怯えていたところに神妙な顔で話があるなんて言い出すから、てっきり別れ話だと思ってしまった。
秋生が思っているほどマキニヴァは善良ではないし心も強くない。好きな子の前で格好つけていただけだ。プロポーズの返事を保留にされたのを、実はとても気に病んでいた。どうせ失敗すると思って秋生に狩りを勧めた。狩りのときの秋生の暴言は計算外だったが、あれのお陰で秋生が結婚を決意することになったのだから皮肉というか僥倖だ。
最近は不満が一つ。秋生が情熱的に愛してくれない。優しい秋生も好きだけど、やっぱり猛々しい巨根で蹂躙されるのがいい。秋生もそういうのが好きだ。屈強な男を支配する喜びが癖になっている。それに気付いてからは、マキニヴァはより一層武術の修行に励んだ。
「お願いアキオ、今日はめちゃくちゃにしてほしい……」
秋生の顔に指を這わせた。欲望にぎらつく目の横に浮き出た既婚の証をなぞる。文様が出たマキニヴァの顔が悪党みたいだと言って顔をしかめていた秋生。でもセックスのときの秋生は人を喰う猛獣みたいな顔つきをしている。どんな悪党も所詮は人間。飢えた獣には敵わない。
「ああ~おっきいよお、気持ちいとこ全部当たるの、ああもうだめぇ、あ、ううっ、もう出な、そんなにしないで……っ」
ピストンと同時に前をこすられた。こうされるとマキニヴァはすぐに達してしまう。精液をローション代わりに弄ばれると刺激が強すぎて、ひいひいと情けない声で鳴く羽目になる。そうすると秋生は余計に面白がって興奮して激しく奥を突くのだ。
「マキニヴァの子供ちんこ、またガチガチになっちゃったね。俺のも硬くしてよ」
「はあ、はあ、うぶっ、んっ、んん、んっ」
マキニヴァは秋生の一度奥で射精した男根を咥えさせられた。苦しいだけだった喉奥への突き入れでも悦びを感じるようになってしまった。ちょっと意地悪な愛し方をする秋生が好きだ。血管の浮き出た雄々しい男根は華奢な秋生とは不釣り合いで、まるで憑りついた魔物のよう。これをまたぶち込まれて、中をぐちゃぐちゃにかき回される。硬さに恐怖して、大きさに胸が高鳴る。
「ありがと、もういいよ。ほら、後ろ向けよ」
「アキオ……ああああっ、おっきい……!! すごいっ、アキオのおちんぽすごいよおっ、いくっ、いぐうぅっ」
「あはっ、メスイキした」
「まだ動かないで壊れちゃう! おかしくぅっ、んおおぉーっ!!」
秋生は痙攣する腰を捕まえて容赦なくずんずんと突く。感じ過ぎて四つん這いも難しくなってきたマキニヴァは仰向けになるよう命じられた。その先の命令は言われなくてもわかっている。自分で膝裏をしっかり抱えて秋生のための穴をさらけ出した。秋生は遠慮なくずどんずどんと上から叩きつけるようにそれを味わう。
「おぉああああんっ、しぬ゙っ、あっ、じぬ゙ぅっ」
「マキニヴァ」
「お、ん、ん……」
泣き言を言い始めるといつもキスで口を塞がれる。秋生が喋らせてくれないから愛してるも言えない。だから全身で愛を伝える。大股を開いて、落ちてきた唾液も汗も受け止めて、与えられた快感はすべて飲み干す。みっともなく喘ぐマキニヴァに、秋生は嬉しそうに笑った。
おしまい
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