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交流は友情
しおりを挟むウォルク・ストールは寮の談話室でセックスのあとの心地良い倦怠感に浸っていた。気の合う友人とするスポーツのようなセックス。これぞフラウス精神に則った肉体の交流だ。今日は六人でのグループプレイだった。談話室はそのための部屋で、ベッドや長椅子では他のメンバーも休憩を取っている。最後に組んだ相手がウォルクに冷たいドリンクを持って来てくれた。
「やっぱりウォルクがいると会が盛り上がるな。でもエヴァノスさんがいるのにいいのか?」
「あの人はただの先輩だよ。いいも悪いもない」
ネデト・エヴァノスは実家が大金持ちの資産家で母親は外国の貴族の出。本人も眉目秀麗で文武両道という、フラウスの中でも屈指のエリートだ。彼と懇意になりたいと望む者は多かったが、ネデトはそういう輩をきちんと選別して気軽に付き合いを持とうとはしなかった。ストール家の資産は平均以上ではあるが富裕層と言えるほどではない。やんごとない血は流れておらず、あくまで庶民。エヴァノスと付き合うには格が足りない。
ウォルクとネデトが親しくなったのは歓迎会が切っ掛けだ。歓迎会の出席者は一年生と指南役の二年生だけ。しかしウォルクの評判は瞬く間に学内に広まり、噂を耳にした三年生のネデトが自分の主催する交流会へ彼を招待したのだった。
「ずいぶん歓迎会を盛り上げたそうじゃない。初めてで中イキしたって本当なの?」
ネデトは物腰が柔らかい。スポーツで鍛えた無駄のない肉体の上には、少し垂れ目の甘いマスクが乗っている。実家云々を抜きにしても魅力的な男だった。絶倫としても有名でお嬢さん人気も高い。ネデトの好みはキレイ系で、いつも細身で女のような顔をしたお嬢さんを侍らせている。毛色の違う自分を入れて目新しい趣向を楽しみたいのだなとウォルクは理解した。
「はい。めちゃくちゃいかされました。だいぶ盛り上がったみたいで光栄です」
「僕は感度がいい子は好きだよ。今日はよろしくね」
ウォルクは強制的と言っていいくらい射精させられた。気持ちのいいところばかり執拗に擦られて、勃起できなくなるまで疲れ切って、それなのにネデトが中で動くと快感で腰が痺れる。抵抗する力が出てこない。
「ネデトさん、も、動かないで、それ以上されたら……」
「これで最後だ。もう一回出したら終わりにするから」
「ああああっ、壊れるっ、死ぬっ!!」
一突きごとに透明な液体が飛び散る。腰が浮くくらい膝裏を押さえつけられて喘ぐしかなかった。朦朧とした意識の中で揺れがおさまったまでは憶えている。気が付くと自室のベッドの上だった。談話室からここまで、眠るウォルクをネデト自らが背負って運んだのだと同室の男が教えてくれた。
体は隅々までキレイにされていた。一緒にいた仲間も手伝ったのだろうが、あれだけ運動した後で意識のない男の面倒を見て移動させる体力に驚く。先輩にここまでさせてしまったのは失態だ。翌日謝罪のために会いに来たウォルクに、ネデトは嫌な顔ひとつせず応じた。
「僕が謝りに行くつもりだったのに、来てもらってすまないね。体は大丈夫? あんなに感じてくれたのは君が初めてで、僕もついやりすぎてしまった。本当に申し訳ない」
「気にしないでください。こちらこそご迷惑おかけしました。俺はまだあまり経験がないので自分の限界がわからなくて」
「もしよかったらまた参加してよ。今度はちゃんと手加減するから。ね?」
ウォルクは目の回るような快感を思い出して息を詰まらせた。尻の奥の疼きが蘇る。声が上擦らないよう小さく深呼吸してから返事をした。
「ありがとうございます。是非また呼んでください」
ネデトは自分の交流会には毎回彼を呼ぶようになった。ウォルクの方も、とにかくいかせまくったり寸止めしたりと翻弄してくれるネデトとのセックスにのめり込んでいった。二人の交流の頻度はどんどん上がっていき、週末はどちらかの部屋に泊まり込んで二人だけの交流会に勤しむようになった。平日にも予定が合えば交流。合わなくても無理やり合間を縫って交流。講義も休みがちになった。こうしてウォルクは身を持ち崩していったのだった。
フラウスの交流は男だけの環境で自慰を助け合っていたのが起源で、根底にあるのはあくまでも友情である。千摺りと前立腺オナニーを一体化させた、合理的で効率的な快楽の追求と溜まった欲望の発散。とは言えやっていることはセックスに変わりないので、恋人のいる学生は他と交流しない。二人きりの交流会ばかりするウォルクとネデトはまるで恋人同士のようだった。
周囲から揶揄されるくらいならウォルクは気にならない。ただ、ネデトまで自分を恋人扱いするようになってきたのが負担になっていた。体中を愛撫され、ディープキスで舌を絡み取られながら中イキさせられたとき、ウォルクはネデトから距離を置こうと決めた。あんなのは交流じゃない。恋人同士が愛を伝えるためのセックスだ。
「二人は付き合ってるもんだと思ってたぜ」
「やめてくれ……」
「例の片思いしてる子のためか?」
「まあな」
「守ってあげたくなるかわいい子だっけか。てっきり冗談だと思ってたけど本気なんだな」
尻の快楽に目覚めた男が必ずしも女役に徹するわけではない。ウォルクのように挿入の多幸感を知る非童貞なら尚更だ。他のお嬢さんたちがときに挿入もする中で、彼だけは受け入れる側に徹していた。誘われれば誰とでも交流するウォルクなりの誠意の現れだった。適当な男で代用などしない。大事な人のためだけに使いたい。これがあのとき下ネタに流されて語られなかった彼の本心だ。
ウォルクはフラウスの伝統を知っていた。だからワンチャン狙いで追いかけてきたのに現状はままならない。エスタルが何も知らないでフラウスに入学したと知ったのは、歓迎会からしばらく経ってからになる。歓迎会では涙を流し、誰とも交流しようとしない彼。いずれエスタルと……という希望は打ち砕かれ、ますます交流にのめり込むようになった。エヴァノスの恋人にされかけて、やっと目が覚めた。
やっぱりエスタルが好きだ。どんなに望み薄だろうと忘れられそうになかった。もう一度友達から始めて告白するつもりが、実際は話しかけることすらできていない。ウォルクは疲れた顔でドリンクを飲み干した。
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