6 / 119
吸血鬼の章
デビュー戦
しおりを挟む紫束の運転で三人は出掛けた。車は山を下り田園の中を走る。助手席の崇人は外の景色を眺めるのに夢中になっていた。申し訳程度の街灯しかないのに、まるで昼間のようによく見える。吸血鬼の能力だ。昨日の夜も見えていたはずだが、衝撃事件の数々に振り回されて気がつかなかった。
「居た」
田んぼの中の四つ辻に若い女が一人で立っている。この日のために事前に仕込んであった女だ。精神干渉で操られていて従順そのもの。後部座席に引っ張り込まれても抵抗しない。街灯から遠いこの場所で車のライトを落とすと、女からは横に居る結紫の顔もよく見えなかった。
「全部脱げ」
結紫は女が脱ぎ終わるまでに取り上げた荷物の検査をした。それから女を仰向けにさせて、尻の穴まで見える体勢にすると膣に指を突っ込んだ。くちゅくちゅと濡れた音が鳴る。
「何も入ってないだろうな?」
「はい。あぁっ」
「通信機器を仕込む奴もいるから」
急に始まった友人の濡れ場に困惑する崇人のため、紫束が解説を入れた。怪しいものは何も見つからず、服を着させると車は市街地へ向かって走り出した。
到着したのは街中にある高級マンション。監視カメラがあちこちに設置されているが、吸血鬼はカメラには映らないため気にしなくていいそうだ。人を殺しても証拠一つ残さない。見咎められることもない。仮に目撃されたとしても精神干渉で如何様にもできる。つい先日まで殺される側の立場だった崇人は複雑な思いになった。
最上階の部屋は、燃やしたあの家と同じように物が少なかった。広い部屋が余計に広く見える。高い天井から下がるシャンデリアが明かりを灯すことはない。女を前に立たせて、三人は真ん中にポツンと置かれたソファーに腰を下ろした。崇人はこれからこの女を使って吸血鬼の食事の作法を教えてもらう。結紫が説明を始めた。
「吸血鬼のエネルギー源は人間の死の恐怖と性的興奮。この二つを同時に、ちょうどよく釣り合ってる状態を目指して。死んじゃうかも、でも気持ち良くて止められない、みたいなね。獲物の状態は見ればわかる……人間の感情が見えるって話しはしたっけ?」
吸血鬼は人間の感情がオーラとして見える。言われてみれば、崇人は最近視界が揺らぐことがたまにあった。ヴァンパイアハンターと戦ったときや、下僕が紫束に殴られたとき。あれは気のせいでも疲れ目でもなく、今思えばオーラが見えていたのだろう。
「具体的なやり方は、やっぱりセックスしながら流血させるのが一般的になるね。相手は人間じゃないとダメ。なるべくキレイなやつがいい。上手くいくとなんか陽炎みたいなもやっとしたものが出てくるんだけど、それがごはんだから吸ってみて」
「血じゃなくてもやもやがごはん……?」
「俺たち、血、吸わない」
「吸血鬼なのに!?」
吸血鬼という呼称は、噛みついて流血させることから生まれた誤解に因る。死を感じさせるのが目的で、血液そのものに意味はない。芽生えかけていた崇人の吸血鬼としてのアイデンティティがまたゼロに戻った。
「じゃあ風呂場に移動して実践してみよう」
崇人がチラリと見ると、紫束は目も合わさずしっしっと手を振った。紫束に参加する気は一切ない。崇人も、待ってる間どうするのかなと思って見ただけである。参加されても気まずい思いをするだけだ。というか既に気まずい。
広々とした風呂場に全裸の男女が三人。複数プレイ未経験な崇人はそわそわと落ち着かない。さっき服を脱ぐ時、女より結紫に目が行った。超絶美少年のアンバランスな完成形が露わにされていく様は感動すら覚えた。彼は股間も美しかった。男の股間にそんな感想を持つ日がこようとは。普段あまり感じたことのない羞恥心を感じてしまう。
「俺が出すから、出たら吸ってね」
まずは結紫が愛撫をして女の死の恐怖と性的快楽を煽ってもやもやを出すから、それを吸えという話だ。だけど初めて結紫の裸体をみたせいで崇人はちょっと違う想像をしてしまった。今はまだ力ない結紫の男根が上を向き、その先端からぴゅっと飛び出す白い液体。余韻に震えるピンクの亀頭。他の男なら断固お断りだけど、結紫のちんこなら迷わず吸える。飲めというなら飲んでやる。今まで女にさせてたことも結紫のためなら全部できる。結紫とだったらどんなことでも――
ぽつりと滴り落ちた血の鮮やかさが崇人を現実に引き戻した。女の白い裸体に赤くうねる血痕を遡ると、目から赤光を放つ結紫が居た。首筋に牙が食い込むのと同時に乳房と股間を愛撫されて、女は嬌声のような悲鳴を上げている。
「おお~、吸血鬼だあ! なんか観たことあるやつぅ!」
「崇人、出たのわかる?」
注意して目を凝らすと、ぼんやりとしていた女のオーラが濃厚に広がるのが見えた。近付いて深呼吸してみると、それは気付け薬のように崇人を覚醒させた。ふわふわしていた輪郭が、ばしっと実線で縁取りされたような。今まで感じたことのない刺激が体を駆け巡る。
「すご……」
「触ってみな」
女の胸を揉むと、眉を顰め痛みと快感を堪えている。血と一緒に "もや" が滲み出た。
「バランスを保てればそのまま最期まで行けるよ」
崇人は女を導くのに集中した。噛みつき、揉みしだき、突き刺し、舐めまわし、貫き、引き裂く。そうして出てきたものは崇人を昂らせ、あっという間に悦楽の波に攫われてしまった。
どれだけの時間夢中になっていただろうか。人心地ついた崇人は所々乾いた血溜まりの中に腰を下ろし、ひとつ大きく息を吐いた。待ち構えていたように浴室のドアがノックされ、いつの間にか居なくなっていた結紫がひょいと顔を出す。
「崇人くーん。時間なくなるから、そろそろ出る準備してねー」
「ああ」
「あれ、殺さないの?」
床に転がされた女は、絶頂の余韻と終焉の気配にぴくぴくと痙攣していた。
「死ぬとこ見てる」
「ふっ、あはは、なにそのデザートタイム。やっぱお前人間に向いてないわ、ははは!」
もはや隠す気がない崇人は見られているのも構わず股間を扱いて射精した。赤黒い血に点々と散らばる白濁。物になった人。素晴らしい対比が崇人を得も言われぬ多幸感で満たした。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる