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女子会
しおりを挟む「やーん、エスタルくん久し振り!」
「かわいい! 相変わらずお肌つるつるね!」
ここは女人禁制のフラウスの寮の一室で、集まっているのは全員 "お嬢さん" 。彼らはウォルクと違い内面も外見も女性的だ。メイクをして女装するときもある。ちっちゃくて初心で頼りないエスタルは妹分として気に入られていて、過去に何度か女子会に引きずり込まれていた。下ネタが出始めると苦手なエスタルは早々に退散するのだが、今回はいきなり始まった。
「みんな聞いてよ。エスタルったら男の子なのにミルクが出ないの!」
「やだインポなの? かわいそう」
「ばかね、女の子なのよ。エスタルくんかわいいもの」
「ばかはあんたよ!」
ハイスと三人のお嬢さんたちの間で、きゃあきゃあ言いながらエスタルの下事情が共有されていく。エスタルは彼らのテンションに圧倒されて、矢継ぎ早の会話に口を挟む隙も無い。お嬢さんたちの反応はやはり否定的だった。
「そんなのダメよエスタルくん! 冗談抜きでインポになっちゃうよ?」
「おちんちんて使わないと小さくなるんですって。そうなったら本物の女の子だわ」
ここまで言われてようやくエスタルも危機感が湧いてきた。自分の身体で一番男らしい部分が、これ以上小さくなられては困る。
「性欲なさすぎるのが悩みって……あたしたちくらいの年の男なんて持て余して大変なのに」
「恋をしたら自然とそういう気持ちになるわよ」
「エスタル、恋愛に興味なさそう」
「ええっ、いくらなんでもそこまで枯れてないわよね?」
「興味はあるよ……」
しかし哀しいかな、フラウスに来てからはもちろんのこと、それ以前から女性との接点は無に等しい。自慢じゃないが女子との会話らしい会話は、二年前に風邪でかかった内科の若い看護婦さんとのそれが最後になる。エスタル・トゥブルが女の子の気を引けたのはローティーンになる前まで。その頃から周囲の男子との差が開き始めた。女子が好きになるのは運動ができて明るい頼れる男の子。ちょっと勉強ができるだけの小さくて内気な子じゃない。ただでさえ影の薄いエスタルは、女子にはまったく見向きもされなかった。
「現状はもっと差し迫っていると思うの。もっと簡単に、すぐできる対策はない?」
「誰かにしてもらうのはどう? 手コキで抜き合うくらいフラウス生ならみんなやってるわよ?」
「そ、そうなの……?」
「そうだ、ウォルク・ストールに頼んでみたら?」
「はひ!? なんでウォルク……」
「ウォルクの片思いの噂、聞いてない?」
人気者のウォルクの片思いはちょっとした噂になっていた。相手についてわかっているのは守ってあげたくなるタイプということだけで、みんな好き勝手に予想していた。
「もしかしたら相手はエスタルくんかも!」
「それはないと思う……」
高等学院時代はそうだったかも知れない。だけど今のウォルクは類友で集まった一軍陽キャたちと毎日楽しく交流三昧。デカチンで掘られるのが好きと言っていた彼が、お世辞にも立派とは言えないモノの持ち主の自分に恋しているなんて考えられなかった。ここにいるお嬢さんたちも同じ意見で、エスタルの名前を出したのは有り得ないが故の冗談だ。
「もう誰でもいいからエスタルも抜き友くらいは作りなよ」
「でも……は、恥ずかしい……」
裸になってちんちんを弄られる想像をしたエスタルは、真っ赤になった顔を両手で隠して俯いてしまった。
「えぇー……これがフラウス生って信じられる?」
「エスタルくん下ネタ苦手だものね。気分転換しましょ。ねえ、着てみてほしい服があるんだけど、エスタルくん、ちょっと着替えてくれない?」
「あっ、清純派すぎてあんたに似合わなかったあのワンピース?」
「その通りだけど余計なお世話よっ」
「じゃああたしはお化粧させて! 口紅だけでいいから、お願い!」
だったらウィッグも、アクセサリーも、とみんなで盛り上がった空気に待ったを掛けられず、エスタルは人生初の女装をする羽目になってしまった。
出された服はペールカラーで無地のサックワンピースで、エスタルにもあまり抵抗感なく着ることができた。それだけではシンプル過ぎると柄物のスカーフを首に巻かれ、ベルトでウエストを絞られる。頭にはセミロングのウィッグとクリスタルガラスでできた小さなヘアアクセサリー。素材を活かして、メイクはリップグロスのみとなった。
「かわいいーっ!!」
「写真写真!」
「いいわね、みんなで記念撮影しましょ!」
「あの、写真は……」
こんな姿を撮られるのは抵抗がある。でも人には見せないと約束してくれたし、またつまらない奴だと思われたくない。エスタルはカメラの前でぎこちなく微笑んだ。
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