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第2章
⑥
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そんな俺の脳内なんて知りもしない亜玲は、ずんずんとショッピングモール内を進んでいく。
途中、色々な人たちが俺たちのことを見る。でも、別に同性のカップルが珍しいわけじゃない。ただ、みんな亜玲に見惚れているだけだ。
……そもそも、俺たちはカップルなんかじゃないし。
「……亜玲、何処に行くんだよ」
亜玲の足取りには、迷いがない。まるで、目的地はすでに決まっていると言いたげだった。
「内緒」
俺の問いかけに、亜玲は淡々とそう返してくる。
……内緒って。
(まぁ、ついていくか……)
でも、付き合うと決めたのは俺自身だ。
そう思いなおして、俺は亜玲と手をつないだまま移動する。
手を振り払いたいという気持ちも、絡めた指を解きたいという気持ちも、たくさんある。けれど、亜玲の手が微かに震えているような気がしたから。
その所為で、俺は亜玲の手を振り払えない。黙って亜玲に引っ張られていく。
そして、連れてこられたのは衣服売り場だった。
ショッピングモールということもあり、高級ブランドとかじゃない。何処にでもある大量生産品。
「ごめんね、祈。本当はもっといいものを買ってあげたかったんだけど……」
「……いや、別にいいんだけれど」
申し訳なさそうな亜玲の言葉に、俺は端的にそう返す。
ちなみに「別にいい」の意味は高級ブランドじゃなくてもいいというわけではなく、買ってもらわなくてもいいという意味である。
多分、伝わってないんだろうけれど。
「俺ね、ずっと祈にいろいろと買ってあげたかったんだ。……祈に似合うものをたくさんプレゼントしたかった」
亜玲がそう言って、薄手の上着を手に取る。
それは、俺よりも亜玲に似合いそうな一品だった。
「……あのさ、亜玲」
さすがにこのまま流されるのはマズイ。その一心で、亜玲に声をかける。
が、それとほぼ同時に亜玲がハッとする。かと思えば、早足でどんどん進んで、小物売り場へと向かう。
俺は、ついていくことしか出来ない。
「祈、俺、祈にチョーカーをあげたい」
にっこりと笑った亜玲が、そう言ってくる。
自然と俺の眉間にしわが寄った。
だって、俺がチョーカーを着けているのは番事故を防ぐためだ。それだけのためであり、別におしゃれをしているわけじゃない。
「亜玲、あのな、これはおしゃれじゃないんだよ」
俺だって好きでこんなものを着けているわけじゃない。目を細めながらそう告げれば、亜玲は「知ってるよ」という。
「祈は、番事故を防ぐためにそれを着けている。……嫌というほど、知ってる」
「……じゃあ、なんで」
「首って、とっても大切な場所じゃん」
なにを今更――喉元まで出かかった言葉を、呑み込む。
亜玲の目は真剣だった。
「俺が買ったものがそこにあるっていうことは、祈と俺は一心同体だっていうこと。わかる?」
「全然わからん」
本当に、こいつはなにを言っているんだろうか?
亜玲って、頭もいいはずなんだけどな……。
もしかして、亜玲は一周してしまってバカなのだろうか?
「……じゃあ、それっぽい理由をでっちあげる。祈に俺が買ったチョーカーを着けさせることで、俺のものだって見せつける」
「誰も、亜玲の所有物になった覚えはないんだけど」
なんだろうか。ちっとも話がかみ合わない。通じない。
しばらくして、頭が痛くなってきた。……亜玲の奴、こんなにも話が通じない奴だっただろうか?
「誰も、なんて言わないで。……俺が欲しいのは、祈だけなんだから」
亜玲は俺の言葉の小さなところを切り取って、口にする。
その後、一つのチョーカーを手に取って歩き始めた。
「これにするね。……祈への、プレゼント」
にっこりと笑った亜玲が、そう告げてくる。
……絶対に、人の話を聞かないタイプだ。
そんなこと、昔から知っているけれど。なんていうか、今、再認識したというか……。
途中、色々な人たちが俺たちのことを見る。でも、別に同性のカップルが珍しいわけじゃない。ただ、みんな亜玲に見惚れているだけだ。
……そもそも、俺たちはカップルなんかじゃないし。
「……亜玲、何処に行くんだよ」
亜玲の足取りには、迷いがない。まるで、目的地はすでに決まっていると言いたげだった。
「内緒」
俺の問いかけに、亜玲は淡々とそう返してくる。
……内緒って。
(まぁ、ついていくか……)
でも、付き合うと決めたのは俺自身だ。
そう思いなおして、俺は亜玲と手をつないだまま移動する。
手を振り払いたいという気持ちも、絡めた指を解きたいという気持ちも、たくさんある。けれど、亜玲の手が微かに震えているような気がしたから。
その所為で、俺は亜玲の手を振り払えない。黙って亜玲に引っ張られていく。
そして、連れてこられたのは衣服売り場だった。
ショッピングモールということもあり、高級ブランドとかじゃない。何処にでもある大量生産品。
「ごめんね、祈。本当はもっといいものを買ってあげたかったんだけど……」
「……いや、別にいいんだけれど」
申し訳なさそうな亜玲の言葉に、俺は端的にそう返す。
ちなみに「別にいい」の意味は高級ブランドじゃなくてもいいというわけではなく、買ってもらわなくてもいいという意味である。
多分、伝わってないんだろうけれど。
「俺ね、ずっと祈にいろいろと買ってあげたかったんだ。……祈に似合うものをたくさんプレゼントしたかった」
亜玲がそう言って、薄手の上着を手に取る。
それは、俺よりも亜玲に似合いそうな一品だった。
「……あのさ、亜玲」
さすがにこのまま流されるのはマズイ。その一心で、亜玲に声をかける。
が、それとほぼ同時に亜玲がハッとする。かと思えば、早足でどんどん進んで、小物売り場へと向かう。
俺は、ついていくことしか出来ない。
「祈、俺、祈にチョーカーをあげたい」
にっこりと笑った亜玲が、そう言ってくる。
自然と俺の眉間にしわが寄った。
だって、俺がチョーカーを着けているのは番事故を防ぐためだ。それだけのためであり、別におしゃれをしているわけじゃない。
「亜玲、あのな、これはおしゃれじゃないんだよ」
俺だって好きでこんなものを着けているわけじゃない。目を細めながらそう告げれば、亜玲は「知ってるよ」という。
「祈は、番事故を防ぐためにそれを着けている。……嫌というほど、知ってる」
「……じゃあ、なんで」
「首って、とっても大切な場所じゃん」
なにを今更――喉元まで出かかった言葉を、呑み込む。
亜玲の目は真剣だった。
「俺が買ったものがそこにあるっていうことは、祈と俺は一心同体だっていうこと。わかる?」
「全然わからん」
本当に、こいつはなにを言っているんだろうか?
亜玲って、頭もいいはずなんだけどな……。
もしかして、亜玲は一周してしまってバカなのだろうか?
「……じゃあ、それっぽい理由をでっちあげる。祈に俺が買ったチョーカーを着けさせることで、俺のものだって見せつける」
「誰も、亜玲の所有物になった覚えはないんだけど」
なんだろうか。ちっとも話がかみ合わない。通じない。
しばらくして、頭が痛くなってきた。……亜玲の奴、こんなにも話が通じない奴だっただろうか?
「誰も、なんて言わないで。……俺が欲しいのは、祈だけなんだから」
亜玲は俺の言葉の小さなところを切り取って、口にする。
その後、一つのチョーカーを手に取って歩き始めた。
「これにするね。……祈への、プレゼント」
にっこりと笑った亜玲が、そう告げてくる。
……絶対に、人の話を聞かないタイプだ。
そんなこと、昔から知っているけれど。なんていうか、今、再認識したというか……。
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