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23話
しおりを挟む「息子の異変に気付いたときはもう既にどうすることも出来なかったよ。そもそも神というのは...先ほど、不介入を決めていると説明したろう?それは自身の子供であってもあまり変わらなくてね」
結局、息子の家臣達に殺させてしまった、と俯いた。
「でも亡くなるときの息子の思いがあまりにも強すぎてね、それは呪いに近くなっていたんだよ。人間だったはずなんだけど...神から生まれたからかな?私も手を焼くものだった」
「...それで...聖女を?」
「そうそう。思いが弱まるまでの間ね、力を借りようと思って。何故かは分からないが、異世界の人間は影響を受けにくかったんだよね。...でもまさか2000年後に本人が出てくるとは思わなくてさー。こちらも少し驚いていたんだ...でも君のお陰で息子は解放されたようだ。面倒をかけてすまない。それから、本当にありがとう」
本来ならば私がしなければならなかったところだ、と加えた。
チヨはゆるゆると首を振る。
「いえ、私は大したことしていないんだと思います。そりゃあ最初は責任を負いたくないとか怖いとか色々考えましたけどねえ...でも蓋を開けてみれば初代の王様も「神様から生まれた人間」なんかじゃなくて「ただの人間」だったってことです」
神様ではないのだから全部をどうにかできるわけない、人間なのだから黒い感情だってあるのだ。
チヨがそう言うと、神は少し笑った。
「神様だってね、なんでもできるわけじゃないし...黒い感情だってあるんだよ。君の世界の神話にもそういうのがあったんじゃないかい?」
「そういえば...確かに」
「でしょ...でも息子が解放された理由がなんとなく分かるよ。君、本当の年齢はかなり上だよね?」
「はい、87歳です」
「なるほどね。君がこちらに落ちてきてくれたことは私にとってもこの国にとっても僥倖だった。この先、呪いを受ける国王は出ないだろう」
「それは...良かったです。伝えておきます」
「ふふ、さあ...そろそろ帰る時間だ。ああ!それと言い忘れていたんだが———...」
「————え?」
そして来た時と同じように真っ白な光に包まれる。
どんどん神の姿が薄くなり...見えなくなってしまう。
チヨも目が開けていられない。
「...君の幸せを願ってるよ...」
最後に耳元で聞こえて光は消えたのを感じる。
ゆっくりと瞼を開けると、そこはベッドの上だった。
「チヨ!」
「チヨ様!!」
顔を覗き込んできたのは王とルーカスだった。
「あれ...舞踏会は?」
「そんなのいいのだ」
「え、でも王様いないんじゃあダメでしょう」
「いいえ、もう後は飲みたい人が残っているだけなので本当に大丈夫ですよ」
「それならいいんですけど...」
「私たちのことはいい!それよりもチヨのことだ。一体どうした?何が起こった?」
「実は...」
チヨはソンツァルと呼ばれる神に会ったことを説明した。
初代の王について謝りたかったこと、そしてもう呪いを受けることはないということ。
そこまで言うと2人共、心底驚いたようだった。
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