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7話
しおりを挟む初代の王と同じく、呪詛を撒き散らしました。
これにより人々の心に魔が巣食い、大きなものから小さなものまで争いが起こり、数え切れないほど死者が出てしまったのです。
また王を弑さなければならないのかと考え始めた頃、聖女様が空からやってきました。
ソンツァル神は聖女さまの口を使い、我々に告げました。
異世界からの聖女は王を浄化出来ること、ただし、それには1日中1対1で祈り続けること。しかし聖女が王を弑してしまっても民にも浄化の祈りは広がること。
また今後500年周期でこのような王が現れること。
その度に異世界から聖女を落としてくれること。
それだけをお告げになりました。
初代聖女は1日中祈りを続け、無事王をお救いになりましたが、次代聖女は…
呪詛を聞き続けなければならないのです。
その結果も当然かと思います。
王ですか?現在はまだ正常でいらっしゃいますよ。
聖女さまが降臨されてからひと月以内に異変が起こるとのことなので…
…長くなりましたが、チヨ様にはこの浄化をお願いしたいのでございます。
こちらの勝手でこちら側に落とされたこと誠に申し訳ありませんが、どうか…どうか宜しくお願い致します…!
———————
ルーカスはここまで話すと一気に紅茶を煽った。
チヨは何もいえなかった。
全てが自分の手にかかっている。
「聖女さまに失敗はございません。どちらにしても浄化はされますので…」
上手くいっても、いかなくても。
それはチヨが王を弑す可能性があるということだ。
戦争も体験したが、人を殺したことなど無いし、これからもしたくない。
固まったチヨにルーカスは言った。
「このあとの王への謁見ですが、私もついていくことになっています。王を救う存在である聖女さまはマナーなどは特に必要がありません。また先程も申し上げた通り、まだ異変は見られないのでご安心ください」
「…わかりました」
「難しい話は一旦終わりにしてお茶を楽しみましょうか」
そう言うとチヨの返事も待たずに新しい紅茶を淹れてくれる。
エマとモニカはいないのは、ルーカスの話した内容がアジーン家に伝わるもので門外不出だからだそうだ。
あたかかい紅茶が強張った身体に染み渡る。
「あの…その王様の呪詛?の影響が国民の方に出るのはいつ頃からなのでしょうか?」
「記録では1週間前後とされています」
思ったより早い。
例えば明日明後日に異変が出たとして、そこから1週間と考えると…あと10日もない。
特別な魔法などは何もいらない。ただ祈る心が必要なのだ。
この世界に来てしまった以上、やらないという選択肢はないだろう。覚悟の問題なのだ。
葛藤と戦いながらお茶を飲んでいるうちに時間が来てしまい、心が晴れないまま謁見へと向かった。
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