○○なんか✖︎✖︎なんか

根岸 とも

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手紙なんか

書かない

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「あなたにはね、手紙なんて書かないの。
 なんて、言っていたこともありましたね。
 当時は本当にそのつもりだったのよ。それが、やあねえ。こんな風に書きたくなっちゃったものだから。
 本当よ。嘘なんて今更つく必要が無いわ。
 あのね、わたし、離れたく無かったのよ、あなたと。
 そんな、手紙を書かなきゃならないような遠く離れた場所にいたくなかったのよ。
 友達はみんな文通も楽しいわよって教えてくれてたんだけどねえ。ほら、わたしって頑固でしょう。だからね、どうしても言ってしまったのよ。

 あなたには、手紙なんて書かない。って。

 ふふっ。懐かしいわねえ。あなたは絶対に出すって言ったけれど、わたしは絶対に見ないし返事なんて以ての外、書くだけ無駄よ。なんて言ってたわねえ。
 あら、今でもそう思ってるわよ。手紙を書く暇があるなら一緒にお喋りしていたいわ。
 だって、手紙って、何を書こうか悩んじゃうのだもの。書き終わってから、あれも書き足りないこれも書き足りないって。
 それなら、直接言えた方が楽しいでしょう? 他にもいっぱい話題が出て来て。良いわねえ。わたしはそう思うのよ。
 だからね、手紙なんて書かないし、書く暇があるならお話して下さいな。
 あなたの字を1人で見ているよりも、あなたと顔を合わせて声を聞きながら、同じ空間で過ごしたいわ。
 でも、これはわたしの我儘よねえ。
 きっとあなた達は今忙しいでしょうし。
 だからね、初めてあなた方に手紙を書いてみました。
 最初で最後かもしれないわね。ふふっ。

 大分長くなってしまった気がするけれど、わたしから言いたいことはこれだけなのよ。


 今までありがとうございました。

 わたしは、とても幸せ者でした。

 愛してるわ、わたしを知る全ての人を。


 今を大事に生きなさいね。」
 
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