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3話

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案内されたのはとても大きな建物だった。
荘厳で美しい…そしてとてつもなく広かった。
ちなみに現在、お姫様抱っこで移動中である。
元々家にいたため裸足だったのだが、それを見たルーカスにすごい勢いで懇願され今に至る。


「こちらは聖女宮でございます」

「聖女宮?」

「はい、我がルゥナ帝国では草や木、小石に至るまで自然に生まれたものであれば全てに精霊が宿るとされています。そしてそれを導くのが、ソンツァル神なのです。そして聖女さまはソンツァル神の御使いを言い伝えられています…国など、このへんの宗教につきましてもあとでご説明致しますね」


なるほど、聖女とは信仰の対象であるようだ。
ますます自分でいいのか謎である。


「それと…チヨ様のお召し物について…大変失礼なのですが、そちらは生国のものでしょうか…?」


チヨは基本的に和服で生活していたので、寝るときも浴衣だった。


「そうですが…」

「こちらの服とは形が異なるため着心地は悪いかと思います。急いで作らせますので少々お待ち下さいませ」

「えっ、いいです。大丈夫です。別にこれじゃないといけないということではありませんので…」

「そうなのですか?ではとりあえずこちらにある物を着て頂いて不便があるようでしたらお声掛け下さい」

「分かりました。ご丁寧にありがとうございます」


ルーカスは困ったように眉を下げ、それから、と付け足した。


「私をはじめとしたチヨ様にお仕えしている者達への敬語は必要ございません。名前も呼び捨てにして頂いて結構です」

「そう言われても…あの、今までそういう生活をしてこなかったので…初対面の方に敬語を使わないなんてできません。もう少し慣れたらお言葉に甘えさせてもらうこともあるかもしれませんが…」

「そうなのですね。生国とは大きく違うでしょうからそういうこともあるでしょう…しかし、なるべく早く慣れて下さいね」


納得したかのように見えたのだが…
慣れる日が来る気配が見えないチヨであった。


—————————


まもなくして部屋に着いたようで、ルーカスのお付きの方?が扉を開けてくれる。


「広い…」


思わず口から呟きが溢れてしまう。
何畳分あるのかさえも分からない。


「大変お待たせ致しました。一度ゆっくりとお休み下さい。説明などは、また起きてからに致しましょう」

「分かりました」

「チヨ様のお世話にあたる者をご紹介致します。
——エマ、モニカ。前へ」

「エマと申します。何卒宜しくお願い申し上げます」

「モニカと申します。どうぞ、なんなりとお申し付け下さいませ」


エマは身長が高く、すらっとしているので綺麗といった表現が似合う女性だ。
一方、モニカは背が低いわけではないのだが、どちらかというと可愛いらしい。


「こちらこそ宜しくお願い致します」


チヨがぺこっと頭を下げると、エマから声が飛んでくる。


「まあぁぁ!!いけませんわ、私達などに頭をお下げになるなんて!」

「あ、はい、すみません…」


その様子を見ていたルーカスが微笑んで頷いた。


「それでは、後は頼んだよ——それでは聖女さま。また時間を見て参ります」


エマとモニカはかしこまりました、と一礼をする。
ルーカスが扉から出ていったことを確認すると疲れがどっと押し寄せてきたのだった。
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