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皇族
しおりを挟む「…お前に関係があるか?」
「まぁ!婚約者に向かって随分ではなくて?」
婚約者がいたのか!とハルカは胸の内で声をあげる。
しかし、少年の顔や態度からハルカへの気持ちは嘘ではないと感じ始めていた。
「何度言ったら理解してもらえるのか…私は承諾をしていない。それは皇帝も知っているはずだろう」
「酷いですわ…私、こんなに想っておりますのに…女を連れ込むなんて横暴が過ぎますわ。…しかもどちらから連れて参りましたの?」
そう言ってハルカを見る目は恐ろしいが、少年が前に出て守ってくれる。
それを見て更に怒った少女は髪が逆立ちしそうなほどである。
「そこの女。名乗りなさい」
「やめろ」
「まぁ龍の君。私はそこの者に言っておりますの。少なくとも私の方が立場は上ですので」
そう言うと目線だけで促される。
「はじめまして、ハルカと申します」
ぺこっとお辞儀をしたのを見た少女は高笑いをする。
何故笑っているのかは分からないが、嘲られているのだということは分かった。
「そう、ハルカさん…私は第二皇女のカヤと申します」
皇女様という言葉に唖然としているとカヤが美しい所作の礼をする。
そこに自分との差を感じてしまいハルカは俯く。
その様子を見たカヤは満足そうに頷いた。
「まぁ今日のところはこれで失礼しますわ。せいぜい…頑張って下さいね」
そう言い残し、冷たい笑みを向けて去っていった。
———————
なんとなく言葉を発さないまま、屋敷へと帰ってきてしまう。
ようやく少年が口を開いたが、最初の言葉は謝罪だった。
「…すまなかった」
「いえ、大丈夫です…あの本当に王族の方なんですか?」
「そうだ。現在、皇帝には1人の皇子と2人の皇女がいる。上の皇女は他国に嫁ぐことが決まっているが…あいつ…カヤが面倒なやつなのだ」
不安そうにするハルカに対して、婚約者というのも嘘だ、俺は絶対に嫌だし、もうハルカ以外は認めない!と付け加えてくれたのだった。
————————
そうして2週間が過ぎた。
何事もなく、平和で暖かな日々。
そろそろ結論は出さなくてはいけないだろうし、花嫁でもないやつがこんなに居座ること自体あり得ないだろう…そう思いつつずるずると時間が経ってしまった。
少年はハルカに色々と教えてくれるし、礼儀やマナーについては最初にハルカを世話してくれた3人が張り切って教えてくれていた。
夜には少年と男を交えておしゃべりする日もあったのだが、今日の夜は何もせず早めに眠りについたのだった。
夜中目が覚めてしまい、水を飲む。
しかし、眠気はどこかに飛んでしまったのかすぐには眠りにはつけないだろうと感じ、屋敷内の散歩をしてみることにしたのだった。
夜というだけで随分と印象が違う長い廊下を歩いていると
どこかの部屋から声が聞こえた。
探してみると灯りの漏れている扉がある。
どうやら少年の自室のようだ。
「うっ…ぐ…ぁあ…」
覗いてみても少年の姿は見えないが、苦しそうな声がする。
それが気になり、もうちょっとだけもうちょっとだけ…と思っているうちに扉はかなり開いていたようで、それに気付いた少年がハルカの前に立っていた。
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