夜行性の暴君

恩陀ドラック

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魔術の章

サスペンスの開幕2

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 後藤と高橋が現れる少し前、花桐の廊下を歩いていた従業員の林はこそこそした様子の男性客が気になった。それとなく後をつけると現在空室の桜花の間に入っていく。無断利用を注意しようと中に入った林は信じられない光景を見た。仲居の清水が乱交をしている。三人の男が彼女の手と口と膣で快楽を得ていた。


「ああんっ、は、林さん……?  あんっ」

「旅館の人ですか?  こんな若くて可愛い子に無料で生ハメできるなんて、高級なお宿は違いますね!」


 初めて会ったとき可愛い子だと思った。まだ十五歳なのに頑張って働いて、応援したいと思っていた。半年前から密かに見続けてきた推定Cカップの胸が、大きくないがぷりぷりの尻が、自分以外の男からいいように嬲られている。

 挿入していた男が射精してポジションが入れ替わる。林は清水の口に男根を押し付けた。浮気な彼女を懲らしめようとわざと乱雑に奥まで突っ込んでいるのに、小さな口は美味しそうに迎え入れる。次に挿入した男の振動が伝わってきて、林は気持ちがいいのに苛々した。

 やっと林の順番が回ってきて、精液で汚い膣に男根を収めた。三十四歳の林は十年振りにありついた十代のおまんこをのっけからがん突きした。自分のものであんあん善がる女の子を見下ろしていると、こみ上げてきた愛おしさが白い液体になって飛び出していった。優しい気持ちになった林は清水の頭を撫でた。


「清水さんは仕事熱心で偉いね。もっとたくさんのお客様に喜んでもらおうね」


 フェラチオ中の清水は口を離さずに小さく頷いた。

 身嗜みを整えて部屋を出た林は、手近な男性客から声を掛けた。島の生活に飽きた客は無料サービスを喜んで享受した。従業員も客も、精神干渉の影響で流されやすくなっている。若い肢体から目を逸らせるような理性はなかった。

 清水も少しおかしくなっていた。花桐の間で接客してから発情が止まらない。乳首とクリトリスが勃起して、愛液が勝手に溢れてくる。オナニーで鎮めようとしたが、愛用のディルドとローターを駆使してもイけなかった。気持ちはいいのに、良い所をどんなに擦ってもオーガズムに達しない。欲求不満のあまり、ついに客に手を出してしまった。更生とか信頼とか、そんなものは全部吹っ飛んだ。

 どの男も清水を気持ちよくしてくれた。頂上を間近に望むところまでは連れて行ってくれる。でもそれ以上に行けない。その先を求めるなら必要なのは男根ではなく、人間を蹂躙する二本の犬歯だ。花桐の間のお客様を思い浮かべ、清水はイくにイけない身体をなんとかしようと足掻き続けた。

 林の後、一般客一人を挟んで厨房担当の福田が中に入った。少々Sっ気のある巨根だった。


「清水さんは淫乱だったのか。仕事中もすけべなことばっかり考えてんだろ?」

「たまにトイレでオナニーしてました……」

「いけないおまんこだ!」

「は、はい、すみませっ……あんっ、我慢できなくて!」

「言い訳するな、ばかまんこ!  もっとちゃんと謝れ!」

「性欲強くてすみません!  ばかまんこですみません!  あっ、そこ気持ちいい!  そこっ、そこおおおっほおお!!」


 防音のしっかりした扉だが、吸血鬼の耳には喘ぎ声が漏れ聞こえていた。サスペンスでのサービスシーンは分かりやすい死亡フラグでもある。昢覧調べでは濡れ場のタイミングが早い程、エロい程、参加者の死亡率が上がる。


「こちらでございます。どうぞ中へ」

「やめとく。俺たちそういう役じゃないから」

「は、さようでございますか。もしお気が変わられましたらお気軽にご利用ください」


 昢覧に断られた林は一瞬怪訝な表情をしたがすぐに気を取り直して、まだ声を掛けていないお客様を探しに行った。


「それでどの辺にいれば魔術が見られるの?」

「花桐としか聞いてないや。中にいれば大丈夫なんじゃない?」

「適当なんだから」


 三人も桜花の間から離れた。振り返ると廊下の角で林が頭に手を添えて壁にもたれていた。じき夕食の時刻だというのに厨房には誰も居ない。非常事態のせいか仕事の形跡もなかった。ロビーに戻ると人間たちが怠そうに項垂れている。何かがおかしい。


「従業員が少ない。家に帰った?」

「他の人間も、本当にここに居るのか?  ちょっと静かすぎる気がする。それに」


 魔術の違和感がまた高まった。何かが始まりそうな気配がしている。







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