大学デビュー

恩陀ドラック

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歓迎の儀式

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「ねえ、彼こっちを見てない?  僕のこと気に入ってくれたのかな」

「そうかもね……」


 エスタルは上機嫌のハイスを盾にして、心なしか以前より熱いウォルクの視線から身を隠した。

 ウォルクは本気で僕を好きだったのか?  僕を追ってフラウスに来たんだったらどうしよう。そうだ、これから裸になるんだぞ、彼もいるこの空間で!  ああもう嫌だっ。帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい!!

 そんな心情などお構いなしに歓迎会は始まる。新入生は五人ほどのグループに分けられた。エスタルのグループはハイスと他三人。幸いにもウォルクとは別だった。一グループに二人の上級生がついて全員で簡単な自己紹介をする。これから尻に指を挿し入れるわけだが、昔々は自分の指で穴を慣らして本番行為を行っていた。お互いの全てを曝け出して仲間の結束を高めるのが目的だ。そう説明される間に一年生は服を脱いで横一列に並んだ。


「君、大丈夫か?」


 列の前に立った上級生が、一人だけ明らかに様子の違うエスタルを心配して声をかけた。直腸洗浄で既に心にダメージを負っていたエスタルは、思わぬ人物との再会で追い詰められていた。両手は股間を隠すのに使われていて、頬を伝う涙がそのまま流れ落ちている。


「すみません先輩。この子とっても初心で怖がりなんです。男の子同士でそういうことするのも苦手みたいで」


 ハイスが助け舟を出す。エスタルには同情と、じゃあなんでフラウスに入ったんだ?  という疑問が向けられた。


「もしかしてなんにも知らないで入学したのか?」

「はい……僕……男同士とか……そういうのも全然……」

「たまにいるんだよなぁ、こういう奴。ま、我慢してもらうしかないな。まずはハイス?  君からだ」


 待ってましたとばかりにハイスは前へ進み出た。立ったまま両手を膝に置く。横一列に並んだグループのみんなに隠れていた場所が開示された。初めて見る人間の肛門。それを囲む全裸の人たち。その中で服を着た、看守か羊飼いのような上級生。異常なはずの状況で、みんな普通の顔をしている。エスタルには全てが恐怖だった。


「僕は慣れてるので大丈夫です」

「ふふ、だろうと思ったよ。おい、エスタルっていったな。よく見とけ。知らないから余計に怖いんだ」


 ハイスの肛門に上級生の中指がゆっくりと吞み込まれる。そしてすぐに抜き出された。エスタルが恐れていたような凌辱とは違った。振り返ったハイスはけろりとしている。彼を参考にしていいのかわからないが、上級生の言う通り実情を知って少しは恐怖心が薄れた。もう一人の上級生がエスタルの肩に手を置いて言う。


「安心しな。あいつはいじるのが上手だから指導役に選ばれたんだ。痛いどころか、気持ち良くてそっちに目覚めちまうかもな」


 慰めのつもりの言葉は逆効果だった。未知への恐怖が再びエスタルを支配する。がくがくと震えるエスタルを見かねた上級生は、彼の頭を胸に抱えて後ろが見えないようにした。まるで注射を怖がる小さな子供だ。みんなに見守られる中、エスタルの肛門に指が迫る。


「ああーっ!!」


 大きな悲鳴に、食堂は水を打ったように静まり返った。さざめきが戻った頃、二度目の声が上がる。


「やっ、ああっ、変っ、俺変です先輩っ」


 あまりの感度の良さに上級生たちは笑いをかみ殺している。エスタルは戸惑っていた。似ている。今の声、自分を悩ませているあのウォルク・ストールに……


「うっ、あ、う、う……」


 声に気を取られていたら指を突っ込まれた。排便の感覚と似ているようで違う、初めての不思議な感覚。恐ろしい痛みも人格を書き換えらえるほどの快楽もなく、済んでみればあっという間の出来事だった。


「エスタル、頑張ったね。えらいえらい」


 ハイスが駆け寄って頭を撫でてくれた。子供扱いに怒る気力もない。むしろ慰めてもらってありがたかった。お互い裸なのも忘れて縋り付く。他のメンバーも次々と儀式をこなした。


「みんなよく頑張った。これで俺たちは苦難を乗り越えた仲間だ。この絆は生涯続く。困っているときは助け合って、フラウスの同志として支え合っていこう。じゃ、服を着ていいぞ。ここから先はお嬢さんのお披露目だ」


 フラウスのお嬢さんとは女の子役、つまり男を受け入れる側の者を意味する。さっきの儀式で官能を得てしまった男子だ。お嬢さんに選ばれた学生はこの場で射精させられる。きょとんとしていたエスタルはハイスに耳打ちされてぎょっとした。そんなもの見たくない。憂鬱な気持ちでボタンを留めるエスタルに、他グループの会話が届く。


「ウォルク・ストール、おまえは裸のままだ」

「え、ええ!?  なんで俺だけ!」

「あんなに善がっといて、逃がさねえからな」

「いやまあたしかに滅茶苦茶気持ち良かったですけど」


 信じられないが、さっきの嬌声はやはりウォルクのものだったらしい。

 ウォルクが尻をいじられて気持ちよくなった?  え?  どういうこと?  彼はそっち側だったの?  それともさっき先輩が言ってたように、そっちに目覚めちゃったってこと?


「エスタル大丈夫?  部屋に戻る?」

「ハイス……ううん、ありがとう大丈夫。ここにいるよ」


 ウォルクはどっち側の人間なのか。もし受け入れる側だとしたら彼のことはそれほど脅威ではなくなる。この後彼がどうなるのか。エスタルは目を背けたくなる異常な見世物を最後まで見届けることにした。







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